「じゃあ、次、いきまーす」
フスマの向こうで陽気な声がして、
「私たちの名前を当ててね」
そう言い終わると同時にフスマが開くと、
蒼い髪と紅い瞳の同級生が3人、立っている。
それは三つ子の同級生で、中の一人は私の強力なライバル。
その姉妹に関する、見分けかた
これは、本当にそっくりな3人を見分けるという、
さっきから、ごく普通の六畳の部屋で続けられているくだらないゲーム。
「うーんと、」
3人を前に、シンジの奴はこんな時までまじめに考えてから、
「そっちからレイ、ルイ、リナかな」
と、不安げに答える。
正解。
私は、部屋の真中で足を投げ出した格好で、ポテチを一枚つかみながら心の中で解答した。
その直後、右端にいたリナが大きな声を上げる。
「えー、どうして分かっちゃうの?」
「うーん、どうしてかなぁ。自分でも分かんないよ」
両手をぶんぶん振り回すリナに、シンジは情けない声を出す。
『家族以外は見分けがつかないの』
リナの得意げなセリフではじまったゲームは、シンジの連戦連勝。
リナはすっかり意地になって、当てられる度にシンジににじり寄る。
そんな光景を見て、私はつまらなさを強調してリナに言う。
「ま、あんたは誰でもわかるわね。浮いてるから」
「むー、アスカ、それどういう意味」
頬を膨らませ、ジト目で私をにらむリナ。
「そのまんまよ」
私はそんなリナを放っぽって、もう一枚ポテチを取る。
「くー、悔しい!!」
さらに悔しがってリナは、のしのしと再びフスマの向こう、廊下にでる。
「と、とにかくもう一度、レイ姉ちゃんとルイ姉ちゃんもいいわね」
無言のまま廊下に立つ2人の了解を取る間もなく、リナはぴしゃりとフスマを閉める。
「ちょっと待ってなさい」
フスマの裏でリナの声と、ぱたぱたと立ち位置を変えている音が、
やけに騒がしいのが1人分、本当に控えめなのが2人分、聞こえてくる。
・・・何度やっても同じよ
冷ややかにフスマを見つめ、ポテチをかじる私。
すると、シンジが私に聞いてきた。
「リナはアスカが言った通りだと思うけど、綾波とルイはどうして分かるんだろう」
綾波。
そう、シンジは普段、レイだけを名字の綾波と呼ぶ。
今日は名前当てだから、特別だ。
「どうしてかなぁ」
もう一度呟いて、不思議そうな顔をむけるシンジ。
「あんた、本当に自分で分かんないの」
また、ポテチの袋に手を伸ばす。
・・・空だ。
「うん」
「それじゃ、私も分かんない」
「じゃ、次」
フスマの向こうから、また声がした。
「うーん、リナ、レイ、ルイ」
「うー、当たり」
また、同じ結果にばたばたと足を踏み鳴らすリナ。
シンジに向かって両手を広げる。
「シンジ君、本当は、見分ける方法があるんでしょう」
「え、そんなのないよ」
「ホントにー?」
繰返される会話、
私の隣では、いつのまにかやってきたレイ達の妹、レナが(4歳)、
飴玉を入れた袋を抱え、姉達と同じ紅い瞳をぱちぱちさせて座っている。
え、私にもくれるの?
袋を渡しに差し出し、こくっとうなずく、レナ。
「ありがと」
赤い色の飴をひとつ口に入れると、レナは嬉しそうに肯いて再び姉達とシンジのやり取りに目を向ける。
「じゃ、もう一度」
結局、そうなったらしい。
フスマの向こうの足音。
考え込むシンジ。
ぼーとする私。
シンジがレイ達を見分けている方法。
多分、私と同じだけど、本人は気付いていないのなら、教えてやらない。
それほど、私は親切じゃないし、余裕もない。
すると、横で袖を引張る感触。
見ると、レナが小さな身体を伸ばして、私に内緒話をしてくる。
(アスカ姉ちゃんは、お姉ちゃん達の見分けがつくの?)
(まあ、分かるわよ)
(どうして?)
相変わらずぱちぱちしている目を見ながら、すこし考える私。
(秘密、守れる?)
うーんとちびなりに考えるレナ、こくっとうなずく。
「私たちの名前を当ててください」
開かれるフスマと、立ち並ぶ3人。
(一人だけシンジを見る目がちがうのよ)
「うーんと、レイ・・」
(それに自分の名前を言われて、喜んでるもの。・・・分かった)
言われて姉達を見るレナ。
小さくうなずく。
私は、ため息交じりに念をおした。
(いい、本当に秘密よ。あなたのお姉ちゃん、強敵なんだから)
それで、数ヶ月後。
シンジを起こして、学校に向かう途中。
「あのさ、アスカ」
「なによ」
「最近、綾波とルイが見分けられないんだ」
「・・・・・そう」
ライバルが一人増えたわけね。
「おはよう、アスカ。なんか深刻そうね」
「あんたは、大丈夫でしょうね、リナ」
また、うそをついてしまいました。
予告と全然違うものを書いてしまいました。
許せ、許せ、許しておくれ。
レイ4姉妹はかなり定番のものなのですが、最近は見ませんね。
私は、ちびレイがお気に入りです。
けど、名前を考えるのに一苦労。
固定されたイメージを覆すのは大変ですね。
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