8月2日(金)今日はブリュッセル市内観光。市内まではバスでいこうと思う。ユースをでて地下鉄駅とは反対の方向へ歩く。工場があちこちに目につく。板金工場、くず鉄の再処理工場といった感じ。そういえば、ユースももとは工場であったものを改装したものだそうな。小さな町工場がならび、外国人が増えているところ、東京でいえば足立区といったところか。道には路面電車の線路跡がさびしげに延びている。ロンドン、パリではあまりお目にかからなかった大都市のひとつの側面がここにはある。まあ、あんまり旅行者が足を踏み入れるところではないということだろう。
バスで市の中心部まで出て、まずはなんといってもグランプラスでしょう。ヨーロッパでもっとも華麗な広場、ユゴーなぞ一冊も読んだことはないけれど、そこはそれ。大作家は一体なにをみたのか?というわけで、ちょっと迷ったけれどなんとかそれらしき所に到着。第一印象、狭い。第二印象、さびしげ。第三印象、きれじゃない。きょうは曇り空な上にまだ朝が早い(といっても10時くらいだけど)せいだろうか。広場はなんとなく憂鬱な雰囲気である。たしかに周囲の建物は彩色が施され歴史を感じさせるものはないでなないが、なんというか、ロンドンやパリに比べるとちゃちい感じがする。もちろん、私はどちらかというと大作趣味であり、ロンドよりはシンフォニーという人間ではあるが、そういったところを抜きにしてもいまいちの感はまぬがれない。
悪口はこれくらいにして、ブリュッセルの新名所らしい小便娘のところに向かう。狭い路地に入り込み行き止まりとなているところに、それはありました。小さいうえに檻みたいなものの中入っている、あまっさえ前に車が駐車していて良く見えない。他の観光客も苦笑して去っていく。こんなもんかい?ブリュッセル。さて次は真打ち小便小僧。小便娘とはグランプラスの反対側になる。途中の土産物屋でみやげを買い込む。荷物が増えるよぉ。小便小僧は土産物屋がつらなる通りの交差点にあり、檻にも入っておらず、娘より待遇はよい。しかし娘よりも小さい上に、なんか変な服をきていてよく正体がわからない。まるでスターウォーズにでてくるタトゥーン星のくずひろいである。名物にすごいものなしとはお前のことか、ブリュッセル!観光名所回りはもうおしまい。
ということで、我々のブリュッセルの第一目標である、王立自然科学博物館へと向かう。ここはイグアノドンの化石でその筋では有名な博物館らしいが、ガイドブックでは見事なほど無視されている。ベルギー関連のガイドブックはかなり探しまわったが、この博物館が記載してあった本はたった1冊、しかも「その他の博物館」のなかのひとつといった存在にすぎない。美術館については、これでもかというくらいかいてあるくせに。そーんなにみんな絵が好きなの?日頃絵をみてない人が、美術館めぐりしてもつまんないよお。せっかく外国くんだりまで来たんだもの、もっとおもしろい所にいけば?と言いたくなるくらいである。もっとも自然科学博物館がそういうところであるというつもりは、さらさらない。まあ、子供連れにとっては、王立古典美術館よりはいいんじゃないかい。
さて、そういうわけであるから、場所がよくわからない。地図は一応あるのだが、どうもこの地図は実際の地形とリンクしにくい。レオポルド公園内にあるということはわかっているので、とにかく公園に向かおう。やっと公園発見。どうやら我々が入った入口とはちょうど反対側にあるようだ。公園のなかをテコテコ歩く。ヨーロッパの公園は芝生がしっかりしていて、しかもその中に入れるところが素敵だ。のんびり散策しながら博物館へ向かう。それらしき建物が目の前に見えてきた。もう少しだ。と、道がなくなった。いきどまりである。なんと、この博物館は公園に隣接しているくせに公園側からははいれないのである。ちょうど、上野公園から国博にむかっていて、国博の手前で行き止まり、いったんもどって公園の外側をおおまわりしなくてはいけない、といった感じである。公園の入口にはしっかり「博物館コッチ」の看板があったのに。さすがはガイドブックから無視されているだけのことはある。あなどれじ。
なんとか博物館の入口に到着。古めかしい建物である。もう昼時なので、中のカフェテリアで昼飯。博物館の中の食堂といえば、だいたい家族連れということになるのだろうが、なぜかおっちゃんたちがたむろして、昼間からビールをのんでいる。考古学の先生たちだろうか、いや、どうみてもそのへんのおっちゃんとしか見えない。ここの職員であろうか、職員が昼間から酒飲んでるの?というわけで正体は不明であったが、摩訶不思議なことである。この博物館は自然科学博物館ということで、地球上の生物を年代順に展示してあるらしいが、なんといっても恐竜が目玉である。貝などの化石をサッとみたあと恐竜が展示してある棟へ行く。
そこは、だだっぴろい体育館のような展示室で照明もほとんどない。せまい窓から差し込む自然光だけが頼りである。その中で巨大なガラスにかこまれて、数体のイグアノドンが思い思いの方向にむかって立っている。両手を空手の構えのように前につきだし、片足を前に踏みだし、頭をちょっともたげている。暗い展示室のなかでスポットライトが恐竜をうかびあがらせている。今日は入場者もほとんどなく、静かなたたずまいの中で、時々子供らのあげる歓声だけがひびいてくる。恐竜はいまにも動きだしそうでもあるし、反対に眠っているかのようでもある。が、静かに前方をみつめている恐竜たちは、向こうのほうで電気仕掛けで動いているロボットの恐竜の何倍も生命を感じさせるものがある。いいところじゃないか。ガイドブックよ、なぜ無視する?まあ、その他はたしかに動物のはくせいや昆虫の標本が並べてあるだけで、なんということはなかったが、来てみて損はないところです。
2時ころ博物館をあとにした。もうやることはない。今日は昨日の反省を踏まえ、中心街で夕飯を食べていくつもりである。それまでもう一度街をうろうろすることにした。ベルギーでひそかに楽しみにしていたことの一つがレコード屋である。クレプスキュールってもうなくなってしまったかもしれないが、日本ではお目にかかれないディスクが手にはいるかもしれないからね。繁華街の真ん中にヴァージンを発見、さっそく乗り込んでみたがやっぱり日本と同じである。まあ、しかしヴァージンって輸入レコード屋だから、ベルギーにとってもイギリスは外国だ。日本のヴァージンにだってユーミンもサザンもないだろう、と気をとりなおしいわゆる普通のレコード屋を探す。少し小さめだが目抜き通りに一軒発見。しかし、クラシックやジャズはともかくポップはフランスを中心にインポートものばかりであった。ベルギーに音楽産業はないのか。クレプスキュールよ、もうつぶれてしまったのか?確かにアーティストはイギリス中心であったかもしれないが、私にとっては、ファクトリー、ラフ・トレードと並んで思い入れのあるレーベルである。少し哀しかった。
それからマンガ屋にはいる。ここでは本屋と漫画屋は別のようで、コミックだけを置いてある。日本のマンガ本の陳列を想像してはいけない。むしろ画集や楽譜の陳列に似ている。本の題名のアルファベット順に並べられており、しかも引き出しの中にはいっているのだ。客は題名をたよりにそれらしき引き出しをあけてせっせと本をさがさねばならない。図書館の図書カードのようでもある。それでもナウシカや高橋留美子なんかも(英語だけど)もおいてあり、さすがはニッポン、漫画先進国である、と感心した。ちょっと高かったので結局買わずに店を出る、というか追い出される。もう店をしめる時間だというわけだ。では、夕飯にいたしましょう。
今日も中華料理と思っている。これでロンドン、パリに続き、中華で三都を制覇ぢゃ。これまでと違って中心部にある結構ちゃんとしたレストランである。ラーメンもチャーハンも一番日本のに近かった。内装も料理も立派だったが、値段も立派であった。(といっても、日本に比べれば安いもんだけど)それからスーパーで買い物をして、ユースに帰ることにする。スーパーには日清のカップヌードルがありました。チョット形や包装が違っていたけれど。うろうろしていたらおばちゃんが話しかけてきた。手に緑茶のパックを持っている。どうやらそのお茶についてどんなやつなのか教えてほしいといっているようだ。おばちゃん、遠い西洋のしがないスーパーで売られている茶のことなんてわかるわけありましぇん。東洋の神秘でも無理というものでっせ。なんとか適当に答えちゃったけど間違ってたら許してね。
ユースに帰ってから、コインランドリーに洗濯に行く。8時くらいになってたので外にでるのがちょっとためらわれたが、特段問題はなし。まあよく考えてみたら彼らだってアラブの人達というだけであって毛唐とどこがちがうんじゃ、といえばそれまでである。ちいさな子供も走り回っている(結構子供が多い)し、人種だけでなんとなく怖いと思う方が間違っている。こっちだってよれよれのTシャツにパジャマズボン姿なんだし。そう考えると怖いなんて思う方が不遜である。猛省、猛省。コインランドリーも、大分なれてきたので、ここではなんとかクリア。今日はもう寝るだけ。旅行も終焉が近づいてきた。