劇団第二黎明期「悲しきGARGLE」(作・演出 シダジュン)

1999年5月22日(土)14:30〜15:30
新潟市古町西堀DOMO

 5月はこれで6本目のかんげき。毎週末、かならずかんげき。
 こんなにコンスタントにお芝居を見るのは生まれて初めてです。新潟市移住3年目にして、やっと新潟の劇団のお芝居をじっくり見たいぞという気持ちになっています。
 というのは、1年目は仕事に慣れることで精一杯で、しばらく演劇のことなど考えていられなかったから。
 2年目は、くだんの長岡の演劇ワークショップに参加していたので、長岡に通うことにエネルギーを注いでいたから。
 で、ワークショップの発表会で久しぶりに舞台に立ったり、そこで出会った県内各地の演劇人に刺激されて、「やっぱり芝居楽しいっす」と再認識した3年目。やっと、新潟の劇団はどうなのだろう、と関心が向いてきたのです。思えば長い道のりだ。っていうか、のんびりしすぎ。

 ということは、新潟の劇団の公演を見るスタンスは、私が基本的に「やりたい人」なので、悲しいかな「あらさがし」みたいなところが多いということ?根性悪い。ごめんなさい。あと、「いいね、いいね、こんな役者になりたいね」とか「いいね、いいね、スタッフワーク」とか。うらやましモード。またはお勉強モードともいう。

 で、やっと本題にはいるわけです。

 第二黎明期、という名前は、私が長岡で高校生やっていた頃から名前だけは聞いていました。ということは、かなり長い間活動しているということ。写真を見る限り、主演女優二人もなかなかの熟女とみた。さてさて、どんなお芝居なのかな。

 今回もチラシを手にしたところから。
チラシを見ての最初のイメージは「…新劇?」という感じ。出演者の女優二人の顔写真がばばんと。ある意味正攻法なんだけど、とりあえず小劇場でこういうスタイルのチラシって珍しいから。イメージ戦略みたいなのが多いでしょ?わたしなんかは短絡的に「コマ劇場座長公演」のような舞台を連想してしまふ(偏見)。が、このことに関しては見事に気持ちいいくらい裏切られましたね。

 会場の「西堀DOMO」は、どうやら第二黎明期の所有する小劇場のようだ。場所は新潟市の中心部、おしゃれな雑貨屋さんなんかが点在する西堀〜白山方面。古い木造の倉庫の二階。一階はブティックというかっこいいロケーション。
 入口の前に青空受付。この日も暑いくらいのいい天気、こういう日はいいけど雨の時とかどうするのかな?と素朴な疑問を抱きつつ、またもや当日券を求める。
 するとやっぱり「予約はございますか?」いいえ。すると整理券(33番)をいただく。予約の人から入場していただきます、とのこと。
 それはともかく、「チケットに住所とお名前をお願いします」とのことでわたしもその場で記入したんだけど、15分前に開場して入場待ちしていると、ぎりぎりにやって来た予約の人にも記入をお願いしていて、それで受付が若干混雑していたり。やっとこさ入れたのが開演5分前。
 予約なしの当日券で見に行っておきながらなんだけど、待っている側としては「なんで受付で書かせるんだろ?」と思ったり。少々ストレス。もっといい方法ありそうだけど。どうなんだろ。

 靴をビニール袋に入れて階段を上る。会場のなかはまさに木造建築!という感じ。むき出しの天井の梁がこの建物の古さを感じさせて。こういうの好き。壁に暗幕を張り巡らせて、遮光に神経を使ってる感じ。
 広さはおおむね12畳ほど?客席はオール桟敷。私が33番目だから、だいたい40人くらいのキャパと推測。

 舞台。階段側。中央に暗幕のかかったボックスが椅子のように配置されている。上にはヒョウ柄のカバーかな?二人分。トラックの運転席に見立てている。その後ろに黒い寒冷紗のはられた衝立。その後ろにも演技スペースがある。舞台の幅が3メートルあるかないか、という感じなので、奥をうまく使おうということだろう。シンプルながら、会場の狭さをカバーしていこうという心遣いを感じました。

 で、開演。物語は、長距離トラックの女ドライバーが、ヒッチハイクの女を乗せることから始まる。長い道のりでの二人のやりとりで進んでいく。
 女ドライバー、なかなかの男丈夫ぶり。大股がっと開いて、ど演歌を聞きながら、軽を「なまいきなっ」とエアブレーキであおる豪快さん。
 ヒッチハイク女、おしゃまな感じで。こぎれいなドレス、聞けば「昔の男が結婚するので、一発びしっとひっぱたいておめでとうといってやるんだ」のウェディングベル状態。なるほど、訳ありなのね。
 
 この対照的な二人のやりとりが楽しい。セリフもテンポよく、飽きさせない。見事なアンサンブル。さすが長年活動している劇団だなあと感心。ほとんどがドライブシーンで役者が大きな動きをすることはないんだけど、そのぶん二人の軽妙な会話のやりとりに見入ってしまいました。
 また、大きな動きが少ない分、細かい所作にどうしても目がいくんだけど、そつがない。
 女ドライバー、むずかしそうな運転の演技も繊細さを感じます。ハンドルの握り具合、目線の固定。しっかりこなされていて、すっかり勉強モード。なるほど、なるほど。
 一方、ヒッチハイク女役の女優も実力派。表情、発声、バリエーションがすごい。特に怪談話のシーン、ちょうど目線があう位置に座っていたので、なんだか自分に話しかけられているみたいでゾクゾク、にやにや。夜中のドライブシーンの照明が良くできていて、道路の夜間灯が過ぎ去っていく感じなんだけど、その灯りが怪談ぶりを増幅。
 ストーリーもドンデン、ドンデンと意外な展開があって。二人の息のあった会話に魅了されているうちに終演、あっという間の楽しい1時間でした。

 とにかく、スタッフワーク、役者ともに安定した実力を持っていて、その円熟ぶりに圧倒されっぱなし。新潟の演劇シーンを長年引っ張ってきた劇団と確信。
 また、狭い劇場ならでは、細かい表情で見せる!という公演形態で、場にあった演目をきちっとこなしてるなあ。
 今回は完全お勉強モード。いい女優のいい仕事を見せてもらいました。女ドライバーの野本妙子さん、(実はここにドンデン返しがあったんだけど一応)女ヒッチハイカーの白根美弥子さん。ほれぼれするぐらいの演劇熟女たち。次回出演作も楽しみ。絶対行きます。