函館に住む外国人の暮らしやすさ

                                   
佐々木明菜

国際観光都市といわれている函館だが、実際に市内を散策してみると、外国人向けの看板の表示が不十分であるように感じられたり、市電利用の方法が、初めての外国人にはわかりにくいのではないかと感じられたりした。そこで、今回は函館に住む留学生を対象に、函館の暮らしやすさについて考えてみたいと思う。具体的には、外国人の目からみた、函館の行政(公共交通機関) ・人・日常生活(娯楽、労働環境)の良い点・問題点について調査してみた。単に観光として数日間だけ函館に訪れるのではなく、数ヶ月〜数年間生活をする留学生へのインタビューを通して、本当に外国人観光客や在住外国人に必要なものはどういうものなのか考察してみたい。留学生への質問項目としては、Q1. 函館の公共機関でよく利用する乗り物は何か?その乗り物で困った或いは不便だと思うことはあるか?Q2. 函館の人々はどのようにうつっているか?Q3. 函館でよく利用する娯楽施設は何か?娯楽施設は充実していると思うか?Q4.アルバイトをする労働環境はどうか?何か困ったことや、嫌な思いをしたことはあるか?の4項目について聞き取り調査を行った。以下に、リサーチ結果を示す。なお、インタビューを行った留学生についてはプライバシーの関係で名前はイニシャルとさせてもらう。


リサーチ結果

RK
性別  女

年齢  21
出身  中国
函館歴 3ヶ月弱

A1  市電をよく利用します。中国で利用していた市電は、料金が一律で、しかも整理券がないものでした。その2点で函館の市電と違いますが、あとは乗り降りも基本的に同じですし、わからない表示は電子辞書を引けば理解できるので特に困ったり不便だと感じたことはないです。電子辞書は毎日かかさず持ち歩いています。

A2 とても優しくて親切です。嫌な思いをしたことはないです。

A3 カラオケです。歌うことが大好きなので料金は少し高いと感じますがよく行きます。娯楽施設は私の出身地に比べたらそんなに多くはないと思います。

A4 今のアルバイトを始める前に2ヶ所に電話をしましたが、外国人ということで断られました。でも、2ヶ所とも丁寧に対応してくれました。今のバイトは楽しいです。



GR
性別  女
年齢  19
出身  中国
函館歴 29ヶ月

A1 市電をよく利用します。初めて乗ったときは料金表の見方がわからなくて車掌さんに聞きました。掲示物は辞書を引けば大体わかるので、その点は困ったりしません。

A2 基本的にみんな優しいですが、車の運転をしている人たちはマナーが悪いと思います。

A3 ネットカフェに行きます。娯楽施設は少ないと感じます。函館は観光客相手の店は充実していると思いますが、もっと地元の人が利用できる店を増やすべきだと思います。例えば服屋の数も少ないですよね。

A4 函館に来てから3ヶ所でアルバイトをしましたが、アルバイト中に嫌な思いをしたことはありません。ただやはり外国人ということでアルバイトを断られたことは何回もありました。



MF
性別  男
年齢  22
出身  オーストラリア
函館歴 4

A1 市電をよく利用します。初めてのときは整理券を取るということを知らなかったのでちょっとだけ恥ずかしい思いをしました。できたら外国語でも表示して欲しいですね。或いは停留所に整理券の扱い方について絵などで表示してもらえたら嬉しいですね。

A2 みなさんとても親切です。全体的に大人しい人が多いと思います。

A3 カラオケによく行きます。娯楽施設は種類によって充実しているものとそうでないものが分かれているように思います。たとえば温泉はとても充実しているけれど、大型デパートは少ないと感じます。

A4 現在は接客のアルバイトをしていますが基本的に困っていることはありません。ただ、同じアルバイトをしている他の人(日本人)と比べるとシフトの回数が少ないのが少しだけ嫌ですね。たくさん働きたいのですが。あとは外国人だということで面接をする前から、電話だけで断られてしまうことも多いのでそれも嫌です。



SG
性別  女
年齢  21
出身  カナダ
函館歴 6ヶ月

A1 バスを利用します。基本的にカナダのバスと同じなので困ったなと思ったことはありませんが、外国人が利用することを考えた場合、もう少し外国語表示があったほうが助かりますね。

A2 親切な人が多いと思います。

A3 カラオケです。娯楽施設は基本的にカラオケしか利用しないので充実しているかどうかよく分かりません。

A4アルバイトをしていて、1度だけお客さんに外国人だからといことで接客を拒まれたことがあり、そのときはとても悲しい思いをしましたがその他は、店長も優しく、他の人も親切にしてくれるので楽しくバイトをしています。アルバイトの面接で外国人だからという理由で断られるのは日本では当たり前だと聞いていたので、実際何ヵ所か断られましたがそんなに嫌な思いはしませんでした。



 以上のリサーチ結果より、市電利用方法と労働環境の問題点について留学生間で共通点が見られたので考察してみたい。
 まず、市電利用方法の問題点についてだが、初めて利用するときに、料金表の見方がわからなかった、整理券の仕組みを知らなかったので困ったという意見がある。やはりはじめて市電を利用する外国人にとっては、今の市電のままだと不便な点があることが明らかとなった。この対策として、英語・中国語・ロシア語などの外国語表示を増やす、あるいは、乗車から下車までの一通りの市電利用方法をわかりやすく絵にしたものを停留所に設置するというものがあげられた。ただし、外国語表示や絵表示の需要と供給を考えた場合に、そう多くないのは事実であるし、表示によってただただ掲示の幅を取るだけで、景観にも影響を与えるのではないかと思われる。そこで携帯機能についているQRコードを上手く利用して外国人に必要な情報を与えられないかという意見が出された。私がインタビューをした留学生は4人とも携帯電話を持っていたし、留学生にも携帯電話は普及しているように思う。この方法だと掲示の幅も取らないし、適格に必要な情報を得られる。さらに、市電だけではなく、様々な観光施設での表示に応用できると考える。よって、外国人観光客や在住外国人に本当に必要なものの1つとして携帯のQRコード機能を利用する方法を提言したい。
 次に、労働環境の問題であるが、4人全員がアルバイト面接で苦労していることがわかった。想像していた以上に労働環境は彼らにとって厳しいのが現状である。アルバイトの面接もせずに外国人ということだけで断ってしまうのは理不尽である。今すぐにでもそのような理不尽なことを禁ずる対策をとるべきだと提言したい。また、私が考えるに、早くから他国との人・もの・金の行き来が盛んであった函館が、今後、市として何を売りにしていけるかと考えた場合に、歴史的に見てもやはり国際交流の分野であったり、「外国人労働者受け入れが進んでいる」というようなことではないかと考える。そのことを考えた場合にも現在の外国人の労働環境は改善されるべきであると思う。
 今回、実際に留学生にインタビューしてみて、私が予想していた答えが返ってくることがあまりなかったように思う。また、留学生の中でも、函館の滞在日数が浅い学生は純粋に函館が好きだといっていたが、長く住む学生になると、一概に好きだとは言わなかった。これも1つ大きな問題だと思う。今後、長期滞在している外国人と話し合いの場をもち、函館で外国人が長期的に生活する場合、より暮らしやすくなるためにはどうしたらよいか考えてみたいと考える。