ジャッキー・ゲーム

#3
スパルタンX(アイレム)



1984年、アイレムが同名映画『スパルタンX』を題材に作成したアーケード向けアクションゲーム。
だが中身は映画とはまったくの別物で、
主人公のトーマス、ヒロインがシルビアという名前以外は全くのオリジナル。
トーマスもジャッキーに似せていないし、
シルビアは国籍すら変わっている。(映画でのシルビアはスペイン人)
 
映画はスペインを舞台にした現代劇であったが、
本作はオールドスタイルのカンフー映画に近い世界観。
ボスを倒しつつ階段を上がっていく構成はブルース・リーの『死亡遊戯』に近い。
 
とあるイベントでこのゲームの話題が出たとき、
それを知らなかったジャッキーが使用権を要求するというシーンがあった。
(直後に笑顔でジョークである事を示したジャッキー)
 
ではこのゲームは無断で製作したものなのかというとそうではなく、
ちゃんとタイトル画面に「PARAGON FILMS LTD.」「TOWA PROMOTION.」という権利表記がされている。
アーケード版のポスターを見ても、映画原作である事が示されている。



ではなぜここまで内容の違うゲームになったのか?というと、
おそらくは「映画の内容を見ないでゲームを設計した」のではないかと推測する。
まあ当時の版権ゲームではよくある事だ。
 
それが功を奏したのか知らないが、
このゲームは移植や続編が出るたびに原作の色が消えていった。
まずファミコン版。
宮本茂氏の熱望によってファミコン版は任天堂から発売され、
パッケージでも映画の原作色を排除。



これによって『スパルタンX』というタイトルは映画以上に有名になり、
オリジナルゲームの印象が強くなった。
さらに海外版になるとタイトルも『KUNG-FU MASTER』に変えられ、
MSX版などは『聖拳アチョー』なるひょうきんな名前に改変された。
(MSXには映画『スパルタンX』を題材にしたゲームがもう一本あったため)
 
さらにアイレムからはゲームシステムを継承した『ビジランテ』、
タイトルや主人公の名前を継承した『スパルタンX2』などが登場したが、
もはやこれらを“ジャッキーゲーム”と呼ぶには無理があるだろう。