こんどは塩の話
今日はシンジがケーキを作ってくれる。
まあ、このアタシの誕生日なのだから、ケーキくらい当然ね。
アタシに食べてもらえるのだから、ケーキとやらも本望でしょ。
「あっ、アスカ? まだ生地しかできてないから、味見はもうちょっと待っててね」
・・・どうしてアタシの考えていることが分かったのかしら?
まあそれはそうと、シンジを見ると、軽く白いものを摘んで生地に入れていた。
「何それ? 砂糖?」
「ちがうよ。塩だよ」
「塩? まさか、アンタ、そんなものをアタシに食べさせるつもりじゃないでしょうね!!」
「えっ、違うよ! 甘いものにほんのちょっとだけ塩を入れると、かえって甘さが生きるんだよ」
「・・・本当?」
「あと1時間待っててね。そうしたら証明してみせるから」
シンジにしてはやけに自信満々に言う。
仕方がないからおとなしく待ってやった。
「どう、アスカ?」
「・・・おいしい」
悔しいけれど、それはホントにおいしかった。
だからそれからしばらく経って、シンジが風邪を引いたとき。
アタシは食事を作ってあげた。
まあ、普段作ってもらっている分、こんな時くらいはやってあげないとね。
もちろん治ったら10倍返しは当然ね。
で、メニューとしてはバターロールにジャム、そして紅茶。
・・・別に手抜きじゃないわよ。
シンジがこれでいいって言うんだから、これでいいのよ。
トレイに準備してシンジのところへ持っていこうと思ったとき。
ふと真っ赤なイチゴジャムが目に留まった。
・・・塩を入れてみたら良いんじゃないかしら。
即断即決がアタシのモットー。
ちょっとだけ塩を入れてみた。
・・・ちょっとだけ多めに入っちゃった気もするけど、ホントにちょっとだけだから大丈夫よね。
ごふっ
食事の最中、いきなりシンジが咳き込んだ。
何かあったのかしら?
真っ青な顔をしたシンジは慌てて紅茶に口を付ける。
ぶふーーーっ
今度は紅茶を吹き出してしまった。
隠し味に入れたお塩がそんなに良かったのかしら?
・・・と思うほどアタシも愚かではない。
ちょっとばかりお塩の量が多かったかも知れない。
そう反省したアタシはタオルでシンジの口と布団についた汚れを拭うと、キッチンに水をくみに走った。
1分もしない内にシンジの元へ帰ってくると、シンジは青ざめた顔ではははと笑いながらも、残さずきれいに食べていた。
・・・ホント、バカなんだから。
「シンジ、目をつぶりなさい」
「えっ、どうして?」
「命令よ」
ちょっと不審そうな顔をしながらも素直に目をつぶるシンジ。
ああいう目にあったっていうんだから、少しくらい疑いなさいよね。
そんなシンジに、アタシはコップの水を口に含んで近づいていく。
熱のせいだろうか、ほんのり赤く上気したシンジの顔に、ちょっとだけアタシもドキッとした。
ターゲットであるシンジの唇は、赤く濡れてアタシを待っている。
そんなシンジにアタシは口付けると、含んでいた水をそっとシンジ口の中に流し込んだ。
シンジはびっくりしたように目を見開くと、わさわさと両手を使って後ずさっていこうとして、ベットの背もたれに背中をぶつけた。
こらこら、そんなことをしては水がこぼれちゃうじゃないの。
「あっ、あっ、あっ、アスカ・・・」
「どお? 口直しの水。甘かったでしょ?」
シンジが顔を真っ赤にしながらも頷いたのは言うまでもない。
おしまい
あとがき
にんじろうさんの『またまた砂糖な話』を読んで、アッという間に妄想が膨らみ、書いてしまった・・・。
研修中の鬱憤が溜まっていたのだろうか?
最後は暴走してしまいました。
反省してます。
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