今日はべつに買い物とか行く予定とかなかったから、朝からテレビの前に座ってゲームしてた。そのゲームは昨日発売になったばっかのヤツで…。 前から俺が欲しいっつってたのを覚えてた久保ちゃんが、買って来てくれたヤツだった。 「くっそぉっ、なんでココから行けねぇんだよっ」 そんなカンジでブツブツ言いながら、カチャカチャとコントローラーを動かしてたけど…。 そうしてる内に、なぜか急に左肩が重くなる。 けど、なんで重くなったかは肩なんか見なくてもすぐわかった。 ずっと俺の隣りで読みかけてた本開いて、それ読みながらセッタ吹かしてたヤツの頭…。 その頭が俺の肩に乗っかってたからだった。 「久保ちゃんっ、ジャマっ!」 「…うん」 「重いっつってんだろっ」 「…ん」 うっ、マジで重…。 たまに俺も同じコト久保ちゃんにしたりすっけど…。 やっぱそれはそれ、これはこれっだっつーのっ! 久保ちゃんは図体でけぇから、寄りかかったら俺より重いに決まってんじゃんかっ! 「く、ぼ、ちゃんっ、どけってっ!」 何回言ってもどけねぇから強引に肩から頭を落そうかって思ったけど…。 なんとなく、久保ちゃんの反応がニブイ気がして左肩の方を向いてみる。 そしたら向いた瞬間、いきなり久保ちゃんにキスされた。 「うっ…ん…」 「時任…」 「ちょっ…、待て…」 やめろっつってんのに、それも聞いてくんなくて…。 ムカついたから、何度もキスして来ようとする久保ちゃんの胸を押し返そうとした。 けど、あるコトに気づいて…、俺は逆に自分から久保ちゃんに深くキスをする。 俺の気のせいなんかじゃなく、今してるキスの温度はいつものキスより高かった。 「久保ちゃんのバカっ! キスしてる場合じゃねぇだろっ!!」 そう言って怒鳴りつけると、無理やり腕を引っ張って熱出してる久保ちゃんをベッドまで連れていく。 そして、ベッドの中に久保ちゃんを押し込めると手を伸ばして額をさわったら、手から伝わってくる体温は、気のせいなんかじゃなくて…。 ・・・・・・やっぱ熱かった。 久保ちゃんは熱のせいで、ちよっと赤い顔してる。 風邪なのかなんなのか、原因は良くわかんねぇけど…。 と、とにかくっ、熱出してんだから薬飲ませて…。 そんで…、あっ、晩飯はおかゆとかにして…。 けど、病院に行った方がいいかも…。 いやでもっ、そんなでもないかもしんないし…。 ・・・・・・・・その前に薬ってドコにあんだよ?! くっそぉっ、ぜんっぜんわかんねぇっ!!! 久保ちゃんが熱出してっから、俺が看病とかしなきゃなんねぇのに…。 薬のある場所も何もわかんなかった…。 だから結局、寝てる久保ちゃんの横に立ってるだけなカンジで…。 あわててるだけで、何もできない自分が情けなくなってきた。 こういう時に何もできねぇのって…、最悪じゃんか…。 「ゴメン…」 そう俺が久保ちゃんにあやまろうとしたら…。 横から久保ちゃんの腕が伸びてきて、俺をベッドに引きずり込んだ。 普通なら、なにすんだって怒鳴ってるトコだけど…。 毛布の中で久保ちゃんに抱きしめられたら、何も言えなくなった。 「俺は大丈夫だから落ち着いて、時任」 「久保ちゃ…」 「何も言わなくていいから…、ちょっとだけじっとててくれる?」 「・・・・・・うん」 久保ちゃんはそう言うと、俺を抱きしめたまま目を閉じた。 俺のコト落ち着かせようとするみたいに、背中をトントンとゆっくり叩きながら…。 そしたら気分が少し落ち着いてきて…、自分の身体から力が抜けてくのがはっきりわかった。 べつにすっげぇあわててたとか、そんなつもりなかったけど…。 その時になって初めて、自分が緊張してたことに気づいた。 胸の中につまってたモノを吐き出すみたいに息を吐いたら、抱きしめられてる胸から心臓の鼓動が聞こえるようになって…。 それ聞いてたら、なぜかスゴク久保ちゃんに抱きつきたくなってくる。 だからホントに…、ぎゅっと久保ちゃんの胸に抱きついた。 「一緒にこのまま寝てくれる? 寝た方が治りそうだし…」 「うん」 「おやすみ、時任」 「おやすみ…」 君が苦しんでいても、困っていても…。 ただ、見ているだけで…、あわてているだけで…。 ホントはできることなんて何もなくて…。 だから、君のためになんて…、そんなニセモノのセリフは言えない。 だけど君を想っているから、誰よりも想っているってコトだけは言えるから…。 その想いを込めて、君を抱きしめていよう。 君が僕のコトをいらないって言うまで…、ずっと、ずーっと…。 |