●解説

 78年頃から再燃し始めた第三次怪獣ブームはウルトラマンや仮面ライダーのみならず、大映の倒産により中断していたガメラシリーズをも復活させ、8年9ヶ月ぶりの新作として本作が製作された。しかしながらその特撮シーンの大部分はかつてのガメラシリーズ7作より流用することが前提とされ、公開も一部の都市に限られていた。一方の東宝もこの頃はまだゴジラの新作製作に踏み切ることはできず、映画ドラえもん第一作『ドラえもん のび太の恐竜』の併映作品としてゴジラシリーズの総集編が企画されている(実際には『モスラ対ゴジラ』のリバイバル上映に変更されたが、総集編の企画の段階で松本零士氏にポスターのイラストが発注されたため、完成されたポスターにはゴジラが大きく描かれ、実質的には主役のはずのモスラの姿は一切描かれていない)。
 脚本は高橋二三氏、監督は湯浅憲明氏、撮影は喜多崎晃氏と、中心スタッフはそれまでのガメラシリーズを手がけたメンバー。旧作フィルムを多用したそのストーリーはやはり矛盾があるものの、ガメラと敵怪獣との対決シーンばかりか本編シーンも一部使用し、さらにモノクロの第1作のフィルムまでもテレビニュース映像として使用するなど、7作全てを活かした構成となっている。『ガメラ対大悪獣ギロン』以降のシリーズの音楽を担当していた菊池俊輔氏も本作で初めてガメラの主題歌を作曲。主演のマッハ文朱氏の歌う「愛は未来へ…」は劇中でも少年の作った歌として使用されており、非常に印象深い。ちなみに当時発売されたシングルレコードはこの主題歌はB面扱いで、A面の「生きてるかぎり」も本作の挿入歌と表記されてはいるが、実際には使用されていない。
 旧作フィルムを流用しているとはいえ、ガメラの着ぐるみ、そして敵の象徴となる宇宙海賊船ザノン号のミニチュアは新しく作られ、新作部分においても特撮は多用された。東映の『宇宙からのメッセージ』(78)より使われ始めた東通ECGシステムによるビデオ合成がここでも使用されているが、旧作シーンとの違和感を感じざるを得ない。また、『スターウォーズ』『ジョーズ』『スーパーマン』『未知との遭遇』といった、当時大ヒットした映画の名場面のパロディを随所に折り込み、予告篇やチラシ等の宣伝でそれを前面に押し出していたものの、パロディ本来の楽しさからは程遠いものがあった。他にも”亀”つながりということか、人気マンガ『こちら亀有公園前派出所』を落語家の桂小益氏の特別出演で再現したり、ゴジラをイメージした「さらばドジラ」なる架空の映画の看板をガメラが歩くシーンで倒してみたりと、受け狙いのシーンが目立つ。極めつけは『宇宙戦艦ヤマト』『銀河鉄道999』からのフィルムの流用で、『ヤマト』の方は少年の夢の中の出来事という処理がされているためストーリー上は無理がないのだが、『999』の方はガメラの宇宙飛行シーンに突然挿入されているため、訳のわからないものになってしまっている。
 総じて珍作、或いは怪作というイメージが強い本作品だが、映画は娯楽の一つだと割り切って見ればこうしたシーンも面白く、それなりに楽しめる作品である。企画、そしてプロデューサーを務めた徳山雅也氏はこの前年に前述の『銀河鉄道999』劇場版の宣伝を担当。後にはスタジオジブリの一連のアニメ映画の宣伝プロデューサーを担っており、本作が徹底的に娯楽性を追求していたのはそんな徳山氏の意向によるところが大きいと思われる。また、プロデューサーとしてはもう一人、70年代のピー・プロ特撮作品を担当していた篠原茂氏(しのだとみおの名でピー・プロ作品の脚本や主題歌の作詞まで手がけている)が名を連ね、同じくピー・プロで助監督をしていた村石宏氏も本作品に参加している。
 ところで、本作には「SUPER MONSTER」という副題が本編中のタイトルに確認できるが、関連書籍類では記されていない事が多く、大映が発売したビデオソフト関連の商品にも表記がない。なお、東京、大阪等での併映作品は『鉄腕アトム 地球防衛隊』(旧作TVアニメシリーズの中からカラーで製作された一エピソードを劇場公開)だったが、名古屋地区だけは前年に公開された『実相寺昭雄監督作品 ウルトラマン』を上映。ガメラとウルトラマンという夢の組み合わせ(?)となっていた。


 
●キャラクター

キララ(マッハ文朱)・・・・・・平和星M−88の宇宙人三人組のリーダー。普段はペットショップ”モントウトウ”を営んでいるが、地球の危機の際は宇宙人の姿に変身して平和のために尽力する。空を飛んだり、小さくなったりすることは可能。しかし、武力を何一つ持っていないので、悪と戦うためには何か役に立つものをさがさなければならないのが難点だ。地球の場合、ガメラという怪獣がいたので良かったが・・・。
■マーシャ
(小島八重子)・・・・・・キララの仲間。普段はMAZDAに勤める自動車販売員。
■ミータン
(小松蓉子)・・・・・・同じくキララの仲間。普段は福田幼稚園に勤める保母。
■ギルゲ
(工藤啓子)・・・・・・宇宙海賊船ザノン号より地球に派遣された宇宙人。その使命は地球に存在する邪魔者を速やかに排除すること。だが、キララや圭一たちの優しさに触れて改心し、彼らの身代わりとなってザノン号の光線の標的となる。
■木下圭一
(前田晃一)・・・・・・亀の好きな少年。キララたちと友だちになり、彼女たちに協力する。
■圭一の母
(高田敏江)・・・・・・圭一の夢想癖にあきれながらも子供の成長を暖かく見守る。
■ガメラ
・・・・・子供の味方の大怪獣。ザノン号の送り出す凶悪な怪獣たちと戦う。


 
●ストーリー

 大宇宙を進む不気味な宇宙海賊船ザノン号は、平和な星々を襲って略奪と殺戮を欲しいままにしていた。次の攻撃目標を地球に定め、侵略を開始しようとするザノン号。だが、地球には平和星M−88から派遣されたキララ、マーシャ、ミータンという三人の宇宙人女性が地球人に変身してそれぞれの生活を送っている。それを察知したザノン号のキャプテンは彼女たちを抹殺すべく、その配下のギルゲを地球へ送りこむと共に、超音波怪獣ギャオスを使って名古屋地方を襲撃する。
 地球の危機を目の当たりにしながらも、武力を持たないキララたちはただ焦るばかり。しかも下手に宇宙人の姿に変身して超能力を使えば、たちまち敵のレーザートレーサーにキャッチされてしまうのだ。そんな時、圭一少年からガメラの存在を教えられたキララたちは命がけで変身し、念力でガメラを呼んだ。姿を現わしたガメラはギャオスに立ち向かい、一度は傷つき取り逃がしたものの、二度めの対決でついにギャオスを倒す。作戦に失敗したザノン号は深海怪獣ジグラ、さらに水中怪獣バイラスを使って海から攻撃をしかけるが、どちらもガメラの敵ではなかった。
 大阪に放った大魔獣ジャイガーまでもがガメラに倒されると、ザノン号は新たな作戦を開始した。コントロールマシンをガメラに取りつけ、ガメラを思い通りに操り始めたのだ。ダムを破壊し、暴れ回るガメラ。キララは再び変身し、ガメラからコントロールマシンを除去することに成功するが、変身したことによってギルゲにその正体を知られてしまった。ギルゲと対決し、勝利するキララ。だが、彼女は最後のとどめをさそうとはせず、圭一もまた傷ついたギルゲを手厚く看病する。
 その頃、神戸には冷凍怪獣バルゴンが出現。他の惑星で大悪獣ギロンを倒したガメラは地球へ戻り、苦戦の末にバルゴンを湖に沈めた。キララや圭一たちの優しさに心打たれたギルゲは自ら身を投げ出し、キララたちの身代わりとなって死んでいく。そして、手駒をすべてなくし自ら地球に迫るザノン号に、ガメラは決死の体当たりを挑むのだった。



 
●データ


1980年3月20日公開
カラー ビスタ 109分
大映配給株式会社作品


[スタッフ]
企画/徳山雅也  製作/大葉博一  プロデューサー/徳山雅也、篠原茂  脚本/高橋二三  監督/湯浅憲明  音楽/菊地俊輔  撮影/喜多崎晃  録音/飛田喜美雄  照明/島田忠昭  美術/福島恒雄  編集/田賀保  助監督/村石宏實  製作主任/久里耕介  操演/中島徹郎  装飾/岩田信尚  メイク/土屋千恵  記録/小林みどり  スチール/野上哲夫  擬闘/松尾悟(グループ十二騎)  特殊撮影/東通ECGシステム image transform (T.D/菊田英雄  V.E/植松一利  CAM/熊本宗孝  VTR/伊沢和幸  L.D/今泉千仭  G.M/山本博司、須藤源二)  造型/ヒルマモデルクラフト、エキス・プロ  劇画/開田裕治  視覚効果/石田徹  タイトル/デン・フィルム エフェクト  効果/P・A・G  衣裳/京都衣裳  録音所/にっかつスタジオセンター  現像/東京現像所  音楽製作/徳間音楽工業株式会社
演出助手/新井慎一、武井法政、佐々木正人  製作助手/野口真、宮内眞吾  撮影助手/渡辺修一、倉田昇、岩本道夫  照明助手/安河内央之、豊泉隆穂、岡尾正行、西山智  装飾助手/桜井陽一、大関進  操演助手/河合徹、平崎省二  録音助手/辻健太郎、小林寿
夫  編集助手/宏田政美、飯田明彦  
衣裳協力/婦人服:イトキン シャンドール、紳士服:三峰 渋谷店、ハンドバッグ:プリンセス、靴:銀座エスペランサ  撮影協力/株式会社マツダファミリア城南、株式会社関東マツダ、ペットサロン モントウトウ、大成建設株式会社、三菱電機株式会社  製作協力/株式会社東通、株式会社大映映画撮影所  協力/日本楽器製造株式会社、MAZDA  アニメーション作品提供/株式会社オフィスアカデミー、東映動画株式会社

[特撮フィルム]
撮影/築地米三郎、藤井和文、金子友三  録音/渡辺利一、奥村幸雄、清水保太郎、奥山秀夫  照明/石坂守、熊木直生、石森七郎、藤野慎一  美術/井上章、山口煕、矢野友久、石塚章隆  操演/恵利川秀雄、金子芳夫、関谷治雄、田中実  音響効果/小倉信義、小島明

[キャスト]
キララ/マッハ文朱(ロー・プロダクション)  マーシャ/小島八重子  ミータン/小松蓉子  ギルゲ/工藤啓子  木下圭一/前田晃一  圭一の母/高田敏江  不良少年A/林博二  不良少年B/豊隅哲明  不良少年C/小林英樹  圭一の友だち/池田真  運転手/飛田喜佐雄  アナウンサー/斉藤安弘(ニッポン放送)  亀有公園のお巡りさん/桂小益  キャプテンの声/小林修  ナレーター/中村正

[主題歌・挿入歌]
愛は未来へ… (作詞/やま ひさし  作曲/菊池俊輔  唄/マッハ文朱  ミノルフォンレコード)