朝起きてすることってのは、その日によってそんなに変わったりしない。 だから今発生してる緊急事態ってヤツは、緊急にも関わらず変わったことじゃなくて…。 実は、ホントに毎日のことだったりする。 毎日だったらどうにかしろってカンジだったりするんだけど…。 今日もパン食ってる間に油断しちまったせいで、緊急事態に突入した。 ドンドンっ!! ドンドンドン…っ!! 「久保ちゃーんっ!!」 「ん〜?」 「ん〜、じゃねぇよっ!」 「じゃ、なに?」 「わかってるクセに、いちいち言わせんじゃねぇっ!」 「言ってくれなきゃわかんないけど?」 「て、てめぇ…っ!!」 「あ、今日の天気は午後から雨らしいよ?」 「…んなコトは聞いてねぇっつーのっ!!」 「ふぅん、この近くで事故…」 「いちいち読むなっ!!」 「スーパーでタマゴが特売…」 「広告まで持って入るなぁぁっ!! さっさと用すませてトイレから出やがれっ!!」 ドンドンドン…っっ!!! 久保ちゃんの朝の日課…。 それは新聞を持って、トイレに立てこもることだった。 朝起きてすぐに玄関に新聞を取りに行くクセに、なぜか読むのはトイレの中。 くっそぉっっ、なんでトイレなんかで新聞読まなきゃなんねぇんだよっ!!! こうなるのがわかってっから、タイミングを見計らってトイレに行っとくんだけど、今日は油断してて失敗しちまった。 新聞持って移動してんのに気づけなくて…、こ、こんなことに…。 くうっ…、も、もうガマンできねぇっ…。 コンビニまで走ってくって手もあるけど、今からじゃ…、ま、間に合わないかも…。 「くっ、久保ちゃ…ん…」 「うん?」 「うっ…、もうダメそう…」 「ふーん…」 「なぁ…、頼むから…開けて…」 「そう?」 「あぁっ…、うっ…、ヤバイって…」 「お願いしてくれたら、開けてあげるけど?」 「くっ、だ、誰が…」 「ふーん、開けなくていいの?」 「ううっ…、あっ…」 「ほら、ちゃんとお願いしてごらん?」 「頼むから……」 「もうちょっと、可愛いカンジでお願いして?」 「お、お願い…、久保ちゃ…」 「俺のコト好き?」 「うん…、好き…、スゴク好きだから開けて…」 「はいはい」 ガチャッ…っ! あああっ、やったぁぁぁっ、助かったぁぁっ!! ギリギリセーフっ!! バタンッ!! 「新聞…、半分しか読めてないんだけどねぇ。朝はどうもトイレじゃないと、新聞って落ち着いて読めないし…」 ガチャッ!! 「あ、間に合った?」 「間に合った? じゃねぇっ!!」 バキィッッ!! 「いたっ…」 「ったく、なに考えてやがんだよっ! マジで間に合わなかったらどうしてくれんだっ!」 「うーん、けどガマンしてるときの声って色っぽいんだよねぇ」 「・・・・・今から新聞屋に電話して、新聞止めてやるっ!!!」 「なーんてのは、冗談に決まってるっしょ?」 「ウソつくなっ、マジで言ってただろっ!! ぜってぇ、許さねぇからなっ!」 「そんなに怒らなくても、ねぇ?」 「今日からココのトイレは久保ちゃん使用禁止っっ!!」 「もしかして、マジで言ってんの?」 「マジに決まってんだろっ!!」 それからマジでトイレに『時任様専用、使ったら罰金百万円』って大きく紙に書いて貼って、久保ちゃんには使わせなかった。 久保ちゃんはコンビニのトイレに行ってたみたいだけど、同情なんかしてやらねぇ。 トイレをガマンさせられた俺の苦しみを、ちょっとは味わいやがれっ!! 「ゴメンなさい、もうしません」 「ほんっとだろうな?」 「反省してマス」 「今度やったら、コンビニじゃなくて公園まで走らせっからな」 「・・・・・・・」 トイレはみんなの憩いの場です。 ・・・・・・仲良くゆずり合いましょう。 |