優しすぎるでしょう?




ゾロは俺以外の船員には優しいだろう?



例えばルフィ。
元々一番の古株の奴ら。俺が知らないゾロを知っているルフィ。そして、何処か似ているところのある奴ら。”あいつら”と纏められるのも不思議ではない関係だ。そして、ルフィは船長。ゾロはルフィの云った事なら無理な事ではない限りほぼ聞き、実行する。”使われるのは嫌いだ”何て云っておきながら、ルフィの一言で俺のところへお使いに来る事も度々だ。まぁ、ルフィの餌を持っていく序にちゃっかり自分の酒も持っていくのだが。元々、年下や小動物には弱い太刀のゾロだ。自分が使われていると思わなければ良いだけの話なのだ。命令されるのではなくお願いされていると本能的に思ってしまうのだろう。

例えばナミさん。
彼女はゾロの知る女の中で特別な存在なのだろう。そりゃぁ、あんな場面を見せ付けられれば誰だって、大抵の男は彼女に色んな意味で惚れるし、女だってそうに違いない。そんな彼女に何時も憎まれ口をたたいてはいるものの、優しく包み込んでいる感じだ。俺は如何してもレディはレディだと云う見方しか出来ないが、ゾロは違うらしい。あまり男女の関係なく態度の変わらない、けれど、彼女を遠まわしに女扱いをする。アレは天然のタラシだね。何だかんだ云って結局彼女の云うことを聞かない事はない。聞かなくて後悔した事はあったらしい。

例えばウソップ。
もうコイツで云えば、成長を温かく見守るパパ状態だ。ウソップの発明の話を聞いている姿を多々見たことがあるが、どれも大して興味のない顔をして只話を聞いている。だが、ウソップは聞いてもらえること自体嬉しいらしく、隅から隅まで語り尽くす。そして、一息吐いたところでゾロが問う。そして自慢気に特徴を話し出す。その繰り返しだ。自分より絶対的に力の下なウソップだが、対等のレベルで扱っているのはウソップの力だけではなく人としても認めているからだろう。そして何より、ウソップもゾロに誉められるのが一番嬉しそうだ。

例えばチョッパー。
動物大好きだろう、と云うか何故か動物に好かれるゾロにとっては放って置けない存在ナンバーワン。出会いすらキチンとしたものもない二人だが、野性の繋がりと云うのを嗅ぎ分けたのだろうか?初め、一番警戒していたチョッパーも今ではすっかり仲良しだ。艦板で二人して寝てやがる時の顔見たことあるか?それはそれは幸せそうな面しやがって。俺とセックスした後にそんな顔してくれた時あったか?つい、そんなコトを思ってしまい何時も二人で寝ている時は蹴り起こしたい衝動に刈られるものだ。しかし、如何にも寝顔が可愛いものだから、眺めてしまうんだな。クソッ。


レシピを作っている最中そんなことを考えて、”俺とゾロは如何云う関係だっけ?”と云う素朴な疑問を浮かべた。本当に小さい疑問だ。そして答えは何時もこう。

俺がゾロを好きな関係

何とも冷たい響きなのだろうか。まぁしょうがないじゃないか、俺は明く迄俺であって、ゾロの心を読み取る事は不可能だ。けれど何時かは云ってみたいものだな、”ゾロが俺を好きな関係””好きあってる関係”。考えて身震いした。何年経てば?

「何してんだ?」
突然頭上から声が降り、驚いてついレシピを書いていた紙を隠してしまった。
「うおぉ!何だ、クソ」
「・・・・・・大袈裟」
溜息を吐きつつ云われた言葉に、考えてしまう俺はもう通院、入院どころの問題ではない。確実に死期が近いだろう。
「何か食うものあるか?」
心臓を抑えている俺に向かってゾロはそう云った。今しがた考えていたことが思い浮かぶ。これは”例えばルフィ”の場合だ。例によってこの船の船長に腹が減ったとせがまれたのだろう。コックの俺に頼めばいいもののゾロに頼むなんて見せ付けてるようにしか思えねぇ!って、俺がゾロと付き合ってんだから見せ付けてるってのはおかしいか?
「をい、ルフィが・・・」
その単語を聞いて、俺は勢いをつけてゾロを返り見た。
「キスしてくれたらやるよ。ルフィのおやつもお前の酒もだ!」
俺の云った言葉に、ゾロは表情なく停まって見せた。そして、ようやく理解したらしく頬を引き攣らせる。
「・・・・勝手に漁らせてもらう」
そして、云って、両手を広げている俺の横を通り過ぎて、つい最近新しくなった冷蔵庫に向けて溜息を吐きながらユックリ近づいていった。そして、その扉に手をかける。珍しく俺が何も云わない事を不思議に思ったのか開ける寸前チラッと俺に視線を投げやがった。けれど、気にせず扉を引く。
「ん?」
一向に扉は開かず、何かがつっかえているような音がゾロが扉を引くたび響いた。


「はっはっはっ!開かねぇよ!何故なら・・・」

バキッ

「「・・・・・・」」
ゾロの手に佇んでいるもの。ソレは正に、傷一つ付いていない新品の冷蔵庫の・・・・扉。
「あああああああああああああああ!!!!!」
俺は頭を抱えて叫んでいた。手に持っていたナミさんがどっかの食欲魔人から食料を守る為に買ってくれた冷蔵庫の鍵を思わず放り投げてしまった。けれど、今はもうそれどころではない。その鍵があってもどうしようもない状況になってしまったのだ。
「不良品だ、開きにくい」
ゾロはそう一言云って手に持った、本来持つべきものではない冷蔵庫の扉を無造作に置いた。そして、冷蔵庫に頭ごと突っ込んだ。そして、未だ打ちひしがれている俺を他所に、本当に冷蔵庫を漁りだした。俺は何も云う気になれず、只々その様子を見守るしかなかった。と云うか、ゾロの隣にある扉を見詰めるしか。ついさっき迄あんなに快適にスイスイと開いていた扉が、扉が・・・・何で地べたに寝ているんだよ、起きておくれよ。そしてさっきのように見事なまでに無駄のない動きをしてごらん?俺は身体が灰になって飛んでいく様を思い浮かべた。何とも滑稽だ。
「じゃぁ貰って行く」
ゾロはそう云い、俺の横を通り過ぎていく。手にはチャッカリ、ルフィへの土産と自分へのご褒美だろう貴重な酒があった。






それから冷蔵庫から漏れる必要以上なまでの冷気がキッチンと俺を凍らせたのは云うまでもなく、ゾロが出て行った数時間後にキッチンを訪れたウソップに発見されるまで俺は固まっていた。色んな意味で。

そして、ルフィ海賊団緊急ミーティングが開かれる。

「何で!?」
先ず第一声を発したのはこの船の陰の、否、絶対的な支配者のナミさんだ。彼女は全員が椅子に座っている中、一人立ちテーブルを思い切り音を出してたたいた。
「何があったら冷蔵庫のドアがもぎ取れるの!?」
「・・・・・訓練の賜物?」
攻められているはずの人物は、天井を見上げながら少し考えてそう云った。考えたにしては足りない脳味噌だぜ、ゾロ。
「いーじゃねぇか、ナミー。コレで食い放題だぞ?」
しししとルフィが笑う。をいをい今、そんなコト云ったら。
「うっさい!」
俺が思った通り次の瞬間にはルフィの頭にはでかいタンコブができあがっていた。ウソップもチョッパーもその剣幕に押されて何も発しようとはしない。彼らは強いものの見方なのだ。この場合、ナミさんね。その二人にゾロが時折目線をやって、”お前ら外出てて良いぞ?”と云う。これは”例えばウソップ”と”例えばチョッパー”の場合だ。俺は思わず考えてしまった。けれど、当の二人はナミに睨まれ、一度は上げた腰を蛇に睨まれた蛙と云う例えがピッタリ当てはまるようにゆっくりと椅子に座りなおした。
「もぎ取ったらもぎ取ったで何で平然とした顔で酒飲んでんのよっ!この馬鹿!!」
その言葉を聞き、ゾロの目線が冷蔵庫へ向けられる。何とか応急処置をしてガムテープでくっ付けた扉のついた冷蔵庫が痛々しい。
「・・・・・もぎ取った?」
「「・・・・・」」
ゾロがナミさんに視線を戻す。
「あぁやって開く冷蔵庫じゃなかったのか」
「そんな不自由な冷蔵庫、半額でも買わないわよっ!!」
ナミさんが船中、否、海中に声を響かせた。
「大体、サンジ君。何でゾロに冷蔵庫を開けさせたのよ」
ナミさんの矛先は俺に伸びてきた。まぁ、結果はどうあれ、ゾロの力を嘗めていた俺の過失だ。
「スイマセン」
「喧嘩してて壊したとかじゃまだしも、何でそう簡単に冷蔵庫触らせちゃったのよ」
「そうだ、元はと云えばテメェが素直に渡さねぇからだろう」
ゾロが横からちゃちを入れる。ルフィはもう暇で暇でしょうがないらしく自分の指を伸ばしては放し、伸ばしては放しと意味のないことを繰り返している。終いにはウソップやチョッパーまで混じり、何処まで伸びるかなんて遊びを考え出した。
「アンタもちったぁ反省しろ!」
ナミさんの拳骨が今度はゾロの頭にヒットする。ナミさんの拳くらい避けるのなんて分けないゾロが素直にソレを喰らうのは”例えばナミさん”のことがあるからだ。ほら、コレで全部だ。今日も俺以外の船員に優しくしてやがる。
「サンジ君にしては珍しい失敗よね」
遠くからナミさんの声が聞こえて俺は現実に戻ってきた。
「侮ってました。こいつの馬鹿力を」
「保険入っててよかったわ」
ナミさんがボソリと云った。この船の中だ。無事冷蔵庫が持つなんて保証、全くと云って良いほど、ない。流石ナミさんっ!と思ったが、さっきレシピを書きながら考えていた事が頭の隅にあり、それを表現するには至らなかった。
「今から、この前寄った島まで引き返しましょう!そう進んではいないから三日もあれば帰れる距離だわ。」
ナミさんが云った。その声色には”しょうがない”と云った気持ちがうかがえる。
「サンジ君、食料はその間もつわよね?」
「常温で保管できるものもありますから」
「いいわね、ルフィ」
「おう」
ルフィが頬を引き伸ばされながら返事する。遊んでは居てもちゃんと話は聞いていたらしい。
「あの街色んな工具があるんだよなー珍しいの」
ウソップがもう一度行けると聞いて嬉しそうに云った。
「医療の器械も結構あったぞ」
チョッパーは何時でも仕事の事を忘れていない。
「三倍くらい頑丈なのを特注しなきゃ駄目かしら」
ナミさんが云った言葉に笑った。その目線の端でゾロが席を立つのが分かった。殴られたし、話も纏まったしでミーティングは終わりだと思ったのだろう。珍しく昼間の寝ていないゾロが見られるというのに、また姿を消すのかよ。俺は珍しく咥えていなかった煙草を取り出し、に火を着けた。マッチを取り出し手馴れた動作で火を灯し、左手で消えないよう覆う。と、目の前が影った。誰かが俺の前に立ったらしい。

とっさのことで目を瞑るのも忘れるた。
胸倉を掴まれたと思って、火の着いたマッチが指から落ちた。咥えていた煙草もだ。唯一残ったのはもう中身の少なくなったマッチの箱。その軽い音が響くと同じ頃、俺の視界はもうゾロ一色だった。乱暴に唇を奪われ舌すら入ってはこなかったが軽く下唇を吸われ、最後に吸われた後をなぞるかのように舌が辿った。船員皆が集まるこの場所で。




























ゾロが俺に口付けた。


嘘じゃない。
嘘みたいな話だが、聞く奴によっては嘘だと云い張るかもしれないが。嘘じゃないんだ。

一瞬の出来事だったけれど。

「湿気た面してんじゃねぇ」

呆然とする船員(俺含む)の視線を他所に、平然とした顔をしてゾロは部屋を出て行った。慰めのつもりかよ。俺の心が読めるのか?冷蔵庫が壊れたから俺が落ち込んでいると思ったのかよ。それとも、俺が本当に落ち込んでいる理由がわかったのか?




エスパー?

















ゾロは俺以外の船員には優しいだろう?

俺以外の船員には優しすぎるだろう?

俺に向けられるのは、優しさでなく愛じゃないのかな。



















END








貰った貰った貰った!!!!!!
何をって挿絵にきまってんじゃんきまってんじゃんきまってんじゃんきまってんじゃん!
コノヤロー!!!!(・・・・・
えー・・・冷静に。
サンゾロリングの「SAZO」マスターでもあり、
素敵サイト「Cc-L」を管理なさっております、zuuさまから素敵挿絵を頂きました。
こっそり飾ってくれといわれたのに堂々と飾ってしまいました。
ゴメンナサイ。けれど、こんなの貰ったら!!
堂々と飾るを得ないじゃないですか!!!
うん。それっきゃないよね。(同意の声が多数聞こえる気がします。
どうですどうですどうですか!
素敵じゃないですか〜(自問自答
素敵ですよ・・・・まっじたまりません!
ルヒは可愛いし!!
ナミさんの表情はたまりません!!
ウソップは失神して床で泡を吹いているため見えません。
多分、チョッパーはウソップの道連れに倒れさせられたのではないかと。
何より手前のバカップルな!
ホモ二人が可愛いじゃありませんかっ!!!
愛が溢れて溜まりませんね。
てか、垂れ流しっぷりでねぇ!!もう、愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛!!!
有り難う有り難う。
本当に有り難う。またくださいとは云えませんけど、
気がむいたらまた描いて下さい。そしてください。(結局云ってんじゃん
てか、本当に皆さん読んだらアタシに挿絵をください!!!(・・・

悩んだのは挿絵を置く位置で・・・・ココで良いかなぁ・・・んんんん・・・・

十八番 拝