七原秋也編



「三村、これ」
秋也はそう言って、プレゼント仕様の箱を信史へ差し出した。
可愛くラッピングされた、明らかにそれは。
「ばれんたいんちょこれーと???」
受け取りながら、信史は目を丸くする。
信じられなかった。
まさか秋也がこんな物をくれるとは。
しかも、わざわざ自分の家に届けに来てくれたのだ。
「これ、ホントーに貰って良いのかっ!?」
もう返さないと言わんばかりにしっかり握りしめて、信史は言った。
秋也はにっこりと笑って、良いよ、と答える。
なんて素直なんだろう、と信史は思った。
秋也と付き合い始めて、もうずいぶん経つ気がするけれど、こんなに素直な秋也は珍しかった。
やはり今日が、バレンタインだからだろうか。
という事は、この後の事も期待して良いのかもしれない。
バレンタインという事で、いつもより素直な秋也が「俺を食べてv」と迫ってくる姿を想像して、信史は鼻血を吹きそうになった。
ありがとう神様。
ありがとうバレンタイン。


「郁美ちゃんからだけどな?」


素敵な落ちをありがとう(涙)
「……郁美に会ったのか?」
信史は思い出したように自分の頬をさすった。
突然頬をひっぱたいて出て行った妹を思い出して。
「お前、他の女の子に貰ったチョコレート、郁美ちゃんにあげたんだって?」
「あー、だって、しょうがねーじゃん」
「何が」
どことなく不機嫌な秋也に向かって、信史は苦笑した。
「俺、今虫歯だし」
「は?」
「手作りチョコとかってさー、早く食べなきゃいけないだろ?だから」
「なーんだ」
そういう事か、と秋也は笑う。
どうやら機嫌を直してくれたらしい。
「ところで、七原は俺にくれないの?」
「何を?」
「バレンタインチョコレートだよ」
当たり前だろ、と信史は言って、手を差し出す。
貰う気いっぱいだ。くれるとも言ってないのに。
「虫歯なんだろ〜?」
「七原からのチョコレートなら話は別だって」
「歯、ぼろっぼろになっても知らないぞ?」
「それは嫌かも……」
歯医者の音を思い出してしまって、信史は顔をしかめた。
「なら、虫歯にならない方で良いや」
「は?」
何を言っているのか分からずに、秋也は首を傾げる。
虫歯にならないチョコレート?


「七原が食べたいな♪」


「セクハラ」
「何でだよっ!」
あっさり一刀両断される。
どうやらバレンタインとは言っても秋也はいつもの秋也でしかないらしい。
当然だ。
「それなら虫歯になれよ」
ほら、と秋也は信史へ箱を差し出した。
シンプルではあるが、プレゼント用にラッピングされた箱。
誰に言われなくても分かる。
これはバレンタインチョコレートだ。
「マジでっ!?七原、ちゃんと用意してくれたんだ!?」
「なんだよ……いらないのか?」
「いるいるいるいるいる。いるに決まってるだろ〜vv」
信史はそう言って、箱ごと秋也を抱き締めた。
「七原、大好きだぜっ」
「やるのはチョコだけだからなっ」
「まぁまぁ、そう言わずに」
そのままチュッとキスをして、信史は秋也を押し倒す。
「三村ぁ〜っ!」
恨みがましい目で見上げてくる秋也の声を無視して、信史は笑った。
「ホワイトデーには、ちゃぁんとお返ししてやるからなv」
「何くれるんだよ?」
秋也の言葉に、信史はにやりと笑って。
言葉を聞かなくても、分かってしまった。


「決まってんじゃん♪俺自身vv」


END.



ハイ、37。
三村が一位になった時点で、結局37を書くんだろうなぁという事は想像出来てしまいました。
別に嫌なわけじゃないですけど。
こういう、バカっぽい37を書くのは、企画のときだけですね。
単に時間がなくて焦っていると言うのもありますが(言うな!)

これを最初に読んだ方は分からないかもですが。
実はバレンタイン企画の3つの話、微妙に繋がっていたりします。
全部読んでも良い事はないですが…



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