●解説

 1968年4月、フジテレビと円谷プロが組んで世に送り出した特撮スパイアクション『マイティジャック』は、豪華キャストと日本初の一千万円の製作費をかけた一時間ドラマであった。だが、特撮シーンの素晴らしさとは裏腹に視聴者にはあまり受け入れられなかった。おまけにプロ野球中継などの裏番組に数字をとられて平均視聴率は一桁。早々に1クール(十三話)での打ち切りが決定した。円谷プロが売り込んだ企画だったらここで終了だが、もともとこの番組はフジテレビ側の企画であり、2クール分という当初の契約を局側から破棄するわけにはいかない。そのため子供向けに路線変更し、時間帯をそれまでの夜8時台から7時台に移した形で30分番組として存続されることになった。一時間番組が半分の30分番組に縮小されたいうことで残り1クール分の予定は2クールに拡大される。
 番組タイトルは企画書の段階では『マイティジャック』のままだったが、製作段階で『戦え!マイティジャック』に変更される。基本設定も改められ、マイティジャックはAPPLEの極東支部に配属されることに。メンバーも11人から5人に絞られ、副長だった天田がキャプテンに、そして源田がそのまま残り、後は新隊員で編成された。ただ、前作の続編かと言うと、企画書には特にそのようなことは明記されておらず、本編を見ても前作の設定やエピソードを意識した台詞やシーンはない。第一話では今井や小川たちが新隊員と呼ばれ、「新たに組織されたAPPLEの極東支部として編成された」という天田の台詞はあるが、第二一話では少なくとも十三年前からAPPLEが存在し、天田はその訓練生だったことが判明している。天田と源田はもともとAPPLEのメンバーであり、前作の時点では出向のような形でマイティジャックに加わっていたという解釈もできなくはないが、スタッフに続編という意識はなかったと思われ、別の世界の話と考えた方が自然である。
 前作はプロ野球に敗退したが、こちらはプロ野球を題材にした人気アニメ『巨人の星』が裏番組となり、視聴率は前作よりも低下してしまう。そのためか、第14話以降は「なんでもぞくぞくシリース」と題し、円谷プロお得意の怪獣やロボット、宇宙人など、なんでもぞくぞく出るようになり、当初のスパイアクションの路線は見事に崩れていく。一見すると、視聴率低迷による悪あがきにも見えるが、視聴率を気にしなくてもいいのでスタッフがやりたいように自由にやった結果でもある。実際、怪獣や宇宙人が出ても、ウルトラシリーズとは一味違う展開。作風は各話でコロコロと変わり、円谷プロ作品の中でもその振り幅はかなり大きい。ただ、視聴率は結果的に最後まであまり変わることがなく、1969年12月に予定通り全26話で終了。この二年後、フジテレビの同じ時間帯でスタートしたのがピー・プロの『宇宙猿人ゴリ(スペクトルマン)』であり、アニメとしては長寿番組となっていた『巨人の星』を視聴率でついに抜き去るという快挙を見せた。ちなみに『宇宙猿人ゴリ』のメイン監督は、『戦え!マイティジャック』も手掛けていた土屋啓之助監督。『戦え!』で助監督(本編、特撮共)だった石黒光一氏も『ゴリ』で監督デビューしており『戦え!』の雪辱を『ゴリ』で果たしたことになる。


 
●キャラクター


■天田一平(南廣)・・・・・・新たに「APPLE」極東支部として編成されたマイティジャックの隊長。何かとどなりつけることも多いが、隊員からの信頼は厚く「キャプテン」と呼ばれて慕われている。ただし考えるよりもまず行動に移すタイプで、何も告げずに一人で現場へ向かってしまい、隊員たちをあわてさせたこともある。射撃の名手であり、マグネチック宇宙人を一撃で倒した。家庭では幼稚園に通う一人娘・ミハルの送り迎えをするといった子煩悩な一面も見せる。リンゴが大好物。34歳。
■源田明(二瓶正也)・・・・・・他の隊員たちの先輩であり、サブリーダー的な役割を担う。天田キャプテンからは「ゲン」、他の隊員たちからは「ゲンさん」と呼ばれる。天田と同じく行動派であり、じっとしているのが苦手。そのためにマイティ号を無人にしてしまい、敵組織Qにマイティ号を奪われてしまったことがある。正義感の強い熱血漢のはずだが、次第にイデ隊員を思わせるギャグメーカーと化していった。発明家でもあり、こわいものはなめくじ……といった設定があるが、映像には生かされていない。25歳。
■小川喜助(渚健二)・・・・・・マイティジャックの中では最もマイペースな男。その反面短気でちょっとしたことでカッとすることも多い。マイティ号では通信を担当するが、事件の手がかりを入手した時にはその分析を手がける。電子工学、特に電磁系の理論に長けており、コンビナートが爆破された事件では、その原因が強力な磁力線であることをすぐに解明した。故郷には漁業を営む父と弟のテツがおり、自分がマイティジャックであることは彼らにも隠していたが、父親を救出した際にそれを明かした。22歳。
■今井進(山口暁)・・・・・・非常にストレートな性格で、自信家。自分の意見は最後まで押し通そうとする強引なところがある。心やさしい面もあり、地球に不時着したモノロン星人を気の毒に思い、母星からの救援が来るまで、彼を一人で守り抜いた。また、子供たちがヨットで遭難したことを知り、隊長の許可もとらずに嵐の中を出動したこともある。常に勇気ある行動をとり、謎の組織ブラッドが陰謀を画策した時には、彼らの仲間になりすまして一人で潜入するという危険な任務についた。23歳。
■江村奈美(江村奈美)・・・・・・若い女性でありながら爆発物の専門家。その場の状況に応じたあらゆる爆弾を苦もなく作り上げてしまうため、彼女の爆弾で数々の組織の基地が木っ端微塵になっている。明るい性格で茶目っ気もあり、チームのマスコット的存在。とはいえ格闘術にも長けており、敵の男たち相手に格闘することもある。ポロニア国のペドロ大統領が何者かに狙われた際には、殺し屋と思われる女性に近づき、スパイ活動を行った。60年代のヒロインには珍しくパンチラやシャワーシーンを披露している。19歳。
■藤井泰造(宇佐美淳也)・・・・・・「APPLE」極東支部のゼネラル(本部長)で、マイティジャックのメンバーたちの上司にあたる。本編中では、敵組織Qにマイティ号を奪われた際に初めて姿を現わし、マイティ号を奪回することよりもマイティ号を破壊することを検討した。自分の命や面子よりも、常に人々の平和を考えている。Qに誘拐されて牢に入れられた際にも、き然な態度をとり、救助に来た隊員たちにも自分の救助より他の人たちの救助を優先させた。12、13、25、26話に登場。55歳。


 
●全話ストーリー


第1話 かかった罠はぶっ飛ばせ

 万能戦艦マイティ号の乗組員たちに特別訓練出撃命令が下った。彼らは世界の平和を守る組織APPLEの極東支部のメンバーであり、マイティジックと呼ばれていた。訓練に先立って、小川隊員は天田キャプテンの命により一人で羽田空港へAPPLEの調査官宮原を迎えに行く。調査官が意外にも若い女性であることに戸惑いを覚える小川。だが、彼が宮原を連れて基地へ戻った時、マイティ号はすでに出撃した後だった。
 シプリーでマイティ号を追う二人に、世界制覇を企む組織パックの戦闘機が突如として襲いかかる。ミサイル攻撃を逃れ、辛くもパニック島へ上陸する小川。だが、そこはパックの基地であり、宮原はパックの女スパイだった。彼らはAPPLEの暗号を解読してマイティジャックが特別訓練を行うことを知り、それを利用してマイティ号を拿捕しようとしていたのだ。
 眼前の障害をすべて訓練だと思いこんでいたマイティジャックは、パニック島から執拗な攻撃を受けながらも武器を使用してまで反撃することができない。やがてパニック島へ上陸した隊員たちは宮原の手から逃れた小川と合流。そこにパックの基地があることを知った彼らは、パニック島を木っ端微塵に爆破するのだった。
 大人向けスパイアクションとして鳴り物入りで放映開始されながら視聴率が低迷した一時間番組『マイティジャック』を子供向けに軌道修正し、三〇分番組にリニューアルされたのが本シリーズ『戦え!マイティジャック』だが、その第一話はまだ前作のイメージをひきずっている感が強い。秘密組織パックの女スパイ28号は任務遂行のためなら味方の戦闘機を自ら打ち落とすことも辞さない極めてクールなキャラクターであり、前作に
登場していても違和感がない。彼女がAPPLEの調査官・宮原(男)を航空機から突き落とし、自分が宮原になりすますなど、その描写はハードなスパイアクションそのものである。ただ、後半に展開されるパックとマイティジャックのアクションシーンは、まさに子供向け番組の見せ方で、『忍者部隊月光』を手がけた土屋啓之助ならではの演出が光る。

第2話 ミニミニ島を爆破せよ

 ヨッチン、ペコ、チビというあだ名の三人の子供たちがヨットで海に出て嵐に見舞われ、やがて小さな島へと流れついた。彼らはその島をミニミニ島と名づけるが、そこはAZ団の秘密基地であり、ヨッチンとペコが基地の男たちに見つかり、捕われてしまう。一味の目的は核武装していない国に水爆を無理矢理売りつけることにあり、次のターゲットは日本であった。そのため水爆を買わなければ東京にミサイルを撃ち込むと、日本に脅
しをかけていた。
 一方、AZ団の基地の所在を探っていた今井は、ミニミニ島からの砲撃によって乗っていたバンカーHを墜落させられるが、その直前に脱出。島の中で怯えていたチビと出会う。初めは恐がっていたチビだったが、今井に説得されて勇気をふりしぼり、彼に協力。島を案内して基地へ潜入する。その頃、日本が脅迫無視したため東京に向けてミサイルが発射されようとしていたが、今井とチビはAZ団の男たちに銃をつきつけた。
 ヨッチンとペコの救出に成功した今井たちは、助けに現れたマイティ号へ乗り込み、ミニミニ島を攻撃する。その島はAZ団の作った人工の島であり、やがて空中を浮遊し始めるが、マイティ号の攻撃によってミサイル基地もろとも撃破されるのだった。
 島だと思っていたところが敵の要塞だったというわかりやすいアイディアを、三人の少年たちを中心に描いた一編。一番背が低くチビと呼ばれる少年が、今井に説得されて勇気を振り絞り、友達を助けるため今井と共に銃を手にして敵の基地へとびこんでいく。まさに子供向けスパイアクションの見本といったところでラストにはマイティ号と敵要塞との一騎打ちという見せ場も用意されている。金城哲夫氏&満田監督のコンビが手がけた
こともあり、当時の円谷プロらしい作品だ。少年たちのリーダー格であるヨッチンを演じたのは『ウルトラマン』第15話「恐怖の宇宙線」でムシバを演じた川田勝明氏、そしてチビを演じたのは後に『ゴジラ・ミニラ・ガバラ オール怪獣大進撃』で主演する矢崎知紀氏であり、子役の演技も安定していた。


第3話 悪魔の島にとんで行け!!

 遭難した貨物船・東海丸の調査に乗り出したマイティジャックは東海丸からただ一人、ゴムボートで脱出していた船員・三上を救出した。彼の話によれば、霧の中に現れた島から歌声が聞こえ、それを聴いた船員たちは全員気が狂ってしまったという。船は島に呑み込まれたが、三上だけは耳を強く打ったため一時的に聞こえなくなり、狂うことなく脱出することができたのだ。
 やがて海上に浮かぶマイティ号の眼前に霧が立ち込め、完全防音のはずの船内に歌声が聞こえ始めた。マイティ号はなぜか潜水することも空を飛ぶこともできない。そこで天田は隊員たちに耳栓で耳をふさぐよう指示。だが、自分だけは耳栓をせず、敵の正体をさぐるべくそのまま歌声に導かれていった。
 霧の中から現れる巨大な円盤型海底要塞。そこからのびる巨大なアームがマイティ号の自由を奪い、マイティ号は要塞の中へ収容されてしまう。歌声の正体は要塞の発する音楽催眠であり、要塞を有する謎の組織の目的は船員たちを操って海底基地を建設することにあった。耳栓をしていたため催眠にかからなかった小川と奈美は音楽催眠装置を破壊。たちまち正気に戻った東海丸の乗組員たちはマイティ号に脱出。要塞はマイティ号によって破壊されるのだった。
 ローレライ伝説をベースにしたミステリアスな雰囲気が魅力の作品。船舶の乗員たちを操る謎の歌声の正体は機械仕掛けの音楽催眠だったことが判明するが、それを仕掛けていた組織については謎のままで終わっており、ミステリアスな雰囲気は最後まで保たれている。ただ、船舶を巨大円盤に誘い込んでいた目的が船そのものではなく、海底基地建設のための労働力として人材が欲しかったという展開には驚かされた。組織の人間は下っ端と思われる人物が二人ほど登場しているだけで、確かに人手不足のようだが、円盤はどうやって作ったのだろうか。その円盤の唯一の武器と言えるのが、触手のように伸びる数本のアームで、付着させてマイティ号の自由を奪うほど強力。防音のはずのマイティ号内部に音楽を流すことにも一役買っていた。

第4話 とられたものはとりかえせ!!

 源田と今井の二人は、世界的な海底地質学の権威・西村博士の護衛を命ぜられた。国際地質会議に出席するため来日した博士はセルジア国付近の海底に有望な地下資源が埋蔵されていることを探知しており、それを人類すべてに平等に役立てようとしている。だが、セルジア国は自国が資源を独占するべく秘密諜報員を日本に送りこみ、博士が持っているはずの資源の位置を示す地図を手に入れようと画策していた。
 源田たちの懸命な護衛にもかかわらず諜報員たちに連れ去られる博士とその助手。脅された助手は地図の在処に案内すると言い、ある倉庫へ案内するが、そこに待ち受けていたのは秘密組織Qのメンバーたちだった。たちまち彼らに皆殺しにされるセルジアの諜報員たち。助手はQの一員だったのだ。地図が博士の頭の中にあることを知った彼はQのために博士をセルジアに連れていこうとするが、駆けつけた源田たちに撃たれ、海中に没した。
 作戦失敗の連絡を受けたQの基地は巨大ミサイルを発射。このままでは京浜工業地域が爆破されてしまう。コンクルーダーでその後を追った源田はミサイルの軌道を修正することに成功。向きを変えたミサイルはQの基地を破壊するのだった。
 前作でマイティジャックの宿敵だった組織「Q」が初登場。本シリーズにおいては毎回ではないものの、やはり宿敵として存在している。第4話での初登場は少し遅いような感があるが、撮影順も1本目だった第1話と並行して撮影が行われており、撮影の順番としては2本目だという。内容的には第1話同様ストレートなスパイアクションドラマとなっており、Qだけでなくセルジアという架空の国の秘密情報員たちも登場している。西
村博士の発見した地下資源の所在をめぐっての争奪戦だが、前半で博士を襲っていたのはセルジアであり、博士の助手が自らQの一員であることを告げた時点で一転して敵がQに変わってしまう。意外な展開が面白い。ただ、助手が死んだ後でQの基地が突然巨大ミサイルを発射するというのはあまりにも強引過ぎる。

第5話 マリヤの像を追いかけろ!!

 その目にエジプトの星と呼ばれる680キャラットものブルーダイヤが埋め込まれているマリヤ像。価値の計り知れないその像が国際親善のためフランスから特別に日本に貸し出され、東京中央美術館で公開されることになった。美術展の最終日、源田と今井が美術館のガードマンと共にその警備にあたったが、謎の怪盗団が美術館に潜入。厳重な警戒網をくぐり抜けてまんまとマリヤ像を盗み出してしまう。
 ヘリコプターでマリヤ像を基地へ運ぶ怪盗団。だが、像には発信機が仕掛けられており、すぐに気づかれないよう台座を離れてから80分後に動き出すようになっていた。マイティジャックは発信機が発する電波をマイティ号で追跡。さらにバンカーHを使って怪盗団の基地をさぐりだし、激しい銃撃戦の末にマリヤ像を奪い返すことに成功。奈美の作った強力な爆弾によって基地は爆発する。
 翌朝、フランス大使が東京中央美術館にマリヤ像を引き取りに訪れた時、像は何事もなかったかのように、もとの場所に置かれていた。怪盗団によって眠らされていたガードマンはそれが盗まれたことすら気づいていない。実はマイティジャックが夜のうちに美術館に忍び込み、こっそりとマリヤ像を戻していたのだった。
 今回の敵は美術館に忍び込んでマリヤ像を盗み出す怪盗団である。怪盗団とは言っても組織は大きいようで、本編に登場した山奥の基地の他に本部があるらしい。名前もわからない謎の組織だが、世界制覇を企むQのような組織とは違って団員たちのやりとりはどこか間が抜けている。今回のマイティジャックの任務はマリヤ像を守ることにあるのだが、まんまと敵に裏をかかれ、盗まれてしまう。しかし、その事はマイティジャックしか知らず、美術館のガードマンは誰も気づいていない。そしてマイティジャックは奪還後、誰にも気づかれないように像をもとに戻しておく。冒頭には彼らがセキュリティ装置のテストのために美術館に忍び込んでマリヤ像を奪おうとするシーンがあるが、対照的で面白いラストだ。

第6話 マイティー号でぶちかませ

 今週に入ってすでに3隻もの漁船が遭難し、沈没している。デリンジャー現象により交信が不可能となるためその原因は不明であった。沈没した付近の海域を調査するマイティ号。その近くにはQの海底基地があり、漁船の遭難は基地の発見を恐れたQの仕業だった。
 海底基地に新たに着任したQ1号と呼ばれる男は、潜水艦によってマイティ号を誘導し基地から遠ざけた。そして東京原子力発電所に時限爆弾を仕掛けると、新聞社を通じてマイティジャックにそのことを知らせる。発電所へ駆けつけ、爆破を食い止める天田と小川。遠くからその様子を見つめるQ1号。彼の目的は発電所の爆破ではなくマイティジャックの姿を確認すること、そして彼らの基地の所在をさぐることにあった。
 自動車を追跡したQ1号は天田に気づかれて失敗するが、源田の乗るシプリーの後を海中から追うことによって、ついにマイティジャックの基地を発見。マイティ号に潜入して源田に銃をつきつけ、Qの基地へ持ち帰るべくマイティ号を出航させる。しかし、源田は隙を見て反撃し形成逆転に。追い詰められたQ1号は自爆するが、Qの基地から大型ミサイルが発射され、マイティ号に迫った。アンチミサイルでこれを防いだマイティ号はQの海底基地を破壊するのだった。
「マイティ号……いい船だ。なんとかあのまま手に入れたい。まずくても撃沈。もっとも、その時は俺が死ぬ時だがな」
中井啓輔氏演ずるQ1号がQのボスに言う台詞だが、彼の自信と覚悟が伺える。ちなみにボスを演じたのはまだ髭を生やしていない頃の大月ウルフ氏。潜水艦も登場するが、ストーリーの中心はQ1号とマイティジャックとの知恵比べだ。シプリーの後を追ったQ1号はマイティジャックの基地を発見し一人でマイティ号をのっとってしまう。この時、銃をつきつけられてマイティ号を操縦させられていたのは源田隊員で、彼は後にも同じミスを犯すことになる。ラストではマイティ号がQの海底基地に体当たり。豪快な特撮シーンも見どころだ。ところで、サブタイトルの「マイティー号」という表記は誰も気づかなかったのだろうか。


第7話 来るなら来てみろ!!

 これまで数世紀に渡って地殻の変動が認められなかったカラコルム山脈地帯に突如として大地震が発生した。APPLEの緊急指令を受けたマイティジャックはその原因を調査するべく行動を開始。山脈からは放射能が検出され、大地震は水爆による人工地震の実験であると思われた。
 それはまさしくQの仕業であり、実験を終えた彼らは東京を壊滅させる計画を実行に移そうとしていた。Qの交信を傍受しそのことを知ったマイティジャックは計画を阻止するべく地下の坑道をさぐる。人工地震を起こすためには、地下から水爆を爆発させる必要があるからだ。東京の地下で坑道を掘っているなら反応があるはず。だが、バンカーHで海底をさぐってみても何の手がかりも得られない。実は、すでにQの坑道の工事は完了していたのだ。
 調査するうちに勝鬨橋がQの基地の出入りとなっていることに気づく今井と源田だったが、基地の中に仕掛けられた罠にかかりQに捕われてしまう。しかし、警備の隙を見て脱出した二人は、水爆を乗せたQの輸送機が東京に近づいていることを本部へ知らせる。作戦実行にあたっていたQのボスは源田たちの放った銃弾に倒れ、Qの輸送機はマイティ号に撃ち落とされるのだった。
「マイティ号……いい船だ。なんとかあのまま手に入れたい。まずくても撃沈。もっとも、その時は俺が死ぬ時だがな」
 中井啓輔氏演ずるQ1号がQのボスに言う台詞だが、彼の自信と覚悟が伺える。ちなみにボスを演じたのはまだ髭を生やしていない頃の大月ウルフ氏。潜水艦も登場するが、ストーリーの中心はQ1号とマイティジャックとの知恵比べだ。シプリーの後を追ったQ1号はマイティジャックの基地を発見し一人でマイティ号をのっとってしまう。この時、銃をつきつけられてマイティ号を操縦させられていたのは源田隊員で、彼は後にも同じミスを犯すことになる。ラストではマイティ号がQの海底基地に体当たり。豪快な特撮シーンも見どころだ。ところで、サブタイトルの「マイティー号」という表記は誰も気づかなかったのだろうか。


第8話 地獄へ行って笑え

 仲間が次々と殺され次は自分の番だと言って警察に駆け込んだ若い男がいた。殺されたのは彼のキャンプ仲間であり、男はキャンプ先の剣ヶ峰高原で撮影した謎の飛行物体の写真を持っていたが、警察には信用されず放り出される。警察から事情を聞き、男のことが気になった源田、今井、奈美の三人は彼の後を追ったが、そこへ彼の命を狙う者たちが出現。追い詰められた男はビルの屋上から足を滑らせて落下し死んでしまった。
 その頃、天田と小川は剣ヶ峰高原に出かけ、写真に写っていた飛行物体を目撃する。突如として二人に襲いかかるオートバイの男たち。天田が彼らをひきつけている間に小川は飛行物体を追跡し、それが紅葉湖の中から出入りしていることを知る。
 一方、天田はオートバイの襲撃をかわして敵の組織に単身潜入していた。キルという名のその組織は、集まった客たちに金塊を売り、世界制覇のための活動資金にしていたのだ。客の一人になりすました天田はその取引を阻止しようとするが、彼らに捕われてしまう。ただちに基地から脱出するキルのボス。小川は天田を救いだし、駆けつけたマイティ号が爆雷でその基地を爆破する。そしてキルのボスを乗せた飛行物体はピブリダーに撃破されるのだった。
 剣ヶ峰高原で目撃された謎の飛行物体をめぐるストーリー展開。目撃者は殺され、その謎を追う天田と小川の前にオートバイ部隊が襲いかかる。都会を舞台にしたサスペンス調の前半部分とは対照的に、後半は高原を舞台にした無国籍アクションの様相を呈しており、天田キャプテンを演ずる南廣氏のアクションが存分に楽しめる。ところで話の中心となる謎の飛行物体だが、これはどう見ても「翼のある自動車」にしか見えない。それにもかかわらず、本編中では「見慣れない飛行機」などと呼ばれ、自動車ということばが一切出てこない。ビジュアルとの違和感を感じざるを得ないのだが、おそらく脚本の段階では自動車ではなく、もっと大きな飛行メカをイメージしていたのではないだろうか。

第9話 地底の悪魔をたたき出せ

 熊野灘沖合いで四日市に入港するタンカーが何者かに攻撃され、沈没した。調査に乗り出したマイティジャックは二手に別れ、マイティ号が海洋の警戒にあたる一方、天田と源田は上陸して敵の手がかりをつかもうとする。やがて二人は谷川で倒れていた少年・和男を助けた。彼は光る物体が海の方へ物凄いスピードで飛んでいくのを目撃し、それを確認するために山を登ったところ、山奥でミサイルらしきものを発見したのだという。天田たちは和男の案内でその場所を捜索するが、ミサイルは見つからなかった。
 一方、伊勢湾に一隻のタンカーが入ってきたが、マイティ号の警戒の中、何事もなく入港した。タンカーを攻撃していたのはQの攻撃用衛星であり、Qのボスはマイティ号に自分たちの基地の所在を知られるのを恐れて見逃したのだ。そんな彼らに総督から新たな指令が入った。
 和男少年の父親で薬学博士として有名な菊池博士を拉致するQの一味。博士は強力な毒ガスを合成したことがあり、彼らはその毒ガスの成分を聞き出そうとする。どんなことでも喋ってしまうという注射を打たれ、毒ガスの成分を喋らされそうになる菊池博士。天田と源田はQの基地をさぐり出し、彼を救出。激しい戦いの末にQのボスを倒し、彼らの基地を木っ端微塵に爆破するのだった。
 敵側のボスとサブリーダー、二人のやりとりが中心になって話が進む形式は7話にも見られたが、悪役がとても魅力的に感じられる。今回のボスを演じたのは後に『仮面ライダースーパー1』でジンドグマ首領・悪魔元帥を演じる加地健太郎氏。クライマックスには動いているロープウェイの中で天田と格闘するという見せ場もあった。ただ、冒頭のタンカー沈没事件、少年が目撃したミサイル、Qが狙う菊池博士の毒ガスの製造法といったものが上手く結びついておらず、全体のストーリー展開に一貫性がないのが残念である。ところで、今回は長島スパーランドとのタイアップになっているが、看板などに当時のアニメのキャラクターが見受けられ、よく見ると『マイティジャック』も看板や遊具のコーヒーカップに描かれている。

第10話 消えた王女の謎を解け!!

 シャンデリア国のユカリーナ王女が来日した。だが、王室の反対派が執拗に彼女の命を狙っており、突如として暗殺団に襲撃される。連絡を受けたマイティジャックはただちに源田を派遣。コンクルーダーで暗殺団の自動車を撃破した源田は王女が日本に滞在している間、彼女のボディガードを担当することになった。
 名古屋に来ていた王女は監視つきの外出にうんざりし、一人になりたいと源田に懇願した。源田はしぶしぶ彼女を自由にさせるが、居場所がわかるよう彼女の服に発信機をつける。時間がたつにつれ次第に遠ざかる王女。心配した源田が発信機を頼りに彼女を迎えにいくと、そこにいたのは王女ではなく、王女の服を着た地元の女性だった。王女は彼女と服をとりかえ、ヒッチハイクをして遠くへ行ってしまったのだ。
 その頃、ユカリーナ王女は海辺で釣りをしていた少年・ケンイチと出会い、彼と一緒に長島温泉の遊園地に出かけていた。ケンイチは遊園地で働くピエロと仲良しだったが、実はそのピエロは王女の命を狙う暗殺団の仲間だった。彼は王女を監禁し暗殺団のボスに引き渡そうとするが、ケンイチを前にしてそれをためらったため殺されてしまう。そして駆けつけたマイティジャックによって王女は無事救出されるのだった。
 土屋啓之助監督は『怪獣王子』全二六話を一人で手がけていたが、本作の中心人物であるユカリーナ王女を演じたのはその『怪獣王子』の後期レギュラー(グレース役)だったシリア・ポール氏である。インド国籍のポール氏は女優だけでなく歌手としても活躍しラジオのDJも勤めていた。そして王女の執事役は『ウルトラセブン』のロボット長官の成瀬昌彦氏、王女と友だちになる少年・ケンイチ役はやはり『ウルトラセブン』でペロリンガ星人(の変身した少年)を演じた高野浩幸氏、王女を狙う反対派のボスは『宇宙猿人ゴリ』の加賀役の渡辺高光氏と、特撮ファンにはおなじみの出演者が多い。また、反対派のスパイだったピエロを演じたのは「おヒョイさん」の愛称で知られる藤村俊二氏で、少年との友情に揺れ動くピエロを好演した。

第11話 甘い爆弾にくらいつけ

 ぶどう酒を作っている若林ブドー園のトラックが崖下に落下して爆発した。その頃、若林ブドー園のぶどう酒を運んでいた船ばかりが海賊に襲われ、ぶどう酒が奪われるという事件が相次いでおり、不審に思ったマイティジャックは調査を開始。トラックに乗っていた男は病院に運ばれて重態だったが、今井は顔中に包帯を巻いてその男にまりすまし、若林ブドー園に単身潜り込んだ。
 ブドー園の地下には秘密の工場がありそこで作られていたのはぶどう酒ではなく、大量の爆弾であった。彼らは犯罪組織ブラッドの命令により爆弾を作り、ぶどう酒を装ってそれを組織に渡していたのだ。爆弾を手に入れたブラッドは、極東の重要なポイントとなる日の出島を基地にするべく画策していた。日の出島付近に巨大な潜水艦が現れたことを知ったマイティジャックはその潜水艦こそが海賊の正体と気づき、マイティ号を出動させる。
 一方、今井もまたブラッドの男たちと共に船で日の出島へ向かっていた。その正体は男たちに見破られていたが、今井は彼らを相手に船上で大暴れ。船を爆破し駆けつけたバンカーHに救出される。そこに出現するブラッドの巨大潜水艦。マイティ号は果敢に戦いを挑み、これを撃破するのだった。
 様々な敵が登場する本シリーズでは脚本家によるこだわりも随所に見受けられる。前作同様Qを敵に設定することの多い小滝光郎氏に対し、Qを敵にしたことは一度もない藤川桂介氏は、Qに匹敵する秘密組織を毎回考え出している。組織の名称も「パック」「キル」といった秘密組織に相応しいもので、今回の組織は血を意味する「ブラッド」である。爆弾をぶどう酒(ワインとは言わない)の樽に隠して運搬するというストーリーであり、ぶどう酒の赤にひっかけた名称と思われる。また、今回は今井隊員の主役回でもあり、演ずる山口暁氏はスタントマンなしで船上を舞台にした危険なアクションシーンに挑んだ。それまでレギュラー出演した『忍者部隊月光』や『怪獣王子』での経験が存分に活かされている。

第12話 マイティ号を取り返せ!! (前編)

 SOSをキャッチしたマイティジャックはマイティ号で目標地点に到着。コンクルーダーやエキゾスカウトでレーダーに映った物体を追跡した。艦内では源田が一人でしぶしぶ留守番をしていたが、海上に何か光るものを目撃すると、いても立ってもいられずにシプリーで外へ出てしまう。だが、それこそが組織Qの罠であった。その隙を狙ってQはマイティ号を強奪。源田の眼前でマイティ号は空の彼方へ飛んでいった。
 隊員たちに責められた源田は、マイティ号を奪い返すべく単独行動をとる。ヨットに乗っていた不思議な青年を怪しいとにらみ、彼に突っかかるが、彼はQの一味ではなかった。しかし、突如としてQに襲われた源田は不覚にも彼らに捕われ、牢の中に閉じ込められてしまう。
 マイティ号はマイティジャックしか動かすことができないはずだったが、一週間前に設計資料を収めたマイクロフィルムが盗まれていたという。マイクロフィルムを盗んだのはQであり、Qの女幹部はそれをもとにマイティ号の機能と操縦方法を解明していた。東京に向けて発進したマイティ号は破壊の限りを尽くす。航空自衛隊の攻撃を受けても頑強なマイティ号はびくともしない。燃え上がる東京を前に、マイティジャックはどうすることもできなかった。
 Qは第6話でマイティ号をジャックしながらも奪い損なっていたが、本作ではついにマイティ号を奪い、しかもそのマイティ号を使って東京を火の海にしている。同じQでも今回のグループは、なぜか常にトランプカードを手に持って動かしているボス(前作第1話でもQの指揮官役だった吉原正皓氏が演じているが、カードをうまく動かすことができず手品用のトランプを使用しているらしい)、そして全身真っ赤な服に身を包んだ女幹部のキャラクターが印象的。女幹部はすでに奪っていた設計資料をもとにマイティ号の操縦方法を分析するが、エンジニアの立場から何かと的確な指示を出し、実質的にはボス以上に指揮権を持っているあたりが面白い。演じているのは新東宝出身の万里昌代氏で、大映に移ってからも時代劇等に多数出演していた。

第13話 マイティ号を取り返せ!! (後編)

 Qの操縦するマイティ号は世界の脅威になりつつあった。だが、艦内のメカニズムを調べていた女幹部はマイティ号を基地へ一旦戻らせた。原子力プラズマの爆発を抑える制動が働いておらず、このままだとエンジンが爆発する恐れがあるからだ。
 一方、源田が捕われていた牢の床からヨットの青年が現れ、彼をそこから救い出した。森の中を歩きまわった後、テントやパン、ぶどう酒までもどこからか取り出す不思議なその青年。弾超七と名乗る彼のことを源田はすっかり信用していた。しかし、Qに襲撃された時、超七は行方不明になり、源田は一人で敵の基地を捜索。そしてついにマイティ号を発見した彼は艦内に忍び込み、やはりそこに忍び込んでいた超七と再会する。
 その頃、APPLEではマイティ号の特殊合金を突き破ることのできる新型ミサイルを完成させていた。始動装置の操作法に気づいたQはマイティ号を再び発進させるが、源田と超七によって艦内のQは全員倒される。マイティ号を取り返すことに成功した二人だったが、すでに新型ミサイルが近づきつつあった。マイティ号のアンチミサイル装置は壊されており、万事休すと思われたその時、超七が装置を修復。新型ミサイルは撃破されマイティ号は救われるのだった。
『ウルトラセブン』の撮影を終えたばか りの森次浩司氏が謎の青年を好演。前編では名前すらわからなかったのだが、この後編にてようやく「弾超七」だと判明 している。だが、彼の素性やその行動の理由は不明で、ますます謎は深まるばかり。モロボシ・ダン役ではあまり見られなかった笑顔が実に爽やかで、源田との息のあったコンビネーションが痛快だ。 『ウルトラセブン』を意識したお遊び的な台詞やシーンが多く、かえって鼻につ くという向きもあるだろうが、ここは素直に楽しみたい。森次氏だけでなく、セブンのスーツアクター・上西弘次氏もゲ スト出演。しかもナレーター(前編にしかナレーションはないが)はソガ隊員こと阿知波信介氏が担当しており、前後編通してウルトラセブンテイストの作品と なっていた。

第14話 炎の海を乗り越えろ

 弟からの手紙で父親が病気だと知った小川は、休暇をとって故郷の漁村へ帰った。だが、海の男である父は、彼の身体を心配する小川のことばに耳をかさず、仲間と共に漁に出てしまう。その日は彼がかつて艦長を務めていた巡洋艦の命日であり、漁船は巡洋艦が沈んだ場所へと向かっていた。しかし、彼らの向かう東シナ海はその時、膨大な量の原油で覆われていた。マンモスタンカーが沈没し、積んであった原油が流れ出たのだ。
 マイティ号は原油を消滅させるべく東シナ海に出動するが、海上に突如として奇怪な大ダコが出現する。タンカーを沈没させたのもその怪物の仕業だった。源田はコンクルーダーで攻撃するが、原油に火がつき、海上はたちまち炎に包まれてしまう。休暇をとりやめた小川はバンカーHで父親の漁船の救出に向かうが、父は大ダコにもひるむことなく果敢に立ち向かっていた。船長として船と命を共にしようというのだ。小川は決して逃げようとしない父の腹を殴りつけ、気絶させて彼を救い出した。
 大ダコはマイティ号の船体にからみつき、3万ボルトの電流にもびくともしない。大ダコにからみつかれたまま空中へ飛び上がるマイティ号。源田はコンクルーダーのミサイルで空中の大ダコを狙い見事に撃ち落すのだった。
 番宣ハガキ等に「なんでもぞくぞくシ リーズ」と銘打たれていた(番組タイトルに表記されているわけではない)のは この回から。この場合の「なんでも」は 怪獣や宇宙人、ロボットなどを示し、その第一弾が今回登場の大ダコである。怪獣としては若干地味ではあるが、マイテ ィ号のようなスーパー戦艦には、このようなからみつくタイプの怪物がよく似合 う。脚本を担当したのは『ウルトラセブ ン』でフルハシ隊員の母を登場させた市川森一氏で、本作では小川隊員の父親が 登場。父と息子の交流を描いている。Q のような敵集団も登場せず、スパイアク ションからは完全に離れてウルトラシリーズ的な怪獣モノになったが、巨大な怪 獣を相手にすることでマイティ号が主役 に返り咲いた感がある。もっとも、大ダコを倒したのはコンクルーダーだが。

第15話 死人の館に突進せよ

 無人の洋館の中を探検する三人の子供たち。幽霊が出るという噂のあるその館の地下室で彼らが見たものは、棺の中に収められた不気味なミイラであった。館の持ち主だった志田博士はエジプト旅行の後で謎の死を遂げ、彼の家族もまた謎の死を遂げていた。
 その頃、身につけていた宝石だけが盗まれて殺されるという強盗殺人事件が相次いで起こった。被害者の体内からは志田博士の死亡原因と思われるビールスとが発見され、不審を抱いたマイティジャックは博士の館を調査。館からは志田博士が記した文書が発見され、そこには、「エジプトの輝ける星を山本、篠原、都筑、金子の諸氏に贈り、諸氏の友情に栄光あらんことを祈る」と記されていた。山本、篠原、都筑は殺人事件の被害者となった三人であり、残りの一人・金子から宝石を譲られた娘はそれを身につけて箱根の別荘にいるという。
 ただちに箱根に向かうマイティジャック。宝石を狙って殺人を犯していたのは棺の中から復活したミイラであり、娘から宝石を奪うとたちまち巨大化して暴れ始めた。迫りくるマイティ号をその腕でつかむミイラ。だが、爆弾によって両腕を落とされた上、マイティ号の噴射熱で身体を焼かれると、敢えなく海の中へ身を投じるのだった。
『ウルトラマン』第一二話「ミイラの叫び」の脚本を担当した藤川桂介氏が再び挑んだミイラもの。現代に蘇ったミイラ が殺人を繰り返すという怪奇色の強いエピソードだ。今回も巨大な怪獣が登場するが、怪獣はミイラそのものが巨大化した姿である。巨大化の理由は明らかではないが、物語の最初から亡くなっている 志田博士と金子たちの関係、ミイラと宝石との関係など、他の部分もあまり詳細には書き込まれておらず、わからないことだらけで終わっている。また、ミイラの巨大化時の着ぐるみはケロニアの改造と言われているが、改造というほどの改造は行われておらず、少し色の違うケロニアにしか見えない。包帯らしきものをつけただけでミイラだというのは少々強引な気がする。

第16話 来訪者を守りぬけ

 未確認飛行物体が奥多摩山中に着陸した。それを追跡した今井はけがをして気を失い、気づいた時には宇宙船の中でモノロン星人に手当てを受けていた。一人で宇宙を旅していたその宇宙人は宇宙船の故障によりやむなく不時着したのだ。ことばは通じなかったが、宇宙船の状況や宇宙人の行動からそのことを悟った今井は彼を信用し、本部には嘘の報告をして宇宙人の存在を隠そうとした。
 数日後、電波監視所が宇宙と交信する謎の電波をキャッチした。モノロン星人が故障した部品を本国から持ってこさせるために連絡していたことを知った今井はその部品を調達し宇宙船にそれを届けに行く。だが、彼の後をこっそりつけていた奈美の報告により宇宙人の存在は他の隊員たちにも知られることとなった。今井が嘘をついていたことに激怒した源田は、宇宙人を侵略者だと決めつける。
 そんな時、モノロン星人の飼っていたペットのパッキーが環境の違いによって巨大化し暴れ始めた。エキゾスカウトの攻撃によってパッキーは倒されたが、宇宙から新たな宇宙船が飛来。それはモノロン星人の救助隊であり、今井は彼らを攻撃しようとする兵士たちの前に単身立ちふさがる。宇宙船は仲間を乗せると宇宙へ飛び去っていくが、兵士たちは決して彼らを信用しようとはしなかった。
 金城哲夫氏の脚本と東條昭平監督の演出による、信頼をテーマを掲げた作品。 宇宙船が故障して不時着したモノロン星人を、今井は唯一人信用し、モノロン星からの救助が来るまで彼をなんとか守り ぬく。最後にモノロン星人が地球に贈り物を残していくのだが、地球のものとし か見えない鳥篭に入った白い鳩というのが、かえって奇妙。その鳩を軍隊に射殺され、「平和を返せー!」と叫んで倒れこむ今井。彼を尻目に列をなして歩いていく軍隊の姿が上からのロングで写し出されて終わるという衝撃的なラスト。ただ、象徴的すぎて、言わんとしているこ とは伝わりにくい。モノロン星人が『ウルトラセブン』最終回のゴース星人にしか見えず、視聴者を「お前ら本当は侵略者だろ」という気持ちにさせるのもマイナス要因かもしれない。

第17話 逃げたぞそれ行けつかまえろ!!

 奈美の従兄弟でもある発明家の藤は、今、非常に困っていた。自分が作りあげ愛情さえ感じているロボットのナナちゃんが家出してしまったのだ。相談を受けた奈美はマイティジャックの仲間にロボットの捕獲を頼むが、人工頭脳と怪力を持つナナちゃんに翻弄されて小川は戦意喪失。キックボクシングの試合で挑んだ今井も敢え無くノックアウトされてしまう。
 源田はナナちゃんを自転車で追いかけまわすが、ちょっと間の抜けたQの三人組がその様子を見ていた。ロボットを自分たちのものにしようと企んだ彼らはナナちゃんを捕獲し催眠術にかける。ナナちゃんは操られるまま、銀座のクラブにいた天田を暗殺。本部で悲しみにくれる隊員たち。だが、殺されたと思われたのは天田にそっくりな別人であり、彼もまた命はとりとめていた。
 そうとは知らない源田は天田の仇を討とうと執拗にナナちゃんを追跡。Qのアジトをさぐり出し、ナナちゃんの身体にヒューズをとりつけることに成功する。ヒューズをつければおとなしくなると、藤に聞かされていたのだ。催眠が解け、正気に戻ったナナちゃんは自分を分解して欲しいと源田に告げる。源田はその願いを聞き入れ、ナナちゃんの身体をバラバラにするのだった。
 ハードな展開だった前回とは打って変わって今回はとても同じ番組とは思えないほど軽妙なギャグストーリー。前作よりもかなりイデ隊員の雰囲気に近づきつつあった源田はまだしも、普段はあまり滑稽な言動をしない奈美、小川、今井、そして天田キャプテンまでもが終始トボケ倒している。冷酷なはずの敵組織Qの三人組も本当にQのメンバーなのか疑いたくなるほど間が抜けており、大村千吉氏がその一人を演じているというだけで可笑しい。もし本シリーズを今回しか見ていない人がいたとしたら番組のイメージを完全に勘違いするものと思われる。とはいえ、これも『戦え!マイティジャ ック』の一本であることに間違いなく、 スタッフが作りたいように作った結果の一つだろう。

第18話 水爆恐竜をやっつけろ!!

 スコットランドの上空で落雷が発生し水爆3個を積んだ爆撃機がネス湖に墜落した。水爆を探せとの指令を受けたマイティジャックはただちにネス湖へ出動。湖底で爆撃機はすぐに見つかったものの機内に水爆は一つもなかった。やがて湖の近くのジャングルに巨大な恐竜が出現するが、攻撃しようとする天田たちの前に一人の少女が立ちふさがり、恐竜を守ろうとする。
 少女の名はアリサ。彼女がザウルスという名をつけたその恐竜は村人にいじめられていた彼女にとって唯一の友だちだった。ザウルスの体内に水爆が呑み込まれていることが判明し、それを取り出すには恐竜を殺すしかなかったが、ザウルスを殺せば私も死ぬとアリサは言う。小川はザウルスを殺さずに水爆を取り出すことを約束。命がけで作戦を実行しようとするが、成功させるのは困難だった。
 その様子を見ていたアリサはわがままなことを言った自分を恥じ、人々のためにザウルスを自ら殺すことを決意した。だが、ザウルスはそんなアリサを誰も知らない楽園のような世界へ連れていく。湖底のトンネルを抜けたところに恐竜の住む世界があったのだ。解毒剤となる草を食べて自ら水爆を吐き出したザウルスと共に、アリサはその世界で暮らすことを選ぶのだった。
 スコットランドのネス湖を舞台にした一編。ネス湖といえば恐竜だが、有名なネッシーではなく、ザウルスという名である。『怪獣王子』ではネス湖に住んでいるわけでもないのにネッシーという恐竜が登場していたが、こちらはその逆。 少女・アリサが名づけたことになっているので、ネッシーという名では不都合だ ったのだろう。アリサを演じたのは、この後『怪奇大作戦』にもゲスト出演する久万里由香氏。インド系の血をひいた顔立ちでスコットランド人の父を持つ設定のアリサ役は少し無理があるが、恐竜だけにしか心を通わせることができない、 この少女役を好演している。終盤、ザウルスがアリサを呑み込むシーンがあり、 驚かされるが、彼女を食べたのではなく口の中に入れて運ぶという描写だった。 そのまま食べてしまったという展開だったら、後味が悪いことこの上ない。

第19話 くいとめろ人間植物園

 東京の街中で突如として人間が植物に変わるという奇怪な事件が相次いで起こった。そんな時、天田は旧知の杉山博士に自宅へ招かれ、一連の事件が東京征服を狙ったものであり、花島にその侵略基地があることを知らされる。だが、博士は何者かに特殊な液体を浴びせられるとその身体が植物と化して天田を襲った。駆けつけた小川が銃弾を発射すると、植物は博士の姿に戻り、博士はそのまま死んでしまう。
 天田の命令を受けた源田、今井、奈美の三人は、マイティ号で花島へ急行。そこには何人もの植物人間プラントが待ち構えていた。源田と奈美は彼らを指揮する女・グレースを追いつめるが、巨大な植物と化した彼女は花粉を巻きちらして暴れるも攻撃を受けて枯れ果てていく。やがて彼女の意思を継いだプラントたちが東京を人間植物園にするべく行動を起こすが、駆けつけたマイティジャックによって次々に倒されていった。
 一方、今井はグレースの忠実な部下であるプラント3号を捕らえ、バンカーHで本部へ運ぼうとしていた。しかし、プラント3号が暴れたためにバンカーHが故障を起こし、洋上で身動きできなくなってしまう。使命を果たせなかったプラント3号は死を選び、今井は救援に来たマイティ号に救われるのだった。
 人間を植物化しようと企む組織が登場するが、組織のメンバーは普通の人間ではなくプラントと呼ばれる植物人間である。天田とは旧知の杉山博士がこれに関与しているのは間違いないのだが、博士が何の研究をしていて、どのようにしてプラントが生まれたのかなど、根本的なことがすべて謎のままになっている。プラントたちは全身緑色のタイツに身を包んでおり、いかにも子供番組の下っ端スタイル。演じているのはアクションチームJFAのメンバーで、これまでも敵組織の下っ端などで出演はしていたのだが今回初めてタイトルに「JFA」の文字が載った。東京で暴れまわるプラントたちをマイティジャックが格闘で倒して全滅させたようだが、すでに植物化した人間はそのまま。なんともすっきりしない終り方だ。

第20話 宇宙忍者をあばき出せ

 石油コンビナートが一夜にして炎に包まれた。警備員の話では不思議な能力を使う怪しい男が侵入したという。マイティジャックはただちに調査に乗り出し、強力な磁力線が照射されたためにコンピュータの集積回路が狂ったことが判明。もしこの磁力線が大量に地球に投下されたら、世界中のコンピュータが破壊されてしまう。小川が危惧した通り、男はあらゆる場所に忍びこんでコンピュータを破壊し、医療機器や信号機、新幹線などが混乱を来たした。
 不審な電波をキャッチしたことからマイティジャックは男の居場所をつきとめるが、男の正体は磁力線を体内に有するマグネチック宇宙人であった。磁力を使って分身し銃弾もよせつけない宇宙人を前に、まんまと逃げられてしまう源田と小川。だが、宇宙人は磁力線を体内に持っているため、人工衛星による磁力探知を使ってその行動をつかむことが可能だった。
 やがて宇宙人は川崎方面に向かい、奥多摩に完成したばかりの原子力発電所を襲撃。原子炉を破壊するべく磁力線でコンピュータを狂わせるが、その行動を察知したマイティジャックに阻止される。天田はアンチマグネット銃を手にとり、その一条の光線によって宇宙人は倒されるのだった。
 脚本の小滝光郎氏は大映のサスペンス映画などを多く手がけており、子供向けテレビ番組は本シリーズしか関与していない。シリーズ前半では得意のサスペンス調の作品が多かったが、後半の「なんでもぞくぞくシリーズ」はこの回のみ。しかし、荒唐無稽な宇宙人が登場してもテーマはコンピュータ社会の脆さを描くという実に現実的なもので、60年代にすでにこのような作品が作られていたことに驚かされる。ただ、ラストの宇宙人との戦いでは、天田がアンチマグネチック銃の一撃で倒しており、あっけない印象は否めない。また、コンピュータをテーマにしながらも、マイティ号を含むメカニックが一切登場しておらず、子供の視聴者にしてみれば物足りなかったかもしれない。

第21話 亡霊の仮面をはぎ取れ

 天田が突然一ヶ月の休養をとることになり、源田の同期だった須山がキャプテン代行として赴任した。須山の傲慢な態度に反感を抱いた隊員たちは彼の命令を聞こうとはせず、天田の休養先へ押しかける。すっかり元気を失くした天田は、かつての同期・松本のことを彼らに語った。飛行訓練中に死んだ松本の亡霊がマイティ号に夜な夜な現れるようになり、天田はノイローゼになっていた。隊員たちが天田をマイティ号へ連れていくと、彼だけにはその亡霊が見えるという。
 一方、須山はマイティ号の操縦室で不審な装置を発見するが、何者かが放ったナイフに倒れ、隊員たちに「キャプテンの目を…」と言い残して死んでしまう。そこで天田の目を調べたところ、特殊なコンタクトレンズがはめ込まれていた。眼科医で治療を受けた時に、そのレンズを入れられたのだ。装置から放射された光線をレンズを通して見ると亡霊が映る仕掛けになっており、何もかもQの仕組んだ罠であった。
 そこへ死んだはずの松本がQと共に姿を現した。彼はQに助けられて生きていたが、自分を助けようとしなかった天田に怨みを持ち、復讐しようとしていた。だが、形勢逆転された松本はコンクルーダーを奪って脱出。天田もコンクルーダーでその後を追い、撃墜する。
 亡霊が現れるシーンは後の『恐怖劇場アンバラス』を思わせるが、本作では本当の亡霊ではなく、特殊なコンタクトレンズと装置を使った科学的なトリックだったというオチがつく。ただ、そのトリックを仕掛けるまでのQの作戦が実に巧妙。天田は娘のミハルを幼稚園に送った時、一人の園児に水鉄砲で目に水をかけられる。目に違和感を覚えた彼は、そこへ現れた園児の母親に勧められて眼科医を訪れた。この治療時に、天田はコンタクトレンズを目に入れられ、亡霊を見るようになってしまうのだが、実は医師も受付の男も園児の母親、さらには園児までもがQの一員だった。園児は不気味なお面をつけて顔を隠していたのだが、そのお面をとると、大人の顔が現れる。おどろおどろしい亡霊よりもこのシーンの方がよっぽど怖い。

第22話 東京タワーに白旗あげろ

 シルクハットに燕尾服姿の男が防衛庁に現れ、情報を売りつけようとするが、まったく相手にされず、今度はマイティジャックに話を持ちかけた。その情報とは、ある国が開発した新兵器の見取り図だと男は言うのだが、それが何かは男にもわからない。金塊だと思って盗んだものが何かの図面だったのだ。だが、それはある計画を企む女たちにとっては重要なものであった。男がアジトに帰ってみると、図面は奪われ、二人の子分たちは殺されていた。
 女たちは夫や恋人をマイティジャックに殺され、その復讐のためひそかに巨大なロボットを建造していた。図面はそのロボットの設計図の一部だったのだ。その夜、ようやくロボットは完成し、女たちがその内部に乗り込むと、神宮外苑に巨大な姿を現した。出動するマイティジャック。しかし、ロボットは腕のひとふりでビルを破壊し、強固なボディは戦車隊の攻撃も受けつけない。
 そこでマイティジャックは道路に油を撒いてロボットの足を止め、女たちが外へ出た隙に源田が内部へ潜入した。そうとは知らない女たちは勝ち誇り、東京タワーに白旗をあげるよう告げる。朝になって源田はようやく脱出に成功。彼の仕掛けた爆弾が内部で大爆発を起こし、ロボットは木っ端微塵になるのだった。
 円谷プロは『ウルトラセブン』でも、キングジョーやクレージーゴンといった魅力的な巨大ロボットを輩出したが、今回のビッグQも実に魅力的だ。起動すると無数の歯車が回りだし、いかにもロボットらしい動きをする。デザインもレトロチックで、これぞロボットといった雰囲気。しかも当時はまだ珍しい乗り込み型で、操縦するのが女たちだけというミスマッチ感覚がまたいい。彼女たちの夫や恋人がマイティジャックのために南の海に散り、作戦の動機がその復讐のためというのもたまらない。夫や恋人たちというのはQの一員と思われるが、本編中の台詞にはQという言葉は一切出てこないので彼女たちの正体は謎のままだ。泥棒紳士を中心とするコミカルなタッチと女たちを中人とするハードタッチの組み合わせが実妙である。

第23話 殺し屋レディをマークしろ

 天田がAPPLEの国際会議に出席するためパリに旅立った。その留守中、マイティジャックは親善のために来日したポロニア国のペドロ大統領をガードするという重要な任務を負う。大統領は何者かに命を狙われており、彼の乗っていた車が突如爆発。幸い、大統領は車を離れていたため無事だったが、爆発の後には爆弾の時限装置に使われていたと思われるヘアピンが落ちていた。爆発物の専門家である奈美は、犯人が女性ではないかと推測する。
 ペドロ大統領がその日に会った女性はファッションデザイナーの真理ユリ子だけ。ユリ子の身辺をさぐるため彼女の営むファッションショップを訪れた源田はただ翻弄されるばかり。そこで奈美は学生運動の活動家に扮してユリ子に近づいた。彼女の店で働けることになり、彼女の部屋に泊まった奈美は電話機に盗聴器を仕掛ける。そして彼女が某国から大統領暗殺の指令を受けていたことを知るが、正体を見破られてバスタブに縛られ、ピンチに陥ってしまう。
 園遊会で踊りを見物するペドロ大統領。踊りを舞っている演者はユリ子の変装であり、マシンガンを仕込んだ長刀で大統領を狙っていた。そこへ脱出に成功した奈美が駆けつけ、ユリ子と対決。見事に彼女を倒すのだった。
 マイティジャックの紅一点・江村奈美が大活躍する一編。時代を感じさせる学生運動姿、私服、寝間着、着物まで、様々な姿になるあたり、後の戦隊シリーズのヒロイン七変化の元祖と言えるかもしれない。おまけにシャワーシーンや寝間着のままバスタブに縛りつけられるシーンもあり、サービス満点。敵として登場する女殺し屋・真理ユリ子もアダルトな雰囲気で、前回にひき続き、女性の悪役が魅力的なエピソードにもなっている。ラスト近くになってマイティ号も登場し敵爆撃機と空中戦を繰り広げるが、時を同じくして奈美とユリ子が一対一で戦うという展開になっており、最後まで奈美が主役であった。なお、天田キャプテンが留守中の話ではあるが、冒頭シーンやモニター画面に登場しており、全話通してメンバー5人共皆勤賞である。

第24話 ハプニング島へ進路とれ!!

 源田はパトロール中、イカダで漂流する若い女性を発見。救助しようと彼女をコンクルーダーに乗せるが、拳銃をつきつけられて進路を変更させられる。桜子と名乗るその女性は、夢で見たハプニング島へ行きたいというが、そんな島は地図にも載っていない。やがて燃料が切れ不時着したところは彼女の言うハプニング島であった。
 海辺にゴムボートを見つけた桜子は、それが彼女の父親が船長を務めていた貨物船・甲州丸のボートのものだと知る。突然海中から現れたその島のために甲州丸は転覆し、脱出した船員たちはすでに島に上陸していた。船長は何者かに殺されて白骨と化していたが、桜子は悲しむどころか航海士の矢島に会って嬉しそうだった。初対面ではあったが、彼は船長が決めた桜子の婚約者なのだ。
 だが、船長を殺したのは矢島であり、自分の悪事を船長に知られたために起こした犯行だった。さらに矢島は、島の神殿の廃墟から奪ったルビーをめぐって仲間を殺し、桜子まで手にかけるが、島にいた恐竜によって殺されてしまう。死に際の桜子から彼女が本物の桜子ではないと聞かされる源田。やがて島は海に沈み彼はゴムボートに乗って脱出するが、マイティジャックの仲間にその出来事を話しても信じてもらえないのだった。
 船長は航海士の矢島に裏切られ、矢島は船員たちに裏切られ、フーテン娘の桜子と名乗る女性は名前も素性もすべてが大嘘だった。ラストでは源田もマイティ号に裏切られ、沈んだ島から辛くもゴムボートで脱出したのに、信用してもらえず助けてもらえない。まさに嘘と裏切りで塗り固められた話。ある意味、とても市川森一氏らしい脚本である。作品中に恐竜が登場するが、これはワニの実物をミニチュアセットの中に入れて撮影したもの。海外の作品には見受けられるが、日本の特撮作品では珍しい手法である。シナリオにも「巨大なワニ(全長五〜十メートル)」という記述があるのだが、台詞では「ワニ」ではなく、すべて「恐竜」という表現になっており、ワニにしか見えないものをワニとは呼ばないのでいささか不自然な感じがする。

第25話 希望の空へとんで行け 前編

 一ヶ月の間に百人近い若者たちが謎の失踪を遂げ、APPLEのゼネラル藤井はそれがQの仕業ではないかと危惧していた。そんな折、車を走らせていた天田は何者かに追われている青年に出会う。彼はまもなく追手に殺されてしまうが、死に際にある地点を示す地図を天田に手渡した。青年の素性に不審を抱いたマイティジャックは、ただちにその地点の建物へ潜入。だが、そこに待ち受けていたのは銃を構えたQの一隊だった。青年はQに拉致された若者の一人だったのだ。
 まんまと彼らに捕えられた源田と小川は巨大潜水艦に運ばれ、艦内の監禁室に入れられる。ひたすら脱出の機会を窺う二人。見張りから鍵を奪ってそこを抜け出した彼らはQの手下になりすまし、艦載されていた水陸両用車へ乗り込んだ。車はQの女ボス、タワラジ・カンを乗せて発進。そのまま彼女を人質としてマイティ号へ連れていく。タワラジは意外にも天田と面識があり、かつてボストン大学のゼミナールで知り合っていた。天才少女だった彼女が今はQのボスであることに、天田はとまどいを隠せなかった。
 一方、タワラジの部下・チンは、ボスを人質にとられたことに憤慨しマイティジャックに報復を画策。ゼネラル藤井を誘拐し、完成したばかりの秘密基地に監禁する。
 ラストは前後編となり、第一期ウルトラシリーズを支えた金城哲夫氏によって前作の雰囲気に近いハードなドラマが描 かれた。冒頭は見習隊員2人を含めたマイティジャックの特訓シーンから始まっており、日本中の若者たちを拉致してQ の訓練を受けさせるという今回のQの作戦とイメージをオーバーラップさせると同時に、後編ラストへの伏線にもなっている。若者たちの拉致を指揮するQのボスは、タワラジ・カンという美女。戦争によって家族を失ったために力による復讐を考えるようになったことが彼女の台詞から窺える。真っ赤な紅を塗った唇が印象的で、拉致した青年をムチで叩くSな性格とあいまって魅力的なキャラクターとなった。なお、タワラジの乗る潜水艦は前作のQの潜水艦「ジャンボー」の流用だが、今回は特に名称はない。

第26話 希望の空へとんで行け 後編

 ゼネラルを拉致したQはタワラジとの交換を申し出た。それに応じたマイティジャックはタワラジの身柄を返すが、Qから返ってきたのはゼネラルではなく彼と共に拉致された運転手の死体だった。だが、奈美がタワラジに仕掛けていた発信器の電波をキャッチ。発信のあった沢田湖の底にQの秘密基地が隠されていることが判明する。
 基地の中へ潜入した源田と小川は、ゼネラルが監禁されている部屋を探しだすが、ゼネラルは自分のことよりも他の部屋に監禁されている若者たちを助けることを命じる。だが、その若者たちは以前マイティジャックを罵倒していた非常識なフーテンばかり。小川は抵抗を感じながらも任務を引き受けるが、Qの放った弾丸を受けて致命傷を負ってしまう。
 湖底から全貌を現わすQの基地。そこから発進した戦闘機隊が総攻撃を仕掛けるが、巨大なマイティ号の前に次々と撃ち落とされていく。タワラジは自ら戦闘機に乗り込んでマイティ号に突撃し、木っ端微塵に消し飛んだ。爆発する基地からゼネラルと若者たちは無事に脱出するが、彼らを助けた小川は静かに息をひきとった。悲しみにくれる隊員たちにゼネラルは新隊員の船木と清村を紹介する。希望に輝く二人を見た隊員たちは、再び勇気を取り戻すのだった。
 十一人もいたために個々のキャラクターが活かしきれなかった前作に比べ、五人となった本シリーズのマイティジャックはキャラクター同士のバランスが絶妙で、実にチームワークが良い。それだけに小川の殉職は衝撃的で、切ない。しかも彼が命と引き換えに守ったのは、どうしようもない屑のような若者たち。「死んでまであんな奴らを守ることはなかったんだ。ちっとも感謝の気持ちなんかありゃしないんだ、あいつら!」という今井の叫びが耳に残る。実際、奴らは何事もなかったかのように踊り狂っているだけ。だが、希望に輝く新隊員が入ってきたことによって、残った隊員たちは彼らの初々しい姿にかつての自分たちを重ね再び勇気を取り戻す。希望に満ちたラストだが、これが金城哲夫氏の手がけた最後の「最終回」となった。



 
●データ


1968年7月6日〜1968年12月28日
フジテレビ系 毎週土曜午後7:00〜7:30放映
カラー 30分 全26本 円谷プロ作品

[スタッフ]
プロデューサー/円谷皐、新藤善之(フジテレビ) 音楽/冨田勲、宮内国朗 撮影/森喜弘、志賀邦一、中町武 美術/鈴木儀雄 照明/長洞利和、小林和夫 記録/推塚二三、植村よし子、藤波マリ、新沼比沙子、林保代、関根ヨシ子、鈴木徳子 助監督/難波誠一、東條昭平、高橋五郎、石井竹彦、志村広、佐々木孝吉、石黒光一 光学撮影/中野稔 編集/小倉昭夫 制作主任/熊谷健、水野洋介、上村宏 制作補/塚原正弘 録音/アオイスタジオ、松本好正 効果/西本定正、協立音響 現像/東京現像所 協力/エドワード、スタンダード、富士ゼロックス 監修/円谷英二 制作/円谷プロダクション、フジテレビ

[特殊技術]
撮影/関口政雄、益子武夫、鈴木清 美術/深田達郎、井口昭彦 照明/岸田九一郎、高野勝也、近藤勝 操演/中島哲郎、塚本貞重 助監督/石黒光一、高橋五郎

[キャスト]
天田隊長/南廣 源田隊員/二瓶正也 小川隊員/渚健二 今井隊員/山口暁 江村隊員/江村奈美 藤井/宇佐美淳也

[放映リスト]

放送日
サブタイトル
敵組織、怪獣
脚本
監督
特殊技術
ゲスト
68/7/6
かかった罠はぶっ飛ばせ パック 藤川桂介 土屋啓之助 有川貞昌 大宮悌二、菊地英一、尾崎孝二、マイク ・ダニン、サリーダ・ラーマン
7/13
ミニミニ島を爆破せよ AZ団 金城哲夫 満田かずほ 佐川和夫 南道郎、奥村公延、川田勝明、福崎和宏、矢崎知紀
7/20
悪魔の海にとんで行け!! 謎の組織 山浦弘靖 満田かずほ 佐川和夫 浅野進治郎、剣持伴紀、大前亘、内藤綱男
7/27
とられたものはとりかえせ!! 小滝光郎 土屋啓之助 有川貞昌 二本柳寛、二瓶秀雄、渡辺高光、水島健二、田尻康博、松島映一、神戸君郎
8/3
マリヤの像を追いかけろ!! 盗賊団 赤井鬼助 土屋啓之助 有川貞昌 西田昭市、幸田宗丸、永山一夫、保科三良、野本礼三、千波一之、国分秋恵、ピエール・カラメロ
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マイティー号でぶちかませ 小池光郎 土屋啓之助 有川貞昌 大月ウルフ、中井啓輔、石山克己、島田太郎、渡辺高光
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来るなら来てみろ!! 小池光郎 東條昭平 佐川和夫 今井健二、中村孝雄、向精七、神戸君郎
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地獄へ行って笑え キル 藤川桂介 福原 博 大木 淳 オスマン・ユセフ、加藤修、高杉哲平、岩城和男、上田耕一、中島元、大矢兼臣、山本武、小池泰光
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地底の悪魔をたたき出せ 小池光郎、赤井鬼助 土屋啓之助 有川貞昌 久保保夫、加地健太郎、中岡慎太郎、西村則彦
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消えた王女の謎を解け!! 暗殺団 小池光郎、赤井鬼助 土屋啓之助 有川貞昌 成瀬昌彦、シリア・ポール、藤村俊二、渡辺高光、高野浩幸、右田洋子
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甘い爆弾にくらいつけ ブラッド 藤川桂介 福原 博 大木 淳 浅野進治郎、国景子、永山一夫、杉田峻也、斉藤英夫、ハンス・ホルネフ、伊藤 信明、菊地英一
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マイティ号を取り返せ!! (前編) 金城哲夫、若槻文三 満田かずほ 佐川和夫 万里昌代、森次浩司、吉原正皓、徳丸完、 松本喜臣、上西弘次
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マイティ号を取り返せ!! (後編) 金城哲夫、若槻文三 満田かずほ 佐川和夫 万里昌代、森次浩司、吉原正皓、徳丸完、松本喜臣、上西弘次
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炎の海を乗り越えろ 大ダコ 市川森一 土屋啓之助 有川貞昌 植村謙二郎、小高まさる、渡真二、伊藤潤一、向精七
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死人の館に突進せよ ミイラ 藤川桂介 土屋啓之助 有川貞昌 細川俊夫、三條美紀、松本朝夫、徳久比呂志、安田隆、松平有加、安藤敏夫、上西弘次
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来訪者を守りぬけ パッキー、モノロン星人 金城哲夫 東條昭平 佐川和夫 上西弘次、立川雄三、田尻康博、矢田耕司
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逃げたぞそれ行けつかまえろ!! Q、ナナちゃん 若槻文三 満田かずほ 佐川和夫 小瀬朗、鈴木和夫、中村テルミ、里井茂、土屋靖男、大村千吉、吉本栄、小林俊郎とリズムダドポール
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水爆恐竜をやっつけろ!! ザウルス 山浦弘靖 満田かずほ 佐川和夫 久万里由香
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くいとめろ人間植物園 プラント 藤川桂介 福原 博 有川貞昌 浮田左武郎、堀川真智子、筈見純、上西弘次、JFA
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宇宙忍者をあばき出せ マグネチック宇宙人(ドロン星人) 小滝光郎 福原 博 有川貞昌 梶健司、奥村公延、瀬良明、広瀬正一、中岡慎太郎、山本武、豊田紀雄、山田圭介
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亡霊の仮面をはぎ取れ 金城哲夫 満田かずほ 佐川和夫 吉鶴賀二郎、久野征四郎、山田禅二、古谷敏、田辺和佳子、劇団いろは
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東京タワーに白旗あげろ ロボット(ビッグQ) 若槻文三 東條昭平 佐川和夫 世志凡太、仁木裕子、向精七、安藤敏夫、田村美沙、伊藤昌子、安藤純子、杉まり子、千葉裕子
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殺し屋レディをマークしろ 某国 山浦弘靖 土屋啓之助 有川貞昌 加茂良子、サラム・カーン、関国麿、渡辺高光
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ハプニング島へ進路とれ!! 恐竜 市川森一 土屋啓之助 有川貞昌 米岡雅子、内藤綱男、山口譲、菊地英一、伊藤信明
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希望の空へとんで行け 前編 金城哲夫 満田かずほ 佐川和夫 当銀長太郎、真山和子、土屋靖雄、中村上治、和田良子、阿知波信介、片岡光雄
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希望の空へとんで行け 後編 金城哲夫 満田かずほ 佐川和夫 当銀長太郎、真山和子、土屋靖雄、中村上治、和田良子、寺尾信義、片岡光雄