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糸をつむごう
命をつなぐもの  
私自身は小さなころから、大きくなったら何になりたいと言う大人の質問に、結婚したい、子供を育てたいと答えた記憶がありません。実際、学校に通い仕事について多くの人達に接していても、結婚をしたいとか、こういう家庭を作りたいということを考えること自体無かったような気がします。友人たちの作りたいと言う家庭に対する考え方にも、彼ら、彼女たちがこれだけ熱意をもっている結婚と言うことについて何故自分が興味を持つことができないのか、そちらに気が向くことはあっても、それらの話の聞き役がほとんどでした。
年齢を重ねていくうちに、自分の子供を生んで育てると言う事に興味をもつことはあっても、それが結婚ということと結びつくと言うことはありませんでした。
私が何故家庭や結婚にあまり興味がないかは、私の性格や抱えている解離性障害(心的外傷となるできごとや、受け入れられない情報と感情を分離するよう精神に強いる耐え難い内部の葛藤によって生じる,圧倒的なストレスに伴う障害)と無関係ではないかもしれません。けれど、それらを抜きにしても若い女性達が持つほどの情熱も努力もしようとする気になりませんでしたし、それを私自身はあまり違和感なく過ごしてきました。
そういう私が結婚と言うことと向き合ったのは、たまたま一緒にいて居心地の良い人が、事故による障害をもっていたからです。自分を飾らずに思うことをまっすぐ話すことができることや、何も言わない時間が一緒に過ごして苦痛ではないということが大変魅力でした。結婚ということにこだわりが無かったので、自分の仕事を続けながら、こして心地よい時間を共有できたらというのが私の望んだ形でした。
けれどそこで私が望んだことを阻んだのが、進行する麻痺を彼が抱えていたということです。寝たきりの一年を過ごして、手術、リハビリとなんとか日常生活を送ることができる状態までにはなっていました。しかし、彼の受けた手術がちょうど頚椎固定手術の過渡期で、古いタイプのものだったことから、年齢を重ねていくことで受傷部位が押しつぶされ神経の損傷が進んでいました。
結婚という形をとらないとき、私が彼との生活を終わりにしたいと(彼がそれを望むということもありますが。)願ったときに、麻痺が進行していく彼と別れることができるだろうか、離れたとして振り返ることばかりするのではないかと思ったのです。
自分の性格を思うと、相反するお互いに受け入れることができない気持ち(別れて別の人生を生きたい、彼を一人残して自分の生活を送ることに悔いがないか)の処理ができないのではないかと考えたのです。
結婚という形をとることで自分が抱えるだろう気持ちの葛藤を、離婚という形で割り切ることができるのではないかと、そんな不遜な考えで私は彼との結婚を承諾しました。
実際、彼の家族との付き合いを別にすれば、私にとって結婚と言う形もそれまでに一緒に過ごした時間と大差ないものでした。
その後、彼が脳腫瘍や麻痺の進行で仕事をあきらめて行く中で、手を離れたもう作ることのできない作品以外に、何を残せるかという悩みの中で、私達の子供を育てたいと言う希望をもった事で何度も話し合う時間を持ちました。
検査を受け、不妊治療について調べ、実際に病院を訪れて私達が持った結論はこういう形で子供を手に入れるということはやめようでした。これについてはいろいろな考え、また、生活環境などがありますから何が正しい答えだとはいえないと思います。
今、病気の治療も含めて今までは手の届かなかった多くの手段が私達の前にあります。それらのことや、命を紡いでいくということを私なりに考えていきたいと思います。
多種多様なものが紡がれることで、生命が環境の変化等にも押し流されずにここまでくることができたのなら、欲しいものだけを選択して効率の良いもの、優位に立つものだけを残していくことの危険性も考えなければならないのではないでしょうか。
私は誕生日が大好きです。自分のそして、他の誰もの。
こうして生まれることを何より喜びを持って受け入れたいと思います。生まれた限りは、その生を生きる義務があると思うのです。
生きている時間は、あまりに短いのかもしれません。長いと感じる時はあっても、大きな流れのなかで一人の命はあまりに短いと感じます。けれど命が、けして一人で完結してしまうのとは考えません。血のつながりなどではなく、生命として受け継がれるものがあると思うのです。おめでとうきょう生まれた子供達。
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