ガ〜っていう掃除機の音がする。 ゲームやってんのにジャマっとかって思うけど…。 音くらいで文句なんか言えねぇから言わない。 だって、俺は掃除なんかしねぇんだもん。 なーんて、いばって言うことでもないっかぁ。 「時任、ジャマだからどいて」 今けっこういいトコ来てんのに、久保ちゃんが俺にどけなんて言う。 これ死んじゃったりすると、始めっからじゃんっ! 「やだ」 俺が即答すると、久保ちゃんの小さなため息が聞こえた。 俺様はこのゲームをクリアするという任務を遂行中なんだってのっ。 おとなしくあきらめやがれっ! せっかく今日は早く掃除すませようとかって思ってたのに、時任がジャマする。 一回ゲームに夢中になると、絶対やめないもんねぇ。 けど、今日はいかなきゃなんないトコあるし、あきらめるワケにはいかない。 カクゴしなよ、時任。 そこにいられなくしてあげる。 俺はそんなことを思いつつ、掃除機を止めて時任に近寄った。 けれど時任は完全無視。 そーしてられるのも、今のうちだけどね。 俺は時任にさらに近寄ると、履いているジーパンのベルトの部分を引っ張った。 「そのジーパン、洗濯するから履くなって言っといたよね? なんで履いてんの?」 そう、時任が履いてるジーパンは、今日洗濯予定のヤツ。 べつにどうしても今日じゃなきゃなんないってコトなかったんだけど、俺は時任のジーパンを脱がしにかかった。 「うわっ、なっ、なにすんだよっ!!」 「なにって、洗濯に決まってんでしょ?」 「今履いてんだから、洗わなくてもいいじゃんかっ!」 「今日洗わないなら、一生洗ってあげないよ?」 「うっ!!」 時任がひるんだ隙に、チャック開けて強引にジーパンを脱がした。 履かすのは面倒なんだけど、脱がすのは楽なんだよねぇ。 俺がジーパンを脱がすと、時任はトランクスだけになった。 久保ちゃんが俺のジーパンを脱がした。 …なんか足寒い。 くっそおぉっ、なんてコトしやがんだっ! あやうくそれに気ぃ取られて死ぬとこだったじゃんっ! あっぶねぇっ。 間一髪セーフ、とか思ってたら、今度は久保ちゃんが俺のトランクスに手をかけた。 「なにやってんだよっ、久保ちゃんっ。それは洗濯しねぇだろ!?」 俺がそう言うと、クスッと笑う久保ちゃんの声がした。 「洗濯するよ?」 「なんで!? 昨日ちゃんと履きかえたじゃんかっ!」 「うん。確かに履きかえたけど、洗わなきゃいけなくなるから」 「はぁ?」 「今からそうなんの」 久保ちゃんはそう言うと、俺のトランクスの中に…!! やっ、やばっ! ちょ、ちょお待てっ!!!! 「うっ…、く、く、くぼちゃんっ!」 「元気いいね」 「やめろっての!!」 「やだ」 久保ちゃんの口元が笑ってる。 はっ! まさかコレってさっきの仕返しなのかっ!! こんなんありかよっ!! 「あっ…」 ・・・・・・・・・。 テレビ画面にゲームオーバーの文字が出てる。 久保ちゃんに気ぃとられて死んじまった…。 くっそおぉぉぉぉっ!! 「あっ、死んじゃったね。ゲームすんだんだから、ココどいてくれる?」 久保ちゃんはさっさと俺から離れると、置いてた掃除機に手を伸ばした。 くうっ、許せねぇっ!! 任務を妨害した上、俺のコト弄びやがってぇ! そっちがその気ならっ!! 「なぁ、久保ちゃん」 「なに?」 「俺のコト、このままほっとく気かよ」 「ん〜?」 「こんなにした責任とってくんないの?」 「・・・・・そおねぇ」 捨て身の攻撃っ! コレが効かなかったら、当分一人で寝てやるかんなっ! 俺がココロの中でそう決めてると、久保ちゃんが掃除機をそのままにして、こっちに歩いてきた。 「やっぱさ。こういう責任は男らしく取らないとね」 「そーそー、責任は取らなきゃダメだぜっ」 「それじゃあ、心置きなく取らせていただきマス」 ふふふっ、攻撃成功。 ・・・・・・けど、コレって仕返しの仕返しになってんの?? なんか久保ちゃん嬉しそうなんですけど? 結局っ、コレってなにがどうなワケ?? 掃除したかったけど、まあいっかぁ。 せっかく時任が誘ってくれてるしね。 別な意味で作戦成功ってトコかな? |