「時任…」
 「う…、ん…」
 
 昨日は朝方までゲームしてたらしくて、名前を呼んでも起きる気配がない。
 べつに用事もないし眠っててもいいんだけど…、昨日着てた服のまま寝てるのが問題だった。
 今日は溜まってた洗濯をしようと思ってたから、時任が着てるパーカーとかシャツとかも洗濯しときたかったりする。
 だから洗濯するためには、時任を起こして着替えをさせなくてはならなかった。

 「ねぇ、ちょっとだけ起きてくんない?」
 「くぅー、すぅ〜」
 
 頭を撫でても、鼻をつまんでも起きる気配がない。
 よっぽどぐっすり眠ってるらしくて、いくら呼んでもムダだった。
 寝てるからって言っても、これだけムシられるとちょっとムカツクかなぁなんて思ったりして…。
 時任を軽く蹴ったりしてみたけど、ちょっと目を開けただけで効果がない。
 最終手段でわき腹をくすぐると、時任の足が俺の腹を容赦なく蹴り飛ばした。
 
 「うるせぇっっ!!!」
 「・・・・・・っ!」

 どうやら本気で起きる気がないらしく、時任は怒鳴っても目を開けようとしない。
 蹴られた腹もなんかスゴク痛いし…、怒鳴られたし…。
 もう起こすのはあきらめて時任の腕を引っ張ってバンザイをさせると、その隙に着てるパーカーとシャツを脱がせる。
 そして脱がせる途中で寒いとかなんとか時任が言ってたけど、ムシしてついでに履いてるジーパンとトランクスも脱がせた。

 「…んっ、なに?」
 「なんでもないよ?」
 「ふーん…、すぅー…」
 「ホント良く寝てるよねぇ…」

 しゃべってても会話してても、寝てるから全部寝言。
 服を脱がされたことにも気づかないで、毛布にくるまってぐっすり眠ってる。
 なにか夢でも見てるのか、無防備にうっすらと微笑みながら…。
 そんなカンジで安心しきった顔して寝てるのを見てるとなんとなくイタズラしたくなって…、眠ってる時任の唇に軽くキスをした。

 「ふっ…、ん…」
 「時任…」
 「くぼちゃ…」
 「キスしてくれる?」
 「う…ん…」
 「俺のこと好き?」
 「好き…」

 時任の耳元にそっとそう囁くと、まるで暗示にでもかかったみたいに時任が自分からキスしてくる。その唇にキスしながら髪を優しく撫でてやっていると、時任は無邪気な顔して微笑みながら腕を伸ばしてきてぎゅっと首に抱きつかれた。
 だから、洗濯しようと思ってたはずなのに抱きつかれて動けなくなる。
 腕をはずそうかと思ったケド、抱きしめてくる時任の腕の感触と…。
 毛布から見えている色っぽい鎖骨と首筋が、目の前をちらついていた。
 何度も軽く音を立ててキスしてくる時任の唇と、毛布一枚だけにくるまれた身体が…。
 簡単に理性をくずしていく…。
 脱がせる時は洗濯のつもりだったけど…、かけてやった毛布を今度はべつの目的ではがしてやりたくなった。
 起こさないように毛布の端をひっぱって…、ゆっくりと時任の身体を空気にさらしていく。
 唇から頬へ、頬から喉へとキスしていくと、時任が小さく声を立てるのが聞こえる。
 これからどうしようかって思って迷ってると、時任がパチッと目を開いた。

 「・・・・・・・・・っ!!」
 「起きた?」
 「な、なんだっ?」
 「寝ぼけて時任から、キスしてきただけだけど?」
 「う、ウソだっ!!」
 「ホント。洗濯しに行くから、手放してくれる?」
 「あ、あぁ…って、なんで服着てねぇんだよっ!!!」
 「さぁ、なんでかなぁ?」
 「て、て、てめぇっ!!!」
 「続きは洗濯が終ってからするから、そこで待ってなね?」
 「誰が待つかぁぁっ!!」

 朝、目が覚めたら着てた服がなくなってて、久保ちゃんに襲われてた…。
 久保ちゃんは俺が寝ぼけてたって言ってたけど、そんなのはウソに決まってるっ!
 寝ぼけてストリップするクセなんかねぇっつーのっ!!!
 けどなんとなくだけど…、ちょっとだけ覚えてたりする…。
 久保ちゃんに好きって聞かれて、好きって答えたこと…、自分からキスしたこと…。
 それを思い出したら…、めちゃくちゃ怒ってやりてぇのに怒れない。
 なんかそれもムカツクけど…、結局、着替えを出さないで毛布に包まってた。

 「ちゃんと待っててくれてアリガトね」
 「待ってたんじゃなくてっ、服を取りに行くのがメンドかっただけだってのっ!」
 「ふぅん…」
 「な、なんだよっ!」
 「好きだよ、時任…」
 「とか言いながら、どこに手ぇ入れてんだよっ!!」
 「さぁ、どこでしょう?」
 「クイズにすんなっ!!」

 イヤだっていくら言ってても…、そんなのはやっぱウソで…。
 久保ちゃんの手に触れられたら、すぐに理性なんかすぐになくなる。
 最初からキスされるのも抱きしめられるのも…、抱かれるのも嫌じゃなかった。
 耳元に聞こえる声もキスしてくる唇も…、何もかもが身体を熱くさせて…。
 毛布一枚で身体を覆ってても、そんなのはいつの間にかジャマなだけになる。
 だから洗濯機が回っている間…、脱いだ服が乾いてしまうまで…。
 こうやって久保ちゃんの熱だけを感じて…、ベッドの中で乱れたシーツを掴んでた。
 
 「うあっ…、くぼちゃ…」
 「そろそろ…、洗濯が終る…ころかも?」
 「・・・・・あっ」
 「どうしよっか?」
 「んっ…、シーツも洗わなきゃ…」
 「どうせ洗うなら…、とことん汚すってのも悪くないよね…」
 「バカ…」

 結局、洗濯が済んだのは朝始めたはずなのに昼過ぎてからだった。
 ドロドロになったシーツを洗濯機に放り込んだ俺を見て、久保ちゃんがまたエッチなこと言ったけど、そうそう簡単には引っかからねぇっつーのっ!!
 腰が痛いし身体もだるいしサイアクだしっ、もう身体ももたねぇし…。
 けどこういう時の後に、久保ちゃんが変えてくれた洗ったシーツに寝転ぶのが好きだった。
 ちょっと洗剤の匂いがして…、それからタバコの匂いがして…。
 そういう匂いを嗅ぎながら眠るのと、なんでかわかんねぇけど安心する。
 だから今度は…、抱かれるんじゃなくて抱きしめられて眠りたくなった。

 「…久保ちゃん」
 「ん?」
 「眠いからもっかい寝る…」
 「じゃ、一緒に寝よっか?」
 「…うん」

 暖かさも熱さも…、いつも久保ちゃんから感じてる。
 だからこのベッドで眠ると眠りが深く深くなって…、キスされても目が覚めなかったりした。
 けどそれは、たぶん深すぎる眠りに捕まってるんじゃなくて…。
 洗いたてのシーツからも香るタバコの匂いに…、何もかも犯されて…。
 今も感じてる熱くて暖かい体温に囚われてるからだった。
 だからきっとその心に身体に体温に…、深く犯されているのかもしれない。
 自分からシーツの海に囚われて…、朝でも夜でも、目覚めても眠っていても…。
                            『シーツ』 2002.12.8更新

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