プリンヨーグルトサワーとラズベリークールミント。 なんかワケわかんねぇ、やったら長いネーミングのガムが、俺と久保ちゃんの目の前に二つ並んでる。 ラズベリーはまあいいとしても、プリンヨーグルトて何? めちゃくちゃあやしいんじゃねぇの? コレ。 「なんで、んなモン買ってくんだよっ!」 「新発売だったから」 「新発売ならなんでもいいのかっ!?」 「うん」 「うなづくなっ、バカっ!」 そうなんだよなぁ。 このあやしいガムを買ってきたのって、やっぱ俺じゃなくて久保ちゃん。 新発売って書いてあるだけで買うのやめろって、何度言っても聞かねぇの。 どうせ不味かったら途中で食わなくなるくせに…。 「時任も食べてみなよ。案外、いけるかもよ?」 「って、人を実験台にすんなっ!」 「あれっ、バレちゃった?」 「バレバレだっつーのっ」 久保ちゃんはそーいうの買ってきて、自分だけで食えばいいのに俺にも食わせようとする。 まずくても、うまくても全部。 なんでなんだろ? ほんっと、ワケわかんねぇ。 「このプリンなんとかっていうのから食べない?」 「ヤダ」 「何で?」 「ネーミング見ただけで、いかにもマズそう」 「そうかなぁ?」 「プリンとヨーグルト混ぜて食うか?フツー」 「ん〜、そう言われてみればしないねぇ」 「…言われなくてもしねぇだろっ」 久保ちゃんは何が入ってるのか書いてあっても、あんま気にしてないみたいで、どんなにマズそうなモノでも新発売だってだけで、なんとなく楽しそうに買い物カゴに入れる。 …確かに、新しいの出るとどんなのか気にはなるってのは認めるけど。 だからって、いかにもってヤツ買わなくてもいいじゃんっ! 「時任、口開けて」 「はぁ?」 「食べさせてあげるからさ」 「食わねぇったら、食わねぇっ!! ぜってぇ、ヤダ!!」 「…ふーん、あっそう」 俺が力一杯ヤダって言ったら、久保ちゃんはあきらめたみたいで、ポイッと自分の口にプリンなんとかってガムを放り込んだ。 …うっ、マジで食いやがった。 なんて思いながら俺が久保ちゃん見てたら、久保ちゃんが微笑んで俺の顔を覗き込んできた。 「せっかくだから、やっぱりおすそ分けしようかなぁ」 そう言った久保ちゃんは、なぜか俺の顔を両手でガッチリと固定した。 …なんか、いやーな予感するんですけど? 「久保ちゃん? な、なにっ…」 チュ〜〜〜〜…。 「…んんっ??」 うげっっ、マズイっ!! むちゃくちゃマズイ!! さっきまでなかったはずなのに、今、俺の口の中には妙にすっぱい味と甘ったるい味がごちゃごちゃなカンジの良く分からない味のガムがある。 なんてことしやがんだっ!! 「あ〜、ホントにマズかったなぁ。コレ」 「・・・・・・」 「あれ?口聞けないくらいマズい? そんなにじゃなかったと思うケド?」 捨てればいいのかもしんないけど、なんかくやしいから返してやるっ!! 覚悟しやがれっ!! 「なに?時任」 チュ〜〜〜〜…。 俺は久保ちゃんにキスして、舌を使って久保ちゃんの口の中にガムを押し込もうとする。 けど、久保ちゃんはすぐに舌で押し返してきた。 …んんっ、くそうっ、なかなかうまく…。 なんて、バカみたいに攻防戦してたら、突然久保ちゃんがガムのこと無視して舌を動かしてきた。 ・・・・・・・もしかして、ホントにキスすんの? 俺と久保ちゃんは、ガムのことなんかそっちのけでキスし始めた。 すぐに頭がぼーっとしてきて、だんだん何にも考えられなくなってダメになる。 初めてキスするまであんなに時間かかったのに、今じゃキスなんていつもすることで…。 もしかして、やっぱクセになっちゃってる? 俺って、もしかしてキス中毒かも。 「・・・・・けど、ホントマズイなぁ。このガム」 「自分で買ったくせにブツブツいうなっ」 「せっかく時任からキスしてくれたのに、ガムのせいでマズイ」 「自業自得だろっ」 「ちょっと残念」 「無理やり食わせやがって」 「時任の反応が面白いからついね…」 「それだけの理由で、俺は毎回食わされてんのか?もしかして」 「もしかしなくても、そーだけど?」 「なにぃぃぃっ!!」 バキッ! 「何も殴らなくてもいいじゃない、ねぇ?」 「問答無用っ!!」 今度から、ぜってぇ阻止!!! 新発売買うの禁止にしてやるっ!! …あっでも、俺の分も禁止されそうだからやめとこ。 結局、お互い様ってヤツ?? |