宇宙刑事アラン
ビーズ星の大陰謀





登場人物

宇宙刑事アラン(ビーズ星地区担当)
×
リン王女
クリア国王
アン王妃
×
ヒグマン王子(クリア国王の弟・野心家)
ハンターキラー(地球を追放された元宇宙刑事)
×
宇宙の無法者共
ワンダー
ギルビー
ジグマ















PROLOGUE


 ヒグマン王子は地下牢に入れられてしまった。
 ヒグマン王子は、クリア国王の弟である。
 サンドルバや魔女キバと結託し、サイミンダブラーにリン王女を人質としてさらわせ、国王や王妃を脅迫して、ビーズ星の実権を握ろうとしたのだ。
 宇宙刑事アランがリン王女を救出して帰国しなければ、ビーズ星のダイヤモンドはほとんど運び出されていたであろう。
 宇宙犯罪組織マクーに吸い取られて・・・。
 地球から帰国したアランは、ヒグマン王子と反乱軍を制圧し、地下牢にとじこめられていたクリア国王とアン王妃を救出したのだ。
 立場は逆転し、ヒグマン王子は地下牢につながれることになったのである。
 ビーズ星は再び平和な惑星になった。









PART1


「リンがこんなに元気に帰ってくるなんて夢のようです。アラン、あなたはビーズ星の救世主です」
 アン王妃がリンの肩を抱きしめながら言う。
「なにか欲しいものはないかねアラン、礼がしたいのじゃ。なんならこの国のダイヤモンドの半分を分けてもよい」
 クリア国王も、目に入れても痛くないリン王女が帰ってきたことで上機嫌である。
「私は宇宙刑事としての任務を遂行したまでです。礼などいりません」
「それではワシの気がすまない。なんなりと言うてくれ」
「・・・王様、私には一つだけ不可解なことがあります」
「なんだね」
「ヒグマン王子は只単に王位が欲しかったのでしょうか」
「どういう意味かね」
「つまり王権が欲しければ反乱を起こし、王様を暗殺すればいいわけです。ところがヒグマン王子はそれをしなかった。私が帰って来た時も王様や王妃は幽閉されているだけでした。つまりですね、リン王女をなぜ地球まで連れ去ったのか、それも宇宙犯罪組織マクーと結託してです・・・・・・少し大袈裟すぎるように思うのです」
 アランに核心をつかれて、クリア国王はしばらく絶句していた。だが、決意したようにアランの目を見た」
「ついて来なさい」
 クリア国王が先に立った。
 長い石段をおりていくと、それは石壁のめぐらされた一室になっていた。
 その石壁に触れると、石壁が動いた。
「あッ」
 アランは声をあげた。
 そこにはダイヤモンドの扉がある。
 まぶしくて目も開けていられない。
 アン王妃もリン王女も息をのんでいる。
 クリア国王は、一角にかくしてあったビーム発生装置を取り出し、七色のビームをダイヤモンドの扉に向けて照射した。
 ダイヤモンドの扉が静かに開いた。
 そこには、黄金の水晶体で出来ている鎧がおさまっている。
「ダイヤアーマだ」
 DIA・ARMOR(ダイヤの鎧)である。
「ヒグマンはこれを欲しがったのだ」
 アランは目を見張った。
 ダイヤアーマが目もくらむような輝きを発している。
「これを着た者は無類の強さを持つと伝えられている」
「無類の強さ?」
「そうだ。この鎧を着た者は銀河の王者になれるとの伝えがある。ただし、心正しい者が纏えばの話じゃ」
「心正しくないものが纏えば?」
 アランが聞いた。
「さあ・・・これは代々わが国に伝わる伝説の鎧じゃ。誰もためした者はいない」
 クリア国王は、そういいながら再びダイヤモンドの扉を閉じた。
 ヒグマン王子は、このダイヤアーマむを纏って銀河制圧の野望を抱いたに違いない。だから、リン王女を遠く地球にまで連れ去っておいて国王を脅迫しつづけたのだ。









PART2


 アランは日常生活に戻った。
 アランの愛機、超次元高速機ブルアラン号が宇宙空間を航行する。
 ビーズ星を中心とするいくつかの惑星の平和を守るのが宇宙刑事アランの使命であった。
 その時、アランの愛機にSOS信号がとびこんできた。
 ビーズ星の衛星の一つ、ミル惑星からだ。ミル惑星はダイヤモンドの鉱脈があり、クリア国王の所有物の一つであった。
 アランは愛機をミル惑星に着陸させた。
「落盤事故だ。大勢が生き埋めになっている」
 鉱山職員がアランに訴えた。
 アランはとりあえず事故現場を確認するために鉱道に入りこんだ。
 長い鉱道に入りこんでゆく鉱内バス。だが、事故らしい形跡がない。
「おかしい」
 アランが思う。
 その時だ。ドカン!
 鉱道に爆発が起こり、大きな落盤事故が起こった。
 アランはバスもろとも吹きとばされ、崩れ落ちた岩石の下敷きになってしまった。
「これでアランのヤツもお陀仏だ。うまくいった。ハハハハ」
 その笑ったのは、ハンターキラーであった。
 マクーを追放されたハンターハラーは、宇宙海賊に拾われ、その仲間をひき連れて大陰謀を実行するためにやって来たのだ。
「久しぶりだぜ、操縦レバーを握るのは。ゾクゾクするぜ」
 ハンターキラーは、アランの愛機のコックピットにおさまり、機を発進させた。
 仲間の荒らくれ共も各々の宇宙船でハンターキラーを追う。
 めざすはビーズ星だ。
 ハンターキラーかせヒグマン王子を救出するのにさほどの時間はかからなかった。
 国王側の軍隊といえども、超次元高速機と宇宙海賊船を敵に回して戦えるわけがないのだ。
「なぜオレを助けた」
 ヒグマン王子がハンターキラーにたずねた。
「あなたと組んで仕事をしたいと思いましてね、ヒグマン王子」
 ハンターキラーがずるそうな独眼を細めて言った。
「まずは礼を言う」
 ヒグマン王子は、再びビーズ星の実権を握ったのだ。
「とりあえず、宇宙海賊にダイヤモンドを与えて欲しいのです。ほうびに」
「承知した。で、おまえの望みは?」
 ヒグマン王子もハンターキラーを曲者と見ぬいたようだ。
 ハンターキラーがヒグマン王子の耳元になにやらささやいた。
 ヒグマン王子の目がキラッと光った。









PART3


 ダイヤモンドの扉が開かれた。
 ダイヤアーマがヒグマン王子の手に握られた。
「夢にまで見たダイヤアーマだ」
「もうあなたは銀河一の王者です、ヒグマン王子。例えマクーといえども畏れることはありません」
 ハンターキラーはまるで自分がダイヤアーマを手に入れたようなはしゃぎようだ。
「さあ、アランを助けてくれ。約束じゃ」
 クリア国王が言った。
 命がけで守り通したダイヤアーマではあったが、ミル惑星の鉱山で遭難しているアランの映像を見せつけられては、無視できない国王であった。
「お父さま、アランを助けて」
 リン王女の涙の願いもあった。
 だが、クリア国王は、アラン救出を条件にダイヤモンドの扉を開いたのだ。
 それは悪知恵に長けたハンターキラーの計算通りでもあった。
「ハハハ、アランは邪魔なのだ。邪魔者を助けるバカがどこにいる」
 ヒグマン王子が言う。
「だましたな、この卑怯者」
「今日からはオレが国王だ。なんとでもほざくがいい」
 クリア国王とアン王女は、ダイヤモンドの室に閉じこめられてしまった。
「お父さま、お母さまを出して下さい。このままでは死んでしまいます。この室は空気口がないのですよ」
 リン王女は嘆願した。
「さあ、酒の用意だ。今夜は飲んで歌うんだ」
 念願のダイヤアーマを手に入れ、ビーズ星の王権をも手に入れたヒグマン王子は喜びを爆発させた。
 リン王女に酒を注がせ、女たちの踊りに手拍子を打った。
 ハンターキラーには、大きな野心があった。ダイヤアーマを着たヒグマン王は、おそらく全銀河の征服にのり出すだろう。
 ハンターキラーも副官として働き、やがて地球に攻めこみたい。
 地球の支配者になること。これがハンターキラーの野心である。
 ギャバンに敗れ、そしてサンドルバのために地球を追放されたハンターキラーにとって、再び地球に住みつくことが夢なのだ。青く輝く銀河のオパール、地球。緑と水の惑星、地球・・・。
 ハンターキラーにとって、地球の支配者になることが長年の希望なのであった。
「酒持って来い、リン。じゃんじゃん持って来い」
 ヒグマン王子が大声で命じる。
 宇宙海賊共もかかえきれないほどのダイヤモンドを枕に酔いしれている。
 リン王女は黙ってその場を去った。
 だが、リン王女は酒倉には行かず、格納庫へ直行した。
 そこには国王機がスタンバイしていた。
 国王の将校がリン王女に協力したのだ。
 リン王女はミル惑星へと飛び立った。
 もちろんアラン救出のためである。
 酔いつぶれそうになっているはずのヒグマン王子の目がキッと光った。
 ヒグマン王子は国王機が飛び立ったことを察していた。









PART4


 リン王女と国王将校たちの手でアランは鉱道から救出された。
「アラン、しっかりして」
 リン王女が懸命に励ます。
「大丈夫、たいした傷ではありません」
 アランは笑顔さえ作ってみせた。
 だが、長時間鉱道に封じこめられていたのでアランの体力はいちじるしく弱くなっていた。
「どうだ。戦えるかね」
 朝霧に立つのは、ダイヤアーマを纏ったヒグマン、そしてビーム銃を持ったハンターキラー、それに宇宙海賊共だ。
 アランが立ちあがった。
「無理です、その体では。アラン」
 リン王女が制する。
「蒸着!」
 アランの声がひびいた。
 愛機、超次元高速機ブルアラン号のコンピュータが答えた。
「リョウカイ。タダイマヨリ、コンバットスーツヲデンソウシマス」
 コンバットスーツの原子体が照射され、アランに蒸着された。
 そのタイム、わずか0.05秒だ。
「宇宙刑事アラン」
 蒸着を終えた宇宙刑事アランの声が早朝のミル惑星にひびいた。
 宇宙刑事アランとダイヤアーマを纏ったヒグマンの一騎討ちがはじまった。
 伝説の鎧ダイヤアーマ、これを纏った者は無敵の強さを発揮するという。
 ヒグマンのダイヤ剣がダイヤレーザーを発して宇宙刑事アランを襲う。
 ピカッと光る黄金の光沢に、アランのコンバットスーツのレーザースコープも視界を失ってしまうほどである。
「レーザーZビーム」
 宇宙刑事アランのZビームをダイヤアーマは軽くはじきかえしてしまう。
「まさに伝説のダイヤアーマだ」
 アランも内心あせる。
「アランを一気に引きちぎってしまえ」
 ハンターキラーが宇宙海賊たちに命令した。
 宇宙海賊船がビーム砲で宇宙刑事アランを攻撃した。
「電子星獣ブル」
 宇宙刑事アランは電子星獣ブルにのりこみ、宇宙海賊船と戦った。そして撃破した。
「動くなアラン」
 地上におり立ったアランに声がとんだ。
 リン王女がハンターキラーに人質にされているのだ。
「それ以上抵抗すると王女の命はないぞ」
「アラン、私にかまわず戦って」
 リン王女が叫ぶ。
 だが、宇宙刑事アランは手にしたレーザーブレードを投げ捨てる。
「さあ、ヒグマン様、とどめを」
 ハンターキラーが言う。
 ヒグマン王子がダイヤ剣を上段に構え、宇宙刑事アランを一刀両断に切り裂こうとする。
 その瞬間、ヒグマン王子の纏ったダイヤアーマが光となってとび散った。
「おおッ!?」
 驚愕したのはヒグマン王子である。
「おのれアラン」
 ヒグマン王子がハンターキラーのビームガンを奪って宇宙刑事アランを射とうとする。
「アランダイナミック!」
 素早くレーザーブレードを拾ったアランが豪快にヒグマンを斬った。
「わあぁ! ギャッ!!」
 ヒグマン王子が蒸発するようにして消え失せた。
「夢が消えた。また破れてしまった」
 ハンターキラーが頭をかかえた。
「アラン、ひと思いに殺ってくれ。斬ってくれ、さあ斬れ」
 ハンターキラーはやけっぱちだ。
「レーザーブレードが汚れる。貴様のような卑劣漢を斬ったらな」
 宇宙刑事アランが吐き捨てるように言った。









EPILOGUE


 宇宙刑事アランによって、クリア国王とアン王妃はダイヤモンドの扉の室から無事に救出された。
 その時アランは見た。
 ダイヤモンドの扉の室に、ミル惑星でヒグマン王子の体から光となって消滅したダイヤアーマがそこにあるのを・・・・・・黄金の光を放って・・・・・・。
 
 
(END)