ゴジラ新作にジェット・ジャガー?


 日本の特撮映画の中で最も有名で息の長いのが、言わずと知れたゴジラシリーズだ。『ゴジラ2000MILLENNIUM』(1999年)より4年ぶりに再開された新シリーズも、正月映画としてすっかり定着した感がある。しかしながら、ひとつの作品が生み出されるには、様々な企画案が検討されているのは想像に難くない。ゴジラのような世界的に注目される作品ならばなおさらであろう。
 さて、そんな検討用のゴジラ企画をここにひとつご紹介したい。タイトルは『ゴジラ・ラドン・アンギラス〜大怪獣地上最強戦』。プロットを書いたのは、本サイトにも色々と協力してもらっているバッドテイストの岩佐陽一氏。東宝の発注によるもので、今年(2003年)の12月に封切られる作品との企画として検討された。この作品にはタイトルに名を連ねている三大怪獣に加え、ジェット・ジャガーやエビラも登場。特にジェット・ジャガーはストーリーの中核となっており、70年代を多分に感じさせる筋立てとなっていた。
  すでに報道されているように次回作は『ゴジラ×モスラ×メカゴジラ 東京SOS(仮)』に決定されたが、このような企画もあがっていたというのも、なかなか興味深い話である。


「ゴジラ・ラドン・アンギラス〜大怪獣地上最強戦」

 脳波工学の世界的権威、アメリカ在住のリチャード・クレイマー博士が何者かに誘拐された。数日後、日本の古生物研究の権威・山根潤三博士が忽然と姿を消した。この二つの事件に何らかの関連性があると見たインターポールの捜査官、ジョン・ホフマンが来日。日本の警視庁、金井玲子警視と合同捜査を行なうことに。日米の捜査法の喰い違いから当初は対立する二人だったが、互いの捜査線上に、とある共通の名前が浮かび上がる辺りから、次第に心を通わすようになっていく。その人物の名前とは――ベッケン・ハイム教授――現代遺伝子工学の第一人者だ。”狂気の天才科学者”
の異名を持つ彼に、何やら激しい胸騒ぎを覚える二人。そのベッケン・ハイムも、なぜか行方は杳として知れなかった。
 その頃、日本海を航行する船舶が次々に洋上で爆破・炎上する事件が発生。にわかに日本と大陸間の緊張感が高まった。
 そんな折、城南大学助教授・富川昭三博士が大学の研究室で1機の巨大ロボットを完成させた。その名はジェット・ジャガー。土木作業や災害救助活動に於いて比類なき威力を発揮する、クリーンエネルギーで動く未来のロボットだ。博士の教え子で大学院生の岸田龍介をパイロットに、機動テストを行っている最中、1羽の巨大怪鳥が飛来。ジェット・ジャガーを掴んで飛び去った。車で後を追った富川教授も途中で消息を断ってしまう。
 一方、日本と大陸某国の合同調査団が日本海を航行中、ゴジラが出現。事件の犯人が判明すると同時に、新たなる脅威が調査団を襲った。巨大なエビの怪獣が出現! ゴジラに襲い掛かったのだ。
 同時刻、とある工場ではジェット・ジャガーの大改造計画が進行していた。平和のために作られたはずのジェット・ジャガーに数々の武器が装備されつつある。この光景を、後ろ手に手錠を掛けられたと富川助教授と龍介が苦々しい表情で見詰めていた。やがて二人は、とある部屋に連行される。そこで二人が目にしたのは――ベッケン・ハイム教授!?
 教授は自らの目的を二人に語った。
 それは、世界最強と言われる生物、神の獣=GODZILLAを下し、自らが地上の覇者となること。そのため、拉致した山根博士に命じてアンキロサウルス、プテラノドンの化石を入手。遺伝子工学の知識で現代に復活させると同時に、クレイマー博士の脳波工学を応用した脳波コントロール装置で自ら2大モンスターを操り、ゴジラに挑戦! 最新鋭の科学兵器を装備したジェット・ジャガーでとどめの一撃を加えようというのだ。
 手始めに博士はゴジラの能力を探るため、エビの遺伝子から作ったモンスター=エビラをゴジラに向かわせた。善戦も虚しく、ゴジラの放射能火炎に焼き殺されるエビラ……だが、ベッケン・ハイム博士は笑う。これでゴジラのDATAは取れた、と。
 その狂気の沙汰に顔を見合わせる富川助教授と龍介。二人は、他の二博士を助けて何とかベッケン・ハイムの悪魔の館からの脱出を試みるが……。
 日本の新潟に上陸するゴジラ。その前に1羽の怪鳥が飛来した。プテラノドン=ラドンだ。空からの攻撃に苦戦するゴジラ。戦いながら富山県に移動する2大モンスター。そして、黒部ダムを突き破って現われたのはアンキロサウルス=アンギラスだった。ベッケン・ハイムの遺伝子工学によって改造・強化され、さらに彼の天才的頭脳を持つ2大怪獣の猛攻にさしものゴジラも苦戦を強いられる。
 そして、ついにジェット・ジャガーが出撃! 山梨県・甲府を舞台に、ゴジラとラドン・アンギラス・ジェット・ジャガー連合軍が死闘を繰り広げる。遂に力尽き、倒れるゴジラ。勝どきをあげるベッケン・ハイム・勢いに乗った彼は、ラドン、アンギラス、ジェット・ジャガーで東京へ攻め込まんとする。
 そんな折、ベッケン・ハイムの館が甲府にある事実を突き止めたホフマンと玲子は、館に突入。富川と龍介の救出には成功するものの、その際、クレイマーと山根、両博士は殺されてしまう。
 怒りに燃える龍介はジェット・ジャガーを奪還。自らこれを操縦し、ラドンとアンギラスに戦いを挑んだ。だが、2大モンスター手強し! ジェット・ジャガーは窮地に立つ。そんなジェット・ジャガーのピンチを救ったのは、意外にも復活したゴジラだった。
 ゴジラとジェット・ジャガーの攻撃にラドンとアンギラスは遂に倒れる。同時に脳波コントロール装置も大破。ベッケン・ハイムは廃人と化してしまう。
 そして――ジェット・ジャガーに対峙するゴジラ――。緊張の一瞬! と、その時ゴジラの足下が崩れ、海中に没した。そのままゴジラは浮かび上がって来ない。後には気泡だらけの海面をただただ見詰めるだけの、龍介に、富川、ホフマン、玲子の姿があった。