「うう…、かゆい…」 晩メシ食った後にゲームしてたら、誰かが俺様のことをカッコいいとかって噂でもしてるのかもしんねぇけど、ホントに急に耳がかゆくなった。 だから、置いてあった耳かきで耳をかいてたんだけど、なかなか難しくてうまくかけない。 さっきからずっとやってんのにカユミもなくならなくて…、そうしてる内にすっげぇイライラしてきた。 くっそぉっっ、なんでうまくかけねぇんだっ! 「くそぉっ、たかが耳かきのクセにっ!!」 なんて思わず口に出して耳かきに八つ当たりしたら、なぜかソファーに座って新聞読んでた久保ちゃんが俺に向かって手招きをする。 こっちは耳をかくのに忙しいんだ…って、怒鳴りそうになったけど、なんとなく気になって耳かきを持ったまま久保ちゃんのそばまで行った。 そしたら久保ちゃんは新聞を読むのをやめてから、軽く自分のヒザをポンポンと叩く。だからヒザの上に座れってイミだって思って、また俺を猫あつかいにしてる久保ちゃんにムカッとしたけど…。 べつにからかってるカンジじゃなくてフツーの顔して叩くから、なんとなくつられてヒザの上に座った。 「なにしてんの?」 「なにって、自分が座れって言ったんだろっ」 「べつに言ってないよ」 「ヒザ叩いてたじゃんかっ!」 「ああ…、それはね。耳をかいてあげるから、膝枕ってイミだったんだけど?」 「・・・・・・・・・うっ」 「よしよし」 「あ、頭を撫でんなっ!」 「ほめてあげてるのにねぇ?」 「バカにしてるだけだろっ!!」 「カワイイなぁって思って」 「俺様はカワイイんじゃなくてっ、カッコいいんだっつーのっ」 「はいはい」 そんなカンジでヒザに座れってのは間違いで、久保ちゃんは耳をかいてくれようとしただけだった。だから俺はソファーの上にゴロンと横になると、久保ちゃんのヒザに頭をあずける。すると、久保ちゃんは俺の持ってた耳かきで耳を掃除し始めた。 ゆっくりと耳を傷つけないように…、そろそろと入ってくる耳かきでくすぐったくて少し動くと、久保ちゃんは危ないって言って俺の頭を反対の手で抑えた。 「終わるまで、じっとしてなさいね」 「うう…、やっぱやめたくなってきた」 「なんで?」 「痛そうだし…」 「心配しなくても、俺って耳かきウマイから痛くないよ」 「・・・・誰かにしたことあんの?」 「今が始めて」 「ぎゃあぁぁっ、イヤだぁぁっ!!」 キケンを感じた俺は、久保ちゃんのひざの上から脱出しようとしたけど、すでに耳かきが耳の中に入ってるからダメだった。 うわっとかうぎゃっとか叫んだけど、久保ちゃんはやめないで耳かきを続けてる。 コソコソッとくすぐるように耳の中をさぐってくる耳かきの感触が伝わってくると、もうコワイのか気持ちいいのかわからなくなって、久保ちゃんのヒザをぎゅっとつかんだ。 「あっ…、久保ちゃん…」 「気持ちいい?」 「そんなのわかん…ねぇ…」 「ほーら、動かないでじっとして…、もう少しで取れそうだから…」 「う…ん…」 俺の耳に入ってる耳かきが、中のモノをかき出してくれてる。 なんかやっぱ気持ちいいかもって思ってると、耳かきがいったん俺の耳の中から外に出された。 だからもう終わりなのかと思って、いつの間にか閉じてた目を開いて見ると、なぜか息が触れるほど近くに久保ちゃんの顔がある。 なにやってんだって言おうとしたけど、その前に久保ちゃんの唇が俺の唇をふさいだ。 「ん…、なにすん…」 「ぎゅっと目つむってガマンしてるカオって、そそるなぁって思って」 「そ、そそるって…、なに考えてんだっ!」 「これからは、かゆくなったら俺が耳かきしてあげよっか?」 「動機が不純なんだよっ!」 久保ちゃんの頭をベシッと叩きながらそう言うと、久保ちゃんは少し笑ってから、また耳かきの続きを始める。 だから俺はブツブツ言いながらも、久保ちゃんのヒザに頭を預けたままにしてた。 始めは人にかいてもらうのはコワイ気がしてたけど、なれてみると人にやってもらう方が気持ちいい。それにかいてもらってる内に、なんだか気持ち良すぎて眠くなってきた。 マクラにしてる久保ちゃんのヒザもちょうどいい高さで…。 小声で話しかけてくる久保ちゃんの声とか…、時々、頭を撫でてくる手も眠気をさそう。だからもう終わったって言われても、起き上がるどころか目を開けることもできなかった。 「くぼちゃ…、ごめ…」 「ん?」 「ねむ…くて…、もうダメ…」 「いいよ、寝てても」 「う…ん…」 「ずっとこうしててあげるから…」 耳かきしてもらうのも気持ち良かったけど…、やっぱり一番気持ちいいのは久保ちゃんのヒザかもしれないなぁって…、眠りに吸い込まれながら想った。 抱き合って眠るのもこうしてヒザ枕してるのも…、ホントに眠くなるくらい気持ちいいから…。耳かきって…、結構いい口実になるかもなんて…。 そそるって言ってた久保ちゃんのことを、何も言えなくなるようなことを考えたりしながら…。俺は久保ちゃんの暖かさをカンジてまどろんで…、ココロの中で久保ちゃんにオヤスミを言った。 |