■敵 地 潜 入正規チケットは既に完売していたため、前日にスタジアム事務所前にいたダフ屋から購入。ダフ屋親父に定価30ユーロちょいの1階席を一枚140ユーロというアホみたいな値段を吹っかけられたので、そんなに金持ってねーよ(※本当に持ってなかった)、日本の貧乏人を舐めんな、というわけで交渉開始。サンプの事務所で偽チケじゃないことを何度か確認してもらって、1枚50ユーロにて購入。多少高くはついたものの、何より1階席最後列(最後列がポイント。理由は後述)という、アウェイ戦観戦には最適の場所を確保したので、まぁこのくらいで手を打つことに。正規チケットじゃ細かい席まで指定買いは出来ないし。そういえば事務所では同行のN氏がスタジアム案内のパンフレットが欲しくて横目で眺めていたら、その横に置いてあったサンプの公式誌を事務所のおじさんが2冊タダでくれた。柳沢が表紙だったから欲しそうに見えたらしい。普通に買うと1冊2.5ユーロの雑誌だ。まぁダフ屋から事務所にマージン入ってるだろうと思うし(ダフ屋がフツーに事務所に出入りしてるからなぁ・・・。)、これくらいはタダでもらっておかないと。それから事務所で席までの物凄く詳細な説明(ブロックごとの座席図まで出してきてくれた)と、ダフ屋の親父に最寄バス停までの道のりを聞き出して宿に帰った。使えるものは事務所でもダフ屋でも使えというお話。
ちなみにこの帰りに寄ったジェノバ・プリンチペ駅近くの「港の駅」で待合室らしき場所に迷い込んだらジュース2杯をタダでくれたので、これも有り難くもらっておいた。港には豪華客船が横付けされていたので客か見送り人だと思われた様子。余談だがここのトイレはイタリア旅行中でサンシーロストアと並ぶ清潔さであった。チップも不要。素晴らしい。
■似非ヤナギャル参上。
さて、当日は駅からバスの予定だったが来ないので人の流れに乗ってスタジアムまで歩くことにした。周り中、青・白・赤のサンプドリアカラーの人人人。小さな子供からおばちゃん、おじいちゃんまで、本当にみんなマフラーや帽子などサンプグッズを身に付けている。そして大量に出動している機動隊の皆さん。スタジアム付近の店はほとんどシャッターを下ろし、更に頑強な鉄格子と巨大チェーンでガードされている様が物々しい。まかり間違ってもここで赤黒人間だとバレるわけにはいかない雰囲気である。周りは気付いてないが状況としては四面楚歌なわけで、内心かなーり怖い。しかし、あちこちから笑顔で「ヤナギサーワ、ヤナギサーワ」の声がかけられ手を振られる。ここは一般の(?)ヤナギ応援ギャルを装い、にこやかに笑顔で手を振り返しておく。ありがとうヤナギ。君のおかげでグッズ無しでも堂々とスタジアムに入れるよ。
これはレッジョでも思ったが、海外移籍した選手にはかなり間接的に助けられている。日本人であること自体が免罪符であるからだ。(ブレシア-パルマのカードを諦めざるを得ないなどの弊害も勿論あるが・・・。)日本人の居ないキエーヴォとエンポリのアウェイ戦観戦はどうしたものか・・・。キエーヴォは仙台つながりってのがあるが・・・サポの皆さんはそんなこと知っているかどうか。まるで関係の無いエンポリは、もっと果てしなくヤバそうだ。ディナターレファンを騙るか?そ、それはちょっと苦しいな・・・。しかし何か考えておかねば。
スタジアムに着くと入り口が分からない。適当に並んだゲートは思いっきり年間シート席の入り口だった。基本的にゲートは逆流の出来ない構造になっているのだが、「日本から応援に来た女の子達が通るからどいてくれ!」という係員のおじさんの一声で、サンプサポの皆さんは速やかに、にこやかに道を開けてくれた。勿論「ヤナギサーワ」のコール付きで。出来る限りの笑顔でお礼を言いつつ慌てて一般チケット用の入り口へ向かう。心臓はバクバクである。ここでミラニスタであることがバレたら、ジェノヴァの港に沈められかねない。
スタジアムの中に入って席を探すと、昨日あれだけ説明を受けたのにも関わらず、迷子になってしまった。係員のおじさんにチケットを見せてどこのゲートか尋ねたところ「俺に付いて来な」と、席まで案内してくれた。本当に皆親切である。悪いことをしているわけではないが、ちょっと心が痛いのは何故だろう。
1階席の最後列は後ろに席も通路も無く、金網が張ってあった。これまでの観戦では、後方からのデジカメ液晶の覗き込みに度々遭遇していたが、ここならその心配は無い。(私達は当然ミランの選手ばかり撮影しているので、アウェイで見られるのはマズイ。)張り出している屋根が視界に入って若干邪魔だが、まぁそれくらいは仕方ないと思おう。それに今日は大雨。屋根がしっかりあって絶対に吹き込まれない位置のこの席を選んだのは結果的には大正解であった。1階席も前のほうは雨がかなり吹き込んでいた様子だ。(後で聞いた話によれば、そもそもメインスタンドの一部には屋根が無いらしい。)
そんなわけで、後ろからの覗き込みは防げたわけだが、それでも横や前には沢山人が座っている。ただでさえ目立つ異人種な私達が2人揃ってあからさまにミランの選手達にカメラを向け続けるわけにはいかない。たとえ目の前で練習が始まっても・・・。数十メートルの距離しかなく、撮影には本当に最適だったのだが・・・。
カムフラージュのため、たまにサンプドリアの練習風景にもレンズを向ける。柳沢を発見したので、彼に照準をあわせシャッターを切った。これはサンプサポにカメラネタで話を振られたとき用の護身符である。(デジカメの画像見せて、と言って寄ってくる人が結構多いため)ボケちゃったけど。
■ミラニスタ共同体
試合が始まると、前半の前半こそサンプがペースをつかみかけるが、前半の中盤以降は完全にミランペースでのパス回しショーとなった。結果はご存知のとおり0−3(前半0−1)でのミランの圧勝であった。
なお同行のN氏との試合中の会話だが・・・これはダービーのときもそうしていたのだが、ミラン側の選手名は全て伏せて喋っていた。イタリア語と日本語の発音はかなり近いので、普通に喋ると聞き取られてしまうのだ。なので、聞き取られてはまずい場所では、ピッポ→板さん ネスタ→世界一 マルディーニ→伝説 ・・・など、イタリア人には絶対に分からない呼び名や番号で呼んでいた。というか日本人でもまず分からないなコレ。
しかし、どうしても咄嗟のリアクションだけは出てしまう。ゴールシーンで思わずガッツポーズで大喜びするN氏・・・わわわ、ヤバイ、ヤバイって。周りはサンプファンだらけなんだから・・・って、あれ?回りもやけに大喜び。私の前に座っているごっついお兄さんはサンプサポらしく、むっつりと無言だが、横のお爺さんや斜め向かいのお兄さん、近くの少年などはシェヴァマフラーを巻いて喜んでいる。なんだよ!せっかくあれだけ警戒したのに、あんたら皆ミラニスタか!?
ピッチ方向
↑
■□□□??|柵|■■■■■
□□□□□■|柵|■■こちら側はサンプサポばかり
□■□□○○|柵|■■■■■
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
壁壁壁壁壁壁壁壁壁壁
○:私達
■:サンプサポ
□:ミラニスタ
状況を図解(?)すると上のような感じであった。どうやら周りのミラニスタの皆さんも、アウェイということで警戒して大声は出さずに観戦していた模様。それにシェヴァマフラーの少年以外は赤黒のグッズも身に付けていなかったので、お互いにミラニスタとはまったく分からなかったのである。しかしミランがゴールや惜しいシーンを重ねるたびに状況が徐々に明らかになっていき、後半などはかなりリラックスして観戦することが出来た。ハーフタイム中にトイレに行ったときも、隣のお爺さんがちゃんと席を確保しておいてくれ、席に戻るときも「ここだぞー」と手を振って合図してくれたため、迷わず席に戻ることが出来た。(後半キックオフ3秒前。)敵地の中での隠れミラニスタ共同体であった。試合後はに斜め前に座っていたアレッサンドロ青年に「撮った写真を送ってくれ」とメアドの書かれた名刺を手渡された。ほとんど渡し逃げ状態で去られてしまったが、12月に帰国するまで送れないんだけどな・・・。
試合後は兎にも角にも早くこの危険な土地を離れねば・・・と、一目散にスタジアムを後にする。あんまり明るい顔をしていてもまずいだろうと思っていたが、極度の寒さで顔が強張って引きつっていたので、泣き笑いのような表情になってちょうど良かった。まぁあまりのミランの圧勝ぶりに、サンプサポの皆さんも割り切って笑顔の人も多かったのだが。こんな状況でさえ、サポの皆さんはヤナギサーワ、ヤナギサーワと道でも駅でも声を掛けて来るので反応に困る。とりあえず「若干寂しそうな笑顔」で返す。アウェイ戦では演技力のアビリティが必要だ。帰りはバスのチケットを買っていたのだが、行き同様なかなか来ないので結局歩くことにした。このスタジアムには12月のコッパイタリア(ミランはサンプドリアvsプロパトリアの勝者と対戦する)で再び来る可能性も高いから、チケットはそれまで取って置こうと思う。
以下写真。
誰がFK蹴るのか相談中。
ガッちゃんはセードルフに静止され(可哀想に・・・)、ルイコスタ登場。
試合終了後、いつも何より真っ先に上着を羽織る寒がり王ピルロ。
本当に寒いの駄目らしい。
雨で髪型が変わると、遠目では誰が誰だか分からなくなる。
ハーフタイム後にピッチに出てきたネスタとピルロ。コントではない。
この二人は本当に仲が良いらしく、一緒に居る事が多い。
試合中もよく声を掛け合っている。