ドリフ映画烈伝




なにはなくとも 全員集合!!
1967年芸映プロ/配給:松竹
監督:渡邊祐介 主演:ザ・ドリフターズ、三木のり平、中尾ミエ、水谷良重、古今亭志ん朝
帝評
本作は三木のり平が主演であり、ドリフはその脇を固める役割。
そのため、いかりや長介(以下チョーさん)と加藤茶のスラップスティックコントはまだ見られない。
草津温泉で赴任してきた駅長とライバルのバス会社とのドタバタから、
駅長の娘とバス運転手が結ばれていくちょっとしたロミオとジュリエット的な展開も。
バス派と電車派でドリフメンバーが二手に分かれているのも珍しい。
ドリフファンとしては物足りないが、三木のり平の妙な可笑しさが堪能できる良作である。



ドリフターズですよ!前進前進また前進
1967年東宝&渡辺プロ
監督:和田嘉訓 主演:ザ・ドリフターズ、酒井和歌子、松本めぐみ、大原麗子、藤田まこと
現在捜索中




やればやれるぜ 全員集合!!
1968年松竹
監督:渡邊祐介 主演:ザ・ドリフターズ、松尾嘉代、水谷良重、木の実ナナ、犬塚弘、安田伸
帝評
東京での成功を誓ってバラバラになった五人組が、挫折の中で奮起する痛快ドタバタムービー。
特筆すべきはチョーさんと加藤茶のスラップスティックコントで、
「てめえ誰のおかけで小学校出れたと思ってんだ?」「間違ってました」
などのバカバカしいやりとりはすでに完成されている。
映画全体のまとめ方も良く、最後まで痛快。
この映画の主題はただのバカバカしさだけではなく『俺達は凡人だけどやればやれるぜ』だと思う。
悲惨な境遇でも全体的にホノボノ感が漂うのもここから来るものだろう。



ドリフターズですよ! 盗って盗って盗りまくれ
1968年東京映画&渡辺プロ/配給:東宝
監督:渡邊祐介 主演:ザ・ドリフターズ、酒井和歌子、フランキー堺、藤村有弘、左とん平
現在捜索中



ドリフターズですよ! 冒険冒険また冒険
1968年東宝&渡辺プロ
監督:和田嘉訓 主演:ザ・ドリフターズ、小山ルミ、野川由美子
帝評
学生運動盛んな時代。風来坊のカトちゃん(チョロ)は、石コロや角材を学生達に売って儲けようとしていた。
それに誘われて一緒についてくる仲本工事(メガネ)、高木ブー(ブウ)、注さん(チュウ)。
だが警官隊の突入により敢えなく失敗。ついでにブーらを連れ戻しにきたチョーさん(アンテナ)は警察に捕まってしまう。
何とか逃げ切った4人はアングラ演劇に挑戦するもまた失敗。
チョーさんと合流した4人は熱気球による太平洋横断を計画するが・・・。

『全員集合』シリーズではいかりやにイジメられるカトちゃんだが、
本作ではカトちゃんが先頭を切ってメンバーを引っ張るC調男。
クレイジー映画で言うところの植木等の役回りだ。
こういう役回りは珍しいが、これだとドリフの中でもっとも面白いチョーさんの影が薄くなってしまう。
“チョーさんと対等の位置にいるカトちゃんの構図”に違和感を覚えた。
そんなわけで笑えるシーンは極めて少ない。
なんというか、笑わせるというか当時の世相をおちょくっているような脚本なのだ。
学生運動、街頭パフォーマンス、アングラ演劇、気球による太平洋横断…など、
ドリフのメンバー達が次々と挑戦しては「あらバカバカしい」と斬っていく。
そういう皮肉的なジョークで構成しているのが本作の特徴なのである。
最後まで遂に報われないのはいつものドリフ映画の定石か。(それでも本人達は不幸とは感じていない)
主題歌の『冒険マーチ』は何気に名曲だと思う。
アングラ俳優にコント55号が登場。
「アングラの意味不明さ」を皮肉って演じているコント55号というレアな光景が目撃できる。



ドリフターズですよ! 特訓特訓また特訓
1969年東宝&渡辺プロ
監督:渡邊祐介 主演:ザ・ドリフターズ、中原早苗、山本陽子、有島一郎、三木のり平
現在捜索中



ドリフターズですよ! 全員突撃
1969年東宝&渡辺プロ
監督:和田嘉訓 主演:ザ・ドリフターズ、梓みちよ、西崎緑、じゅん&ネネ、上田吉二郎、小松政夫
現在捜索中




いい湯だな全員集合!!
1969年芸映プロ
監督:渡邊祐介 主演:ザ・ドリフターズ、生田悦子、早瀬久美、左とん平、犬塚弘、木暮実千代、三木のり平、春川ますみ
帝評
風呂好きだったばっかりに無実の罪で放り込まれた5人組が脱獄して、
ハードボイルドを気取り地下に潜伏する。
地下でハードボイルドの特訓をするバカバカしさがGOOD。
キーワードは「それじゃあ、おめーさん何かい?」。
ヤクザ(相手は左とん平一人だけ)との抗争に助っ人として洞爺湖温泉に呼ばれたドリフの5人組。
『おっかさんみたいな人』に雇われるのだが…。
ちょっと無理のあるストーリー展開は、この場合においては○か?
若い頃の生田悦子が小柄でキュートだ。




ミヨちゃんのためなら 全員集合!!
1969年松竹
監督:渡邊祐介 主演:ザ・ドリフターズ、倍賞美津子、松岡きっこ、左とん平、三木のり平、ハナ肇、世志凡太、曽我町子
帝評
貧乏薬品工場を経営するいかりや長介が、大手薬品会社の陰謀で土地を狙われる。
チョーさんが学生時代に世話になった先生、ハナ肇とその妹ミヨちゃん(倍賞美津子)も巻き込んでの騒動。
人情役でハナ肇が出演しているところがキーポイント。
カミさんに出ていかれたチョーさんが、加藤をカミさんがわりにこき使う。
しゃべり方まで強制して、加藤もなり切ってるところがバカバカしくて面白い。
切腹自殺の一幕は、この映画のハイライトと言っていいだろう。
今回のキーワードは、「これでいいのか?これでいいのだ」
赤塚不二夫からとってきたのだろうか?




ズンドコズンドコ 全員集合!!
1970年松竹
監督:渡邊祐介 主演:ザ・ドリフターズ、宍戸錠、中尾ミエ、藤田まこと、堺正章
帝評
村のチンピラ漁師のドリフターズ。
漁に出ても何も収穫は無し、イカサマ博打はする、
旅の芝居一座があれば、ショバ代をせびりに行く。
そんなドリフのリーダーであるチョーさんは、一年発起して東京行きを決意するのだが、
メンバーが二の足を踏む。そこで加藤だけをムリヤリ連れて冷凍車に忍び込む二人。
チョーさんに服を奪われた加藤は凍死寸前に。
東京で屋台のとうもろこし売りで生計を立てる二人。
いつものように不条理なイジメを受ける加藤。
その後、チョーさんの(東京で成功したという)手紙を信じて上京してきた残りのメンバーと合流するも、
すぐにケンカ別れするチョーさんと4人。
ふとした事からヤクザのアニキに出世する加藤。
食うに食えずにオカマ役者になっていたチョーさんと合流した加藤達。
ここでチョーさんと加藤の立場が逆転する。
このときからのひたすら低姿勢になったチョーさんがやたらと面白い。
このあと、サラ金に追い込みかけられてる一座を救ったり、
チョーさんがヤクザの親分に殺されそうになったりと展開する。
シリーズもだいぶ油が乗ってきて、完成度の高い作品になっている。
中尾ミエはマドンナって言うよりもドリフのメンバーみたいな感じだ。(笑)
宍戸錠のデタラメなヤクザっぷりも素敵過ぎる。




誰かさんと誰かさんが全員集合!!
1970年松竹
監督:渡邊祐介 主演:ザ・ドリフターズ、倍賞美津子、岩下志麻、左とん平、森次浩司
帝評
時代錯誤なスパルタ道場の先生が今回のチョーさん。
権力者の陰謀により、塾生がみんないなくなってしまう。
世話になったばっかりに無理矢理塾に残されるドリフの4人。
これまでの作品よりも、チョーさんのメンバーいじめはパワーアップ。
スラップスティックコントにさらに力が入っている。
町にやってきた謎の美女、岩下志麻を巡って色ボケになるメンバー達。
ニセの手紙などでチョーさんに復讐する4人の立ち回りも見逃せない。
怒り狂ったチョーさんに牢獄へぶち込まれる。 そのとき4人が妄想する『チョーさん改造手術』がこの映画のチェックポイント。
質の高いコントに仕上がっている。
本作は全体的にドラマ性が薄く、むしろコントに近い映画と言っていいだろう。
マドンナ役の岩下志麻が今と変わってない事も見どころの一つ。




ツンツン節だよ 全員集合!!
1971年松竹
監督:渡邊祐介 主演:ザ・ドリフターズ、倍賞美津子、香山美子、伴淳三郎、左とん平、三遊亭円生、谷啓
帝評
今回のチョーさんは、屋台の人員調達係。
半ば騙されて連れてこられたドリフの4人は、監獄同然の扱いでコキ使われる。
屋台の元締めに谷啓。谷啓ならではオトボケ役はドリフコントの中で良いアクセントになっている。
オバケが怖くて夜トイレに行けないチョーさんを騙し返したり、お約束ながら笑えます。
最後はなぜかチョーさんがオリに入れられてハッピーエンド。
この逆転ぷりはもはやドリフ映画のお約束か?
チョイ役ながら伴淳三郎演じる医者との一幕も良い味が出ている。




春だドリフだ 全員集合!!
1971年松竹
監督:渡邊祐介 主演:ザ・ドリフターズ、新藤恵美、長山藍子、萩原健一、三遊亭円生、小柳ルミ子
帝評
落ちぶれた落語家(チョーさん)が地方巡業中、ヤクザの親分に「小柳ルミ子を連れて来い」と頼まれて上京。
もちろん、そんな男が小柳ルミ子に仕事を頼めるはずもなく、支度金を持ち逃げしたまま東京定住。
その下宿周辺に住む荒井、高木、同じ部屋に越してきた仲本、そして飲み屋で拾って弟子にした加藤、
といったドリフの5人組がチョーさんの恋路や、実は仲本の親父であるヤクザ親分とのトラブルを巡っての大騒動。
チョーさんが親分から必死で隠れようとする一幕がみどころ。
ゴミ扱いされる加藤の復讐が本作でさらにエスカレートしている。(爆弾仕掛けたり)
その関係が最後には逆転し、起死回生を誓う恐ろしいチョーさんのアップ顔で終わるのもドリフ映画ならではか。




祭りだお化けだ 全員集合!!
1972年松竹
監督:渡邊祐介 主演:ザ・ドリフターズ、林美智子、仁科明子、ハナ肇、藤岡琢也
帝評
隠れてフグを食べていた料亭の幹部達。フグに当たって寝込んでしまった彼等。
運悪く、料亭の板長が死んでしまう。なんとか助かったチョーさんは、料亭の板前を強引に引き継ぐが、
カリスマ性の無さと料理の腕の悪さで、店はたちまち閑古鳥が鳴く状態に…。
それでも店の娘を嫁に貰う野望に燃えるチョーさんと、チョーさんを追い出すために足を引っ張る従業員(ドリフの4人)達。
今回は、もう本気でお互いを殺し合う。(ここまで来たか…)
チョーさんはメンバーに毒を飲ませたり、海に沈めたりと、殺人未遂しまくり!
最後は、死んだと思われていたドリフの4人が幽霊に変装して仕返しするのだが、こんな事で許されるとは…。
結末には20年前に分かれた板さんと料亭の娘が帰ってきて丸く収まるのだが、映画はメンバーがチョーさんを包丁で襲おうとして終わる。
シリーズ史上最も殺伐とした展開の映画だ。(^^;
それにしても、生き別れになった娘を演じた仁科明子がもの凄く若い!




舞妓はんだよ 全員集合!!
1972年松竹
監督:渡邊祐介 主演:ザ・ドリフターズ、吉沢京子、芦屋雁之助、なべおさみ、伴淳三郎、天地真理
帝評
今回のチョーさんは、芸者置屋で競馬のノミ屋もやっている亭主。
女房に逃げられたチョーさんは、芸者になる女性を探す。
行き倒れの女の子を拾ってメシを食わすが、実は男(加藤)だった。
居候の仲本、高木、荒井らのアイデアで、加藤を舞妓として仕込む事に…。
そこに家を出てきた吉沢京子も加わり、アクドイ借金取り(芦屋雁之助)が絡んでいつものような大騒動に!
女性に化け続ける役回りの加藤は水を得た魚のようだ。
相変わらずゲスト出演の伴淳三郎は良い味を出している。




チョットだけヨ 全員集合!!
1973年松竹
監督:渡邊祐介 主演:ザ・ドリフターズ、小鹿ミキ、左とん平、益田喜頓、天地真理
帝評
チョーさんはうだつの上がらないヤブ医者。
警官に追われて飛び込んできた加藤と、助手の仲本、看護婦の高木、急患で運ばれて来た荒井で騒動を巻き起こす。
例によってチョーさんが加藤をいびりまくる。
だが、加藤の妹が大金持ちのジイさんに気に入られて養女になる話が持ち上がると、立場が逆転。
チョーさんは腰の低い男に急転換。毎度の事とはいえ、やはり面白い。
最後はジイさんの財産を奪ったヤクザの親分を相手にニセ手術で仕返しするのだが、
この一幕は「誰かさんと誰かさんが全員集合!!」の手術コントが思い出されるなあ。




大事件だよ全員集合!!
1973年松竹
監督:渡邊祐介 主演:ザ・ドリフターズ、松坂慶子、中尾ミエ、天地総子、藤村有弘、芦屋小雁、由利徹、アグネス・チャン、伴淳三郎
帝評
チョーさんの仕事はしがない探偵。
近所のラーメン屋に集まる連中をまとめて「実はオレはCIAだ」とホラを吹く。
全員集合コントのごとくCIAの特訓をするメンバー達。
傍若無人なチョーさんを毒殺しようとするメンバー。
いつものように仁義なき戦いに発展するか?
と思ったが、あるキッカケで「加藤は本物のCIAだ」と勘違いするメンバー。
立場が逆転し、加藤がリーダーに。
これがまたダメリーダーっぷりを発揮するのだが、それでも疑う事を知らないメンバーがノー天気で吉。
これまでのパターンには珍しく、最後まで勘違いの解けないまま終劇。
ゴムボートに乗った5人が「あったかい所に行きたいですねぇ」「じゃあアフリカ行こうか!」「いいですねぇ!」
と意気揚揚とオールを漕いで終わるノー天気さは、なんか幸せになれる。
探偵という題材から、これまでの作品に比べてバカバカしさがパワーアップしている快作である。
ちなみに本作から“志村けん”がチリ紙交換屋というチョイ役で初登場している。
(この作品から少しして荒井注がドリフメンバーを脱退したため、ドリフ映画で注さんを見られるのは本作が最後)




超能力だよ 全員集合!!
1974年松竹
監督:渡邊祐介 主演:ザ・ドリフターズ、長山藍子、榊原るみ、夏八木勲、フィンガー5、由利徹、伴淳三郎
帝評
今度のチョーさんは売れない易者。
記憶喪失の青年カトちゃんを拾って帰る。
加藤から聞いた作り話がたまたま事実と一致してしまった為に彼を超能力者だと勘違い。
その予知能力を使って金儲けを企むチョーさん。
だが、すぐに化けの皮が剥げていつものようにヒドイ目にあわせられる加藤。
実は加藤は大地主の息子で、作詞家になりたくて東京に家出してきたのだ。
それを利用して土地の権利を奪おうとするインチキ宗教一味(親玉は伴淳三郎)とのやりとりが後半の展開。
加藤が記憶を取り戻そうとすると、裏で雇われていた志村と中本がタライでそれを阻止する様が可笑しい。
最後はドタバタ騒動で頭を強打し、加藤は記憶を取り戻し、チョーさんは記憶喪失になるというキレイなオチだ。
人気絶頂のフィンガー5がイイ感じに華を添えている。




ザ・ドリフターズ 極楽はどこだ!!
1974年松竹&渡辺プロ
監督:渡邊祐介 主演:ザ・ドリフターズ、沢田雅美、篠ヒロコ、森田健作
帝評
ドリフ映画の中でもかなりの異色作である。
太平洋戦争で生き抜いた世代のチョーさんは、冴えない花輪会社のサラリーマン。
チョーさんは男手一つで息子(加藤)と娘を育てるが、子供にはバカにされ、
会社では損な役回りばかりを押し付けられる。
それでも、子供にはいい大学に入って出世してもらいたいと儚い夢を持つ。
だが、当のバカ息子は、勉強よりもバンド活動に夢中。
バンド結成の資金として勝手にチョーさんの退職金まで前借りしてしまう始末。
飲み友達でありたった一人の戦友とも死に別れ、生きてきた意味を失うチョーさん。
だが、バカ息子のファーストコンサートを見たチョーさんは涙しながら言う。
「これがやつの一番良い人生なのかもしれねぇなあ。」
こんなジェネレーションギャップをテーマとし、哀愁たっぷりに展開するこの映画。
今までのドタバタコメディを想定して鑑賞すると、かなりショッキング。
明らかにターゲットの違う方向性であるが、
この映画を最後にドリフ映画から離れた渡辺祐介監督が、やりたい事をやったのかも知れない。
「もう俺達の時代じゃね〜かも知れねぇ」そんなどこにでもあるようなノスタルジーが地味に心に響く。
興味深いのは、チョーさんと加藤の確執が、実はチョーさんの生き方にも似ているところだ。
親に大反対されながらも、家出同然でバンド活動に身を投じたのは、若き日のチョーさんそのものなのである。
本作のタイトルである「極楽はどこだ」は、劇中で途方に暮れたチョーさんのセリフ、
「この世は極楽と地獄の二つしかねぇって言うけど、右見ても左見ても地獄ばっかりだ。俺の極楽ってのはどこ行っちまんたんだろうなぁ」
というところから。
チョーさんが惚れるスナックのママに篠ひろ子、その弟に森田健作、
演奏会の前座として歌を披露する3人組にキャンディーズが出演している。




ザ・ドリフターズ カモだ!!御用だ!!
1975年松竹&渡辺プロ
監督:瀬川昌治 主演:ザ・ドリフターズ、倍賞美津子、キャンディーズ、伊東四朗
帝評
本作から監督が「喜劇 急行列車」などで知られる瀬川昌治監督に交替。(といっても2作しか撮ってないが)
これまでのチョーさんとメンバーのスラップスティックな殺し合い(笑)は影を潜めてしまった。
チョーさんは“不条理なお山の大将”ではなく、“人情派のダメ刑事”である。
チョーさんが善人に描かれているせいか、ドリフ主演というよりもチョーさん主演の映画という印象。
チョーさんに何度も補導されているチンピラの加藤が、
5億円の宝石を偶然盗み出してしまった事から大騒動に発展する。
最後は結婚式場でヤクザから逃げまわったり、パイを投げあったりとハチャメチャな展開に。
コメディではお馴染みの光景であるが、どこかバタバタと終わらせた感も。
チョーさんの妹で、中本工事(刑事長)の妻役を演じた樹木希林がとても味わい深い。




正義だ!味方だ!全員集合!!
1975年松竹&渡辺プロ
監督:瀬川昌治 主演:ザ・ドリフターズ、榊原るみ、キャンディーズ、鈴木ヒロミツ、伊東四朗、財津一郎、金子信雄、ミヤコ蝶々
帝評
金欠の『チンドン屋』であるチョーさんと中本。
そこに転がり込んできた加藤の描いたマンガ『ゴリレンジャー』が評判になる。
しかし、ゴリレンジャーのモデルとなったヤクザや有権者との確執や、
息子が立派な警官になっていると思い込んでいる加藤の母親が上京してきて、
チョーさんを始め、みんなで芝居をする一幕などが展開する。
今回は、往年のスラップスティックコントはほとんど見られず、
チョーさんも小市民でありながら下町の人情小悪党に扮している。
本作のみどころは、伊東四朗率いるヤクザ軍団との無声映画のようなドタバタコント。
屋根の上で追い掛け回したり、物を投げあったりと、
このシーンだけ見るとマルクス兄弟の映画のようである。
志村ケンは警官役で画面に多く登場するが、それでも脇役に徹している。
本作をもってドリフ映画は幕を閉じている事から、
結局は志村を道化役とした映画は撮られていない事になる。
今ではお笑い界随一のコントスペシャリストである志村けん。
そんな志村けんの本格的コメディ映画を観てみたいと思うのは私だけだろうか?



ドリフ映画のここを見よう!
チョーさんと加藤のイジメ図式
お山の大将でいる事の多いチョーさんは、ドリフのメンバー(特に加藤)を徹底的にイジメ抜く。
それに恨み辛みを吐きながらも、従ってしまう加藤達。
だが、ふとしたキッカケからその立場が逆転してしまう痛快さ。
これこそドリフ映画の真髄である。(作品によってはこの図式が無いものもあるが)

マドンナの質高し!
チョーさんがいつも惚れてしまうマドンナ役。
今では大御所女優になっている彼女達が、ハツラツとした若さで画面に華を添えている。
帝王の好みで申し訳ないが、
「いい湯だな全員集合!!」の生田悦子、
「誰かさんと誰かさんが全員集合!!」の岩下志麻、
「祭りだお化けだ 全員集合!!」の仁科明子、
は相当カワイイと思う。見惚れちゃった。テヘ!

ゲストアイドル
ドリフ映画で毎回のちょっとしたお楽しみはゲストアイドルの登場だ。
ドリフ映画では、ストーリーとちょくせつ関係のない役回りでアイドルが登場し、
さらに歌も1コーラス歌うシーンがある。
キャンディーズ、フィンガー5といった
スクリーンではあまりお目にかかれないアイドルも登場するので貴重である。