久保ちゃんの様子がさっきからなんかヘン。 どこがヘンとか聞かれたら、ちょっと困っちまうんだけど…。 う〜、やっぱ見れば見るほどヘンだ。 こうっ、なんつーかさ、いつもとちょっとだけ雰囲気が違うってカンジ。 別に悪いカンジってんじゃねぇんだけど、いや〜な予感だけがずっとしてる。 こういう時ってろくなことないんだよなぁ。 「久保ちゃん」 「ん〜、なに?」 「お、俺、出かけてくる」 「もうじき昼なのに?」 「…うん」 「なんか用事あるの?」 「べつにねぇけど…」 「だったら行かなくてもいいでしょ」 「それはそうだけど」 何か起こる前に出かけようとしたんだけど、失敗しちまった。 う〜、なんとか方法考えねぇとヤバイ。 前にこんなカンジな時あったけど、そんときは久保ちゃんのやってたゲームのCDを踏んで割っちゃったのがバレた時だったような気ぃする。 ・・・・・・なんかやったっけ? とりあえず心当たりねぇんだけどさ。 こういう嫌な予感てはずれねぇんだよなぁ。 「時任、昼にするよ」 「うん」 久保ちゃんに言われて、俺は昼飯を食べるべくテーブルに向う。 今日は買い物に出たりしてないから、たぷん麺類だろうなぁとか思いながら俺が自分の席に座ると、目の前に何かの山があった。 「久保ちゃん」 「ん〜?」 「なにコレ」 「なにって、お前のでしょ?」 「それはそーだけど…」 「時任の昼めしはソレね」 久保ちゃんが指差した机の上にある山の正体は、俺が買ってきた最近はまってたお菓子だった。確かにこれはうまいんだけど、昼食うのはちょっと…。 「これって昼めしに食うもんじゃねぇじゃんっ!」 俺がそう抗議すると、久保ちゃんはそんな俺を見てゆっくりと微笑んだ。 「家にまだたくさんあったのにソレ忘れて更に買ってきた上、飽きたなーんて言って食わないなんてもったいないよねぇ?」 「だってさ、飽きたんだからしょうがねぇだろっ」 「まだ食えるよ。賞味期限きてないし」 「く、食えるのは食えるけど…」 「食おうね、時任」 「ヤダ!!」 「そんなこと言うと、今後何も作ってあげないよ?」 こ、こえぇぇ…。 久保ちゃんが微笑みつつ怒ってる。 ううっ、なんで見つかったんだろっ。 忘れてたけど、ちゃんとベッドの下に隠してたのに…。 「時任」 「・・・・・」 「ごめんなさいは?」 …確かに俺が悪いんだけど、なんだかわかんねぇけど素直にあやまれねぇんだよなぁ。 ごめんって言えば、久保ちゃんが許してくれるってわかってんのに。 どーしよう。 やっぱ、食うしかねぇかな…。 俺が手を伸ばしてお菓子を一個つかむと、その手の上に久保ちゃんが手を置いた。 「悪いって思ってる? もうしない?」 …うん。 俺が首をたてに振ると、久保ちゃんは俺の手の甲に軽くキスを落とした。 「仕方ないから手伝ってあげるよ。一緒に食べようね?」 「やっぱどしても食うのかっ?!」 「当たり前でしょ? やったことの責任はとろうね」 「イヤだぁぁっ!!」 「あきらめなよ、時任」 …結局、俺と久保ちゃんはそれから二週間くらいその菓子食ってた。 ううっ、今度からまとめ買いすんのよそうかなぁ、なんて思ったけど…。 「時任、そんなに同じお菓子ばっかたくさんカゴ入れてどーすんの?」 「全部食うに決まってんじゃんっ」 「・・・・・ちょっとは反省しなさいね」 やっぱまとめ買いは楽しいからやめられないんだよなぁ。 なーんて、ゴメンな久保ちゃん。 ベッドに隠したりしないから、許してくれよなっ。 |