ヒール


あれ?

最初は、
たまたま、シンジと並んだときに感じた違和感だった。

そして、
たまたま、そこにいたミサトの一言だった。

「シンジ君、背、伸びたんじゃない」
「アスカ、抜かれちゃったわね」

その時、私が感じたものは、
理由のない悔しさと、
言いようのない気恥ずかしさと、
困ったように見下ろすシンジの目。

「それがどうしたのよ、バカ」
それが、あのとき私ができた唯一の対応。

そんなだったから、
それからの数週間は気まずい時間ばかりが過ぎて、
やはり、困った目で私を見るシンジと、
そんなシンジを避ける私がいるだけだった。

・・・ホント、シンジは悪くないのに、
・・・今でもそんなだけど。
・・・いつだって、私ばかりが空回りして、
・・・今でもそうかな?

それで、数週間が1月に変わる頃。
たまたま、私の誕生日がやってきて、
シンジが相変わらず困った目をしながらプレゼントをくれた。

それは、少しだけ踵をあげる、ヒールの靴。

白状させれば、
そんなのは加持さんの入れ知恵で、
デザインも地味地味でいまひとつだったけど、
履いてみたら、
サイズだけはピッタリだった。

ま、そんなきっかけだったから、

「えーっ、アスカ、また新しい靴を買うの?」
「いいじゃない、だいたいアンタのせいでしょ、まったく背ばかり伸ばして」
「そんな」
「ふーん。私の隣を歩きたくなければいいけどね」

それ以来、
私のヒールは、半分、シンジ持ちだ。



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