ひどく白い感じがする病室で、バカがひとり眠っている。
白いシーツの中で、
唯ひとり、自分だけがそこにいるような顔で眠っていて、
気に入らない。



こいつの側から動かないのは、ファースト。
小さな椅子に座り、シンジを見下ろしたまま動かない。
瞬きする間さえ惜しむように、紅い瞳にシンジを映し続ける。



「アスカも座りなさい」
自分だって立ったままのミサトが、もう一つだけある空の椅子を促す。
「いらない」
私はシンジから遠く離れた壁際にもたれたまま、
なにもかもが気に入らなくなって、
床に視線を移す。



出よう。
そう思うたびにあのバカに視線が戻り、足が動かない。
そんな私が、一番、気に入らない。



昨日、ロッカーを殴り付けた右手。
赤く腫れて痛む。
こんな、こんな奴に負けて、悔しさをぶつけた右手。
『先鋒はシンジ君がいいとおもいま〜す』
・・・くそう。
無音で壁を叩く度に、
痛みが、しびれる様に私に伝わる。
『昨日のテストでちょ〜といい結果が出たからって、お手本みせてやるう?・・とんだ、お調子もんだわ』
『なによ、シンジの悪口を言われるのがそんなに不愉快? 』
『あなたは、人に誉められる為にEVAに乗ってるの?』
あの時のファースト。
その時の私。
気に入らない、
気に入らない、
気に入らない!!
沈んでいく初号機。
『アスカ!綾波!援護は!?』
シンジの叫び声。
『アスカ、アスカ、アスカ、援護は?、アスカ、援護は?アスカ、』
「うるさい!!」
ドシッ。
壁に向かい、目いっぱい振り下ろした右手。
痛うぅ。
ミサトが驚いてこちらを見る。
「どうしたの、アスカ!」
「もう、やってらんないわよ!!」
はしり続ける激痛。
私の中のイライラ。
眠り続けるシンジ。
みんな、あのバカのせいだ。
あんなやつの為に、なんで私が。
「みんな、こいつが悪いんじゃない。私がぶん殴って、起こしてやる」



『992個、現存する全てのN2爆弾を投下します』
なにがNo.1よ、死ぬところだったくせに。
『パイロットの生死は問いません』
本当に、死ぬところだったくせに。
『16時間は持つわ』
そんなに、
長い間、
私達を付き合わせて、
『12分早めましょう』
そんな、
分刻みで、
あんたが死ぬのに付き合わせて、
『爆雷投下60秒前』
本当に、
本当に、
ぎりぎりまで、私を・・・、こいつは・・・、
1人で行って、1人で戻って・・、それで、こんな、ふうに、こいつは、



もう少しで、
本当に、死ぬ、ところだったのに、
この、私の、目の前で、
死んでしまう・・ところだったのに、



「いつまで寝てんのよ、・・・この、バカシンジ!」
ベットの中のシンジに私は殴りかかる。
「やめなさいアスカ」
ミサトが振り上げた私の腕をつかんだ。
「ミサト、叱るんじゃなかったの!」
その手を振りほどくと、今度は、ファーストが私の前に立ちはだかる。
「やめて」
「どきなさい、あんただって。こいつには、言いたいことがあるでしょ」
「いいから、落ち着きなさい」
後ろから私を羽交い締めにするミサト。
私は暴れ続けながら、シンジににじり寄る。
「ミサトがそんなに甘いからシンジのやつは・・、私が、私が」
「碇君を責めないで」
必死な顔のファースト。
こんなに、こんなに想われて。
想われて・・・。

早く起きなさいよ、
バカシンジ。

ぽろ。
ぽろぽろ。
「アスカ?」
「なによ」
「あなた?」
「なによ」
ぽろぽろぽろぽろぽろ。
「泣いているの、あなた?」
「な、何言ってんの。どうして、私が・・・」
ぽろぽろぽろぽろぽろ。
「私が、泣くのよ」
ぽろぽろぽろぽろぽろ。
そうよ、私がなく分けないじゃない。
「私が、泣くわけ、ない、じゃ、ない」
くそ、息が苦しくて、声がでない。
ぽろぽろぽろ。
水滴が幾つもシンジの上に落ちていく。
ぽろぽろぽろ・・・。
水滴は、続いて、続いて、止まらない。
「もういい、もういいから、アスカ」
ミサトの腕の力が、緩み私を抱きかかえる。
ファーストは黙って私を見ている。
私は何がなんだか分からないまま、どんどん前が見えなくなる。

ぽろぽろぽろ。
ぽろぽろぽろ。
ぽろぽろぽろぽろぽろ。

そして、
シンジの顔も、
見えなくなった時。

「アスカ?」
バカの声だけが聞こえて、
・・・・私は、何も見えなくなった。








誰かが、私の右手を優しくつつんでいた。



本当はこれ、
レイの話しだったけど、上手く書けなくて真中だけ切り抜きました。
そちらを読みたい方は、下書きでよければこちらにどうぞ。
(結局、そっちも見せたい私)
いつもながらへぼ短編ですが、励ましのメールをお待ちしております。


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