始まり
葛城家のリビングのTVには2つのリモコンがある。
決まった曜日の決まった時間、
それぞれにリモコンを持つ少年と少女。
火花を散らせながら、チャンネルをとりあう。
「レディーに譲りなさいよ」
しびれを切らした少女が、少年のリモコンをうばう。
「なにがレディーだよ」
リモコンを取り返そうと、少年が手を伸ばす。
振り払う少女、さらに伸ばす少年。
からみあった2人が、バランスを崩す。
床に倒れ込む少年と少女。
どちらが上になるでもなく、互いの顔が並んだ…。
葛城家のリビングのTVには2つのリモコンがある。
決まった曜日の決まった時間、
リモコンを握る少年と少女に、ほんのわずかな感情が走る。
それは、ほんのわずかな間となって、
いつまでも続く、チャンネル争いの始まりとなる。
いつまでも続く、始まりとなる。