「俺、あっち行って物色してくっから」
 「いってらっしゃい」
 
 ここは近所にあるビデオ店。
 俺と久保ちゃんは、今日の夜見るためのビデオを借りに来てんだけど…。
 こういう見るヤツのシュミって結構違うから、分かれて物色してから、後で二人でまとめてレジに行くこと多いんだよな。
 俺は派手なアクション系。
 久保ちゃんは推理モノとかサスペンス系。
 まあ、話題になってるヤツとかは二人で決めんだけどさ。

 「…あんま良さそうなのねぇじゃん」

 ここんとこ結構借りに来てっから、見たいもんは見ちまってる。
 というのも、最近ゲームすんのにちょっち飽きたから、そんでビデオでも見ようかって話になったワケなんだけど、ビデオもこう毎日だとさすがに…。
 ケド、久保ちゃんはそんなことないみたいで、色んなジャンルに手ぇ出して見てる。
 『見てみなきゃ、面白いかどうかはわかんないでしょ?』
 っていう理由でシュミじゃねぇヤツでも借りてるんだってさ。
 ビデオ見終わった後、真夜中にテレフォンショッピングとか見ちゃったりしてるし…、ほんっとわっかんねぇシュミしてるよな、久保ちゃんて。
 う〜、そんなことより、借りんのどれにすっかなぁ。
 ・・・・・なんか、選ぶのも面倒くせぇ。
 とりあえず、コレとコレくらいでいっかぁ。
 よしっ、決定!
 
 「久保ちゃん?」

 借りんのが決まったから、久保ちゃんがいた辺りに行ったんだけど…。
 あれ、いねぇじゃん。
 ったく、ドコ行ったんだよっ!
 久保ちゃんのいそうなトコ回って、任侠物とか時代劇とかそーいう辺りにも行ってみたけど、やっぱいない。
 俺を置いて帰ったなんて絶対ないから、店内にいるのは確かだと思うんだケド…。
 「久保ちゃん!」
 そうちょっとだけ大きな声で呼ぶと、なんかヘンなとっから声がした。
 「時任。そっちの奥から回っといで」
 「そっちって?」
 「そこの角」
 そこの角って…。
 久保ちゃんが言ってる場所まで歩いてってみると、そこにはなんか表示が出てた。

 18歳未満立ち入り禁止。
 
 げっ、アダルトコーナーじゃんっ!
 マジで久保ちゃんここにいんのか?
 「時任〜」
 うっっ、中から久保ちゃんの声がする。
 俺は仕方なく、ちょっと薄暗そうなカンジのコーナーに足を踏み入れた。
 「・・・・・・・げ、肌色ばっか」
 中に入ると、すぐ前に置いてあるビデオのパッケージが見えた。
 裸の女ばっかでなんか目がチカチカする。
 ・・・・・・こんなん見て楽しいのか?
 中には大学生くらいのヤツとか中年のおっさんとか、色んなヤツがいた。
 こいつらみんな、か、借りに来てんだよな、コレ。
 異様な雰囲気のコーナーの奥に行くと、久保ちゃんがいた。
 「久保ちゃん」
 なんとなくホッとして久保ちゃんのトコに歩いてくと、久保ちゃんが片手になんか持ってた。
 「何もってんだよっ」
 「何って、アダルトビデオだけど?」
 「か、借りんのか?」
 「ん〜、今日は半額らしいから、どうしようかなぁって」
 く、久保ちゃんがマジメな顔してアダルトビデオ物色してるっ!
 なんかわんかねぇけど、ちょっとショック!
 久保ちゃんもこーいうの興味あったんだ…、なんか意外。
 ・・・・・・やっぱ男だし…、あってもおかしかねぇケドさ。
 でも、アダルト見てる久保ちゃんてやっぱヤダ。
 「ねぇ時任。コレとかいいと思わない?」
 「べっつにどれでもいいんじゃねぇの」
 「いいかげんな答えだね?」
 「…どれも同じじゃん」
 「そお? 義母、おねぇさん、女子高生とかあるし、シュチュエーションも色々あるよ?」
 俺に聞くなっつーのっ。
 久保ちゃんがどんな女見たら欲情すんのかなんて、俺は全然知らねぇし、わかんねぇんだから…。
 って、なんかわかんねぇけど、ちょっとムカムカしてきた。
 「これにしよっかな?」
 「…すればいいじゃん」
 「いいの?」
 「なんで俺にいちいち聞くんだよっ、見んのは久保ちゃんだろ!?」
 「いんや、見るのは時任だけど?」
 「はぁ?なんで俺が見なきゃなんねぇの?」
 「う〜ん、実験かな?」
 「実験って?」
 「だから、時任がコレ見て立つかどうか…」
 ぶっっ!!!
 「だってさ。俺はコレ見ても全然だけど、時任はわかんないじゃない?」
 「んなもん、実験すんなっ!」
 「見ない?」
 「見ねぇっつってんだろっ!」
 「見てみたら結構いいかもよ?」
 「よくねぇっ!」
 あっ、ヤバ。
 コーナーの客がこっちに注目してやがるっ。
 「か、帰るぞ。久保ちゃん」
 「コレは?」
 「いいからっ、とっとと来いってのっ!」
 「はいはい」
 「持ってくんなっ!」
 「まあ、そう言わずに」
 もう最悪。
 あ、あやしいとか思われたかな、やっぱ…。
 ああっもうっ、このビデオ屋行けなくなっちまうじゃねぇかっ!!
 
 「1.050円になります。どうもありがとうございました〜」

 結局、借りちまったんだけど。
 俺と久保ちゃんはそのビデオを半分も見なかった。
 それがなんでかってのは、秘密っ、ぜってぇ教えねぇっ!
 なーんてな。

                            『ビデオ』 2002.4.28更新

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