…午前三時。 深夜番組見終わってベッドに行くと、時任はすでに猫みたいに丸くなって眠ってた。 俺が入って来ても気づかないくらいぐっすり…。 ホントうらやましいくらい寝つきいいけど、寝起きは最悪。 だから起こさないように静かに部屋の中に入って、時任のかけてる毛布の中にそっともぐり込んだ。 「う…ん…」 さすがに少し気づいたみたいで、目蓋がちょっとだけ開きかけた。 こういう時の時任は寝ぼけてるだけだから、抱きしめてやって背中を撫でてやったらまたすぐに眠ってしまう。 今みたいに…、抱きしめてる腕の中で胸にしがみ付くようにして…。 そうしてると時任の匂いとか体温をカンジて抱きたくなったりするけど、こうやって眠ってる時任をずっと抱きしめてたかった。 こうやって抱きしめていられるなら…、もういいから…。 これでもう何もいらないから…、明日も来なければいいような気がして…。 夜が明けるのを止めてしまいたくなった。 明けない夜の中で、名前を呼んで抱きしめて、キスして…、時任の体温だけを感じて眠っていたいのに…。 いずれ朝はやって来て…、このぬくもりを奪っていく。 俺の腕の中から…。 だからホントはベッドの中でまどろみながら、いずれ来る明日を壊したかった。 「・・・・・くぼちゃ」 「ん?」 「もう、寝ろ…」 「もしかして、起きてた?」 「・・・・・・・寝てる」 「寝てるの?」 「…うん」 半分寝て半分起きてる状態の時任をもっと近くに抱き寄せてみると、首筋に赤い痕が見える。それは何日か前につけた痕だったはずだけど、もう薄くなって消えかけてた。 白い肌をきつく吸い上げて、くっきり紅く鮮やかな色が残るように痕を…。 いくらつけても何度つけても、こんな風に消えてなくなる…。 少しの痕跡も残らないくらいキレイに…。 どんなに抱いても…、時任が嫌だって泣き叫ぶくらい抱いても…、もしかしたら消えていく痕のように何も残らないのかもしれない。 いくら犯しても抱きしめても…、この身体に何も刻めないのだとしたら…。 どうすればいいんだろう? この暖かい身体とその中にあるココロが欲しくてたまらないのに、抱きしめても、抱きしめても、腕の中からすり抜けていくような気がする。 こんなに近くにいても、こうやって抱きしめていても、いつも少しだけ何かが足りない。 好きだって、大好きだって告げられていても…。 「…くすぐっ…たい」 「ちょっとだけ…、じっとしててくんない?」 「・・・・・・」 「すぐ終るから…」 薄くなった痕に口付けて、また鮮やかな赤を白い肌につける。 消えていくとわかっていても…、何度も何度もその痕に口付けて白い肌に痕跡を残したかった。 それが、虚しいだけの作業でしかなくても…。 「・・・・・好きだよ、時任」 やがて、壊せない明日がやってくる。 |