「ホントに俺のコト好きなの?」

 好きとか嫌いとか、そういうレンアイするみたいな関係じゃないって、そう信じてて。
 けど、久保ちゃんが俺じゃない誰かと話すたびにイライラしたりとか。
 久保ちゃんが近くにいるとドキドキが止まらなくなったりして。
 俺の好きがレンアイって意味のそういう好きなんだってわかった。
 だから、俺は久保ちゃんに好きだって言った。
 そしたら、久保ちゃんも俺のコト好きだって言ってくれて。
 それでやっとさ、両思いってヤツになったのに、なったはずだったのに。

 久保ちゃんは俺の好きを疑うみたいなコト言った。


 「抱きしめても抱き返してくれないし、キスしても応えてくれないよね、時任は。俺とそういうコトするの嫌だって、そういうことでしょ?」
 「ち、ちがうっ」
 「違わないでしょ?」
 
 そう言われて、俺は言い返せなかった。
 久保ちゃんの言ったことが事実だったから…。
 でも、でもさ、抱きしめたりとかしないのは、キスとかしないのはそういうんじゃないのに、そんなんじゃないのに、久保ちゃんが俺のコト責めてる。
 こんなに好きなのに、そう想ってんのになんで…。

 「戻ろうよ」
 「えっ?」
 「同級生で、同居人で、相方な俺たちに」
 「なんで、そんなこと言うんだよっ」
 「俺の好きは言葉だけじゃ足りないから、だから俺が時任のコト傷つける前に戻ろう?」
 「嫌だっ」
 「時任」
 
 久保ちゃんが困ったみたいな顔して俺のコト見てる。
 そんな顔されたら、嫌いだって言われたみたいでたまらなくなった。

 「…久保ちゃん」
 「なに?」
 「久保ちゃんはコワイとか思うコトねぇの?」
 「コワイって?」
 「抱きしめたら、キスしたら、ダメになるって」
 「どして?」
 「好きすぎて、久保ちゃんしか見えなくなる。そしたら、たぶん色んなコトが許せなくなって、久保ちゃんに話しかけたりとかするヤツに片っ端から嫉妬したりとかして…。そんなになってからじゃ遅いって思うから、だからダメでコワイ」

 久保ちゃんに話しかけるヤツに嫉妬する自分がイヤ。
 そんなふうにダメになってく自分がコワイ。
 けど、久保ちゃんに嫌いって言われんのがもっと、何倍も何十倍もコワイ。
 
 「時任」
 「・・・・・・・」
 「恐がらなくていいから、俺のコト抱きしめてみてよ。全然平気だから」
 「けど…」
 「大丈夫だから」

 久保ちゃんにそう言われて、恐る恐る久保ちゃんの方に腕を伸ばすと、自分の両腕が震えてんのがわかった。
 いつもみたいに相方とかそういうんじゃなくて、好きってキモチだと手を伸ばせない。
 久保ちゃんを好きって気づいた瞬間、久保ちゃんに触れられなくなった。
 抱きしめると、キスすると、変わってしまう何かが恐かったから…。
 
 「ゆっくりレンアイしようよ、時任」
 「…久保ちゃん」
 「その震えが止まるまで、何度でも好きだって言ってあげる。だから、もしその震えが止まったら、ちゃんと俺のコト抱きしめてキスしてね?」
 「・・・・・・・うん」

 「好きだよ」
 
 臆病で恐がりな俺に、久保ちゃんが優しく好きって言ってくれる。
 俺は何度、久保ちゃんに好きって言ったら、久保ちゃんに触れられるのかな?
 
 「好き」

 想いを言葉にするとスゴク短いのに、そのキモチとココロはとても重いカンジがした。

                            『好き』 2002.6.10更新

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