XR−BAJAで行く林道ツーリング日誌
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光る路面、白い誘惑  2005.11.20 山梨県牧丘方面 

久しぶりのツーリングである。
半年ぶりかな?
空には薄い雲が掛かっているが遠く山並みは綺麗に見渡せる。天気予報どおり晴れるだろう。 陽射しが出れば気温も上がると考え、防寒ジャンパーの下にはハイネックシャツとアンダーの軽装とした。

駐車場から車道までバイクを引っ張り出しエンジンスタート・・・

  ん?

ブスンと掛かりかけたもののセルが止まってデジタル時計が点滅している。え〜っと、これって前にも見たことが・・・。いやな予感を振り払うようにもう一度セルボタンを押す。スカスカと頼りない音。まてまて落ち着け、一度掛かりかけたんだから少し間を置いてバッテリーを休ませれば大丈夫。それ!・・・スカスカスカスカ。
やばいぞこりゃ。いきなりトラブルかよ。2週間前に買い物に出かけたときはなんともなかったのに。どうしよう。ブースターケーブルを探して車のバッテリーに繋げばとりあえずこの場は何とかなる。出先でトラブッてもケーブルを携行すれば大丈夫だろう。ケーブルはどこだっけなぁ・・・いやまず待ち合わせをしているsugiに電話だ。あっ、ヘルメット脱がなきゃ・・・
あちこち駆けずり回ってブースターケーブルを持ってきたときにはすでにsugiが応援に駆けつけてくれていた。その場でバッテリーを繋いでなんとかエンジンスタート。
7:00に出発のはずが8:00ちかくになってしまった。

川越街道から浦所バイパスへ抜けいつもの裏道に入って青梅近くのミニストップに到着したのが9:00頃。防寒手袋をしていてもジンジンと凍える指先をさすりながら軽い朝食をとる。
今回の予定は青梅街道をひた走り、未だ踏み入ったことのない「泉水谷・横手山林道」を経由して塩山へ至り「川上牧丘林道」「中津川林道」「大名栗林道」を通って戻ってくるのが大筋。
ルートを事前に確認しておこうと会社に地図を持っていったらそのまま忘れてきてしまった。まあ、sugiが持ってくるからいいやと安心していたらなんと向こうも同じことを考えていた。 おいおい、地図なしかよ! まあ、逆ルートでは以前走ったことがあるし、要所要所の記憶も残っているのでなんとかなるかな。

青梅街道は車の流れも良く、紅く色づいた多摩湖周辺の景色を眺めながら快走。ただし寒い。風を受ける胸と指先がジンジンしてくる。


前回見落とした横手山林道の入口を探してそれらしい脇道があるたびに停車しつつ進む。やがてハイキング姿の人影のある、どこかへ続いていそうな脇道があったので試しに入ってみるとそれが目指す林道だった。路面は落ち葉が厚く積もってまるで赤い絨毯の上を走っているよう。落ち葉と岩の区別がつかずに少々緊張させられるが比較的走りやすい。すぐ脇にはきれいな小川が並走している。2kmほど行った所で工事中通行止めの標識。無理すれば通れそうだったが遠くで重機の音がして作業をしているようなので引き返す。


青梅街道に戻り先へ進む。気温表示は4℃・・・ 4℃ !?  どうりでジンジンするわけだ。
柳沢峠近くで探索した脇道は「笠取林道」だったろうか?走りやすいフラットダートで気分がよい。2kmほどでフェンスに囲まれた終点となり舗装路に出た。すぐ右手に見える山頂にはまだダートが見え隠れしているので入ってみる。砂利の急勾配を登った先はT字路だが具合の悪いことにそこだけヌタヌタの泥道だ。極度に緊張しつつゆっくりと弧を描く。後輪が横滑りしつつもコケルことなく無事通過。ホッと安堵の溜息をついた、が・・・その先は行き止まり!ほかのルートも歩いて調べるが全て行き止まり。ということはいまのヌタヌタをまた下るしかない。しばし二人で呪いの言葉を吐く。タイヤに目をやると見事に泥に覆われてスリック状態。
再び極度の緊張の末なんとか無事生還。来た道を引き返す、なにせ地図が無いからね。

塩山からフルーツラインへ入る交差点ははっきり記憶していたので間違えなかったが、杣口(そまくちって読むらしい)へ向かう交差点に違和感があった。たしか大きな橋を越えて角に神社があったはずだが・・・それでも前を行く車がみな右折するので追従する。見慣れない交差点に出た。ちょうど道の駅(まきおか)があったので休憩がてら停車。観光案内の地図で確認するとやはり道を間違えていた。右折すべきはもっと先であった。
時刻は12:30。腹へった。山梨に来たんだからホウトウ食べなきゃってことで近くの店へ向かう。店は繁盛しており歴史があるらしく店内には鎧や武具が並べられている。我々の席の壁に鉄の棍棒が掛けてある。これなんだろう?先端には突起がついていて反対側のやや中央近くに紐が巻きつけてありグリップのように見える。武器だと思うがいまいち使い方が解らない。「じつは中に刀が仕込んであるんじゃない?」「鉄の鞘なんてあるかいな!?」などとレベルの低い推測をしてみる。店員は忙しそうで声をかけるのは気がとがめたが会計の時に訊ねてみると「あれは“カブトワリ”といって敵の兜を叩き割る武器ですよ」と丁寧に教えてくれた。それにしてもストレートなネーミングですなぁ。

正しい道に戻って川上牧丘林道を目指す。一時暖まった体も走り出すとすぐに冷えてしまい鼻水が出はじめた。冬山をなめちゃいかんなぁ。
金峰牧場まで来た所でsugiが足の痛みを訴える。右足の血管が詰まったような感覚があり筋肉が痙攣するという。エコノミー症候群か?しばしの休憩と軽い運動で回復したようなので先へ進む。
標高が上がるにつれ周りの景色に白いものが見えはじめた。雪?こんな時期にもう雪が降ってるのか、さすが「日本最高峰の車道峠」だ、などとのんきに考えていたのも束の間、路面が凍結し始めた。はじめは距離も短く、車のわだち跡はアスファルトが顔を出ているのでどうということもなかったが段々距離が長くなり路面全面を覆いだした。極めつけはカーブの凍結。本日何度目かの緊張を強いられつつ極低速で出来るかぎり直線をキープするが何度か冷や汗をかく。頂上はもうすぐ、その先はダートだから少々の雪や氷は問題ないはずと信じて引き返すことはしない。
やっと辿り着いた頂上には雪はなく重装備の四駆で来ている登山者にねぎらいの言葉を貰う。だが、しかし、その先の光景に我が目を疑う。ダートがあるはずの道が真っ白だ。歩いてみると新雪らしくきしきしと鳴る。しばらく下ってみたがどこまでいっても道は真っ白。

どうしようかと相談しながら頂上に戻ってくるとオフロードバイクが1台。同じような好き者がいるものだ。挨拶をして先の状況を説明する。よく見るとこのジェベル氏、オンロードタイヤを履いている。短い会話の後でとりあえず行ってみますと元気に下っていった。さて我々はどうするか。あの凍結路をまた戻るのはイヤだし雪道走行も体験してみたいということで話がまとまりかけていたら登山者のおっちゃんから重大情報。麓のゲートは閉鎖しているという。しかもこのゲート、不届き者が脇から侵入できないように橋の上に設置されご丁寧に溶接されているとか。ってことはジェベル氏はこの道をまた登ってこなきゃいけないわけ?一人でそれは無理だ。3人ならなんとかなるかな?助けに行こうか。
どうせココから引き返しても舗装路で帰るしかないし遊び半分で行ってみることにした。 ところがである、思いのほか雪は滑るのだ。超低速でトコトコ進んでいるにもかかわらずお尻があらぬ方向へ暴れ出す。何とか体制を立て直して安堵の溜息をついた途端こんどはシールドが真っ白に曇って何も見えなくなってしまった。ブレーキをかけるわけにもいかず、シールドを持ち上げる余裕もないままパニクッてあえなく転倒。恨めしげに前方を見るとすぐ先でsugiも転がっていた。結局100mも行かないうちに撤収を決めたが今度は登れない。ギアをセカンドにして押し上げようとしてもすぐに後輪がスリップしてしまう。エンストギリギリにアクセルを固定してなんとか峠に戻った時には息も絶え絶え。
ジェベル氏はどうするのだろう?運良く麓まで下れたとしてゲートが閉まっていたら万事休すだ。近くのキャンプ場まで歩いて助けを求めるだろうか。そもそも麓まで辿り着けるのか?考えあぐねてもなす術が無いので我々は来た道を引き返すことにする。

カリカリに凍った路面をトコトコと下る。よくこんな所を登ってきたと我ながら感心するやらあきれるやら。魔のカーブが迫って来た。とても無事に通れるとは思えない。案の定、前を行くsugiが転倒した。みごとにくるりと一回転。
こりゃだめだと判断してその後のカーブは押して歩く。ちょっと乗っては歩き、ちょっと乗っては歩きの繰り返し。
そんなこんなで道の駅「まきおか」まで戻ってきた16:00頃には日が山のはに隠れてすっかり暗くなってしまった。ここから帰りのルート選択肢は2つ。丹波山を越えて青梅街道で戻るか、雁坂トンネルを抜けて秩父を経由し有間山を越えるか。距離的には前者のほうが短いがクルマの後ろを追従するのはつまらないので後者を選択。後悔というのは先には立たないのだ・・・

バスが前を走っているせいか雁坂トンネルまでがやけに遠い。外気温1℃・・・くしゃみが止まらず息でシールドが曇る。560円を支払ってトンネルに入ると一気にペースアップ、高速道路状態。長いトンネルを抜けた先は昼間ならさぞ綺麗な景色を楽しめるのだろうが今は漆黒の闇。
寒さと格闘して浦山口のセブンイレブンに着いたのが19:00。スニッカーズとホットコーヒーでエネルギー充填。マスクも買ってみたがメガネが曇ってしまい逆効果であった。
これから一山越えて本当に帰り着けるのかと不安になってきた。路面が凍結していないことを祈るのみ。少し暖まった体は走り出すとすぐに冷えてくしゃみ連発。
さくら湖を抜け「広河原逆川林道」に入った。舗装路とはいえ浮き砂やひび割れのある真っ暗な山道は緊張する。ともすれば道がどっちに曲がっているのか見失いそうだ。峠を越えて下りになった頃には疲労が限界を越えたと実感する。走行ラインは乱れブレーキのタイミングもおかしい。体力よりも気力がついてこない。延々と続くカーブに心底ウンザリだ。凍結がないのとバイクの調子がいいことだけが救いである。
外灯のある県道に辿り着いたときにはほっとした。
青梅についたのが21:00、途中食事をして帰宅したのは23:00であった。

走行距離370km  (ODO:11,819km)

その後、山でライダーが遭難したというニュースは聞かない。
ジェベル氏の無事を願う。