Birthday

 

 

 心から、愛する君へ。

 君の生まれたこの日を、誰よりも喜んでいるのはきっと――

 だから、誰よりも先に、祝わせて。

 

 

 見つめる。

 かかってくるはずのない電話。

 期待してる。

 おかしいくらいに。

 時計と見比べて、溜息。

 こんな真夜中に、共同の電話にかけてくるような奴じゃない。

 たかが、誕生日くらいで。

 でも、祝って欲しいとも思ってる。

 誰よりも先に、おめでとうって言って欲しいって思ってる。

 慶時が、秋也、まだ寝ないの?って、聞いてきたのを、流して。

 電話の前で、ただ待ってる。

 時計の針は、虚しく0時を過ぎて。

 未だに沈黙し続ける電話機に、八つ当たりしそうになりながら。

 何でかけてこないんだよ、だなんて。

 約束したわけでもない電話を、待ってる。

 

 忘れてる、とか。

 

 別にそれならそれで良いけど。

 ……良くないか。

 心の中に湧いた、黒い染みを認めて。

 溜息。

 

 この歳になって、誕生日を特別に思ってるのは、ひょっとして自分だけかも。

 

 けど、さ。

 

 それなら。

 もうすぐ誕生日だよな、なんて。

 期待させるような事、言うなよ。

 覚えててくれたんだって、嬉しくなって。

 誕生日には何かあるかもしれないだなんて、期待して。

 勝手に期待したのは俺だけど。

 

 でも。

 

 電話を見つめて、溜息。

 部屋に戻れば、きっと慶時がおめでとうを言ってくれる。

 だけど、俺が求めてるのは、違って。

 わがままかもしれないけど。

 だけど。

 

 多分、俺が求めてるのは、たった一人で。

 あいつじゃなきゃ意味がなくて。

 

 三村に、祝って欲しくて。

 

 あと少しだけ。

 そう自分に言い聞かせて、暗闇の中で電話を睨む。

 あと1分。

 いや、3分。

 5分。

 10分。

 時間がどんどん過ぎて行く。

 

 1時近くになると、さすがにもう無理かな、なんて。

 1分でも遅れた時点で、きっと何も無いと、分かってはいたんだけど。

 もしかしたらにすがりついて。

 ひょっとしなくても俺ってカッコ悪い?

 

 素直な気持ちってやつを吐き出すなら。

 本当は今すぐにでも会いに行って。

 今日は俺の誕生日なんだけど!って、言ってやりたい。

 驚くかもしれない三村は、だけどきっとおめでとうって言ってくれるから。

 

 時を刻む音が、虚しく暗闇に響いて。

 何かを期待しながら、目を閉じる。

 遅れてごめんと言いながら、それでもおめでとうって。

 言って欲しい。

 言ってくれよ。

 分かってるから。

 

 

 

 時間の感覚が、おかしくなりそうになる。

 記憶と希望と現実が、ごちゃ混ぜになって。

 時計の音だけを聞いて、ただ静かに。

 それでもお前の声を待っている。

 

 

 

「秋也くん?こんな所で寝てると、風邪ひくよ……?」

 

 

 

 典子の声に、気付かないふりをする。

 分かっているから、せめて夢を見させて。

 心は今でも、あの時のままなんだ。

 三村のいない世界で、三村の言葉だけを待ち続けて。

 夢でも幻でも構わないから。

 だから一言。

 

 

 

Happy Birthday.七原」

 

 

 

END.



これの前半部分を書いたのは、去年なんです。
どこからが今年書いた部分か、分かるでしょうか(笑)
やっぱり全く変わってないんだなぁと思い知らされる今日この頃。
なんだかはっきりしない話になってしまいましたが。
そして、ハッピーにしてあげられませんでしたが。
さらにはよく分からない話になってしまいましたが。
企画小説って、いつもこんなんです(汗)

誕生日、おめでとう、七原。