「・・・・・・・・・あ?」 そんなマヌケな声を出して、ふと目が覚めた。 けど、チラリと窓の方を見たら、まだ夜は開けてなくて真っ暗だし…、 時計を見たら寝てから、一時間しかたってねぇし…。 なんか…、ショックっつーか、なんでハンパな時間に目ぇ覚めてんだとか、ブツブツ自分で自分に文句言いながら、少しもぞもぞして寝直す。だってさ、目ぇ覚めたっつっても、一時間しか寝てねぇし眠ぃんだ…。 眠ぃから、眠りてぇんだっっ。 ・・・・・・けど、なーんか寝心地が悪いっつーか、寝付けねぇ。 ゲームとかして夜更かしはすっけど、寝付きはいい方だしさ。 しかも、今は春で特に暑いワケでも、寒いワケでもねぇのに…。 …というワケでオヤスミ、俺様は寝るっっ。 ・・・・・・・・・・・・。 ・・・・・・・・・・・・・・・・。 ・・・と思ったけど、だぁっっ、もうっ!!!!! なんで、眠れねえんだっっ!!!!! 暑くも寒くもねぇとしたら、他に何が原因だっっ!! 眠れねぇほどの悩み…とか……、 うー…、うー……、さすがに何も悩みはねぇとは言えねぇけど、とりあえず眠れねぇようなのは無い。つか、俺様的には食い気と眠気は最優先事項だしな。 だったら、何だ…、他になんかあんのか??! そんな風に考えながら、ベッドの上でもぞもぞもしながら唸る。 けど、何も見つからなくて、更に唸ってたら…、ちょっとだけ頭が痛くなってきて、その瞬間っ、天才な俺様はひらめいた! も、もしかしてマクラじゃね?!! 別に変わったワケじゃねぇけど、マクラが変わると眠れねぇとか…、 マクラが安眠のキーポイントだとか、なんかの番組で見たコトある気ぃする。 …ってコトはだっ、マクラをなんとかすりゃいいワケだよな。 でも・・・・、ベッドにあるのの他にマクラなんか・・・・・、 あっ、そーいやっ、リビングにクッションがあったんだったっ!! ひらめいた天才な俺は、マクラを抱えてリビングに向かう。 たぶん、まだ久保ちゃんは起きてるはずだから、行ってマクラとクッションを交換してもらうコトにした。今日は俺がベッドで、久保ちゃんがソファーで寝る日だから、クッションは久保ちゃんのマクラだから…。 けど、俺が行くとリビングは真っ暗になってて、久保ちゃんがクッションをマクラにして、ソファーじゃなくカーペットの上で眠ってた。 「タオルケット一枚で、そんなトコで眠ってっと風邪引くだろ」 そんな風に呟いた声は、久保ちゃんを起こさないように自然に小声になる。 床を歩く時も足音を立てないように、忍び足…。 眠る久保ちゃんに近づいて、マクラ片手にしゃがみ込んだ。いっつも不眠症気味で、眠りが浅い久保ちゃんの珍しい寝顔を眺めるために…。 めずらしく眠れない俺と、めずらしく眠ってる久保ちゃん…。 いつもと逆で、なんか面白い…。 アクビを噛み殺しながら眺めた久保ちゃんの顔には、メガネがなくて…、 重力に従って流れる髪と…、思ったよりも長いまつげに…、 眼鏡越しじゃない閉じられた目と、ほんの少し開いた唇に…、 少し…、ドキドキした。 シャツの襟首から、鎖骨とかも見えてるし…、 眠ってる久保ちゃんってなんかエロイ…って、ナニ考えてんだっっ。 まるで、ヘンタイみたいじゃんっっっ! あー…、もー…っ、久保ちゃんのせいで、なんかますます眠れなくなった気ぃするっ。け、けど、このままだと風邪引いちまいそうだし、とりあえず毛布とか何かかけてやらなきゃ…だよな。 そう考えた俺はソファーに置いてあった毛布を引っ張って、久保ちゃんにかけようとしたけど…。ソレに気づいたのか、久保ちゃんが寝返りを打って、俺の心臓も驚いてドクンっと大きく音を立てた。 び、び、びっ、びっくりすんじゃねぇかよっっ!!!! 寝返りを打っただけで、久保ちゃんは起きなかった。 でも・・・・・、寝返りを打った時に、久保ちゃんが横向きになって…、 俺の方へ腕を差し出すような格好になってて…、 毛布を握りしめた手が止まる。 そしたら、眠いせいかもしんねぇけど、なんか…、まるで、その腕に引かれたみたいなカンジがして…。俺は毛布を久保ちゃんに掛けながら、自分もその中に潜り込んだ。 マクラを持ってんのに、ソレを頭の上に置かずに抱きしめながら…、 カーペットの上に伸びてる久保ちゃんの腕をマクラにして丸くなる…。 すると、自然に口から…、ため息じゃない息が、ふーっと漏れた。 「・・・・・・なんか、あったけぇの」 今は春で寒くなかったけど、久保ちゃんの隣で丸くなると…、スゴクあったかい。夜だけど、昼間に日向ぼっこしながら眠る時みたいな、そんな気分になってきて…、全身から力が抜けてくカンジがして…、 俺は大きなアクビを一個だけして、毛布じゃなくて久保ちゃんの服の端を握りしめた。そしたら、眠っても眠れなくても、どっちでもどうでもいい気がしたけど…、そう思ったら逆に眠気が勢い良くやってきちまって…、 もう少しもう少し…と、心の中で呟きながら閉じかけた視界の中にある久保ちゃんの寝顔を見つめながら・・・・・・、 ずっと・・・・、ずっと一緒だからな。 と、服の端をぎゅっと、握りしめて呟く。 けど、そう声に出して言ったのか、それとも心の中だけで言ったのか…、久保ちゃんの体温と、眠気に負けちまった俺にはわからなかった。 腕の中にあるマクラを…、久保ちゃんと俺との間にある小さな世界を抱きしめて丸く丸くなって眠る俺には、もう久保ちゃんのぬくもりしかわからなくて…、 その夜、そのぬくもりの中で俺は、口元に微笑みを浮かべながら…、 なのに、なぜか…、瞳の奥が熱くなるくらい…、 すごく…、すごく幸せな夢を見た気がした。 |