warning 〜警告〜




 ケータイの鳴る音…。

 近くから聞こえてくるけど、自分の着メロとは違うメロディーライン。
 その音は、別に聞いたコトは一応あるし珍しくもない。
 けど、その音を鳴らすのはほとんどの場合が俺だった…。
 そして、俺が電話して話し中なんてコトもなかった…、今までは一度も…。
 それはケータイの持ち主である時任に、あまり知り合いがいないせい。前にさおりちゃんって子と知り合ったコトもあったけど、俺らとは住む世界が違うとカンジてるせいか、その後、連絡をしてくるようなコトはなかった。
 たぶん元気でいるとは思うけど、何をしているかどこにいるのかも知らない。
 知らないし知りたいとも思わない…。
 今まで知り合った人間は、俺の関係者である葛西さんと鵠さん以外は、一時的に関わったとしても俺達に干渉してこようとはしなかった。
 でも…、今は例外ができつつある…。
 その元になったのは宗教関係の事件だけど、悪化させたのはこの間の事件…。
 
 俺が警察に連行された…、その間…。

 わずかな隙間に入り込むように、俺らの間に侵入してくる。WAの情報を集めるためには確かに使えるし、葛西さんに調べてもらって身元もハッキリしてて危険な存在じゃないけど、ケータイの音だけは耳障りだった。

 「あのさー、例のゲームだけど…。マジで? サンキューっ、滝さんっ!」

 いつも話してる内容は、たいした事じゃない。
 やりたいゲームの事とか、なんでもない世間話とかそんな程度。
 WA関係の時もあるけど、俺が掴んでる以上の情報はなかった。
 そして、それがわかるのも今みたいに会話の内容を盗み聞きしてるからってワケじゃなく、時任が俺に話すから…。
 時任はいつも滝さんと電話した内容を、俺に楽しそうに話していた。

 「滝さんが今やってるゲームの前のヤツ、手に入れられるって…っ」
 「ふーん」
 「…って、久保ちゃんはやりたくないのかよ?」
 「別に?」
 「あっそ、ならクリアするまで俺がゲーム機、独占するからな」
 「どーぞ、ご自由に」
 「・・・・・・なんか、言い方にトゲねぇ?」
 「気のせいデショ?」
 「そっか?」

 今やってるゲームは、ほどほどってカンジ。
 だから、そう伝えたつもりだったけど、トゲは…、あったんだろうか?
 気のせいだと答えながらも、自分でも良くわからない。
 けど言葉ではなく、何かのトゲが胸の奥をチクチクと突き刺していた。
 ケータイが鳴るたびに時任が滝さんの話をするたびにチクチクと、チクチクと胸を刺す。最初はあまり気にならない程度だったけど、傷が深くなるように次第に痛みが増す…。
 俺はそんな痛みを抱えながら、ため息をついた。

 相手が滝さんだけに、やっかいだなぁ…。

 そう痛む胸の中で呟いて苦笑する。
 それは自分で呟いた言葉の意味を、正確に理解していたせいだった。
 いや…、理解というよりも認知と言った方がいいのかもしれない…。
 俺は俺の中に生まれてくる痛みを、痛みと共に生まれてくるモノを認めていた。
 けれど、まだそれは生まれては胸の中に溜まり続けるだけ…。だから、俺はそれを胸の中に孕み続けながら、くわえたセッタに火をつけて有害な煙を吸い込む。
 孕んでいるモノを殺すように…、深く…。
 すると、時任の手が俺の手からセッタを奪い取って灰皿に押し付けた。
 
 「タバコ吸いすぎっ」
 「そうでもないと思うけど?」
 「じゃ、その灰皿の山盛りの灰は?」
 「あ・・・」
 「あ、じゃねぇよっ。かなり部屋ん中がタバコ臭ぇしっ」
 「なら、タバコはベランダで…」
 
 時任に吸いすぎだと言われた俺は、ポケットから新しいセッタを取り出しながらベランダに向かう。けれど、その途中で腕をつかまれて、強引にソファーに座らされた。
 セッタはなんとかくわえたものの、ソファーには灰皿がないし…、
 このままじゃ吸えないから、俺はすぐに座らされたソファーから立ち上がろうとする。
 でも、そうしようとした瞬間、俺のひざに時任の頭が乗っかってきた。
 ソファーに寝転がった時任は、右手の拳を額に当てて俺のひざの上で細く長く息をつく。すると全身から力が抜けていくように左手がソファーからすべり落ちて、それから眠るように目を閉じた。

 「・・・・時任?」

 このままじゃタバコ吸えないし、身動きも取れない。けど、俺のひざに頭を預けて眠っているのかいないのか、時任は呼んでも動かないし目も開けなかった…。
 だから、俺は火のついていないセッタをくわえたまま、ぼんやりとリビングを眺める。
 ぼんやりと眺めて…、ふーっと息を吐いた…。

 「もしかしたら、タバコよりも有害かもね…」

 そう言いながら眺めるのはリビングじゃなく…、時任のカオ…。安心しきったカオで俺のひざに頭を預けてる時任を見ていると、なぜかとても複雑な気分になる。
 そして時任の頭をひざに乗せたまま、動けなくなってる自分にまた苦笑した。
 避けるコトも逃げるコトも出来ず、胸の奥に生まれてくるモノを孕み続けて…、
 こうして、手を伸ばすコトも出来ずに時任の寝顔を眺めて…、
 何やってんだか…と声には出さずに胸の中で呟く。
 戸惑いと焦燥…、痛みと熱さ…。
 そんなモノをカンジながら、しばらくしてやっと少し乱れた髪に指先で触れた。

 「・・・・・久保ちゃん?」

 わずかに髪に触れた指先…。
 それに気づいたのか、時任が俺を呼んで薄目を開ける。
 けれど、まだ目覚めたワケではないらしく、すぐに目を閉じた…。
 過ぎていく穏やかな時間、そして穏やかじゃない俺の胸の鼓動…。
 時計の針の音と自分の鼓動を聞いていると、過ぎていく時間が長くも短くもカンジられる。さっき髪に触れた指を伸ばして今度は唇に触れると…、時任の静かな寝息がまるで誘惑するように指先をくすぐった…。
 甘い誘惑…、苦い痛み…。
 くわえてたセッタを自分の手で取って、時任のカオを見下ろす。
 そして、さっき奪われた有害な煙を求めるようにわずかに開いた唇に…、ゆっくりと自分の唇を近づけた…。


 ピンポー…ン・・・・、ピンポーン・・・・・・・


 最悪のタイミングで鳴ったチャイムに、俺は近づけようとしていた唇を止める。
 そして起こさないように気をつけながら、時任の頭をソファーの上に移動した。
 キスされそうになっても起きないくらい眠ってるせいか、時任は少しカオをしかめただけで目覚める気配はない。それを確認した俺は、これ以上、チャイムを鳴らさせないために玄関に向かう…。
 そして、ドアを開ける前に一応、覗き穴を見てみると…、
 俺らの住んでる401号室のドアの前に、なぜか滝さんが立っていた。

 「よっ、くぼっち」
 「何か用?」
 「…って、開口一番がソレ?」
 「そう言われても、他に言うコト見つからないんですけど?」
 「ははは…、そう言われちゃ身も蓋もないっていうか」
 「で、用件は?」
 「いやー、近くに用事があったから、ついでにトッキーに頼まれてたゲームを渡しとこうと思ってさ」
 「あぁ、例のゲーム?」
 「ネットには品薄で出回ってなかったけど、知り合いが持っててさ。それほど高値で売れないし余ってるから、タダでくれるって言うんでもらってきたんだよ」
 「ふーん」
 「それで、トッキーは?」

 滝さんはそう言いながら、俺の後ろを見る。
 けど、時任は寝てるから滝さんが来たコトも、チャイムが鳴ったコトも知らない。
 今もまだ俺の膝で眠りについた時のまま、無防備なカオをして寝てる。だから、俺はドアを半分くらい開けて入り口を塞ぐように立ったまま、滝さんを中には入れなかった。

 「悪いけど、時任は眠ってるから」
 「そうか…、なら起きたら渡しといてくれる?」
 「いいですけど」
 「それと、くぼっちも何か欲しいのあったら言ってよ。あるかどうかはわからないけど、ソイツかなりのマニアでさ…って、くぼっちはゲームなんていらないかー」

 視線を後ろから俺の方に戻した滝さんは、そう言って歩く頭を掻く。
 そして、俺の手に持ってきたゲームを渡した…。
 そのゲームの舞台は霧の深い滅びかけた街で、確か主人公が少女と二人きりで生き残りをかけて戦う物語。そして物語のいくつかある終わりの中に、確か街を出ると街だけでなく世界中に誰もいなくなってたってのがあった…。
 生き残って…、たった二人だけになった何もない世界…。
 そんな終わりの入ったゲームを受け取った俺は、さっき時任に触れた指で401号室と外とを隔てるドアのノブを握りしめた。

 「別にゲームはいらないけど、他のモノなら欲しいかも…」
 「ゲームじゃなくて、他のモノ?」
 「そう…、もっと別のモノ」
 「それって何?」
 「言ったら、このゲームみたいに手に入れてくれる?」
 「う、まぁ…、俺が手に入られるモンならな」
 「じゃ、今度ココに来るのは、ソレを手に入れてからにしてくれない?」
 「手に入れてからって…、それってさ…」
 「・・・・・・二人ぼっちの世界」
 「え?」
 「なーんてね、ジョウダン」
 「く、くぼっち?」

 「じゃあ、また…」

 滝さんには手に入れられないモノ。
 そして、同じように俺の手にも入らないモノ…。
 けれど、そんな世界を作り出そうとしてるのかのように、俺は外の世界に滝さんを残してドアを閉めた。滝さんだけじゃなく何もかもを隔てるように…、封じ込めるように…。
 すると少しの間、外に気配があったけど、やがてあきらめたように気配と足音が遠のく。俺は渡されたゲームを片手に遠のいていく足音を聞きながら、玄関に来たついでに郵便受けの中を見た。
 
 「今日の郵便物は…、ダイレクトメール一通とケータイ料金の明細…」

 郵便受けの中には、別に変わったモノは入っていない。
 俺はそれを取り出してゲームと一緒に手に持つと、時任のいるリビングに戻った。
 すると時任はまだ眠っていて…、相変わらず目覚める様子はない。
 そんな時任を横目で見ながら、俺はリビングにあるテーブルの前に立った。
 こういうやり方はズルイし、あまり良くない…。
 けど、それがわかっていても、俺はダイレクトメールをゴミ箱に捨てて…、
 残ったケータイ料金の明細の入った封筒の封を切る…。
 そして、目立つように滝さんの持ってきたゲームと一緒にテーブルに置いた。
 
 「・・・・・・ゴメンね」

 いつもよりもかなり通話料金の増えた…、明細書…。
 その額は別にたいした額じゃないけど、それを見た時任が…、
 特に俺がいない時に見てしまった時任がどう思うか…、どんな行動を取るか…、
 時任を良く知ってる俺にとって、それを想像するのは容易だった。
 けど、ゴメンね…と呟きながらも、俺は明細を置いたまま時任に近づく…。
 そして、かけていたメガネをはずして、眠っている時任のカオの横に右手を置いた。
 
 「警告…、ちゃんと受け取ってね…、時任」
 
 そう言って軽く触れた唇の柔らかい感触に、触れた吐息に目眩がする…。
 眠ってる時任の唇は…、甘く恋しく…、
 そして、胸の奥に孕み続けている想いに似た…、味がした…。







 「あれ…、久保ちゃんは?」

 確か、ソファーに寝転がって久保ちゃんの膝を枕にして寝てたはずなのに、目覚めると一人でいた。あると思っていた枕がないせいか、なんか首が少し痛い…。
 軽く伸びをして起き上がって、筋肉をほぐすために首を回す。
 それから、リビングやキッチンを見回してみたけど、やっぱり久保ちゃんはいなかった。
 でも、今日はバイトはなかったはず…。
 だから、たぶんどっかに買いものにでも行ってんだろうな…、たぶん…。
 そう思いながらソファーの上に転がってた、自分のケータイを手探りで取る。
 そして、寝転がったままでアクビをしながらケータイの画面を見た。

 「けど、コンビニまでだったら…、すぐに帰ってくるよな」

 久保ちゃんのケータイに電話して、どこにいるのか聞いてみようかって思ったけど…、そう思い直して押しかけてた通話ボタンから親指を離す…。反対側の手で久保ちゃんが座ってた辺りを触ってみると、なんとなくまだあったかい気もするし、このまま待ってた方が良さそうだった。
 それに何かあったら、久保ちゃんの方から電話してくるだろうし…、
 だから、ただ待ってるだけでいい…。
 でも、ケータイの画面を見つめてると何かが気になる。
 何なのかわかんねぇけど、何かが胸の中にひっかかる…。
 その何かがわからなくて、シンプルな青空の画面をじーっと見つめた。
 
 なんだろ…、このカンジ…。

 小さなケータイの中にある空を見つめながら、唸ってみてもわからない。そのカンジはタバコを吸いにベランダに行こうとした久保ちゃんを、強引に引き止めて枕にした時のカンジと少し似てた…。
 タバコを吸いすぎてたから、やめさせたかったってのはあったけど…、
 あんな風にまるで甘えるみたいに、膝に頭を預けるつもりなんてない。
 でも、一度頭を預けてしまうと気持ち良くて、全身から力が抜けてくカンジがして照れ隠しに目を閉じたまま…、いつの間にかホントに眠っちまってた。

 「久保ちゃん…、もしかしてあきれてっかな」

 そんな風に呟いてみて、らしくなくため息なんかついたりして…、
 意味もなくケータイの履歴なんかチェックしたみたりする。
 けど、そうしながらケータイの履歴を眺めている内に、ある事に気づいて手を止めた。
 少し前までは久保ちゃんの名前だけで埋まってた履歴が…、いつの間にか滝さんの名前で埋まってて…。しかも最近になると、久保ちゃんの名前が一つもない…。
 ケータイに連絡はなくてもウチでは毎日一緒にいるし、だから今まで気づかなかったけど、気づいてしまうとそれが気になって仕方なかった。
 なんで…、久保ちゃんは電話してくんなくなったんだろ…。
 そう思ってるとケータイが鳴って、画面に久保ちゃんじゃなく滝さんの名前が表示される。だから、いつものように通話ボタンを押すと、ケータイから滝さんの声が聞こえてきた。

 「もしもし?」
 「眠ってる所を起こして悪いな、トッキー」
 「…って、なんで寝てたの知ってんだよっ。つーか、今はもう起きてっけど」
 「ああ、それは俺がさっきマンションに行ったからだよ。出てきたくぼっちに聞いたら、トッキーは眠ってるって言ってたからさ」
 「来たっていつ?」
 「ん〜、十分前くらい?」
 「俺は知らねぇぞっ」
 「チャイム鳴らしたし、良く眠ってて聞こえなかったんでないの?」
 「う、まぁ…、それはそうかも」

 枕がなくなっても気づかなかったくらいだから、確かに自分で思ってるよりも良く眠ってたのかもしれない。けど、さっきから久保ちゃんが電話してくれなくなったコトとか考えてて…、そんな時に滝さんから電話かかってきたせいかもしんねぇけど…、
 自分でもわかるくらい、ちょっち声がイラついてる。こうしてる間に久保ちゃんからかかってくるかもって思ったら、早く通話を切るコトばかりが頭を過ぎる…。
 滝さんには悪りぃけど、今はそんな気分だった…。
 
 「・・・・で、用件はなんだよ?」
 「ありゃ、くぼっちだけじゃなくトッキーまで、もしかして不機嫌?」
 「べ、べつにそんなコトねぇよ…っ」
 「そう? ならいいけどさ。 用件は電話で話してたゲームの件だけど、用事があって近くまで来たついでに、くぼっちに渡しといたから受け取ってくれる?」
 「久保ちゃんにゲームって・・・。あ、もしかしてテーブルの上にあるアレかも…」
 「そっか、ちゃんと届いてるなら良かった」
 「でも、ウチまで来て久保ちゃんに渡したんなら、別にそんな心配しなくてもいいんじゃねぇの? 郵便受けに投函したワケでもねぇし?」
 「ははは…、まぁ確かにそうだけどねェ。ちょーっとだけ、なんとなく届かないかもって気がしたからさ」
 「なんで?」
 「さぁ、なんでだったかなぁ…」

 少し歯切れの悪い滝さんの返事を聞きながら、なぜか意味もなく時計を見て…、
 そうしてると、何かを思い出しかけて眉間に皺を寄せる。
 確か…、滝さんと電話してるコトが多い時間帯って…、
 もしかしたら、バイトに行った久保ちゃんが連絡してくれそうな時間帯?
 もしかしなくても…、そうだったりするかもしれない…。
 滝さんと電話しながら、それに気づいた俺はなんかショックで…、ケータイから聞こえてる声も遠くなる。久保ちゃんが電話してくれなくなったんじゃなくて、俺が久保ちゃんからの電話を待ってなかったから…、かかって来なくなったんだ…。

 「おーい…っ、聞いてる? トッキー?」
 「滝さん、ゴメン…」
 「…って、いきなり何あやまってんの?」
 「悪りぃけどさ、今度から俺のケータイに電話しないでくんない? 俺もしねぇから…」
 「うーん…、トッキーがそう言うならしないけど、もしかしてくぼっちになんか言われた?」
 「違ぇよっ、久保ちゃんは関係ない…。でも、ただ俺が…」
 「トッキーが?」
 「待ってたいんだ…」
 「何を?」
 
 「今から帰る…とか、今日は遅くなるとか…、そういう電話…」

 俺がそう言うと、ケータイの向こうから小さく息を吐く音が聞こえる。
 そのため息みたいな…、そんな音の意味はわからなかったけど…、
 次に聞こえてきたのは、いつもと同じ調子の滝さんの声だった。
 
 「わかったよ、もうしない。それにトッキーとくぼっちの愛の巣を荒らしたりするつもりは、最初から毛頭ないし安心してよ」
 「あ、あ、愛の巣ぅうぅぅ〜〜っっ」
 「俺に入るなってさ、ダンナには警告されたしネ?」
 「だっ、ダンナって誰のコトだーーーっ!!」
 「ま、お幸せにってコトで…、くぼっちにもそう伝えといてよ」
 「さっきから何言ってんのか、わけわかんねぇぞっ!!!!」
 「わからなかったら、くぼっちに教えてもらいなよ、新婚サン」
 「〜〜〜〜っ!!!!!」
 「今度からは用事があったら、ダンナの方に連絡入れるわ。睨まれたら、夜道歩けなくなりそうだからさ。じゃあ、またな、トッキー」
 
 「なっ、なっ、何がっ、どこが新婚サンだーーーーっ!!!!」

 すでに切れてるケータイに向かってそう叫ぶと、俺は荒い息を吐きながらケータイをソファーに投げるように置く。けど、頭の中で滝さんのわけわかんねぇ問題発言が頭の中をぐるぐるしてて収まらない…っっ。
 し、新婚サンって…、ダンナってなんなんだ一体っ!!!
 けど、そう思いながらも…、無意識に指先が自分の唇を撫でる…。
 滝さんの妙な発言のせいか久保ちゃんの膝を枕にして眠ってる時だったのか、それとも久保ちゃんがいなくなってからだったのか…、なんか妙な夢を見た気がして右手で赤くなってるかもしれない自分のカオを覆った。

 「な、なんであんな夢を見なきゃなんねぇんだよっ。久保ちゃんが俺にあんなコト…、なんて…っ」

 そう呟いて寝返りを打つと、いきなりドアが開く音がして…、その音に驚いた俺は、あやうくソファから転げ落ちそうになる。すると、ヘンな格好で落ちるのを防いでる俺を見た久保ちゃんは、珍しくプッと噴出して笑った。

 「て、てめぇっ、よくも笑いやがったなーーっ!」
 「あんまりステキな格好してるんでつい…、ね?」
 「なにがつい…っだよっていうかっ、い、いつ帰ってきたんだよっ。まさかさっきの聞いて…っ!」
 「さっきのって何のコト? 帰ってきたばっかで、わからないんだけど?」
 「・・・・・・なんかアヤシイ」
 「ホントに何も聞いてないし、そう怒らないで機嫌直してよ。ほら、そろそろ起きると思ってアイスも買ってきたし」
 「じゃあ、早くそのアイスを俺によこせっ」
 「はいはい」

 寝たままで俺がムッとした表情のアイスを要求すると、久保ちゃんはソファーに座る。
 だから…、なんとなくまた久保ちゃんの膝に頭を乗せてみる…。
 すると、久保ちゃんは俺にアイスを渡さずに蓋を開けると、ついてた木のさじでアイスをすくった。見た所…、久保ちゃんが買ってきたのは白クマ…。
 俺の好きなアイスだけど、差し出されたさじから食うのはちょっち…っ、
 つーかっ、これってまさか…っっ、し、し新婚サンっ?!!!
 
 「はい、あーんして?」
 「…って、そんなの食えるかぁぁぁっ!!!!」
 「早く食べないと溶けるよ、時任」
 「うわっっ、溶けたらカオに…っ!」
 「膝枕な状態でアイスを要求したのはお前なんだから、観念して食べなさいね」
 「だったら、起きるっ!」
 「もう手遅れ」
 「・・・・むぐっ!!」
 
 口を開いた瞬間に、さじとアイスが入ってきて…、
 ひんやりとした冷たさと甘さが…、口の中に広がる…。
 食べさせてもらったからってんじゃないけど、アイスはウマかった…。
 だから俺がウマいって言うと、久保ちゃんはそう…って言って、またさじでアイスをすくって俺に食わせる。ホントは自分で食うって言って、隙をついてアイスを奪い取るつもりだったけど、なんか久保ちゃんが楽しそうに見えて…、
 そんな久保ちゃんを見るのは久しぶりな気がして、奪い取れなかった…。
 けど、その代わりに袖を右手で掴んで軽く引っ張る。
 そして、次の要求を久保ちゃんにした。

 「あのさ…」
 「ん〜?」
 「ちゃんと待ってるからさ…、絶対に待ってるから電話しろよ。ちゃんと電話しないと待っててやんねぇかんな…」
 「・・・・・・・」
 「久保ちゃん?」
 「もしかして、テーブルの上見た?」
 「テーブルってゲーム? あそこに置いてあんのは、こっから見てなんとなくわかったけど、あれってやっぱ滝さんに頼んでたゲームだよな?」
 「うん…」
 「それがどうかしたのか?」

 「いんや…、なんでもないよ」

 久保ちゃんはそう言うと、今度は俺に食わせてたさじで自分の口にアイスを運ぶ。
 そして、次にまた俺の口にアイスを運んだ…。
 こんなのでドキドキすんのは…、どうかしてる…。
 けど、久保ちゃんがアイスを食うのを見てると、すごくドキドキして…、
 そのドキドキが止まらないせいか、アイスがいつもよりも甘い気がした…。

 

 企画最後のお話っっ、なのです〜〜vv
 本当にやっとですっ、やっと最後までお題を書き終えるコトが、
 できましたのです〜〜〜っ!!!!!(/_<。)

 (*T▽Tノノ゛☆パチパチvv

 企画を応援してくださった方vvお話を読んでくださった方vv
 本当に本当にありがとうございますっ!!!!vv
 そして、ステキな企画に誘ってくださった水月マスターっ!!!
 いつも温かく見守ってくださってvvのろのろな私を待っててくださってvv
 本当に心からとても感謝なのですっ!!!!vv(/□≦、)vv
 皆様のおかげでお題をやり遂げることができましたvvvv
 祝っ!!!WA4っ!!!
 そしてそしてっ、WA万歳なのですっ!!!!!!

 ヽ(>▽<*)乂(*>▽<)ノ バンザーイvv

 ※このお話は水月マスターからのらぶリクエストvv
 「嫉妬メラメラな久保ちゃん」で書かせて頂いたお話なのですvv
 あ、あまり…、ちっともメラメラになりませんでしたのですが(冷汗)
 水月マスターに山盛りの感謝を込めてっっっ、贈らせて頂きたいですvvvv
 本当に色々とありがとうこざいますなのですっっ!!!!vvvv

 多謝vvvv<(_ _)>


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