ゴゥンゴゥン…、ゴゥン…。 さっきから、洗濯機の音が聞こえてる。 洗濯機の音が聞こえてるってことは、洗濯してんだってのは当たり前なんだけど…。 実は、これがちょっち問題だったりする。 けど、問題なのは洗濯じゃなくて風呂場の入り口。 ガラスにうつってる影が問題なんだってのっ! 「…久保ちゃん」 「ん〜、なに?」 「なんでソコにいんの?」 「洗濯してるからだけど」 「・・・・・・ウチの洗濯機って、見張ってなきゃ動かなかったりすんのか?」 「べつに動くんじゃない?」 だからっ、なんで動いてんのにぼ〜っと突っ立って見張ってんだっ! 洗濯って見張ってなきゃできねぇのかよっ! …えっと、なんだっけ? ウチって全自動ってヤツらしいから、干すトコまで洗濯機がしてくれんだろ? なのに時々、久保ちゃんって洗濯機の前に立ってんだよな…。 そんなの、やっぱヘンじゃんっ! なんて言ってる間に…、なんか頭がぼーっとしてきた…。 実は風呂に入ってたりしたんだけど、さっぱりして上がろうかなぁって思った瞬間、久保ちゃんがいきなり入ってきて洗濯し始めちまったっ。 べつに久保ちゃんがいたって、ふつーに風呂あがって着がえりゃいんだけどさ。 なんか…、視線とか気になるし…。 けど、オンナじゃねぇんだから平気・・・・・、じゃねぇっつーのっ! くっそぉっ! 早くいなくなりやがれっ!! なんてココロん中で怒鳴って、八つ当たりでガラスに向かってお湯をかけた。 …ガラッ! 「時任、入ってる時間長すぎ…」 バッシャーンッ!! 「・・・・っ」 カッコーン…。 げっ、ヤバ…。 久保ちゃんがいきなり入ってくっから、とっさに洗面器まで投げちまった…。 い、いきなり入ってくんのが悪いっ! なーんて・・・・・・・。 うわっ、久保ちゃんがびしょぬれ状態のまま固まってる。 なんかいやーな予感…。 「おーい…、くぼちゃ〜ん…」 呼んでも反応ナシ。 …なんかすっげぇコワイような気が。 「…洗濯」 「な、なに?」 「洗濯しなきゃね」 「えっ?」 洗濯? 洗濯ならもうしてんじゃんっ! もしかして洗面器…、なんかヤバイとこに当たったとか? って、うわぁぁっ!! 「く、く、くぼちゃんっ!」 ぬ、濡れたからってのはわかるケド、べつにココで脱ぐことねぇじゃんかっ! しかもっ、なんか全部脱いでるしっ!!なんなんだっ、一体っ! 少しぐらい前かくせっ、前っ! 「なーに見てんの?」 「な、何も見てねぇっつーのっ!」 「時任クンのエッチ」 「誰がエッチだっ!!」 …俺がエッチっていうより、久保ちゃんの服の脱ぎ方の方がエッチくさい!! ちょっ、ちょっと色っぽすぎっていうかさ。 って、何言ってんだ、俺っ!! 「時任、つめてくんない?」 「つめるって?」 「このままじゃ風呂に入れないっしょ?」 「誰が?」 「俺が」 「うわぁぁっ、入ってくんなっ!!」 「服、洗濯機に放り込んじゃったし、ついでだから」 「ついでにすんなっ! お湯が減るっ!!」 「気にしなくていいよ?」 「久保ちゃんが気にしなくても、俺が気にするっ!」 「冷たいなぁ」 「…み、妙なトコさわんなっ!」 「妙なトコってどこ?」 「ぎゃあ〜! 風呂に痴漢がいるっ!!」 「ドコに?」 「…痴漢はてめぇだっ!」 風呂に男二人で入るなんてムリすぎっ! くっつかないで…なんか、入れねぇじゃんか…。 けど、お湯の中で肌がふれる感じって、いつもとなんか違う感じがして…。 ちょっと気持ちいいかなぁなんて思ったり…。 久保ちゃんが回してくる腕とか、その時に立てる水音とか…、反響して響いてる声とか…。 妙なカンジだけど、そんなの聞いたりカンジたりしてるとなんかさ…。 ・・・・・・エッチなコトされたくなったり。 「時任…」 「ん〜?」 「なんか色っぽい顔してるよ?」 「うぁっ、マジでヤバイからもうさわんなっ!」 「いいからさ、このままいっちゃいなよ。のぼせたらベッドまで運んであげるから」 「・・・・・すでに、のぼせてたりすんだけど?」 「じゃあさ、今度は溺れさせてあげるよ」 「くぼちゃんの、ば〜か…」 もう完璧のぼせてんのになにやってんだろって思うケド、逃げられないし避けられない。 くっそぉ…、なんかやられたってカンジ。 なのに久保ちゃんの腕に逆らえなくって、反響してる自分の声聞いてたりする。 目の前でお湯から出てる自分の足がユラユラしてて…。 あーもうっ、どうにでもなっちまえっ! 「…うっ、ん、くぼちゃん」 「…なに?」 「な…、なんで…、洗濯…見てんの?」 「洗濯?」 「…いつも見て…るし」 「それはね、水が回ってんの見るのが好きだから」 「やっぱヘンすぎ…」 「のぼせてるのに余裕っぽいね、時任」 あっ、墓穴掘った…。 けどもう、何がなんだかわかんなくなってた。 のぼせた上に溺れてたから…。 お湯じゃなくて…、久保ちゃんに…。 「今度から、俺が洗濯するっ!」 「どしたの急に?」 次の日、洗濯するって久保ちゃんに宣言したけど、結局三日しか続かなかった。 理由は水がまわってんの見てても面白くなかったから…。 なんてのは、やっぱメンドくなっただけだってバレバレだったりする? っていうか、まわってんのなんか見えねぇっつーのっ!! 久保ちゃんのウソつきっ!! |