●解説


 70年代の変身ブームも三年目となった73年初頭には実に週16本もの特撮作品が放映されるという異常事態となり、製作サイドは他作品との差別化を図るべく様々な新機軸を打ち出していた。このような状況の中で放映を開始した本シリーズは、時代劇にロボット的な巨大ヒーロー、三人の兄弟によるグループヒーロー、合体変身・・・といった、既に他の作品で試みられていた要素をいくつも組み合わせた作品となっていた。当時の新聞の番組評などで「欲張りすぎ」などと評されたのも頷ける。
 しかし、本シリーズの最大の特徴は巨大ヒーローと怪獣との対決を着ぐるみを使わずに全てモデルアニメーションによって描いたという点にある。製作を担当した国際放映では既に『コメットさん』(67〜68年)の中で小さな怪獣ベータンをモデルアニメで動かしていたという実績があり、同作品を手がけていた中村武雄、真賀里文子夫妻が本シリーズでもその中心スタッフとなっていた(OPのスタッフクレジットには表示人数が制限されていたため真賀里氏の名はない)。モデルアニメを特に「アニクリエーション」という造語で呼び、敵怪獣のほとんどに着ぐるみでは不可能な形態を持たせるなど、これを番組の売り物とする姿勢が窺えたが、映像としての独自性がある反面、巨大感や重量感に欠けるのが難点だった。しかも、ただでさえ時間のかかるモデルアニメを週一本というサイクルの中でこなす事は困難を極め、その技術力を充分に発揮しているとは言い難い。
 また、本編では『忍者部隊月光』(64〜66年)を手がけていた土屋啓之助氏が監督を務め、テンポの良いアクションシーンを作りだしていた。特撮も多用した奇想天外な忍法も楽しく、やはり『月光』で主役を演じた水木襄氏は同番組で子供受けした独特の手振りアクションを本作品にも持ち込んでいる。本編アクションにも独特の味があったものの、シリーズ後半にはフィルムの流用が目立っているのが残念だ。特にこれは意図的なのかもしれないが、毎回のエンディングシーンもほとんど流用で、最終回を除くと2パターンしかない。
 番組は結局、視聴率の低迷によってわずか三ヶ月で終了。モデルアニメを使用した巨大ヒーローものというスタイルも後続の作品に継承されることなはなく、今もって本シリーズが異色作と呼ばれる所以となっている。


 
●キャラクター


銀河(水木襄)・・・・・・ミツルギ三兄弟の長男。常に冷静沈着に状況を判断するリーダーで、かなりうたぐり深い。「智」の剣を授かる。
彗星
(佐久間亮)・・・・・・ミツルギ兄弟の次男。偵察を任されることが多く、血気盛んで行動的だが、ヘマも多い。「仁」の剣を授かる。
月光
(林由里)・・・・・・ミツルギ三兄弟の一番下の妹。兄二人に比べ、素直な性格。「愛」の剣を授かる。
道半
(緒方燐作)・・・・・・ミツルギ一族の長老。三兄弟に一族に伝わる剣を与え、サソリ軍団と戦うことを命じる。
服部半蔵
(大木正司)・・・・・・徳川幕府のお庭番。江戸の平和を守るためミツルギ三兄弟に協力を請う。
巨大神ミツルギ
・・・・・・ミツルギ一族の守り神。三兄弟が三つの剣を合わせることで変身し、神剣と楯を武器に魔人サソリが繰り出す怪獣と戦う。必殺技は胸から連射される短剣型のロケット弾(なぜか”火の玉”と呼ばれる)。


 
●全話ストーリー


第1話 宇宙忍者サソリ軍団をつぶせ!!

 江戸時代の日本に怪しい流れ星が落下した。魔人サソリが徳川に成り代わって天下を我が者にしようと、宇宙の彼方からやって来たのだ。それを知ったミツルギ一族の長老・道半は人々の平和を守るべく、古来より一族に伝わる三つの刀「智」「仁」「愛」を銀河、彗星、月光の三兄弟に与え、江戸の町へ派遣する。
 サソリ軍団は徳川家康の命を狙うが、お庭番・服部半蔵によってそれを阻止されると、今度は家康の孫娘・濃姫を誘拐した。ミツルギ三兄弟は忍術を駆使して姫を救いだすが、巨大な怪物・デノモンが彼らの前に出現する。兄弟は三つの刀を合わせて巨大神ミツルギに変身し、デノモンと対決。苦戦の末これを討ち果たすのだった。
 デノモンの甲冑のような身体は本当に鎧だったようで、その下からは骸骨が出現。巨大な骸骨が動くという人形アニメならではのシーンを作りだしている。一方の巨大神ミツルギは、戦っている最中にも銀河、彗星、月光の声で会話をし、苦戦しながらも敵の弱点をさぐっていく。初陣の雰囲気が出ており、見応えのある戦闘シーンだ。

第2話 獄門台の生首が笑う!

 獄門磔になった極悪人・蝮の権太が魔人サソリの魔力によって生き返った。サソリの配下となった彼は、仲間を増やすべく処刑された罪人の死体を次々と盗んでいく。そこで銀河は死体に化けた彗星をおとりにして彼らの居所をつきとめようとするが、それを魔人サソリに見破られてしまった。突如出現した怪獣ゴールドサタンの前に窮地に陥る銀河と月光。そこへ敵の手から逃げ延びた彗星が駆けつけ、三人はミツルギとなってゴールドサタンに挑む。
 
わら人形が弓矢を放って蠍を射抜くシーンがあり、ここにも人形アニメが使用されている。このわら人形は月光が使った忍法の一つなのだが、どう見ても魔法にしか見えない奇想天外な忍法がミツルギ忍法の魅力だ。

第3話 悪魔の呪いを破れ!

 サソリの放った怪獣ムカデラーは街道沿いの城を次々に焼き払い、江戸城へと向かっていた。幕府は江戸城を守るべくその進路上の城のひとつに大量の火薬を詰め込み、怪獣を爆破しようと計画。それに気づいたサソリ軍団はどの城に火薬を仕掛けたのかを知るため火薬奉行をさらって拷問にかけるが、奉行の口は堅く、さらに彼の息子を人質にとろうとする。
 奉行の息子を助ける銀河。そして彗星と月光は奉行を救いだすが、そこへムカデラーが姿を現わした。
 自在に身体をミクロ化することもできるミツルギ忍者。ネズミが現れると、今度はネコに化けて追い払う・・・と、もうなんでもありの便利な忍法だ。それにしても江戸時代の火薬で死ぬ(と思われる)ムカデラーは、とても現代の自衛隊の相手にはなりませんなぁ。

第4話 黄金妖怪カネクジラの魔力!

 輸送中の幕府の御用金が次々とサソリ軍団に盗まれた。ミツルギ三兄弟は新たに運ばれてきた御用金を彼らの手から守ろうとするが、黄金妖怪カネクジラがその御用金を食らい、地中へ消えてしまう。そして江戸の町に姿を現わしたカネクジラはそれを毒の小判に変えて撒き散らした。欲にかられて小判を拾った人々は無残にも倒れ、死んでいく。そこで三兄弟は御金蔵の千両箱を使ってカネクジラをおびきだし、ミツルギとなってこれと対決するのだった。
 カネクジラをおびき出すためとはいえ、ミツルギ三兄弟が千両箱を奪ってしまうという展開には驚かされる。しかもその中に火薬を仕掛け、これを食べようとしたカネクジラもろとも爆破してしまっているのだが・・・立派な犯罪だね、こりゃ。

第5話 地震怪獣出現!

 不審な地震が次々と起こり、それは次第に江戸城へと近づきつつあった。地底を掘り進んで地震を起こす怪獣グラグランの仕業だ。だが、硬い岩盤と地下水にさえぎられ、さすがの怪獣も隅田川の下をくぐることができない。そこで魔人サソリは地震学者の良元をさらい、彼の持つ資料によって地盤の柔らかい部分をさぐろうとした。ミツルギ三兄弟は良元を助けようとするが、グラグランの放つ糸に捕えられ、窮地に陥る。
 前回までのサソリ忍者ははリーダー格も下っ端も同じ包帯顔で、区別がつきにくかったのだが、今回よりリーダー格は別のマスクをつけるようになった。マスクといってもオリジナルではなく、『レインボーマン』の敵キャラ同様、オガワゴム製の既製品である。それにしても隅田川も越えられない地震怪獣っていったい・・・。

第6話 怪獣ガンダラーの襲撃!

 将軍家に献上されるはずの南蛮渡来の象が二頭、サソリ軍団に奪われた。やがて奇妙な笛の音と共に子供たちが姿を消すという事件が続発。象が笛吹きの芸を得意としていることを知ったミツルギ三兄弟は二つの事件のつながりに気づき、将軍家の子供になりすましてサソリ軍団を罠にかける。だが、サソリの手によって二頭の象は怪獣ガンダラーとなって出現。さらに誘拐した子供たちと引き換えに「智」「仁」「愛」の三つの剣を要求され、三兄弟はやむなくそれを承諾するが、剣を手にしたサソリ忍者は思わぬガンダラーの襲撃を受けた。剣には象の好物の香りが塗りつけてあったのだ。
 忍法「若返り」で子供にまで姿を変えてしまうミツルギ三兄弟。ミクロ化や動物への変身もできるのだから最早当たり前かもしれないが、やはり凄い忍法だ。また、象の首を二つつけた怪獣ガンダラーとミツルギとの戦いはシリーズ中でも特に見応えのある対決シーンとなっている。ちなみに本物の象のシーンは冒頭にあるが、動物園の象を写したフィルムをイメージとして挿入しているだけで、さすがに時代劇のセットの中に象を持ち込むことはできなかったようだ。  

第7話 動く大要塞ロードス!!

 銀河の幼なじみで、剣持一族の若者・剣持一平は徳川幕府に対して強い不満を抱いていた。戦国時代に最強の戦闘集団としてならした剣持一族はその力を認められ年貢の免除を約束されていたのだが、今になって年貢を要求してきたからだ。魔人サソリはそんな彼の不満と敵意を煽り、一平によって先導された一族の若者たちは幕府に反乱を起こすべく立ち上がった。そしてサソリに与えられた兜と鎧を身につけた一平の身体は大要塞ロードスと一体化してしまう。ミツルギ三兄弟は巨大神に変身するが、ロードスの中に一平がいるため攻撃することができない。
 
「一平がいる限り攻撃できない」と言いつつ、結局は一平もろともロードスを倒してしまうミツルギ。なんとも後味が悪い。まるで五月人形のようなロードスがなぜ”要塞”と呼ばれているのかも気になるところだが・・・。なお、この回では、なんとシリーズ通して唯一”ヘルメットを脱いだ三兄弟”の姿が見られる。

第8話 黒い悪魔が赤い血を呼ぶ!!

 関が原の合戦で破れた豊臣家の残党は、起死回生を願って戸塚村に鉄砲百丁と三万両の黄金を隠していた。それに目をつけたサソリ軍団は残党を誘拐してはそのありかを聞きだそうと拷問にかけていたが、彼らの口は堅い。豊臣家には既に謀反を起こすつもりはなく、今はただ平和な生活を願っていたのだ。ミツルギ三兄弟はサソリ軍団の手から彼らを守ろうとするが、家老と若君が拉致されてしまう。若君を人質にとり、ついに家老から鉄砲と黄金のありかを聞き出すサソリ忍者。三兄弟は頭領たちを救出するが、彼らの前に怪獣モグロンが立ちはだかった。
 怪獣モグロンの襲撃に対し、おもむろに竹を一本切る銀河。何をするのかと思えば、なんと竹筒でバズーカ砲を作ってしまうのだ。これはもう、赤影もびっくり! ところで、今回のお話のポイントとなる豊臣家の鉄砲と黄金だが、ラストのナレーションによれば「ミツルギ三兄弟によって処理された」のだそうだ。どうやって処理したのか非常に気になるところだが・・・。

第9話 決死の空中戦 怪鳥ベラドン!

 サソリ軍団の操る怪鳥ベラドンが空から城をつかんで盗みさっていった。だが、怪鳥の奇怪な声を聴いた人々はその間気絶してしまい、なぜ城が消えたのか知る由もない。一部の子供たちは鳴き声にまどわされることなく事件を目撃していたものの、サソリ軍団はそんな子供たちを次々と殺害していった。ミツルギ三兄弟は事件を目撃しながらサソりの手から逃れていた少年の案内でベラドンが住みかとしている山中へ赴き、巨大神となってベラドンに挑むが、空を飛べないミツルギは空中からの攻撃の前に敗北を喫する。ついに江戸城を狙う怪鳥ベラドン。長老・道半に空飛ぶ秘術と秘剣を与えられた三兄弟は再び変身してベラドンと対決する。
 
「いよいよ危ないとなったらこの剣を使え」「この剣にはどのような力があるのですか?」「わしも知らん」―――道半と銀河の会話だが、こんな間の抜けたやりとりが何とも言えない。結局この剣には、刺した相手が爆発するという能力があったようだが・・・。ベラドンは空飛ぶ怪獣なので、当然のことながら吊りによるモデルアニメとなっている。翼から爆弾を落とすなど、なかなかユニークな怪獣だ。

第10話 悪魔の使者 サソリ怪獣!

 サソリ軍団の操る怪獣カブトンがある村を襲撃し、数人の子供たちと老人を残して村は壊滅した。彼らと出会い、村の惨状を目の当たりにするミツルギ三兄弟。親を殺された子供たちは復讐に燃え、村に伝わる強力な毒を手に怪獣の住む山へと出かけてしまう。だが、その毒の存在を知ったサソリ軍団はそれを江戸の井戸に放り込んで人々を殺害するべく村を襲った。子供たちを人質にとられ、捕えられる三兄弟。「智」の剣を真っ二つに折られ、窮地に陥るが、忍法によって剣を元に戻した銀河たちはミツルギに変身。少年が命がけで手渡した壷の毒を武器にして、怪獣カブトンに戦いを挑んだ。
 カブトンは毒によって頭部を溶かされてしまうのだが、それでも自由に動きまわり、座頭市のような居合抜きを披露したりしている。ストーリーはひたすら悲惨だが、特撮シーンは結構コミカルだ。

第11話 地獄の狛犬 コマンガー!

 突如出現した怪獣コマンガーは江戸の町に火を放って消え去った。狛犬が怪獣になったという噂により人々は犬を目の仇にし、盲目の少女おちよの連れていた黒犬ゴローまで彼らの標的となった。ゴローを救ったことからおちよと知り合ったミツルギ三兄弟は彼女の家でおかゆをごちそうになるが、銀河はそんな彼女に疑いの目を向けていた。だが、彗星と月光はその薄幸の少女が敵だとはどうしても思えずに油断し、おかゆに混ぜられていた痺れ薬によって身体の自由を奪われ、囚われの身となってしまう。ゴローが変身した姿こそ怪獣コマンガーであり、おちよは三兄弟を殺せば目が見えるようにしてやろうと魔人サソリにそそのかされ、彼らに協力していたのだ。銀河は彗星たちを救いだすとミツルギに変身し、コマンガーを打ち倒した。そして、おちよは三兄弟に刀を向けるも、目的を果たすことなくその若い命を落としてしまう。
 
盲目の少女が敵だったという意外な展開。彼女の目的がただ目が見えるようになりたいということであるだけに、夢破れて死んでしまうラストはあまりにも切なぎる。『快傑ライオン丸』や『風雲ライオン丸』でも数々のハードなストーリーを手がけている、まつしまとしあき氏ならではの脚本だ。コマンガーが人を食べるシーンもあり、かなりインパクトの強い作品である。

第12話 サソリ軍団全滅作戦

 次々と幕府の要人を暗殺していくサソリ軍団。それを阻止すべく行動を開始したミツルギ三兄弟の前に、最強の怪獣マグネッシーが出現。怪獣の身体から発せられる強力な磁力により三兄弟の刀は吸い寄せられ、変身不能に陥ってしまう。イナズマの術の攻撃で一時的に磁力が消え、その隙にミツルギ変身するも、剣や楯ばかりかその巨体までもがマグネッシーに吸い寄せられ、大苦戦。その時、道半の必死の祈りがミツルギ一族に伝わるもうひとつの守護神・黄金の仏像を出現させ、それと同時に彼の命も絶たれた。黄金の仏像はその手でマグネッシーから磁力を奪いとり、ミツルギは無力となった怪獣にとどめを刺した。怒り狂った魔人サソリはミツルギ三兄弟に最後の対決を迫る。苦戦しながらも再び黄金の仏像に助けられた三兄弟はついに魔人を打ち倒すのだった。
 
最終回に至ってミツルギ一族にもうひとつの守護神があるという展開になり、現れたのは巨大な”黄金の仏像”。守護神が仏像というのも変だが、道半が命に変えて出現させただけにその威力は強大で、たちまちマグネッシーの磁力を無力化し、さらに魔人サソリを火に包んで三兄弟を救った。仏像だけに手足は全然動かず、アニメーションされていないのが、ちょっと残念。炎に包まれるサソリを見ながら「苦しめ。もっと苦しめ」と言う銀河の姿には彼の歪んだ性格を垣間見たような気もする。なお、ラストシーンはさすがに使いまわしのフィルムではなく、新撮であった。


 
●データ

1973年1月8日〜1973年3月26日
フジテレビ系 毎週月曜午後7:00〜7:30放映
カラー 30分 全12本
 国際放映作品

[スタッフ]
プロデューサー/梅村佳史  脚本/高久進、西奈一夫、松岡清治、新井光、まつしまとしあき、島田正之、秋月はるお  監督/土屋啓之助、香月一郎  音楽/鈴木征一  撮影/並木宏之  照明/関川次郎  録音/豊田博  美術/筒井増男  編集/池月正  助監督/石井武彦  日本アニ・クリエーション・プロ/中村武雄、山下宏、高森菱児、平田礼一  効果/石田サウンド・プロ  制作担当/小島高治  現像/東洋現像所  舞台装置/美建興業株式会社  制作/フジテレビ、国際放映

[キャスト]
銀河/水木襄  彗星/佐久間亮  月光/林由里
殺陣/林成二郎、安川勝人、西公一郎  ナレーター/伊武正己

[主題歌]
走れ!嵐の中を (作詞/雨宮雄児  作曲/水上勉  唄/水上勉、コロムビアゆりかご会  コロムビアレコード)