●解説


 1978年、かつての人気番組をリメイクした『コメットさん』の新シリーズがTBS系にてスタート。再び人気番組となり、主演の大場久美子氏は一躍トップアイドルとなった。大場氏のコメットは、九重佑三子氏の初代コメットさんに比べてどこか頼りなさげではあったが、却ってそこが受けたのだろう。
 その三年後の1981年、『コメットさん』を製作した国際放映がその流れを汲む番組を新たに製作。それが『おてんば宇宙人』であり、こちらはTBSではなく日本テレビ系にて放映を開始する。『コメットさん』旧作を手がけ、新作には原案としてクレジットされていた脚本家の佐々木守氏は本シリーズでも原案と共に第1話の脚本を担当。やはり旧作を手がけながら新作は一本も担当しなかった山際永三氏がメインの監督を務めた。そして主演は当時バラエティ番組の出演が多かった高見知佳氏。天真爛漫な明るいイメージの高見氏は、大場コメットよりも初代コメットさんのイメージに近かった。タイトルこそ異なるものの、ある意味では第三のコメットさんと言えるかもしれない。
 具体的に両作品の類似点をあげると、主人公の女性が宇宙人であること、主人公が魔法を使うこと、そして二人の男の子のいる家で暮らすことなどが挙げられる。もともと『コメットさん』は和製『メリーポピンズ』を狙った作品であり、お手伝いさんという設定もそこから来ている。『おてんば宇宙人』では敢えてお手伝いの設定は省かれ、単なる下宿人となってはいたが、実質的な家長であるおばあちゃんや子供たちとのふれあいも多く、下宿人というよりはやはりお手伝いさんのイメージだった。また、毎回のオープニングの冒頭シーンがアニメーションで構成されているのも両作品に共通する特徴だ。アニメ部分の製作はどちらも東京ムービーである。
 しかし、『コメットさん』の設定流用ばかりでなく、もちろん本シリーズならではの部分も少なくない。その最大のポイントは主人公チカを追って現れるギンギラ公爵の存在である。星の王女であるチカの結婚相手として選ばれたのがギンギラ公爵なのだが、チカはこの公爵が大嫌い。チカの住んでいた星では一度男性にキスされた女性は一生その男性が好きになってしまうとしう習性があり、公爵はチカと結婚するためキスしようと迫ってくるのだ。このギンギラ公爵を演じたのは故・横山やすし氏。当時は空前の漫才ブームで、横山やすしと西川きよしのベテランコンビも若手と共に脚光を浴びていた。そんな時代故での起用であり、「メガネメガネ」と言いながらメガネをさがしまわるという横山氏得意のギャグは登場する毎に繰り返されていた。なお、最終回には当時の若手人気漫才コンビ・B&Bも出演している。
 ところで、本シリーズの第一話と同じ日にスタートした裏番組がある。言わずと知れた人気アニメ『うる星やつら』で、奇しくも宇宙から来た女の子が主人公という点では共通していた。この強力な裏番組もあってか本シリーズの視聴率は振るわず、1クールにも満たない第9話をもって番組は打ち切りとなってしまう。高見知佳氏や横山やすし氏などの演者のキャラクターに頼りすぎ、ストーリー展開が今ひとつ魅力に欠けていた点は否めないが、番組の醸し出す雰囲気はまぎれもなく80年代そのものであった。


 
●キャラクター


星野チカ
(高見知佳)・・・・・・地球によく似た不思議な星・アルファートゥインクル星の王女。十八歳の誕生日に父母から結婚するように言われるが、その相手が大嫌いなギンギラ公爵だったため思わずUFOに乗って星を脱出。地球へ飛来して星野チカと名乗り(星野の姓はでまかせだが、チカは本名らしい)、河口家の下宿人となった。首からさげているペンダントによって魔法を使うことが出来るが、彼女が魔法を使うことは河口家の人々は誰も知らない。明るい性格で、誰にも好かれる。
河口さえ(園佳也子)・・・・・・新平や勇太の祖母。新平たちからはもちろん、チカからも「おばあちゃん」と呼ばれる。人の世話をやくのが大好きで、小学校のPTA役員や交通指導員など、様々な役目を買って出る。昔は教師だったこともあって、特に子供の教育にはうるさい。
河口良一
(河原崎長一郎)・・・・・・新平と勇太の父親。城南大学で考古学教授を務めており、発掘旅行に出かけて長い間家にいないことが多い。妻を亡くし、子供たちのことはおばあちゃんにまかせっきりなので、おばあちゃんには頭があがらない。第1、2、3話に登場。
河口新平(新井昌和)・・・・・・河口家の長男。乙女が丘小学校に通う小学生。クラスの好きな女の子・つかさちゃんに「デブ」と言われてショックを受け、シェイプ・アップに励んだことがあるが、あまり長続きはしなかったと思われる。チカには意地悪ばかりしているが、仲はいい。
河口勇太(中村太郎)・・・・・・河口家の次男。まだ赤ん坊の頃に母親を亡くしているため母親の記憶がなく、クラス担任の良子先生を母のように慕っていた。その良子先生も結婚して学校を離れることになり一時は悲しみに暮れるが、チカのおかげで立ち直った。
本郷孝夫(北詰友樹)・・・・・・
城南大学に通う大学生で、河口家のもう一人の下宿人。チカとは何かと衝突することが多く、どちらかと言うと喧嘩友だちである。女性にはモテモテで、ドーナツショップのトミコや同じ大学の女子に惚れられるが、特に意中の人はいないらしい
酒屋の芳男(元木丈陽)・・・・・・
河口家の近所の酒屋「福島酒店」の店員。自転車での配達中にチカの奇妙な行動に見とれて転倒し、積んでいた酒瓶を割ってしまう…というのがお決まりのパターンだった。ストーリーにはまったく影響のない役だが、何気に全話登場している。
荻野一郎
(藤岡洋右)・・・・・・河口家の隣の家に住む浪人生。名前は一郎だが、三浪しているためチカには「三浪さん」と呼ばれる。家にいる時はもちろん、外を出歩く時でもいつも勉強している。何かとチカの魔法を目撃することが多い。第2、3、5、6、7、9話に登場。
ギンギラ公爵
(横山やすし)・・・・・・アルファートゥインクル星近衛連隊の隊長。晴れてチカ姫のフィアンセに選ばれたが、当のチカには逃げ出されてしまい、その後を追って地球へとやって来た。星の女性は一度キスされると一生その相手を好きになるため、執拗にチカの唇を奪おうとする。だが、そのたびにチカの魔法でメガネを弾き飛ばされ、メガネをさがす羽目になる。チカと同じペンダントを持っており、魔法を使うことも可能。よく通う魔法はチカを本来の姿(超ボイン)に戻すことだ。新聞配達人、郵便配達人、白バイ警官など、様々な姿で出没する。第1、2、3、5、7話に登場。


 
●全話ストーリー


第1話 宇宙ギャルはキッスがキライ!

 アルファートゥインクル星のお姫様は両親が決めたギンギラ公爵との結婚を嫌がってUFOで逃亡。やがて地球へとたどり着き、星野チカと名乗って河口家の下宿人となった。だが、彼女の後を追ってきた公爵はチカに無理矢理キスを迫る。星の女性は一度キスされるとその相手を一生愛してしまうという奇妙な習性があるからだ。公爵が魔法を使って彼女を本来の姿(超ボイン)に戻そうとする公爵。そんな公爵のメガネを吹き飛ばし、彼を追い払ったチカは、食あたりしたおばあさんの代わりにPTA代理として小学校へ出かける。その頃、小学校では河口家の二人の息子・新平と勇太が友達から責められていた。学校で飼っていた小鳥を一羽残らず逃がしてしまったのだ。チカは魔法で小鳥たちを小屋に戻し、二人を救うのだった。
 冒頭(OPの前)のアルファートゥンクル星での出来事はほとんどアニメで処理され、地球の上空をUFOが飛び回る映像のOPへとつながっている。OPでも背景やチカは実写だが、UFOの外観はアニメで描かれており、設定の類似性のみならずアニメ合成を多用していた『コメットさん』を彷彿とさせた。OPのクレジットに日本テレビのUFO番組で知られていた矢追純一氏の名前があるが、これはOPにてチカのUFOを目撃した矢追氏が自動車から手を振るというシーンがあるためで、本編には出演していない。また、2話以降も共通のOPだったが、矢追氏の名がクレジットされたのは1話だけだった。本編の内容はほとんど登場人物と設定の紹介に費やされており、佐々木守脚本の持ち味はあまり感じられない。

第2話 注意一秒 キス一生

 普段から子供の教育に熱心なおばあちゃんは警察署に子供の交通ルール指導を頼まれた。子供の間で流行しているローラースケートは厳しく取り締まるべきだと主張するおばあちゃん。子供たちの溜まり場となっている坂の上の道路を見に行くと、そこにはローラースケートをするチカの姿があった。新平から借りたものの、止まり方がわからずにおばあちゃんにぶつかるチカ。たちまちスケートは没収され、怒った新平と勇太はチカに冷たくあたった。そこでチカは魔法でスケートを取り戻すが、今度は近所の小学生にとりあげられ、返して欲しければ交通ルール教室の会場でローラースケートをしろと言われてしまう。チカは新平と一緒に会場内でローラースケートを履き、おばあちゃんにその楽しさを教えるのだった。
 当時ファミコンはまだなく、ローラースケートで遊ぶ子供たちが多かったことが思い起こされる一篇。新平のローラースケートは母親が最後にプレゼントしてくれた思い出の品であることが父親から語られ、第一話では不明だった「新平たちの母親がいない理由」が、死別であることが判明している。ストーリーとはほぼ無関係にギンギラ公爵がチカにキスを迫るのは毎回のお約束。前回は新聞配達、今回は郵便配達と、チカに近づくために服装まで変えるあたりの努力が涙ぐましい。また、今回はバブルガム・ブラザーズ結成前のブラザー・トムこと小柳トム氏が警察署の交通課課長役で出演。おばあちゃん役の園佳也子氏に何度も「係長」と間違えられ、そのたびに「課長」だと言い返すやりとりが可笑しかった。

第3話 誰かが誰かに恋してる

 新平と勇太はドーナツショップのトミコに頼まれ、孝夫にドーナツを渡した。トミコは孝夫に片思いしており、そのドーナツは彼女が愛をこめて作った心からのプレゼントだったのだ。そうとは知らない孝夫は何気なくそれをチカに渡してしまう。ドーナツには一緒にラブレターが添えてあり、孝夫が自分に恋しているものとすっかり思い込んだチカは、手紙に指定されていた待ち合わせの場所へと喜び勇んで出かけていく。鉢合わせになったチカとトミコは事情を知って二人共がっかり。しかし、トミコが言うには彼女は孝夫とキスしたことがあるのだという。キスを神聖なものと感じているチカは孝夫の態度に憤慨し、凄い剣幕で彼に文句を浴びせた。やがてそこにギンギラ公爵も現れ、収拾がつかなくなってしまう。
 河口家のもう一人の同居人・本郷孝夫にスポットが当てられた作品。孝夫を演じる北詰友樹氏は『メガロマン』の主役でデビューしたことで特撮ファンには知られているが、その甘いマスクは今で言うイケメン。女性にモテまくるという役柄は納得がいく。ただ、第一話ではチカは孝夫に対して好印象を持っておらず、彼の女友だちに対抗意識を燃やしたり、ラブレターを彼からだと思い込んでそれを素直に受け入れてしまうのは少々疑問に感ずるところだ。一つ屋根の下で暮らしているうちにいつのまにか好意を持ち始めていたといったところか。ところで、今回のギンギラ公爵は白バイ警官に扮して登場。魔法を使ってチカの乗った軽トラを引き寄せようとするが、制御がきかなくなってひかれそうになるあたりが可笑しい。

第4話 クリスタルでダウン!

 仕事をすると人間の心の幅が広がる。そんな話をおばあちゃんから聞かされたチカは街に出て仕事をさがし始めた。なかなか思ったような仕事は見つからず、ひとりの女子大生と友だちに。だが、彼女は突然路上で突然倒れてしまう。やがて通りかかった神父に救われるが、彼女は痩せたくて食事をとらずにいたため卒倒しただけだった。その神父の後についていったチカは、彼の教会で身寄りのない子どもたちをひきとっているのを知り、そこで保母として働きたいと願いでる。教会には新平の友だちのミノルもいたが、彼は両親を亡くした心の痛手をいつまでもひきずっていた。「親が見たら泣くぞ」とミノルに言い放つチカ。保母としての仕事は失格の烙印を押されたものの、心を開いたミノルは笑顔を見せるのだった。
 とにかく脚本が暴走している。チカが仕事をさがす話だったはずが、いつのまにか両親を亡くした少年の話に摩り替わっていたりするのだ。路上で初めて出会った女子大生といきなり友だちになるのも強引だが、この女子大生が唐突に倒れ込み、今度は彼女を助けた神父が話の主軸になっていくのもかなり強引。どう解釈していいのかわからない演出も多々あり、先の展開がまったく読めない。ギンギラ公爵も良一も登場せず、本シリーズで一番の異色作と言えよう。サブタイトルは当時ベストセラーだった「なんとなく、クリスタル」からで、前述の女子大生がこの本を手に持っていた。また、チカが怪獣の着ぐるみを着させられそうになるというシーンで『ダイヤモンドアイ』の馬頭人とヒトデツボのアトラク用着ぐるみが登場する。

第5話 主婦になるのも楽じゃない

 おばあちゃんが出かけることになり、チカはおばあちゃんの代わりに河口家の家事を自ら買って出た。はりきるチカだが、掃除に洗濯、庭の水撒きなど、主婦の仕事は大忙し。しかも新平と勇太が仕事の邪魔をするため、なかなかはかどらない。洗濯機にインクを入れて洗濯物を真っ赤にしたり、下剤入りのコーヒーをお客に飲ませてしまったり、おもちゃのネズミを走らせたりと、新平たちのいたずらはとどまることを知らなかった。怒ったチカは二人を追いかけまわすが、おばあちゃんの大切にしていた壷を割った上、勇太にけがをさせ、さらには不注意で台所から出火し、危うく火事に…。帰宅したおばあちゃんからこっぴどく叱られたチカは荷物をまとめて出ていく決心をするが、すぐに思い直して家に戻るのだった。
 この番組をそれほどじっくり見たことがない人は大抵『コメットさん』と混同してチカもお手伝いさんだと思っていたりするのだが、チカはお手伝いではなく飽くまでも河口家の下宿人である。普通は下宿人が家事をするなどあり得ない話だとは思うが、おそらく家賃など払っていないのだろう。前回の話では仕事をさがしていたが、未だ職についていないようだし。さて、ストーリーダイジェストには書き込めなかったが、ギンギラ公爵は今回なぜか学生服姿で登場し、今まで通りチカにキスしようと迫る。チカを魔法で元の姿(超ボイン)に戻すところも今まで通り。ただし、そのボインを後ろからわしづかみにするのは今回だけだ。もちろん本物のボインではないのだが…教育上良くないとクレームは来なかったのだろうか。

第6話 良子先生とホンカンさん

 人の世話をするのが大好きなおばあちゃんは近所の交番に新しく赴任してきたおまわりさんの見合いの話を進めていた。相手は勇太の担任の良子先生。だが、先生に母親の面影を見ている勇太は見合いに大反対。チカもまた他人の結婚相手を勝手に決めてしまうことに反発を感じ、勇太や新平と協力して見合いをぶち壊そうと計った。見合い当日、嘘の電話でおばあちゃんを外へおびき出すと、変装したチカが見合い相手になりすます。不良教師を装って一生懸命嫌われようとするチカだが、お酒を飲んでよっぱらったおまわりさんはそんなチカが理想のタイプだと言い出した。思わず逃げ出すチカ。やがて河口家を訪れた良子先生はつきあっていた彼氏と結婚すること、彼氏の仕事の都合で学校をやめることをおばあちゃんに話した。
 サブタイトルにもなっている「良子先生」を演じたのは『花の子ルンルン』のルンルン、『ヤッターマン』のアイちゃん役などで声優としても有名な岡本茉利氏である。勇太が憧れる清楚で優しい女性として描かれており、イメージにはぴったりだった。もう一方の「ホンカンさん」こと、おまわりさんのサカイ君を演じたのは、かつて名子役として黒澤映画『どですかでん』で主役を務めた頭師佳孝氏。『飛び出せ!青春』の生徒役も印象深い。ちなみに氏は男ばかりの五人兄弟で、そのうち四人までが子役として活躍していた。ところで、今回はチカが探偵のような格好をしたり、いかにも悪ぶった不良教師に扮したりしており、チカの変装も見どころと言える。なにしろ主役なのでおいしいところはちゃんと持っていくのだ。

第7話 みんなでシェイプ・アップ!

 「あんなデブ、好みじゃないわ」大好きなクラスメートのつかさちゃんが自分のことをそう言っているのを聞いた新平は、彼女の好み通りの体型になろうと翌朝からいきなりジョギングを始めた。チカと一緒に町中を走りまわる新平だが、お腹がすいて朝食を食べ過ぎ、却って体重が増えてしまう。痩せるにはジャズダンスが一番だとドーナツショップのトミコから聞いたチカは、おばあちゃんと一緒にダンススタジオへ。そこにはつかさちゃんも通っており、彼女の姿を見かけてスタジオまでついて行った新平もチカたちと一緒に踊らされた。だが、意外にリズム感がよく、新平のことを見直したつかさちゃんは帰り道、彼と仲良く相合傘で帰る。その時降っていた雨がチカの魔法によるものだとは、二人は知るよしもなかった。
 新平が好きになった女の子の名前は松田つかさ。当時人気絶頂だった松田聖子の苗字に、歌手デビューしたばかりの伊藤つかさの名前を足したのだろうか。他にも「シェイプ・アップ」や「ジャズダンス」など、当時流行った言葉が飛び交っており、多分に80年代の雰囲気が感じられる。今回もまた唐突に登場したギンギラ公爵は第一話以来の近衛隊の制服姿で登場。第三話にも登場していたドーナツショップのトミコさんを始め、ジャズダンススタジオの女性たちに散々殴り倒され、いつも以上にひどい目に遭っている。よほど懲りたのか、ギンギラ公爵は今回を最後にもう二度と登場しない…といってもあと二回しかないのだが…。自分のためにしか使わない事の多いチカの魔法が珍しく人の役に立った回でもある。 

第8話 冬の夜の怪奇物語

 新平と勇太が近所の空き家でお化けを見たという。チカが空き家へその話を確かめに行くと、二人の言う通り黒マントのお化けが出現。しかもお化けにはチカの魔法がまったく通用しなかった。その頃、川口家とその周辺はマンション建設が計画されていたが、おばあちゃんを始めとする近所の住人たちはマンション建設に断固反対していた。だが、お化けの噂が広まると、嫌気がさした住人が次々と自分たちの土地を不動産屋に売り始める。このままでは河口家も土地を手放さなければならなくなる。悲しみにくれる新平たちを見たチカは再び空き家へ乗り込み、お化けがフォログラフィであることを見破った。奥の部屋で人が機械を操作していたのだ。すべては土地を買い上げようとする不動産屋のたくらみであった。
 第四話と同じく雰囲気や作風がいつもと妙に異なる。と思ったら、どちらも阿井文瓶氏の脚本だ。阿井氏は『コメットさん(新)』を手がけており、ウルトラ兄弟がゲスト出演している回はすべて担当している。ウルトラシリーズの脚本も手がけていた人なので、当然といえば当然だったのかもしれないが、コメットさんの世界にウルトラマンを登場させるその強引さには唖然とさせられた。本作でも作品世界にあまり似つかわしくない「お化け」が登場。もっとも最後にはフォログラフィだったというオチがつく。新平たちは「首なし犬」や「首なし人間」を見たらしいが、そのようなものは一切出てこない。実際に出てきたのは仮面の怪人であり、一般に言うお化けのイメージとはちょっと違う気もするのだが…。

第9話 注文の多い居そうろう

 孝夫が大学の発掘実習のためにしばらく部屋を空けることになった。だが、彼が出かけた直後、河口家に二人の妙な男たちが訪れ、強引に孝夫の部屋へ入り込む。彼らの名は尾藤洋七と馬場洋八。孝夫と同じ大学の学生で、おばあちゃんを散々おだててまんまと家に居座ってしまった。高級ブランデーを酒屋に注文したり、特上寿司をとったり、豪勢な生活を始める二人。だが、それがすべてツケだったことを知ったチカは、彼らが借金を残して出て行くものと察知。部屋で彼らが話している様子を魔法でテレビに映し出し、二人に好感を持っていたおばあちゃんにその実態を暴いて見せた。「婆さんぐらい騙すのはわけない」などという彼らの会話に激怒したおばあちゃんは二人を追い出し、借金した店でアルバイトさせるのだった。
 当時大人気だった漫才コンビのB&Bがゲスト出演。十八番のネタだった「もみじ饅頭」ということばが台詞の中に入っていたり、当時司会をしていた番組のタイトルをもじって「笑ってる場合じゃないですよ!」と言わせてみたりと、ゲストがB&Bであることをこれでもかとばかりに主張している。まさに漫才のイメージ通りのキャラクターで、二人が出演することを前提とした脚本のようだ。視聴率を上げるためのテコ入れと思われるが、結局のところこの回が最終回となってしまった。ラストでチカが故郷の星を思い出すあたりは最終回らしさがないではないが、唐突に終わった感が強い。ところで、何気に全話登場した芳男の勤める酒屋の主人が最終回にして初登場。演じるは東宝怪獣映画でおなじみの大村千吉氏だった。



 
●データ


1981年10月14日〜1981年12月9日
日本テレビ系 毎週水曜午後7:30〜8:00放映
カラー 30分 全9本 国際放映作品


[スタッフ]
企画/吉川斌 プロデューサー/武井英彦、古屋克征、森川一雄 原案/佐々木守 音楽/宮本光雄 撮影/園田勝秀 照明/矢口明、大野晨一 録音/磯崎倉之助、神蔵昇 美術/山崎雄史 編集/神谷信武 製音/豊田博 選曲/長沼寛 効果/渡辺治男 助監督/高坂勉 PR担当/山口晋 制作主任/野口文章 制作担当/平木稔 美建興業 京都衣裳 川口美粧 高津装飾美術 アニメーション制作/東京ムービー アニメーションディレクター/石黒昇 衣裳協力/CABIN 現像/東京現像所 製作/国際放映

[キャスト]
星野チカ/高見知佳 河口良一/河原崎長一郎 本郷孝夫/北詰友樹 河口新平/新井昌和 河口勇太/中村太郎 酒屋の芳男/元木文陽 荻野一郎/藤岡洋右 ナレーター/城達也 ギンギラ公爵/横山やすし 河口さえ/園佳也子

[放映リスト]

放送日
サブタイトル
脚本
監督
ゲスト
81/10/14
宇宙ギャルはキッスがキライ!
佐々木守
山際永三
船場牡丹、みき進太、弥永和子、松尾文人、辻しげる、矢追純一、橋満耕司、岸田裕、大谷輝彦、真田陽一郎、佐々木由起恵、人見きよし、高坂真琴、緑川稔
10/21
注意一秒 キス一生
金子裕
山際永三 橋満耕司、岸田裕、大谷輝彦、小柳トム、水森コウ太
10/28
誰かが誰かに恋してる
金子裕
小池要之助
シャンディー・ケイ、吉田友子
11/4
クリスタルでダウン!
阿井文瓶
小池要之助
堀礼文、清水宏、鶴田忍、円浄順子、飯島大介、西巻暎子、佐藤まゆみ、伊勢将人、石坂絵里
11/11
主婦になるのも楽じゃない
寺田隆生
山際永三
横山あきお、晴乃ピーチク、松尾文人、山本庄助
11/18
良子先生とホンカンさん
金子裕
山際永三
岡本茉利、頭師佳孝
11/25
みんなでシェイプ・アップ!
金子裕
小池要之助
シャンディー・ケイ、中丸信、田中加奈子、若生良子、内八重友賀、及川亜紀子、大井小町、横関志磨子
12/2
冬の夜の怪奇物語
阿井文瓶
小池要之助
出光元、冷泉公裕、上野綾子、大木裕司、田中進、山本剛史、宮島徹也
12/9
注文の多い居そうろう
金子裕
山際永三
水森コウ太、横関志磨子、大村千吉、丹治信恭、近江信行、B&B(島田洋七、島田洋八)