カルペ・ディエム企画「Pray in Play」(作・演出 江口百世)

1999年12月11日(土)14:30〜16:00
新潟市劇団由 空間劇場

 今回のかんげきのきっかけは、まずは純粋なる性的好奇心(!)が私をゆり動かしたのでした。
 公演情報によると、なになに、「18禁」ではないですか!なんですと!!

 それはそれは…。そういわれては、普段はモラリスト(笑)で通っているわたくしも、好奇心がうずきます。純粋に大人として好奇心がむくむくです。

 というわけで、むくむくした好奇心とともに、公演初日に会場へ足を運んだのでありました。
 会場は「劇団由 空間劇場」。新潟市の劇団所有のアトリエです。
 会場内に入ると、10畳ほどの部屋を対角線状に使った舞台。この会場は普通のマンションの一室を使っているので、タッパも2メートル強。
 この会場の広さ的に見て、ある程度の照明効果を臨むには対角線に舞台を取るのが一番奥行きがとれるからなあ。そのあたりには劇場を作り出す最大限の努力を感じました。が、スタッフにとってはいろいろ辛そうなハコだなあ。

 ともあれ、まさに「小劇場」という印象の会場内は、30人ほどの観客をぎゅうぎゅう詰めで満員御礼。制作の方がそれでもなんとかお客さんを詰め込もうと大声で誘導されていました。
 装置、中央に水の張られた池。そこにライトが当てられて、中には壊れたパソコンのモニタが。きらきらしてきれい。舞台奥にパネル。上手には電気の配線が蔦のように天井からたれ下がる、電子の森、といったイメージを受ける。下手にはパソコンとビデオデッキが置いてあり、その奥にはカーテンで仕切られた押し入れを連想させるような怪しいスペースが。うーむ、いったい何が起こるんでしょ。とにかく雑多、いろいろなものが置いてある。

 物語は、パソコンのゲームの中に空想の世界を創りだし、その世界でたわむれる少年の心を描いている。
 現実世界で少年を取り巻く人物たちは、少年を異常なまでに溺愛する母や、セックス大好きで毎晩のように夜遊びに繰り出す姉。母は満たされない夫(元夫??)への性愛を少年に向けてしまっているし、姉は夜遊びの金欲しさに自分のセックスを撮影したビデオを餌に少年から金をせびる。
 母も姉もそれぞれが自己中心的に、一方的に少年にかかわっていて、そこで描かれるセックスは「大人の嫌な部分」として捉えられているようだ。
 少年は、その二人を甘んじて受け入れている。
 母の前では、母の思うとおりの息子となって「いいこ」を演じるし、求められれば「セックス」だって拒絶しない。姉の前では姉の思うような「エッチに非常に興味がある」「ちょっとひねくれた」思春期の男の子として、「金勘定にうるさい」「大人ぶった」男の子として接している。

 なんてものわかりのいい奴だ、という印象。まるで「ピグマリオン」。「相手の思うような自分でありたい」という思いが強いんだろうな。現実世界では彼は母や姉のイメージ通りに「いいこに」「あくどく」ふるまおうとする。「母と姉の世界」の従属者、といった印象。このくらいの世代の少年はだいたいこんな感じだろうと思うけど。

 一方、「パソコン」のなかの空想の世界では、彼が世界の支配者。ゲームの中の「少年世界」には、彼の性への欲望を満たす女たち。母や姉と同じ姿をした女もいる。そして、「破壊性」や「野生」をつかさどる男たち。それらの「少年世界」の住人を使って、少年は恋愛ゲームや殺人ゲームを行い、きままにリセットを繰り返す。

 その中で印象的なのが、母の姿の女を男たちに強姦させる、というシーン。彼は母の満たされない性愛を現実世界でも受け入れて、「少年世界」のなかでも同じように、その欲望を満たしてあげているのだ。な〜んていい子なんだろう。涙、涙。

 もし、彼が現実世界に絶望していて、それを打破するために「少年世界」を作り出しているとすれば、母の姿の女は「彼の理想とする母の姿」として存在するのではないかしら。
 だとすれば、彼は実はそんなに現実にいきどおっているわけではないのではないのかなあ。という気がしました。
 ラストで彼が「少年世界」と別れを告げるシーンがあるけど、ううむ、空想の世界と現実とそんなにちがわないようだけどなあという気がしました。

 そうした意味で、彼が「少年世界」を本当に必要としていたのかが?なところ。
 なぜ「少年世界」を捨てる必要があったのか、ということも??。
 わからなくていいのかもしれないですが。

 ただ、「少年世界」のなかでは彼は「ピグマリオン」を操る側なのであって、ああ、こいつは支配欲が強いのかな、と思った次第。
 それから、「少年世界」での彼の欲望を行動に移す男たちが(あたりまえだが)大人の男性であったという点。
 いろいろな解釈ができそうな物語なのでほんと、私見ですが、彼らに母の姿の女を強姦させた少年の心のうちは、つまり、「まだ大人の体じゃないから僕では母の欲望を満たすのに不十分だ」から、という風にわたしは解釈したんだけど。むむむ。

 そんなこんなで感じ取ったテーマは「早く大人になりたい」ということかな?むむむ。どうなんでしょう。「18禁」ということでしたが、むくむくした好奇心を満たす前に、少年の心を読み解くほうで忙しかったです、ちょっと残念。ともあれ、意外と性的表現もどぎつくなかったし、是非中学生に見てもらって感想を聞きたいところです。
 キャストでは「少年世界」の女たち、特に虹子役が幻想的でよかったです。