Zukkie PROJECT「五月晴れなのに…」

1999年5月9日(日)15:00〜16:00
新潟市古町HALF TIME

 GWにたくさんの芝居を見て、ついにやってきましたマイ・ブーム「観劇」!
とにかくいろいろ見て、考えて、楽しもう!というわけで、最近新潟の演劇人とネット上で語り合ったり(笑)していることもあり、新潟の演劇事情を肌身で感じてみよう!と、色々調べていたら、なんだか新潟市内、5月は演劇月か?というほど、たくさん公演があることがわかりました。
 新潟の劇団について予備知識などなし。ので、手当たり次第、予定が合えば見てみよう!ということに決めました。よって、手に入れたチラシを頼りにまず見に行ったのが今回のZukkie PROJECT「五月晴れなのに…」であります。
 さあさあ、新潟の演劇人、どんな芝居をやってるの!?かなり張り切って出かけたんですが…。

 チラシを見ると、どうやら一人芝居を見せてくれるよう。なになに、会場が狭いのであらかじめ予約を…。すごいな、予約とるのか!とさっそくチラシに書かれたPHSに電話。こんなの初めて。電話予約が必要なのが新潟でははやりなのかな。

 当日。チラシには「古町 大竹座うら」とだけしか書かれていない。会場名からするとどこかのお店を借りて、という公演のようだが、これでは不親切。せめて地図が欲しかった。というわけで、その近辺を自力で歩き回ってなんとか到着。
 小さな雑居ビルの2階にそのお店はあるらしく、階段の前で、繁華街には不似合いなスーツの青年が。「ああ、ここだ」と連れに話していると「Zukkie PROJEKCTのお客様で?」と声をかけられ、階段の方へ案内される。
 階段、とても狭く、ちょっとどきどき。お店の入口に案内係の女の人。「いらっしゃいませ、ご予約で?」はい、そうです。と、ここで今回の料金1,000円を支払い、店内へ。ワンドリンク制で、入ると女の子(実は今回のキャスト)に何を飲むのか聞かれた。ここでビールを(笑)。
 予想通り、店内は6畳あるかないか、というくらいのこじんまりしたところ。店内のほぼ半分が公演スペース、そこを正面から見せるように15,6の椅子が3列に並べてあった。椅子と椅子の間も狭く、トイレに行くときは他のお客さんをまたぐように行かなきゃならない。ちょっと無理してるなあ。の印象。

 15分前に会場に入って、どうやら一番乗り。ビールをもらったのはいいが、周囲はみな今回のスタッフ?といっても5,6人なんだけど。よそ者、みたいな感じでなんだか居心地悪い。

 それもそのはず、後から入ってきた客はほとんどが関係者らしき人。スタッフたちと賑やかに談笑している。どうも場違いなところへ来ちゃったなあ的な気持ち、抑えられず。
 でもでも、私、チラシを手に入れてきたんだよ?チラシをいろいろなところに置いてあるということは、関係者だけでなくて純粋にお客さんを呼びたいんじゃないの?なんてーことをビールを飲みのみ考えながら。

 ほどなく15ほどの椅子が埋まり、開演。狭い店内、15人も入るとやおら空気が悪くなってくる。ということで、ここで空調にスイッチが。ところがこれが寒いのなんの。この日は新潟市内、まさに「五月晴れ」で暑いくらい。私も気候に合わせて薄着で出かけていたのでこれは辛い。本当に辛い。

 で、感想。

 舞台。下手に暗幕か何かを垂らして、簡易楽屋に。上手にはテーブルと椅子。それでスペースはいっぱいいっぱい。
 今回の公演は2部構成。1部は一人芝居、2部はさっきのドリンクを渡してくれた女の子との二人芝居。

 1部、一人芝居。30分、一人芝居では長丁場と思う。構成、演出、すべてキャストで行ったらしい。
 物語、不倫しているOLのアパートに、不倫相手の奥さんがやって来て…。といった内容。
 一人でOLと奥さんの二役。見せ場はこの二人の会話。なのに、一人芝居。どっちに感情移入すればいいの?ととまどい隠せず。
 暗転でこの二人が入れ替わるんだけど、簡易楽屋のなかのライトのせいで、中でなにをしているかが丸見え。ちょっとエッチな感じ。すわ演出か?と期待したが、単にそこまで気が回らなかったのかな?そのことがなかったかのように芝居が続いた。この間、店内の寒さに耐えかねて集中切れること数回。しかも、始まってみると、椅子の並べ方のせいか、前のお客さんの頭に隠れて役者がみえづらいこと。
 とにかくセリフの量も多く、かなり練習もしたんだろうな、と思うけど、肝心の目玉の会話シーン、あれは相手役を作った方がドラマ的には面白くなったのでは?と感じる。
 エンディングでOLが「あんな(直接やってきて不倫関係を批判する)やり方はスマートじゃない。わたしだったらそんなみっともないことしない。あの人が相手ならば、私は彼と別れたくない。奪ってやる。」みたいな独白をするわけで、よくぞそこまで言い切ったと感心はすれども、客としては、OLの気持ちだけを主張されてもなー、と思うのです。
 OLと奥さんとのやりとりの中でそういう考えに至る過程が見えないままだったので、そのセリフ、ちょっと待った!なんでそうなるねん。とつっこみたくなると。
 もし、この会話のシーンでOLの心の動きがきちっと演じられれば、ちょっと反常識的なまとまり方でも、客にきっちり主張できるのでは?それには、やはりこの芝居、一人芝居では限界があるなあ。あれだけ練習していて、それなりに技量もあるようだったので、もったいない。見せ方を間違えてるかな?という印象。
 
 2部、二人芝居。これは20分くらい?父親と二人で暮らす妹のもとに、女優になるために家を捨てた姉が3年ぶりにやって来て…といった内容。
 1部の一人芝居が長丁場だっただけに、あら、もうおしまい、な感じ。妹役、なかなかユニークな表情を見せてはくれたんだけど、自分たちを置いて出ていってしまった姉に対して、やけに寛容。「お姉ちゃんには、お姉ちゃんの生き方があるでしょ?がんばんなよ。」まあ、それはその通りなんだけど…。そんなに理解ある人だと、ドラマがはじまんないよ。なんだか、予定調和の役に見えちゃう。
 対する姉も、3年ぶりに帰ってきた割になんだかあっさり。「(妹は)家事が苦手だからな、心配してたんだけど」おいおい、お前さんが出ていったからでないの?
 妹「お父さんに会っていきなよ」
 姉「でも、合わす顔がないよ」
って、会わないとドラマがはじまんないぞ〜。

 2本を見終えての感想。ああ、内輪を対象にしたイベントだったかな的な。万人に見せる、という視点がどうも足りない。チラシを配る限りは、客としてこの芝居はどうなのか、という視点を重視して欲しいなあ。

 ここで考えなければならないのは「演出の不在」かな。
 演出的には、どちらもやりようによってはもっと見せられるはず。
 役者も個性、力量ともまだまだできるんじゃないの?という印象。客観的・全体的に舞台を統合することのできる人材をつければもっともっと見せられるのにもったいない。
 これは演出上の問題だけでなく、室温、スペースの使い方など、観客が快適な状態で見ることのできるように配慮するために、いかに小規模の公演でも制作というポストもしっかりしていて欲しい。役者が少ないから、スタッフワークも、という理屈は成り立たない。何しろ、お客さんはわがままいうものですから。
 というわけで、次回これらの点が改良されれば、もっと伸びていくのでは、ないかなあ。
 私が演出だったらああしてこうして、と「もったいないお化け」と化した1時間でした。