特撮同人誌の転売


 先日、何気にネットオークションを見ていたら、当会発行の同人誌がいくつか出品されていた。販売価格の3〜5倍くらいの値がついていたが、それでも結構入札があったりするから驚きだ。先頃の冬コミで販売したばかりの新刊「ミツルギ小全」などは販売価格が200円なのに1500円もの金額で入札されていた。自分で言うのもなんだが、A5版でたった24頁しかないペラッペラの本である。販売価格を決めた時も、200円はちと高いかな…と思ったくらいだ。1500円もの価値があるとはとても思えないし、自分だったら絶対こんな値段では買わない。
 高値で売れる同人誌といえば、絵の上手いエロ漫画くらいかと思っていたが、最近は特撮系も結構売れているらしい。それも当会で製作しているような、全話のストーリーガイドを中心とした研究誌に高値がつくようだ。「まんだらけ」に「特撮資料本高価買取」といった貼り紙があったのを見たこともある。かと言って、コミケで何百冊も売れるのかというと、そうでもないから不思議だ。結局のところ、オークションでもマニアショップでも、そこに一冊しかないから高値でも売れるのである。欲しい人はそんなに多くないが、個人の欲しい度合いが極めて高いという事であろう。数が少なければ高くなるのはプレミアの論理だが、同人誌に限らず、特撮ファン相手の商売は特にそれが極端になるようだ。
 買ってくれたその人が隅々まで本を読んでもらえるのならば作り手としてこんなに嬉しいことはないのだが、ストーリーダイジェストをきちんと全部読んでくれる人はそうはいない。結局のところ特撮ファンの多くは資料が欲しいだけであり、資料を入手した時点で満足してしまう。誰が編集したかなんてほとんど関係はなく、とりあげられた作品が珍しいかどうかの方が問題なのだ。この状況はちと寂しい。

 これが封印された作品などになると、プレミア度はさらに高くなる。以前、コミケで『ウルトラセブン』幻の12話だけを400頁近くものボリュームで徹底研究した同人誌が販売されていたが、3500円の販売価格はマニアショップやオークションですぐに何倍にもなり、実際にそんな価格で買った大馬鹿者を知っている。ちなみにこの同人誌を発行したサークルさんはその後も同じくらいのボリュームの「12話本」第二弾を発行。友人が購入したのを見せてもらったが、30分1本だけの作品を題材によくこれだけのものが作れるなぁと感心するばかりである。封印作品を扱う危険度や著作権問題などは別にして、私のような根性なしにはとても真似できない。しかしながら自分的には封印作品だからという理由だけで『ウルトラセブン』のたった1本だけをとりあげるという姿勢には疑問を感じざるを得ない。封印作品をやたらとありがたがる風潮にもうんざりしている。
  私も「セブン12話」は見たことはあるが、たいして魅力のある作品だとは思わなかった。もしこれが封印作品でなかったら、マニアの注目を浴びることはなかっただろう。まだ陽の目を見ていない作品はいくらでもあるだろうに、作品の良し悪しは度外視して封印されていることだけに興味を持つのはどうかと思うのだ。封印されていなくても『ジャングルプリンス』なんか、興味を持つファンが殆どいないからソフト化の話なんかまったくなく、いまだに全話幻のままだ。それにウルトラ関連の作品に限っていえば、劇場作品『アニメちゃん』はCS放送もなければソフト化も一切されておらず、「セブン12話」よりよっぽど幻の作品なのに、これを見たいという声を聞いたことがない。カネゴン、ピグモン、ブースカと、人気怪獣が三匹も出てるのに。ところで、その「セブン12話」も十数年前には違法コピーしたビデオが七万円ほどで売られていると聞いたことがあるが、現在はネットオークションで多く出回るようになったため随分と安くなったらしい。いいこと・・・なのかどうか、よくわからないが・・・。

 購入者がオークション等で転売することに関して、同人誌を製作しているサークルの中には「苦労して作ったうちの本で金儲けをするとは許せん」と怒りをあらわにする方も少なくないと思う。前述の「セブン12話本」を販売していたサークルさんなどは一人一冊限りと、まるでスーパーの特売品のような売り方をして転売防止対策をしていたほどだ。だが、ダビングビデオの販売と違って、同人誌の転売自体は違法ではない。誰かに迷惑をかけるわけでもない(高い金で同人誌を買ってしまった人は、自分で判断して買ったのだから仕方がないだろう)。違法でなく誰にも迷惑をかけないのならば、買った本をどうしようが買った人の勝手だと思うので、私は別に「転売するな」とは言わないし、転売防止のための対策をするつもりもない。実際、コミケでは一人で4〜5冊づつ買っていかれる人が時々いるが、何も聞かずに売っている。転売されたくないのなら誰も欲しがらない本(バッ●テイスト作品の研究誌とか)を作ればいいのだ。転売以前にコミケでも売れないけど。
 
ただ、オークションに出ていた当会の本は、我が家の押入れに在庫がまだまだ残っているものばかりだ。調子に乗って作り過ぎ、在庫の置き場所に困っているものもある。「うちで買ってよ!」と、入札者には言いたいが、おそらくこのサイトで通販していることなど、まったくご存知ないのであろう。同人誌に限らず、特にマニアックなモノを買いたい時は、こまめにネット検索しないと損だよなぁ・・・と思う今日このごろである。

 
2005.1.30