X68000ゲームレビュー




グラディウス (シャープ)
1987年/横シューティング



初代X68000のオマケソフトとして付属されたゲームが『グラディウス』だった。
『グラディウス』と言えば当時のアーケードゲーム憧れタイトルの代名詞。
1985年にアーケードに登場したグラディウスは、
それまでMSX、ファミリーコンピューター、X1、PC88などに移植されてきた。
だが、それらはいずれもアーケード版『グラディウス』そのままではなく、
代替品としての存在であった。
スペック的に家庭用ハードでアーケードゲームの内容そのままを遊ぶというのは厳しい時代で、
アーケード移植は、そのハードに合わせたアレンジがされて当然という世の中だった。
そんな中で、ほぼアーケードと同じ内容の68版『グラディウス』は、
抜群のインパクトを与えるベンチマークとなった。
しかも本体に付属させる事で、その後の68の方向性をユーザーにアピールする事に成功したと言えるだろう。
さらに3ヵ月後に『ゼビウス』、6ヵ月後に『スペースハリアー』がリリースされた事で、
X68000のイメージは孤高の存在として確立したと言えるだろう。

また、こんな話もある。
パソコンは高価である。
初代X68000は369000円であった。
だが68はどうやらアーケードゲームがそのまま再現できるマシンであるようだ。
「なんだ。基盤買うと思えば安いじゃないか。」
これにより、ゲームをやるために高価なアーケード基盤を買ってしまうような濃いマニア達を集める事になる。
そうして集められたパワーユーザー達によって、その後独特の68文化を形成する事になっていくのである。
68版『グラディウス』を開発したのはSPS。



ナイアス (エグザクト)
1990年10月/横シューティング
フロッピーディスク2枚組
8700円



新潟のパソコンショップがゲーム制作に参入した第1弾タイトル。
突然現れた名も無きメーカーが技術力の高さを猛烈にアピール。
以後「エグザクトは高技術者集団だ」というイメージを印象付けた。
当時の“凄い技術”の代名詞であるラスタースクロールを
惜しげも無くアピールしていたのが記憶に鮮明だ。


また、高速スクロールステージ、ワイヤーフレームのビジュアルシーン、
ボスの段階的な形態変化・・など、
シューティングの流行をおさえている作りだ。
 
武器はカプセルで取得。
バルカン、ワイドショット、レーザー、ホーミングミサイルの4種類で、
同じカプセルを取る事で強化される。
それとは別にオプションがあり、こちらもカプセルで性能の違うものに切り替えられる。
(使いにくいオプションが多いので捨てプレイで一番マシなオプションを選んでおくのが吉)
死ぬと使用中の武器が無くなってしまうので、なかなか強化を維持出来ない。
ショットボタンと武器切り替えボタンのシンプルな構成。
バルカンでしか壊せない壁やレーザーは強力だが後方には撃てない・・など、
武器切り替えの意味も出そうとしているのは好感。
 
他の68シューティング同様に高難易度だが、意図的に安全地帯を用意するなどの配慮があり、
理不尽さは他の作品ほどは感じなかった。(純粋に難易度という意味では理不尽だけどw)
コンティニュー機能はあるが回数制限がある。

このゲームは実質6人のスタッフで制作されたようだ。





ソルフィース (ウルフチーム)
1990年11月/横シューティング
フロッピーディスク3枚組
8800円



ベーマガの投稿プログラムで有名になったBug太郎さんが製作した横スクロールシューティング。
Bug太郎さんの得意とする回転拡大縮小プログラムを多用した演出が多々見られ、
実験的な試みも多く見られる68000オリジナルシューティングとなっている。
(のちに発売されたMEGA-CD版は本作の移植である)


 
8方向移動とショットボタン1つの構成。
ショットボタンを離した状態で移動すると上部と下部の砲の角度が変化する。
この特性を使って攻撃の方向を調整するのは、
同じウルフチームの『グラナダ』に似た特性だ。
パワーアップアイテムを取ると両砲とメイン砲の3ついずれかの攻撃を変化させる事が出来る。
(取るときの位置で決まるのは『シルフィード』っぽい)



 
全7ステージでステージの最後にボスがいる構成。
コンティニューは無限に出来るが、6面以降はコンティニューしても5面の最初からになる。
 
シンプルながら単純ではないプレイ設計。
爽快感もそれなりにあって良シューティングだと思う。
多関節キャラなどの仕掛けも面白いし。
 
自機が割と大きめであると同時にアタリ判定も大きく、
難易度を高くする要因となっている。
(自機の翼の先とボスキャラのアンテナの先が触れただけで爆死・・とかw)
特に終盤の難易度は何度も心が折れそうになった。
特に後半のボス戦は追尾してくるキャラとボスの攻撃が連携して移動場所を封じてくるので、
上手く誘導しないとすぐに回避不能になる。
また、壁に触れると弾かれる仕様で、
壁から弾かれて敵の弾に当たる事も多発した。
 
ステージ7の緑色のボス(最終ボス一つ前)とのバトルでは何度も瞬殺され、涙目必至。
緑ボス撃破後に最終ボスが出たときは激しく絶望したが、
なぜか本ゲーム中で最弱だった(^^;


 
ウルフチームというと完成度が今ひとつのものが多いメーカーだったが、
『ソルフィース』と『グラナダ』だけはそれに該当しない完成度だったという印象だ。





スコルピウス ( 新声社)
1991年5月/横シューティング
フロッピーディスク2枚組
7800円



アーケードゲームを題材にした雑誌「ゲーメスト」。
その出版社である新声社から発売された横スクロールシューティングである。
様々なゲームを研究し尽くしている人達が考えたゲームなんだから、
よっぽど凄いゲームに仕上がってるんだろう・・と当時は純粋な期待を寄せていた。
(今振り返ってみると、どこまでゲーメスト編集部の意見が反映されているか定かではない)
 
まずビジュアルが68オリジナルタイトルに期待するものに達していない。
なんだかヘタなメガドライブソフトみたい(^^;
そのビジュアルはゲーム性にも影響してしまっていて、
オブジェクトが平坦すぎて背景と障害の区別がつきづらかったりする。
また、自機の弾の色が敵の弾と一緒だったり、弾が処理の関係で点滅してしまったりと、
設計的にも荒い。
 
最大の特徴はサソリのシッポのようなものをムチのように投げる特殊武器だが、
この武器の挙動制御が難しく、これを自在に操りながら敵の弾を避けるのは至難の業である。
まず打ち込みたい方向に移動キーを入れなければならず、
さらに弾などを避けようと自機を動かすとシッポも形を変えてしまうので
なかなか思うようにならない。操作する気持ち良さよりもストレスの方が大きい。
R−TYPEのフォースシステムのような発明を狙ったと思われるが、
いまいちアイデアが練り切れていない印象だ。
ステージ3あたりからその操作をしなければ抜けられない箇所が増えていき死にまくる。
残念ながらそこであきらめた。
 
期待が大きかった分、落胆も大きかった一本。





ファランクス (ズーム)
1991年5月/横シューティング
フロッピーディスク3枚組
8800円



当時、X68000専用のゲームを排出していたズームの三本目のタイトル。
68の性能を存分に発揮した横スクロールシューティングで、
半透明機能、ラスタースクロール、拡大縮小演出など、
そこかしこに当時の最先端の仕掛けが見受けられる。



パワーアップアイテムを取って武器を切り替えるのだが、
それらがストックされていき、ボムとして使用すると1つ前の武器に戻る仕組み。
バイタリティが3つあり、3回ミスすると残機が減る。
武器によってクセが強い。

圧巻のオープニングやカッコイイBGMも秀逸。
ついでに箱絵もものすごくカッコイイ。

難易度は高いのだが、先の演出を見たいがために頑張れる。
のだが、ステージ5から急にゲームの雰囲気が変わる。
このステージで突然セルフスクロールになり、巨大戦艦の周囲をまわりながら弱点を探すゲームに。
これ正解は戦艦内部の3箇所の穴に入って中のボスを倒す事なのだが、
穴に入る順番が決まっていたり、謎解き的な構造になってしまっている。
また、ステージ7ではワープホールみたいなのを持つ敵を利用して出口を探すという
迷路化した構造になっており、いずれもシューティングのリズムを台無しにしている。
ちょっと気を抜けばすぐにミスに繋がる難易度の中で
謎解きをするのは食い合せが悪く、前半の良い雰囲気を壊しているように感じた。
結局はこのステージ7で心が折れて、エンディングまでは到達出来ていない。



サイバーコア (SPS)
1991年10月/縦シューティング
フロッピーディスク1枚組
7800円



開発元はアルファ・システム。
1990年3月にPCエンジンで発売された縦スクロールのシューティングの移植作。
プレイ感覚はドラゴンスピリットに類似しており、
対空弾と対地弾を使い分けて進む。
世界観は虫型生命体の世界で、自機も昆虫形態である。
4色のメタモル・フォーゼアイテムを取るたびに変態してパワーアップ。
同じ色のアイテムを取ると第4段階まで変態する。
だがダメージを受けるたびに前の段階に戻ってしまうので
第4段階を維持するのはなかなか難しい。
 
とにかく硬い敵が多い印象。
硬い敵を何とか回避するなり弾を撃ちこみまくって消すなりして、
目標を撃破する隙を作るゲームになっている。
ボムのような“パターン崩し”の要素が無いため、
それと相まって爽快感があまりないゲームになっている。
 
8ステージの誘導弾を撃ちまくる地上敵にめげた。





ラストバタリオン (スティング)
1991年11月/縦シューティング
フロッピーディスク2枚組
8800円



PCエンジンで発売された『オーバーライド』というシューティングゲームの移植作。
スティングとしては会社設立からの2本目であり、自社販売の1本目となる。

縦スクロール。
ステージの最後のボスがいる構成の全6ステージ。



ボタンはショットボタンとスピード調整ボタン。
メインショットとオプションパーツをアイテム取得で強化していく。
オプションパーツはアイテムの色ごとに性能が違う。(どれもクセがあって使いづらい)
基本設計は『イメージファイト』を意識しているように思える。

イメージファイト同様に、逃げまわるよりも発生する敵を素早く消していく攻めのスタイルが有効。
ボム的な攻撃は弾数制限が無く、一定時間ショットを撃たないでいると何発も使用可能。
これがとても気持ち良く、特にボス戦は通常ショットよりもいかにボムを成功させるかがキーになっている。

以上のように佳作に値する爽快なシューティングなのだが、
原作がPCエンジンである事と、スティングが無名であった事から、
68ユーザーからはさほど話題にされなかったように思える。

ちなみに今回プレイしてみて珍しいバグ(?)が発生した。
このゲームはボス戦に費やされた残り時間がスコアボーナスとして入る仕様。
ステージ2のボスを撃破したとき、残り時間が0を下回り、デタラメなボーナス値になった。(^^;



結果、ステージ3にしてスコアがカンストするという初体験をしたのだったw


プログラム:山籐武志、阿部真一
デザイン:末吉公道、高瀬 努、山縣 明、牛久宏治
サウンド:山籐靖江
スペシャルサンクス:河野光二、國弘豊文、木村俊章





ネメシス'90改 (SPS)
1993年11月/横シューティング
フロッピーディスク2枚組
8800円



誤解を受けやすいタイトル名である。
「ネメシス」とはもともとは「グラディウス」の欧米向けタイトルだった。
だが本作はそれとは関係無く、MSX版「グラディウス2」のリメイク作である。
その「グラディウス2」というのは「グラディウスII ゴーファの野望」とは別の作品で、
MSXオリジナルのグラディウス続編だった。
(余談ではあるが、MSXにはさらに3作目「ゴーファーの野望 エピソードII」というのも存在するw)
MSXユーザーしか楽しめなかったグラディウスシリーズの系譜がX68000でも遊べる!
しかもアーケードゲームのようなクオリティまでグラフィックが美しくなって!
(MSXユーザーとしてもこの変化を楽しめるのは嬉しい事だったよ)
雑誌で開発情報を知った68ユーザーは期待に胸を膨らませた。
タイトルは「ネメシス'90」。“1990年に発売されたグラディウス”という意味のようだ。
ところが開発が遅れに遅れた。(というより開発が進まなかったらしい・・)
もう68ユーザーも「発売中止の幻作品となるのだろう」とあきらめていた。
ところが68新規タイトルも少なくなってきた1993年11月。
突如、本作が発売まで漕ぎ着ける。

タイトルは1990年に発売する事が出来なかったから「ネメシス'90改」・・というわけである(^^;


 
本作が他のグラディウスシリーズと最も違う点。
それはパワーアップの仕様である。
ボスを倒すとボスのコアへと突入し、内部へと侵入出来る。
そこでコアのコアまで入り込む事に成功すると、
新たな武器を入手する事になり、画面下部のパワーメーターゲージが変化するのだ。



これが他の作品とは違った魅力を生み出しており、
次のステージはどんな攻撃が追加されるのかな?といったワクワク感を生み出している。

難易度はやはりかなり高い。
特に後半はシューティングを遊んでいるというよりも“イライラ棒”を遊んでいる感覚で、
ちょっと操作を入れ過ぎただけで壁に激突して死ぬし、
狭い通路なのに敵が弾を掃き出しまくる。
後方への攻撃手段はほとんど無いし、シールドも前方にしか張れないのに平気で後方から襲ってくる敵多数だし。
グラディウスシリーズでは、後半ミスしてパワーアップが解けると終わりみたいな所があるのだが、
さらに本作では「自機のパワーアップ度合いに応じて敵の攻撃が激しくなる」という設計もされている。
地獄である。