ギシッ、ギシギシ・・・・・・。

 「うっ…あ…」
 「時任」
 「あっ…、くぼちゃん」
 「気持ちいい?」
 「・・・・・う、ん」
 
 眠いから寝るという時任を、やっと口説き落としてベッドに連れ込んだんだけど、いざこれからって時になってあるコトに気づいた。
 ・・・・・・買い置きがなくなってたっけ、確か。
 う〜ん、どうしよっかなぁ。
 このままシテも俺はいいけど、すると次の日、スゴク機嫌悪くなるんだよなぁ。
 
 「ねぇ、時任?」
 「…ん〜?」
 「今日、付けないでシテいい?」
 「ダメ」
 「何も即答しなくても、ねぇ?」
 「ぜってぇ、ヤダっ。付けないなら今日はやんない」

 それはあんなりなんじゃない?
 今日このままやらなかったら、眠れそうにないんですけど?

 「こんなにカンジちゃってるのに、やめるなんてできるの? 時任」
 「すぐ直るからいいっ」
 「時任」
 「やらないなら、さわんなっ!」
 
 まるで倦怠期の夫婦みたいな会話だなぁ、なーんて、そんなコト思ってる場合じゃないんだよね。このままだと、ホントに時任はやらせてくれそうにないんだから。
 俺にとっては重要問題。

 「どしてもダメ?」
 「ダメ」

 何度聞いても答えはNO。
 さわろうとすると手を叩き落とされる。
 これくらい強固だと、あまり強引にはできないなぁ。
 無理やりにはしたくないし…。

 「…買いに行ってくる」
 
 ないとダメなら買ってくるしかない。
 いつものコンビニで。
 けど、時任の様子がなんだかおかしい。
 もしかして、半分寝ちゃってない?

 「時任」
 「…ん」
 「起きて、時任」
 「う〜」
 「好きなお菓子買ってきてあげるから、俺が帰るまで起きててくんない?」
 「…眠い」
 「時任」
 「・・・・・・」

 睡魔に襲われて、時任が静かな寝息を立て始める。
 その顔はなんだかあどけなくて、見ている俺はちょっとその顔に更に刺激されちゃったりとかして。
 ・・・・・・・やっぱダメ。
 ごめんね、時任。
 痛くしないように頑張るから、ガマンしてよね。
 後処理もちゃんとしてあげるから。

 「んっ…」
 「寝てていいから、じっとしててね」
 「…う…ん」

 なーんて言っても、気づかれないでってのは完璧ムリ。
 半分くらい入れた瞬間、時任がパチっと目を開いた。
 
 「なっ、なにやってんだ、久保ちゃんっ!?」
 「何って言われても…。う〜ん、セックス?」
 「…っ! 寝てるヤツにやるか普通っ! このバカっ!ヘンタイっ!!」
 「とか言われても、もう止まんないんだよね」
 「あっ…、やめろって!」
 「ゴメンね」
 「久保ちゃんのばかぁ!!」
 
 結局、最後までしちゃったんだけど、やっぱ時任はスゴク、いやかなり不機嫌になった。コワイ顔して俺のコト睨んでるし…。
 さすがにマズかったかなぁ。
 やっぱ寝込みは良くないよねぇ?

 「時任」
 「・・・・・・」
 「もうしないから許してくんない?」
 「・・・・・・・」
 「ちゃんと反省してマス」
 「…ホントに反省してんだな?」
 「ハイ」
 「じゃあ、コンビニ行ってスニッカーズ買って来い」
 「よろこんで行かせていただきマス」

 まだ怒ってるみたいだけど、なんとか許してくれそうな気配。
 俺はそそくさと出かける準備をして、時任に頼まれたおつかいに行くために玄関に向かおうとする。
 けど、それを時任が呼び止めた。
 
 「久保ちゃん」
 「なに? 他に買ってくるものでもある?」
 「・・・・・・・買って来い」
 「ん〜? よく聞こえないけど」
 「いつもの箱のヤツ一緒に買って来い!」

 そう言って俺に向かって怒鳴った時任は、真っ赤な顔してた。
 いつもの箱のヤツ…ね。

 「了解」
 「とっとと行って来い!」
 「はいはい」

 ホントにココロの底からから愛してるよ、時任。

                            『オネガイ』 2002.4.17更新

                        短編TOP