前回に引き続き、チラシだけで得た情報から観劇する企画の第2弾。
点心舞台の「御伽草子Part3」。3週に渡って、3つの喫茶店?を転々としながらという公演形態。今回はその3回目、最終回らしい。
前述の「Zukkie」と似た公演形態、ということで、この2つを比較しながら書き進めることにします。
で、チラシなんだけど、「Zukkie」よろしく、書いてあるのはやっぱり会場名と所在町名だけ。ホント、一見さんを呼ぶ気はないのかな。なら、なんでチラシを配るのだろうか。新潟の演劇界、ここが謎。まあ、それでも見に行く物好き、それが私という説もあります(笑)。
というわけで、今回もチラシに書かれた「弁天町2」を歩き回り、自力で発見。ほんと物好き。
開演15分前、店内はいるとすぐに声をかけられる。「ご予約ですか?」ぎくっ。やっぱりはやりなの?今回は予約なんてしないできたんだけど…。でも、店内は2,3人がちらほら。予約なしでもOKだった、良かった。
料金を支払い、コーヒーを注文。(やはりワンドリンク制。)そうこうしていると、その横にいる男の人に「どうぞ、コーヒーを飲んで、気楽な姿勢で。」と声をかけられる。これが今回の語り部、小林へろさんだった。
この方、新潟県のメジャーな地域情報番組「新潟ワイド夕方一番」にレギュラー出演している、いわばプロ。そして、今回の主催劇団「点心舞台」の主宰であるようだ。(「ようだ」で申し訳ないけど、本当に予備知識ないの)なんだか気軽な方だ、と、新潟ローカル限定のミーハー心がくすぐられる。客席は「Zukkie」の時のように、劇場の形態に椅子を並べ替えたりはしていない。
っていうか、革張りのソファなので不可能。店の中央あたり、どの席でも見渡せる場所で演技者が待機。
しばらくするとお客さんが次々に現れた。やっぱり今回も関係者が大半のようで、みんなへろさんと談笑中。うーん、一見さんにはこれが居心地悪いのよ。でも、へろさんがうまくトークを入れて、次第に和やかな雰囲気に。開演前には、12,3人の客で店内が埋まった。飲み物が行き渡るのを待って、開演。
今回は「語り部 小林へろ」とチラシにあるように、へろさんが「おとぎ話」を語るという形態。
坂井道子さん、という方が演奏と歌を担当。ユニット公演だね。小さい店内ながら、シンセの音の調節をしたり、へろさんもマイクを使ったりと、こだわりがあって。
シンセの音楽と、昔話っぽい歌に合わせて、へろさんの「おとぎ話」が始まる。
演目は、日本・世界のおとぎ話取り混ぜ全部で5本。(多い!)
ただし、「世紀末御伽草子」と銘打たれているように、現代の風潮をブラックに盛り込んだ内容。例えば、1つ目のお話は、「金のおの 銀のおの」が原本。というのは、ここで木こりが落とすのは、電話番号がたくさんメモリーされた、いまどきアナログの重い旧機種の携帯電話。なんとな。
そこに、携帯販売会社のお姉さんよろしく、事務的笑顔のよく似合う27,8のお姉さん(へろさんの言い回しママ)のような泉の精が現れ、
「あなたの落としたのは、このモバイル対応のデジタルムーバP504シルバーですか、それとも地上のどこからでもかけられるイリジウム携帯電話ゴールドですか?」と、木こりに尋ねるわけだ。うわははあ、にやにや。ベタベタだけど、時事ネタって、くすぐられるよねえ。
勿論、オチまでこの調子。環境問題を絡めたりして。かなり作り込んであって、ひねりが利いてます。時事ネタだけにオヤジギャグ系で、すべるとこはしっかり滑ってて、それがまたたははな感じで面白かったです。また、要所要所に入る歌が、まんま「日本おとぎ話」な感じを漂わせて、◎。
その他にも、新潟人以外はけっして理解不能な新潟弁満載の「舌切り雀」、マルチ商法に鋭く(?)切り込む「泣いた赤鬼」等々。
この場でオチをいっても面白くないので、これはぜひぜひ次回公演を待て!新潟人の笑いのつぼをしっかりくすぐってくれること請け合いです。ぬははは。
ただし、個人的には一度に5本は盛りだくさんすぎたかな。途中ちょっと眠気が。
いや、おもしろいは面白いんだけど、ほら、おとぎ話ってさ、お母さんが夜眠れないときにさ、聞かせてくれたりするじゃない?催眠効果?なんちていいわけ。とにかく、さすがテレビ出演しているだけあって、そのなめらかな活舌で楽しませてもらいました。
それと、これは公演の中でへろさん自身も言っていたんだけど、おとぎ話は客を選ばない。子供、おとな、誰でも知っているし、その世界になじみも深い。その着眼はうーん、やられた。の一言。ほんとに、客があれだけしかいないのが信じられない。次回あればぜひ、足をお運び下さい。んもう、ベタベタ。
ということで、一般店舗を劇場に借りた公演の総まとめ。
それにしても前回といい今回といい、公演場所の選び方から見て、これは多くの客を呼ぶためのイベントじゃないとわかるよね。
いわばライブハウスののりで、そういうのもありだよな、と考え始める。観客の数も限られるし、施設的に派手な照明とか音響は無理だけど、お金も人もその代わり少なくても何とかなりそう。芝居やりたい病に犯された社会人として、すごく食指の動く形態。アマ中心の地方演劇の打開策になるのでは?と、密かに進出を画策。あっ。いきつけのお店がないと駄目か〜。