『久保ちゃんなんかっ、キライだっ!』 ケンカらしいケンカはしたことないし、少し気まずくなってもそういうのも長続きはしねぇけど…、キライだって言葉は何度も言った気がする。 でも、それはホントにキライになったんじゃなくて…、 いきおいっていうか…、そういうカンジで…。 たぶん、久保ちゃんもそれをわかってくれてるから、キライだって言っても好きだって言ってくれるのかもしれない。 『好きだよ…、時任』 俺も好きで…、大好きだってちゃんと想ってて…。 それは初めはわかんなかったけど、今は好きだってジカクしてた。 隣りに並んで歩く時も、手を繋ぐ時も…、キスする時もいつもそばにいるとドキドキするのは好きだからで…、 それがわかった時から、もっとドキドキするようになった気がする。 久保ちゃんが大好きだから…。 でも、キライだっていう言葉は意識してなくても、思わず言っちゃってたりすんのに…、好きだっていう言葉は胸の中にあるだけで言葉にならなくて…、 いつも声にはならなくて…、手を握り返すのがやっとだった。 キライだとかバカだとか、そういう言葉は無意識でもタイミングもはからないで言えるのに、好きだって言うタイミングだけがわからない。 いつ…、どんな時に好きだって言えばいいんだろって…、 いつもいつも…、久保ちゃんに抱きしめられながら想ってた。 「さっきから、なにボーっとしてんの?」 「えっ?」 「ココロがここにあらずってカンジで、これから時任君とエッチしようとしてる俺としてはカナシイんですけど?」 「ば、バカっ! エッチとかマジ顔で言うなっ!」 「うーん、真面目にしようとしてるからマジ顔なんだけどねぇ? それとも、不真面目にエッチされたい?」 「うっ…」 「だっしょ?」 「だ、だったらさ…」 「ん?」 「久保ちゃんは、どんな時にマジでしたくなんだよ?」 「それはねぇ」 「それは?」 「時任君が大好きだなぁって想った時…」 強く抱きしめられて、カラダとココロがバラバラになりそうな時もあるけど…、 久保ちゃんの背中に腕を回すと、大好きなキモチで胸がいっぱいになって苦しいけど、もっともっと抱きしめてたいって想う。 それはたぶん、離れたくないからで…、 そして、離れたくないのは大好きだからで…、 だから…、ホントはキライだって言うよりも、たくさんたくさん大好きだって言いたかった。 いつでも、どんな時でも…、大好きだからそう言いたかった。 ソファーの上に俺を寝かせながら、久保ちゃんがキスしてくる。 好きだよって言いながら…、優しく微笑みながら…。 でも、いつもならキスする前には、なんか開けてらんなくてすぐに目を閉じちまうけど…、今日はじっと微笑んでる久保ちゃんの目を見返した。 「・・・・・久保ちゃん」 「どしたの?」 「・・・・・・」 「もしかして、したくなくなった?」 「そ、そんなんじゃねぇけど…」 「だったら、なに?」 「あ、あのさ…」 「うん?」 「・・・・・・・だ」 「・・・・・声が小さくて良く聞えないけど?」 「や、やっぱ、なんでもないっ!!」 言いかけた言葉を飲み込んで、いつもみたいにぎゅっと目を閉じる。 けど、いつまでたってもそのままで…、久保ちゃんはキスしてこなかった。 もしかして途中でストップしたから、もうしたくなくなったのかと思って目を開ける。でも、開ける前に耳元で少し笑ってるカンジの久保ちゃんの声がした。 「…俺も好きだよ」 聞えてたクセに聞えてないってウソついて笑ってる久保ちゃんの背中をバシッて叩くと…、久保ちゃんが少し声を立ててますます楽しそうに笑う。 だから、楽しそうな久保ちゃんのカオを見てたらなんか怒りそびれて…、俺も一緒になって笑った。 ソファーの上で、二人でゴロゴロと寝転がりながら…。 これからもたぶん、好きって言うよりもキライってたくさん言っちまいそうだったけど、キスしてる時とか抱きしめ合ってる時とか…、そんな時だけでも好きだってちゃんと伝わればいいって…、 そう想いながら、久保ちゃんとキスした。 |