目の前にチョコがある。 チョコがあると言っても、今日はバレンタインデーとかそおいうんじゃない。 ただ、冬季限定のチョコがあったから、二人でコンビニに言った時に買ってきたってだけ。 けど、それがアタリでさ。 なーんか、うまかったんだよな〜。 それでさっきから、二人でテレビ見ながらつまんで食ってたんだ。 ・・・・・だけど、当たり前だけど、入ってる数には限りがあんだよな。 いつの間にか、箱の中にあるのは最後の一個になっちゃってる。 俺、何個食ったっけ? いや、やっは゜久保ちゃんの方がいっぱい食ってたような気がするっ! そーだ、きっとそーだ! というわけで、コレは俺の分ってコトだっ。 遠慮なく食っちまおう。 などと思いつつ、俺がチョコに手を伸ばした瞬間、横からそのチョコを何者かの手が奪い取った。 ・・・何者かっつったって、ココには俺と久保ちゃんしかいねぇんだから、当然、チョコ取ったのは久保ちゃんだ!! 「あっ!」 俺が思わず叫ぶと、久保ちゃんはチョコを口に入れてから、 「何?」 と、俺の方を向いた。 今ごろ、何っとか言ってもおせぇよっ! くぅっ、俺のチョコがっっ!! 仕返しに冷蔵庫の久保ちゃんのアイス食ってやるっ! 「べっつにっ、何でもねぇよっ!」 俺が仕返しを誓いつつフンッとそっぽを向くと、久保ちゃんがクスッと短く笑うのが聞こえた。 てめぇ、俺が狙ってたの知ってて食いやがったなぁ〜!! もう絶対仕返しっ! 決定っ!! 食い物の恨みは怖いって決まってんだっ! 「時任」 今更あやまっても遅いぜ、久保ちゃんっ。 「こっち向いて」 イヤダッ! 「しょうがないなぁ」 「痛っ!」 何を考えてんのか、久保ちゃんが強引に俺の顔を自分の方に向かせた。 今、首がぐきって言ったような気がすんぞっ。 なにしやがんだっ! って・・・えっ、久保ちゃん? 「・・・・ん」 「ちゃんと口開けて」 「くち?」 俺が喋った瞬間、久保ちゃんの唇がそれを塞いだ。 ・・・あれ? 「今度、またこのチョコ買って来ようね」 優しく微笑んでる久保ちゃんを見ながら、俺は首をかしげた。 俺の口の中にチョコがある。 なんかわかんないけど、さっき食ってたのより甘い気がした。 |