贈り物 (レイ編)
石碑。
それは、見渡すかぎりの平原を、どこまでも続く無数の墓標。
その1つ1つから伸びる黒い影が、彼の背中に深く交じる。
今日は、
私が生まれた日。
そして、
私の知らない私が消えた日。
今日、私の前にあるのは彼の背中。
彼が見下ろす、1つの墓碑。
それは、彼だけが知っていた私ではない私。
光と熱となって、
彼を守り、
彼に刻まれた、別の私。
傾いた陽がいたずらに影を伸ばし、地平線に向かって重なりあう。
握ったままの彼の手と、
私たちの髪をなでていく、風。
「・・・アヤナミ」
彼が呼ぶのは誰?
彼の背中は動かない。
私の中にあるのは、私への嫉妬。
この日が来るたびに起きる、私の中の感情。
彼に対する、私の想い。
私は彼の横に立ち、彼の袖をつかむ。
開かれたままの彼の瞳。
黒石にある私の名前。
彼女に最初にもらったのものは涙。
次に、彼の中にあった彼女への想い。
そして、今という時間も彼女の贈り物。
「碇君」
私は彼の名を呼び、強く腕をひいた。
彼を、私から取り戻すために。
遥か遠くに墓標が消え、私に彼の優しい瞳が戻り始める。
再びまわり始める私の時間。
最後に、
「誕生日、おめでとう」
その言葉を聞いて、私の生まれた日が終わる。
だから、
「私のこと、好き?」
答えの代わりにもらうその日のキスは、いつも贈り物と嫉妬の味がする。