今日は晩メシ定番のカレーを食べから、時任と俺は二人でテレビを見てた。 けど、しばらくすると時任はテレビ見てるのに飽きたみたいで、大きく伸びをしながら寝転がってたカーペットの上から立ち上がる。 だから、キッチンにでも行くのかと思ったたけど…。 それは外れたみたいで、時任はl廊下へと続くドアの前に立った。 「んじゃ、俺が先にフロに入るかんなっ」 「はいはい」 時任が先に入って俺が後で入ることになったから、いつもは当たり前にリビングで上がってくるのを待ってる。でも、今日はやっぱりじっとしてるワケにはいかなかった。 ここ数日ずっと考えてたんだけど、さすがの俺もガマンの限界ってヤツで…、時任が向かった浴室に行くことにした。 たぶんチカン呼ばわりされて、お湯をかけられた上に洗面器投げられるだろうけど…。 それをカクゴしながら、時任が服を脱いでフロに入ったくらいの時間を見計らって脱衣場に潜入する。けど時任はまだ俺が入ってたことに気づいてなくて、キモチ良さそうに歌なんか歌ってた。 「このままでいいなら〜、ただそばにいれる…、指を伸ばせば届く距離でぇ〜♪」 元の歌よりもスローテンポで、どこか演歌調なカンジ…。 うーん…、なんか微妙? なんて思わず歌を聞いちゃってたけど、そんな悠長なことしてる場合じゃない。 俺はあるモノを手に持つと、勢い良く浴室のドアを開けて中に潜入した。 「うわぁぁっ!!! な、なに入って来てんだよっ! 久保ちゃんのエッチっっ!!」 カポォーーーンッ!!! 気持ち良くお湯につかってたら、いきなりバスルームのドアが開いた。 そこから入ってきたのは当たり前に久保ちゃんで、だから思わず洗面器を投げつける。 けど、久保ちゃんは洗面器攻撃を受けても止まらなかった。 湯気でメガネが曇ってて表情がわかんねぇし、じわじわこっちに近づいてくるから、なんかマジでコワイ…。 そ、そういえば五日ぐらい…、ごぶさただったっけ…。 なんて妙なコトを思い出しながら、今度はザバーンッとお湯攻撃をしてみる。 でも久保ちゃんはビショビショになりながら、俺の入ってるバスタブに手をかけた。 「く、く、くぼちゃんっ、やっぱダメだって…っ」 「・・・・・・・もうガマンできないから、ゴメンね」 「こ、ここだったら…、のぼせたりとかするしっ…」 「…ほら、じっとしてて」 「うわぁっっ、やられるっっ!!!!」 ザァァーーー…。 「な、なにぃぃぃっ!!」 「うーん、やっぱフロはヒノキだよねぇ」 カオが近づいてきて、このままだとやられるっ!!! …とか思って身構えたけど、そう言った久保ちゃんが持ってたのは入浴剤だった。 しかもヒノキの湯。 そのヒノキの湯を俺の入ってるフロにザーッと入れると、久保ちゃんは曇ったメガネのままで俺の方を向いた。 「そういうことだから、今度からヒノキね?」 「な、なにすんだっ!! 俺様がフロに入る時は、美少年らしくバラの香りの入浴剤って決まってんだっ!」 「あの強烈な匂いの入浴剤…、ねぇ」 「いい匂いじゃんっ」 ここ数日、時任は買い物に行った時に見つけた、バラの香りの入浴剤ってヤツにはまってる。 けど、その匂いは次の日も残ってるくらい強烈で濃厚な匂いだった。 距離が離れてる時はなにも匂わなくても、一緒のベッドで眠ったり抱きしめたりすると匂ってくる。そういう匂いに敏感な方じゃないけど、その匂いだけはどうしてもダメだった。 でも時任は気に入ってるみたいで、今もいい匂いだって言い張ってる。 だから無理やりヒノキの入浴剤を入れて、防止対策してみたんだけど…。 このままじゃ、また時任はバラの入浴剤を使いそうだった。 「入浴剤っ、この上から入れてやるっ」 「ヘンな匂いになるよ?」 「うううっ…」 「ん〜、でもさ。そんな入浴剤使わなくっても、いい匂いしてるし?」 「いい匂いってどんな匂いだよっ」 「時任の匂い」 「なんだソレっ」 「抱きたくなるくらい…、いい匂いだから」 「・・・・・・・・・もしかして五日なのってさ」 「ん?」 「な、なんでもねぇよっ!」 バラの匂いは美少年な俺様に似合ってるけど…。 曇ったままの久保ちゃんのメガネに手を伸ばして取りながら、ヒノキの匂いもいい匂いだからこっちでもいいかもって思った。 久保ちゃんが入れてくれた入浴剤だから、それでいいかもって…。 さっき俺がお湯をかけたから、久保ちゃんのシャツはビショ濡れで…。 なんか肌が透けて見えてて…、かなりエッチっぽい。 それを見てたら…、まだフロに入ったばっかなのに熱くてのぼせてきた。 「濡れたままだと風邪引くだろ…、さっさと脱げよ…」 「じゃ、お言葉に甘えて…」 「きょ、今日だけだかんな…」 「わかってマス」 時任は俺のメガネを取ると、それをバスタブの端に置く。 そのせいで湯気で見えなかった視界が、更に見えなくなったから…。 手探りで時任の肩をつかんで…、ちょうどいい温度になってるお湯の中に入る。 すると二人分の質量で、お湯がタイルの上に音を立ててこぼれ落ちた。 「なんか…、もったいねぇかも…」 「こぼれた分だけ…、俺で満たしてあげるよ」 二人で抱きしめ合いながら入ってると…、お湯は止まることなくバスタブから染み出してこぼれ落ちていく…。 だからそれを満たすために…、熱に浮かされて溺れながら…。 俺は入れられたヒノキの匂いじゃなくて、久保ちゃんの髪に染み付いているセッタの匂いだけを嗅いでいた。 |