・・・・・・・好きだ、大好きだ。 その言葉を言ったコトはあるけど、意味は考えたコトがない。 意味とかわかんなくても、好きだと思えば好きだし…、 そうじゃなければ違うと思うし、だだ、それだけのコトだから考えない。けど、もしかしたら…、どこがとか何かとかなんて考える余裕なんて無いからかもしれない。 普段もそう思ってはいるけど、言いたくなるのは決まって胸が痛かったり、苦しかったりする時で…、だから何も考えたりなんて出来なかった。 胸が痛くて苦しくて…、たまらない…。 けど、それと同じくらい好きで大好きでたまらない。 良く恋すると幸せそうな顔になるとか、そういうの聞いたコトあるけど…、 一番好きな時が胸が痛かったり苦しかったりする時だってのに、どうやったら、そんな顔が出来るってんだろうって…、そんなのわかんねぇし…、 好きだって言葉と一緒にバカとか叫んで、そんなのが俺にとっての恋だとしたら、きっとバカなのは俺の方だ。 目の前でアイツの腕にくっついてるヤツを引き剥がし、それから、くっつかれて平然としてるアイツを睨みつけて…。くやしさと敗北感に打ちのめされながら、それでも、いつだってバカと一緒に好きだと叫ぶしかなかったっ。 「離れろっ、バカっ!!!」 「そう言われても、くっいてるのは俺じゃないし?」 「払い除ければいいだろっ!」 「別にこれくらい、ねぇ?」 「これくらいとか言うなっ!!」 「なんで? お前だって自分の腕に誰かがくっついて来ても、別にこれくらいとか思うデショ?」 「・・・・思わないっ、今日から絶対に思わねぇっ!!」 「それは、どうして?」 「・・・・・・・・っ」 「ねぇ、どうしてだと思う?」 いつも同じようなコト繰り返して、繰り返し繰り返し同じ質問して、同じ答えを俺が叫ばなきゃ終らない。何もかも知ってるクセして、平然とした顔して脅迫してくる。 言わなきゃ今度は腕だけじゃなくなる…、そんなのを匂わせて…、 バカなアイツと、バカな俺はバカなコトを繰り返す。 好きだと気づいた日から俺はバカになって、アイツもバカになった。 こんな腕にくっついてるだけのヤツにムカついてっ、ムカつきながら、なんでこんなにバカみたいに好きなんだって自覚して…っ、 でも、こんなにバカみたいに好きだから、胸の鼓動が爆発しそうで脅迫されなきゃ好きの一言さえ言えないっ。こんなに好きにならなかったら、こんなに好きじゃなかったら、もっと簡単に好きだって言えたってのに、こんなのマジでバカすぎるじゃんか…っ! バカでバカで、バカすぎて…、 好きで好きでっ、好き過ぎて泣けてくる…っ。 けど、絶対に涙なんか見せてやるもんかって歯を食いしばって、ボロボロになりながらも虚勢張って好きだ、バカヤロウと叫んだ。 「これだけ言わせてやめなかったら、マジ殺すっ!!久保ちゃんなんか大嫌いだっ、大好きなのと同じくらいっ、だいっっきらいだーーっ!!!」 ちくしょうっ、バカヤロウ…っっ!!! うっかり視界が滲んで悔しかったのが、更に悔しくなるっ。 あぁっ、もうっ、どうにでもなれ!!!って抱きついたら、俺に引き剥がされたヤツに久保ちゃんから引き剥がされたっ。 くそっ、なんで俺がこんな目に…っ!!! …って思ってると、引き剥がされた俺の手を久保ちゃんが引っ張って、強引に抱きしめてくる。抱きつくのはいいけど、こんなトコで抱きしめられるのは真っ平ゴメンだと腕で胸を突っぱねると、久保ちゃんが小さく笑った。 「大好きなのと同じくらい大嫌いなら、大嫌いなのと同じくらい大好きってコト? だったら、もっと嫌いになってさ、同じだけもっと好きになってくれない?」 「…って、なんだよっ! そのワケわかんねぇ解釈っ!!」 「好きだよ、時任」 「はーなーせぇぇっ!!!!」 めちゃくちゃだっ、マジでめちゃくちゃだっ!!! 俺も久保ちゃんも好きも嫌いもっ、何もかもめちゃくちゃだっ!!! でも、それでも胸を突っぱねて久保ちゃんが離れたら、きっと今度は逆にぎゅーっと息もつけないくらいに抱きしめたくなるんだろう。抱きしめてキスしたくなったりするんだろう。 だから、そんなバカな恋の意味なんて、俺は知りたくないしわからないっ。 なんで、好きかなんてっ、そんなの知るもんかっ!!! けれど、それでもたぶん・・・・、 俺の鼓動が苦しいくらい痛いくらいドキドキすんのは、たった一人だけ…。 それだけが大嫌いだって叫んでても、抱きしめられたくなくて胸を押しててもハッキリとわかるのが…、 どうしようもなく…、くやしくて…、そして、それと同じくらい嬉しかった。 なぜなのかはわかんねぇけど、どうしようもなく嬉しくて…、 久保ちゃんを思いっきり撲って、思いっきり抱きしめたい気分だった。 |