とつぜん。
 なんの理由もなく、とーとつにキスしたくなる時がある。

 あの唇とキスしたい。

 そーいう時は、どうしていいかわかんなくなる。
 自分から・・・なんて・・・。
 そ、そ、そんなことできねぇし。
 はずかしいっていうかっ、なんかムズムズする。
 考えただけで顔がアツクなってきて、ドキドキが止まんなくなる。

 やっぱ、俺ってヘンなの?

 
 「赤い顔して、何考えてるの?」
 「べ、べつに、なんにも考えてねぇもん」
 「時任くんのエッチ」
 「誰がエッチだっ、誰がっ!」

 エ、エッチがしたいとか、そこまでは思ってねぇってのっ!
 そーいうのじゃなくってさ。
 そーいうのじゃなくて。

 好きって言うかわりに、キスしたい。
 好きの数だけキスしたいって、そんなふうにバカみたいに思ってんのっ。

 くそぉっ、なんでこんなコト思わなきゃなんねぇんだ!
 ムカムカするなぁ。
 こういうムカムカは・・・・やっぱ、久保ちゃんのせいだ。
 
 責任取りやがれっ!
 
 俺がそう心の中で叫んでると、久保ちゃんがクスッと笑って顔を寄せてきた。

 「自分からキスできるように練習してみる?」

 うっ、なんかしんないけどバレてる。
 やっぱ久保ちゃんて鋭いっ。
 俺はごまかすようにそっぽを向いた。
 
 「なんでんなこと練習すんだよっ」
 「けど、できないでしょ? それとも俺にはキスしたくない?」
 「そ、そおいうワケじゃねぇケド」
 「じゃあ、なんで?」
 「教えない」

 久保ちゃんは俺の顔を自分の方に向けさすと、ゆっくりと俺にキスしてきた。
 優しくて甘いキス。

 結局、俺はキスするよりされる方が好きなんだってコトに気づいた。
 ケド、それってやっぱワガママかなぁ?


                            『キ ス』 2002.3.1更新

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