翌朝、館内放送で目が覚めると6:00だった。朝食は7:30と聞いていたのでそれまで布団に包まっている。かなり寒い。
時間になったので食堂へ行くとストーブが焚いてあってほっとする。
食後にご主人としばらく会話をしたが、この時期にまだ山が青いなどということは今まで無かったそうだ。マイタケなどのきのこが8月のうちから採れたのも異常だと言う。都会暮らしでは暑いの寒いのという程度で実感が薄いが自然の中の暮らしでは温暖化の影響がはっきり現れているのか・・・
ご主人とおかみさんに玄関前で見送ってもらい、9:00出発。近くの商店で電池とカップラーメンと水を購入。
今日は北上して玉川林道、大窪林道を通り、舟鼻峠でピストンする予定だった。大窪林道に至る途中にこれまた地図に載っていない「多々石林道」があり通り抜けられるらしい。名前からして手強そうだが当然行ってみる。不幸の始まり・・・
林道の入口がわからずだいぶ行き過ぎてしまい人に訊ねるなどして10:00過ぎにやっと入口到着。入口付近で工事をやっているものの通行止めのゲートなどは無いので山に向かって登りだす。 道幅は狭くかなりガレていて車体が振られる。余裕は全く無い。それでもなんとか登り、行き止まりの支線がある広い場所で小休止。この先はもう少し状況はよくなるのだろうか?ここから引き返して今きた道を戻るよりは先に進んだほうがいいだろうと再び前進。

しかし期待はすぐに裏切られ今まで以上にガレてきた・・・もはや道というより川底と言った方がよい。元々狭い道のさらに半分が雨で削られ大岩が剥き出しになっている。残った比較的平らな方を平均台を渡るように進むがバランスを崩すとまったく足が届かない。結局コケてしまった。溝に車体が落ち込んでタイヤが天を仰いでいる。満タンにしたガソリンがこぼれるのをなす術もなく呆然と見つめる。気を取り戻してとりあえず荷物を降ろすが、それでも到底一人では起こせない。前を行くSugiに助けを頼む。無線があって助かった。
Sugiは足が長いせいか上手くバランスをとって先を進んでいた。だいぶ距離が開いてしまい救援の為に歩いて戻ってくるのも一苦労で息が上がっている。ああ、えらい所に踏み込んでしまったなぁ・・・。ふと見渡せばあたりはススキに覆われ空は青く山は赤い。
漸く体勢を立て直しても数メートル進んではバタン。それなら降りて押していこうとするが歩くこともままならずバランスを崩してバタン。その度に助けに来てくれるsugiも大変である。一体何回倒れただろうか。初めこそ立ちゴケ程度だったがしまいには体が地面にたたきつけられ脇や腰を強打してしまった。バイクの被害も甚大でミラーは割れ、ハンドガードは変形している。もはや自力ではどうしても進むことが出来ない。情けないがsugiに運転を変わってもらった。勝手の違うバイクにかなり苦労しながらもコケることなくsugiは進んでいく。技量の違いを嫌と言うほど思い知った。
すっかり自信を無くしてしまったがいつまでも人に頼っているわけにもいかずなんとか走れそうな所から今度は私が前を行く。カーブを恐々曲がった先の光景に愕然とする。工事現場だ。ブルドーザーが道を均している。ここから引き返すなんて考えただけで卒倒しそうだ。呆然と先を眺めていると幸いにも工事の方が手招きをしてくれた。助かった・・・ただし少々問題もある。目の前には瘤のような段差があり、そのすぐ先が台形に削られた下り。向こう側の登りの手前には大きな水溜りが待ち構えている。無事に渡りきれるだろうか・・・呼吸を整え意を決してスタート。
瘤は無事通過、段差を下りそのままの勢いで登りに向かう・・・水溜りで後輪が大きく滑った! 反射的に蹴り一発でなんとか立て直してそのまま登りきる。OK、なんとかコケずに通過できた。体をひねったときに脇腹の筋を痛めてしまい暫く痛かったがそれもじきに治った。
こちらも無事通過したSugiはなんとか窮地を脱したことに「いやぁ〜一時はどうなるかと思ったけどけっこう行けちゃうもんだねぇ」とご満悦だが私の心は今ひとつ晴れない・・・
この先の泥道で最後にもう一度コケた。もういや・・・

時刻は13:30。この林道を抜けるのに3時間以上掛かったわけだ。北上は諦めて「七ヶ岳林道」を通って南下することにする。写真を撮ろうとカメラを引っ張り出すとなんと液晶画面にひびが・・・しかもメモリーオーバー。父親が旅行先で撮った写真がそのままになっていて消去するわけにもいかない。トホホ・・・
七ヶ岳林道は玉砂利の直線路が多くて快適。すっかり逃げ腰になった勘を取り戻す為アクセルを開ける。途中登山者やチャリダーとすれ違う時は極力減速して通過。頂上付近で小休止。とっくに昼を過ぎているが食欲が湧かない。Sugiに訊ねても答えは同じだった。
稜線に沿って見通しのよい道が続く。玉砂利の下りはスリップが怖く、前を行くsugiに追従しようとするがすぐに姿が見えなくなっってしまう。なんか口惜しいなぁ。。。
七ヶ岳林道を抜けた先で道を間違えて少々遠回りをしたが安ヶ森林道に入った。来た時と同じススキの中の一本道を軽快に飛ばす。やがて林の中へ。直線が続くので油断していたらいきなり前方に直角のカーブが!フルブレーキで危うく難を逃れる。すぐ脇に同じブレーキの跡が残っていた。やることはおなじだね(^^;
舗装路に入り「安らぎの森」で休憩。17:00、さすがに腹が減ったので飯の支度をする。湯が沸くまでの間辺りを散策。車が一台来て何かの検査員が林に入っていった以外誰も居ない。熱々のラーメンをすすり、紅茶を飲み終わった頃には太陽が山の背に沈み急速に暗くなった。ここから今市の高速入口までまだ山を二つ越えなければならない。先は長い。
平家の里、湯西川温泉を抜けると辺りは漆黒に包まれる。きついカーブが連続するが、先を行くsugiから道が見えないと無線が入る。BAJAのデュアルライトの方が明るいだろうと先頭を交代する。すぐ脇の谷間は墨を落としたように真っ黒で吸い込まれそうだ。
落ち武者に出会うこともなく無事土呂部峠を越えて栗山村に到達。そのまま大笹牧場を目指す。ここから先は路面のきれいな広い道で気が楽だ。カーブを楽しみながらぐりぐり登り、牧場到着。すでに営業時間を過ぎているので電灯もまばら。それでも車の往来は結構ある。
ふと空を見上げれば満天の星空。思わず「うあぁ・・・」と声を上げてしまった。Sugiが写真に収めようとがんばったがやっぱり画像はまっくろけ。
この時間に有料道路を通るのももったいないので県道を下る。寒さで歯ががちがち鳴る。
今市から高速に乗るとあとはひたすら風圧に耐えるのみ。途中料金所で渋滞にはまる。5つあるゲートのうち2つしか開いていない。料金所のおっちゃんは「今日はずいぶん車が多いなぁ」などとのんきだ。東北道に合流しトラックに追従してひたすら耐える。
藤岡PAで休憩。なにやら視界が曇っているのでメガネを洗ってみるが治らない。ゴーグルをせず強風にさらしていたため目を痛めたらしい。防寒着の襟にヘルメットが押されてゴーグルを掛けるとメガネがずれてしまうのでずっと外していたのだ。ひどく充血しているがもう少しの辛抱とそのままにしておく。
家に電話を入れて帰宅時間を伝えた後再び出発。
利根川を渡って埼玉県に入った。もう少し。1時間後にシャワーを浴びてビールを飲んでいる自分を想像しつつ風に耐える。
22:00浦和IC到着。22:30帰宅。
嫁が風呂を沸かしておいてくれた。ありがたい。
少々興奮気味なのか服を脱ぎながら今日あった出来事を支離滅裂に嫁に話す。
湯船に漬かって冷えた体を温めながらあらためて長かった一日を思い返していた。
〜おしまい〜
走行距離:609km
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