コンビニの棚に並ぶ商品の中で、新しく発売されたのはオレンジの新発売のシールが貼られてる。それを眺めて物色するのが習慣っていうか、クセっていうか…、いつの間にかそんなカンジになっちゃってるけど…、 なぜか今日は買おうとしていた新商品のプリンをやめて、別のモノをカゴに入れてレジに持っていく。そしてソレを新商品よりも先に買う事にした理由は、今を過ぎると古くなってくだけで普段は売ってないからだった。 でも、買った理由は別に食べた事ないからとか好きだからとかじゃない。なんとなく見たら買いたくなったってだけだけど、もしかしたらコレは…、 今から帰る部屋に誰もいなかったら、買わなかったモノなのかもしれなかった。 「うーん、なんかクセになっちゃってるよねぇ…」 コンビニのすぐ前にあるマンションの401号室に帰って、白いビニール袋をそのままタイクツそうな顔してゲームしてた時任に渡す。すると、時任は何を買ってきたかとかそんな事は聞かないで、ガサゴソと袋の中を楽しそうに物色し始めた。 だから、それを眺めながらソファーに座ってタバコをくわえると、時任が何かを発見して手に持ってるモノを俺に見せる。すると、ソレはやっぱり俺がさっき新発売のプリンをやめて買ってきたモノだった。 「ちまき…って、なんだよコレ?」 「巻いてあるヒモはずして、中を開けてみればわかるよ」 「開けるって…、ううっ、結び目が取れねぇっっ」 「むちゃくちゃに引っぱらないで、ソコんとこを引っぱれば簡単に取れるよ」 「あ・・・・、取れた」 「でしょ?」 俺が買ったのは、笹の葉に入れられてワラみたいなヒモで縛られてる団子。 つまり5月5日の端午の節句に食べる、ちまきってヤツ。 俺は食べたコトあったけど、やっぱり時任は始めてだったみたいで、笹に包まれていた団子をめずらしそうな顔をして見てからパクっと一口食べる。それから、初めて食べたちまきが気にいったのか、おいしそうにパクパクっと一気に全部食べた。 「この団子って少し変わった味すっけど、どこに売ってたんだ? どっかの特産?」 「買ったのはいつものコンビニ…。でも、どっかの特産とかじゃなくて、今日は全国各地の色んなトコで売ってると思うけど?」 「…って、なんで?」 「今日が5月5日で、ちまきがその日に食うモノだからじゃない?」 「5月5日って…、コドモの日?」 「そうそう、お子様の日〜」 「ふーん…」 今日がコドモの日だとわかると時任はあらためてちまきを見てちょっとムッとして、それから次にニヤニヤしながら三つあったちまきの一つを俺に渡す。そして、俺の頭を小さな子供にするみたいによしよしと撫でた。 「あとでちっちゃいけど、こいのぼり買ってきてやっからなっ」 「…って、コドモの日だから?」 「ちまき買ってきてくれたお返しっ」 「仕返しの間違いじゃないの?」 「ち、違うってっっ!!」 「ふーん・・・。じゃ、せっかくだから、こいのぼりより別のモノ買って来てくれる?」 「う・・・、まぁ、いいけど・・・、コドモの日だからタバコとかはナシだぞっっ」 「なら、コドモらしくオモチャならいい?」 「おうっ」 「そう…、オトナのオ・モ・チャ買ってきてくれるんだ? だったら、買ってきたオモチャで一緒にコドモらしく無邪気に楽しく遊ぼうね、時任」 「・・・・・・ってっ、どこがコドモらしいんだよっ!!それにそんなモンでコドモが遊ぶかっっっ!!! 遊びたかったらっ、てめぇ一人でコドモらしく無邪気にソコで遊んでろっ!!!」 「うーん、そう言われても一人遊びは苦手なんだけど・・、ねぇ?」 「とか言いつつ、何しようとしてんだよっ!!!」 「だから、一人遊び」 「うわぁぁぁっっ、そ、それ以上っ、なにも言うなっ!! なにもすんなっ!!!久保ちゃんのドスケベっっ!!!」 ジョウダンのつもりだったんだけど、ジーパンのチャックにかけた俺の手を真っ赤な顔した時任が必死に止めようとしてる。その様子があまりに必死で思わず吹き出したら、さっき撫でられた頭を今度はガツッとなぐられた。 うーん、なんとなくアメとムチを一度に食らったような気分…。 そう心の中で呟いて、ムッとした表情で俺の隣に座った時任を眺めながら俺はちまきを食べる。すると、時任も同じように二つ目のちまきを食べ始めた。 「なに、じーっとこっち見てんだよ」 「ん〜、なんとなく」 「なんとなくなら見んなっ」 「じゃ、故意に」 「余計に見んなっっっ!!」 いつもみたいに取り留めのない会話しながら、口の中のちまきの甘さを噛みしめる。すると、なんとなくその甘さに苦笑したくなった。 けれど、もしもこんな日々が続いていくなら、また来年も苦笑しながらちまきを食べてるのかもしれない…。こんな風に、時任のカオを眺めて…。 だから、これからも二人でいる日々がずっと続いていくのなら…、 もしも…、続かなかったとしても…、 今、目の前にある笑顔を想い浮かべながら買い物をするのを、俺は一生やめられそうになかった。 |