『…もう、ダメなのか?』 『うん、ゴメンね。貴方のせいじゃないけど、もう一緒にはいられない』 つまんねぇドラマ…、とか思いながらさっきからテレビ見てた。 けど、そこに出てる女の子だけが結構いい演技してて…。 そのコのちっちゃい顔とか細い腕とか見てたら、ちよっとカワイイ感じかもなんて思った。 べつにだからどうってワケじゃねぇけど…。 「ねぇ、時任?」 「わぁぁぁっ!!」 ズササササッ!! 「何もそんなに勢い良く逃げるコトないっしょ?」 「み、み、耳元でいきなり囁くなっつーのっ!」 「いきなりじゃないけど?」 …び、びっくりしたぁぁぁぁ。 声聞こえるまでぜんっぜん気配なかった、マジで。 時々だけど、久保ちゃんて気配ねぇ時あんだよなぁ…。 なんかヘンな訓練とかしてんじゃねぇの? 実は忍者修行とかしたことあるとか・・・・・・・・・・。 なぁんて…、まっさかなぁ。 とか言いつつ、久保ちゃんならあり得そうな気ぃしてきたじゃんかっ! 「く、久保ちゃんさぁ…」 「ん〜、なに?」 「に、にん…」 「にん?」 「に、人気あるじゃんか、久保ちゃんて…」 「人気?」 「女の子とかに、も、モテるって意味」 「う〜ん、まあ否定はしないけど?」 …ムカッ! あやうくヘンなこと口走っちまいそうになったのを、なんとかごませたのはいいんだけどさ。 なんかムカツクっ!! …確かに久保ちゃんの周りってそんなカンジだったりするけど。 久保ちゃんのコト好きなヤツが結構いるってコトが、なんかすっげぇムカツクっ!! 「今まで告白してきた中で、カワイイとか思ったヤツいねぇの?」 あんまムカついたから、わざとなんとも思ってないフリしてそんなふうに聞く。 だってさ、俺ばっかそんなのでイライラすんのってイヤじゃんか! 「早く言えってのっ」 「カワイイ…ねぇ?」 「一人くらいはいたりすんだろ?」 「そういう時任は?」 「えっ?」 「カワイイって思った女のコとかいたりする?」 「俺はべつに…」 「さっきまで見てた、ドラマに出てる女のコは?」 久保ちゃんがそんなコト聞くから、思わずテレビの方を見てみたら、ちょうどさっきの女の子が出ててラブシーンしてた。 …う〜ん、やっぱカワイイって言えばカワイイ? 思わずじ〜っとテレビ見ちまってたら、耳元に生暖かい空気がふぅっとかかった。 「うわっ、な、なにすんだよっ!!」 「時任はああいうコが好き?」 「べ、べつにそんなんじゃねぇよっ! ただ…」 「ただ?」 「ちょっとカワイイって思っただけじゃんかっ」 「ふ〜ん」 「ワリィかよっ」 「別に悪くないけど?」 じわじわ後ろに逃げたら、じりじり久保ちゃんが追いかけてくる。 なんかマジでコワイような気が…。 「もう逃げ場ないみたいよ?」 久保ちゃんに言われて振り返ってみたら、すぐ後ろに壁があった。 げっ、絶体絶命ってヤツ?! 「時任…」 「な、なに?」 「ドラマのコと俺とどっちがカワイイ?」 「はぁ?」 「どっちがカワイイかって聞いてんだけど?」 …カ、カワイイわきゃねぇだろっ!!! ドコに身長180超えてる男を、カワイイって言うヤツがいんだよっ!! 「どっち?」 しつこく聞かれて、俺は思わずテレビ画面を指差す。 そしたら久保ちゃんは俺の顔に自分の顔を近づけてきたけど、もうちょっと前に行ったらキスできる位置で止まってすうっと目を細めた。 なんかわかんねぇけど、に、逃げねぇとヤバイかも…。 「…久保ちゃん」 「どしたの?」 「そ、そろそろ晩メシ食いたいかなぁ…、なんて…」 「まだ早いっしょ?」 「うわっ、ちょっ…」 久保ちゃんの手がシャツの中に入ってきて、わき腹とか色々撫でたりしてくる。 壁を背にしてっから、横に逃げるしか…。 けど、横に逃げようとした途端、久保ちゃんにつかまって引き倒される。 このまま流されて抱かれるのがイヤで、久保ちゃんの身体を思いっきり突っぱねた。 「うわぁあっ、離せぇぇっ!」 「カワイイって言ってくれるまで、離してあげない」 「男のくせに、カワイイって言われてうれしいのかよっ!」 「時任にならね」 「ぜってぇ言わねぇっ!!」 「あっそ…」 「ぎゃぁぁっ!!」 「観念しなよ」 うわっ、シャツとジーパン取られた! やっぱこのままやられちまうのかも…。 おとなしくカワイイって言えば、やめてくれんのかな? けど、カワイクねぇもんはカワイクねぇよな…。 だぁぁっ、どうすりゃいいんだっ!! 「くぼちゃん」 「なに?」 「…好きじゃダメか?」 「好き?」 「カワイイじゃなくて…、ただの好き。カワイイからとかカッコイイからとか、そういうのがフツー好きの理由かもだけど。そういうのなくても好きかもって思ってんのじゃダメ?ただ好きだってだけじゃ、好きになる理由にはなんねぇの?」 カワイイからイコール好きとか、カッコいいからイコール好きじゃなくて…。 カワイクなくて、カッコ悪い時だって好きだって思えたりしたらさ。 それって、結構いいんじゃねぇかなぁって思ったりした…。 「…時任」 「う、うん?」 「やっぱ、おとなしく抱かれてね?」 「うあっ、ちょお待てっ!!」 「待たない」 「……カワイイって言うからやめてくんない?」 「イヤ」 でもホントは…、いつでもどこでもどんな時でもカッコいいって思ってたりする。 ・・・・・・・なーんて、久保ちゃんにはナイショだけど。 |